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年明け①

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 こちらに来て、2度目の年明け。
 新しい下着に服。片付けて、支度を整えて、神棚に年明けのお祈り。
 たっぷりの料理が詰まった重箱。がめ煮、卵焼き、ポテトサラダ、エビフライ、唐揚げ、ローストビーフ(ワイバーンのお肉です)、生春巻き、手羽元と卵の酢煮、紅白の蒲鉾(セレクトショップダリアの高いやつ)、冷蔵庫ダンジョンの貝柱・クラーケン・エビの海鮮焼き、野菜の牛肉巻き。蟹を使ったグラタン。お鍋にはこちらの魚介類で作ったブイヤベース。刺身の盛り合わせもたっぷり。予め異世界のメニューから魔法の三柱神様が好物のみつよしのフライドポテトとオムライス・ビーフシチュー付きを確保していたので、それも。和食に洋食ごちゃごちゃだけど。
 ホークさんとチュアンさんが慎重に並べてくれる。次々になくなる。最後は銀の槌から予約して頼んでいたホールケーキ、イチゴデコレーション、イチゴとショコラのケーキ。他にもフルーツケーキ。アップルパイ。イチゴのロールケーキ。
 よし、いいかな。
 私達はお祈りの姿勢。
「神様、今年も我々をお見守りください」
 父がお祈りの言葉。チュアンさんが熱心にお祈りしている。
 今年も宜しくお願いします。
 明けましておめでとう、何かあれば、相談に乗るからな
 時空神様の声が。
 今年も、お見守りください。
 心配するな。お前達はずっと、見守っている
 嬉しか、ありがとうございます。
 お祈り。
「さあ、我々も食事にしましょう」
 我が家は正月は昼から飲む。
 おせち料理と言う名のオードブル。内容は一緒、ただスープではなく我々にはお雑煮付きだ。
 ビアンカとルージュにもたっぷり、仔達もたっぷり。ノワールには野菜と果物。イチゴにメロンに洋梨たっぷり。
『いろいろあるのですっ、ワイバーン美味しいのですっ』
『本当っ、あ、今日はクラーケンがあるわっ、エビもあるわっ』
 ようございました。
 さあ、我々も。
「明けましておめでとうございます」
 父の挨拶。 
「今年もお願いします」
「こちらこそ今年もよろしくお願いします」
 ホークさんが代表して挨拶終了。
 挨拶はそこそこで。
 お屠蘇を順番に、頂きます。
 私は缶チューハイ、両親とホークさんとミゲル君はビール、晃太とチュアンさんはY県の日本酒、マデリーンさんはロゼ、エマちゃんとテオ君はお茶。お茶のエマちゃんとテオ君には波風の牡蠣の釜飯。
「今日はゆっくり飲みましょうっ、かんぱーい」
 私は宣言する。
「「「「「「かんぱーいっ」」」」」」
 ぐびいっ。ミゲル君はぐびぐびっ。
 缶チューハイを一口。くう、昼から飲むなんて、なんて背徳的。さ、お正月の大事なイベント。
「はい。エマちゃん、テオ君。うちらからお年玉よ」
「え?」
「はい? おとしだま?」
 料理を自分の皿に移そうとしたエマちゃんとテオ君が戸惑う。
「日本の風習でね。お正月に子供にお金をあげるんよ。これはお金やないけどお菓子ね」
 予め準備していたお菓子の詰め合わせを出す。エマちゃんは赤、テオ君は青。中身は一緒。
「ユイさん、エマとテオは成人してますし」
 案の定、ホークさんが遠慮の姿勢。
「いいやないですか。二十歳までの期間限定、年に一回ですから。2人はまだ、私達にしたら十分、子供なんですから」
 ホークさんはちょっと考えて、了承。
「ありがとうございます。エマ、テオ」
「はいっ、ありがとうございますっ」
「ありがとうございますっ」
 笑顔満点で袋を受け取るエマちゃんとテオ君。早速中身を確認している。ぱぁっ、と嬉しそうだ。ふふふ、セレクトショップダリアで選んだちょっとお高めの色んなお菓子の詰め合わせ。2度言うが、中身は一緒。違うのが入ってて、それでけんかするような歳ではないだろうけど、一応ね。
 お年玉イベントも終わったし、さ、頂きましょ。まずはがめ煮。里芋柔らかい。
 ワイワイと、お酒と食事が進む。
 ビアンカとルージュのおかわり攻撃が飛び、予め準備していた赤身のステーキでかわす。
 貝柱も一口、ああ、魚介の旨さが広がる。
 ビールのおかわりを出しながら、更に貝柱を一口。うーん、美味しい。
「お母さん、貝柱の在庫まだある?」
「ん? あるよ、あと28やね」
 すぐ無くなるなあ。貝柱はビアンカもルージュも好きだし、仔達もシチューにしたらよく食べるし、我々も好きだしね。孤児院の子供達も大好きだしね。ビアンカとルージュは1食で1個丸々食べる。
 マーファに帰ったら、冷蔵庫ダンジョンだね。計画練ろう。貝部屋から出るドロップ品は、リティアさんも待ってるしね。
『ユイ、ダンジョン行くのですね』
『この貝柱美味しいわ。また行きましょう』
「マーファに帰ったらね」
『今日はいつ行くのです?』
『何階から行くの?』
「私の宣言聞いとったよね?」
 絶好言うと思ったよっ。
「今日も明日も行かんからね」
『『ぶーぶー』』
 ダメなもんはダメ。去年みたいに三ヶ日をダンジョンなんていやや。
「わおん」
「がうぅ」
『ぶー』
『ぶー』
『ぶー』
 仔達まで真似してっ。か、かわいかっ。かわいか過ぎやっ。
「ブルル」
 ノワールまでっ。こちらから見えないが、哀愁攻撃しているはず。
 しかし、今年は寝正月と決めているのだ、私の決意は揺るがないっ。
「きゅうーん」
「がうぅ」
『ぶー』
『ぶー』
『ぶー』
 くっ、かわいか声が響く。あまりにも鳴くので、たまらずちら、と、従魔の部屋を覗くと、柵の間から顔を見せてる仔達が、ずらりと並んでいた。
 ぐはあっ、かわいかの破壊力、半端無いっ。半端ないが、アルコールがはいっているはずの私の行動早かった。素早く飛び出しスマホかざしてパシャパシャ。パシャパシャしていたその背中をビアンカとルージュが鼻面を押し付ける。
『ねえユイ、ダンジョンなのですー』
『ダンジョンー』
 押し付けられて、私は前にべしゃ。合計1t越えてますからね。軽くでも押し倒されます。
「ね、寝正月なんやっ、今年はっ」
『行きたいのですー』
『日帰りでいいわー』
「きゅうーん」
「がうぅ」
『ねぇね~』
『ねーね~』
『ねえね~』
 ぐはあっ、は、破壊力半端なかっ。
「こ、晃太に聞きっ」
 まるでお父さんに聞き、みたいな感じやけど、晃太にかわす。どちらにしたってダンジョンには、巨大アイテムボックスのある晃太の同行が必要不可欠だ。日本酒を飲んでいた晃太が、アルコールで真っ赤になり、ええ~みたいな顔だ。
『コウタ、ダンジョン行きたいのです』
『行きたいわ』
「きゅうーん」
「がうぅ」
『にぃに~』
『にーに~』
『にいに~』
 半端ないかわいか攻撃が、晃太を直撃。
「あ、明日、行こうかねっ」
 晃太、あっさり陥落。アルコール入ってるからね。
 鷹の目の皆さんも了承してくれた。
 結局、明日日帰りダンジョンとなる。

 その日の夜。
 エマちゃんとテオ君が、お年玉として貰った袋からお菓子を出して、ホークさん達にあげていたのを、中庭からちら、と見えた。
 いい子達や。来年も一杯詰めてあげよう。
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