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素材確保⑦

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 最後のボス部屋もちゅどん、ドカン、バキバキ。
 宝箱のチェックをする。
『はい、大丈夫よ』
「ありがとうルージュ」
 さ、わくわく。ぱかり。
「おお、きたきた、武器ッ」
 そこには一本の槍。その下にはぎっしりインゴットが敷き詰められている。
 槍は穂先の根本に、左右対称の小さな刃が付いてる。すごく綺麗な穂先だ。柄はシンプルに滑り止め以外の装飾はない。チュアンさんに聞くと、パルチザンと言う槍だそうだ。ルージュによると魔力を感じると、何かしらの付与があるんやね。でも、丁度いい。これはチュアンさんのね。
「私には、勿体ないものです」
「まあまあ、チュアンさんには頑張ってもらいますからね」
 チュアンさんは考えて槍を受け取ってくれた。
「精一杯、努めさせて頂きます」
「はい、お願いします」
 さ、忘れ物はないかな?
『元気がいないのですっ』
「はあっ?」
 ビアンカがあわててボス部屋から飛び出していく。私達も追うと、ワイバーンとタイマンしている元気がッ。
「ギャーッ、元気ーッ」
「ワンワンワンワンッ」
 元気が吼えて雷を連発。見事命中ッ。ギャーッ、こっちに来るーッ。
「ワンワンワンワンッ」
 半分白眼向いているワイバーンに、止めとばかりに更に雷命中。
 轟音を立てて、ワイバーンが沈み、ドロップ品に。
 へっへっ言って、元気は私の前に。見てみて、倒したよ、みたいな感じかな? いや、そうやない。
「……………元気っ、勝手におらんくなったら心配するやろっ」
 ビアンカの前に、私の雷が命中する。
「なんもなかったから良かったけど、ワイバーン一杯おったらどうするとねっ」
「きゅ、きゅうーん……………」
 途端にきゅうーんと萎む元気。
『元気、ユイの言う通りなのですよ。今回は上手くいったからいいのですが。お前はまだ成体ではないのです。勝手に動いてはいけないのです。怪我では済まされないのですよ』
 ビアンカにこんこんと怒られている。更に萎む元気。
 もう、ケガがなくて、本当に良かった。
「な、なあ、姉ちゃん」
「なんね?」
「元気、ワイバーンば単独撃破したばい。おかしくない?」
「あ」
 そうや、ワイバーンは山風の皆さんが、一匹くらいならなんとかなるって言ってた。
 え? 元気=山風の戦力 え? Cランクの冒険者パーティー並みだよね。ビアンカの仔だから? いや、まだ、元気は2歳にもなってない。元気のレベルってなんぼや?
『本当、元気を見ていると、兄を思い出すわ』
 ルージュが萎む元気を見て、呆れている。
「兄って、ビアンカの?」
『そう。兄もああやって突っ走っては、母様に叱られていたわ。私達もよく巻き込まれたし、叱られてもまったく反省しなかったけどね』
「ヘェー」
 噂のちょーっとシスコン臭のするフォレストガーディアンウルフのお兄さん。暇さえあれば、誰彼構わず挑んでいたそうだ。特に属性魔法が覚醒してからはそれが増して、ちょっとリルさんが目を離したら、姿がなく。あっちでちゅどん、こっちでドカンしていたそうだ。
「ふーん、元気はそのお兄さんに似たんかな?」
『やめて、あんな風になったら後々大変よ。私達以上にバトルジャンキーなんだから』
 げんなり呟くルージュ。どんだけやねん。
「でも、自覚はあるんやね。バトルジャンキーって」
 ドロップ品を拾う。萎んでいるが、元気が仕留めたからね。これでローストビーフか、ビーフシチューにしようかね。
 しゅん、となった元気は、晃太にすり寄っていく。もう。
 さ、帰ろ。年末に向けて、色々準備せんとね。新しい下着や、鷹の目の皆さんいるから、お正月用の食事と。あ、ボーナス、忘れとった。帰って渡そ。仔達も食べるしね。神様用に去年と同じ感じでいいかな? エマちゃんとテオ君には、お年玉もいるね。お金を渡すとホークさんが断ってきそうだから、お菓子の詰め合わせにしようかな?
 ボス部屋に戻り、脱出用魔法陣で、軍隊ダンジョンを脱出した。

 ダンジョンを出ると、サハーラさんが飛んできた。
「お帰りなさいませミズサワ様、お疲れのところ申し訳ないのですが、ご相談させていただきたい事がありまして」
「ドロップ品ですか?」
「はい、それともう一件」
 なんやろ?
「先に宿に子供達だけでも連れていってはダメですか? すぐにギルドに伺いますから」
「それでも構いません」
 ドロップ品の為に晃太だけ、先にギルドに。チュアンさんとミゲル君が付き添ってくれる。
 予約していた宿にチェックイン。少し大きめの一軒家。特に居間は広々としていて、ビアンカとルージュがゆっくり寛げる。
 ちょっと早いけど、ルームを開けて、サブ・ドアを開ける。
「くうん、くうん、くうーん」
 鼻先でドアをこじ開けるようにして、花がわがままボディをくねらせて入ってくる。あはははん、かわいか。ぽちゃぽちゃ。
「お帰り、大丈夫やったね」
 母も入ってくる。その姿を見て、真っ先に元気が母にすり寄っていく。情けない顔で尻尾がしゅんとしている。
「どうしたね元気?」
 プルプルと母にすり寄る元気、よろける母。やめて、大型犬なんやから。
「ダンジョンでちょっとね。ビアンカの目を盗んで、ワイバーンとタイマンしとったんよ」
「まっ、元気、そんな危ないことしたんねっ」
「きゅうーん」
 母までに叱られて、きゅうーん、きゅうーんを連発。
「もう、けががなかね?」
 母が心配そうに確認する為に触ると、元気は途端に元気に。更に母にすり寄る。他の仔達も群がる。母、もふもふの海に沈没。
「お母さん、私ギルドに呼ばれとるけん、よか?」
「よかよ~」
 ビアンカに残ってもらい、ルージュとホークさんに付き添われてギルドに向かう。
 ギルドに到着すると、直ぐに応接室に。
 既にそこには、サハーラさんと、冒険者ギルドマスターのグアルダさん。本当に何事?
「テイマー殿、どうぞお座りください」
 グアルダさんが、着席を促してくれる。
 私はソファーに、ホークさんはその後ろに。
 ルージュはゴロリ。
『ユイ、敵意なし。少し焦っているわ』
 ありがとう。
「あのなんでしょう?」
 聞くと、グアルダさんが切り出す。
「我々冒険者ギルドからの討伐依頼を受けて頂きたいのです」
「討伐?」
 嫌な予感ッ。
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