もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
324 / 852
連載

スカイランへ①

しおりを挟む
 セザール様とフェリアレーナ王女様の結婚式は、その日、マーファ中がお祝いムードだった。
 ルームの中からこっそり覗いていた晃太は、ぼわーっと、綺麗な人やなー、と呟いていた。両親も似たような感じだ。パーティーハウスに戻り、いつもの格好に着替えてお祭り騒ぎの街中に繰り出したかったが、あまりの人の多さに断念した。絶対に元気が飛び出したりしたら、大変だもんね。
 次の日、まだ熱の冷めないマーファの街中に出る。ギルドに行くだけだけどね。仔達は寝てるのでパーティーハウスに残してきた。チュアンさんとエマちゃんとテオ君が残ってくれた。
 直ぐにリティアさんが出てきてくれた。
「ミズサワ様、どうされました?」
「今後の事で」
 そう、マデリーンさんとエマちゃんの依頼していた装備品が出来上がり次第、スカイランへ出発予定だ。その前に、途中で通過予定のアルブレンやノータに持っていく乳製品等を冷蔵庫ダンジョンで色々手に入れようと思って。
「なので、また冷蔵庫ダンジョンに行きますが、たくさんはこちらに卸せないかもしれません。依頼がある分しかできないかと」
「はい、承知しました。それだけでも十分です。向こうに行かれるのでしたら、また、搬送のお願いがございます」
「晃太よか?」
「ん、よかよ」
 よし。
 挨拶を済ませてギルドを出る。帰りに屋台に寄り、色々買い込む。ハルスフォン伯爵様にもらった例の無花果ジャムは既にない。本日の朝食でなくなった。母が気に入っていたのでゲストハウスでお世話になったメイドさんに聞いた、ちょっと高級店が並ぶエリアの中にある伯爵経営のお店に行ってみた。屋台街ばかり行くので、中々こちらに来ることはないが、ビアンカとルージュがいるけど、皆さん慣れたものだ。特に騒がれない。
「ユイさん、俺達は外で待ってますので」
「すみません、直ぐに済ませます」
 ホークさん達は店内に入らず、ビアンカとルージュと共に待ってくれる。
 店内にはたくさんのジャムやドライフルーツが並ぶ。ドライフルーツは量り売りみたいだ。店内に入り、あの無花果ジャムを探そうとすると、品のいい制服を着た女性が直ぐに来た。
「いらっしゃいませ。テイマー様、ご所望は?」
 ビアンカとルージュが入り口から覗いているからね。もう、出入りする人の邪魔やろうもん。直ぐに買って帰ろう。
「無花果のジャムを」
「こちらでございます」
 案内してもらい、ずらりと並んだジャム。オススメ商品みたいだ。直ぐになくなるからね。
「ありがとうございます。あの、隣のジャムは?」
 他にもある。女性店員さんが説明してくれる。
「こちらはリンゴで甘酸っぱいジャムです。こちらは洋梨でございます、上品な甘さですね。こちらはブルーベリー、アプリコット、オレンジでございます。どれもパンにも菓子にも合います」
「ふむふむ」
 ドライフルーツの説明を聞く、添加物なんて入ってないから、栄養も良かろう。
 味見までさせてくれた。ブルーベリーを噛むと甘味がじわっと広がる。
 ジャムは小さめビスケットに乗せて味見。うん、ヨーグルトに乗せてもいいかも。
 よし、買おう。
「無花果を20、リンゴと洋梨と、ブルーベリーとオレンジとアプリコットを10ずつください。あとドライフルーツを……………」
 大量に買ってしまった。私の冒険者ギルドカードでお支払をする。
 女性店員さんが丁寧に見送ってくれた。
 
 更に数日、冷蔵庫ダンジョンに行くために準備をする。
 その間にパーティーハウスに来客があったが、御用聞きの冒険者さんや、ホークさんが対応して帰って頂いた。目的は私を通してビアンカやルージュ達がほしいだけ。サエキ様の名前を出すと、引いてくれた。
 そして、冷蔵庫ダンジョンに向かう前日に、そのサエキ様が挨拶に来た。ビアンカとルージュが察知してたので、お茶の準備はオッケー。
 肩のフクロウが逃げていき、サエキ様が苦笑い。
「どうぞ、サエキ様」
「ありがとうございます」
 サエキ様をご案内。元気がぷりぷりご挨拶に向かう。お尻がかわいか。コハクは足元にすり寄っている。
「はは、可愛いですね」
 鼻が伸びる。
 サエキ様にさくら庵のリンゴタルトと日本産の紅茶を出す。
「ありがとうございます。今日は挨拶に来ただけですので。明日には私は王の護衛として首都に戻ります」
「はい」
 ミッシェル王太后様以外の王族の皆様は明日首都に帰る。サエキ様はその護衛だ。ミッシェル王太后様はご高齢のために、春までこちらで過ごすと。
「私はその護衛が済んだら、しばらくユリアレーナを出ますが、私が貴女の後見人には代わりありません。私の名前を使って頂いてかまいません。もし、それでも向こうが引かない場合は、私のひ孫を頼ってください」
「オスヴァルトさんですか?」
「いえ、オスヴァルトの兄、アルベルト・ウルガーです。アルベルトは宰相の第4補佐官をしています。アルベルトに連絡が付けば、王家も動いてくれるはず」
 どんだけ凄かひ孫さんやねん。宰相の補佐官って何? オスヴァルトさんは騎士団の准将で、エドワルドさんはユリアレーナ最強のSランク冒険者。どんだけやねん。人差し指をピコピコせんといかんやん。
「あまり、頼る事態にならないことを祈ります」
 そんなめんどくさい事態になりたくなか。顔に出たのか、サエキ様が微笑む。
「サエキ様はどちらに?」
「墓参りですよ。母の知り合いのね。小さい頃は、それは可愛がってもらいましたから」
 て、ことは佐伯ゆりさんと一緒にこちらに召喚された人達ね。
 詳しく聞きたいが、薮蛇になりたくないし。
「お気をつけてください」
「ありがとうございます。2年以内には一度戻って来る予定ですので」
「はい」
「それから、しばらくこちらは社交場になります。つまり貴族や豪商達が滞在します。また、貴女目当てに声をかけてくるはず。街中でも、偶然を装って接触してくるはず。特に手紙のような物は受け取らないように」
「何故です」
「十中八九、パーティーや茶会の招待状です。断るのは簡単です。受け取る前に『期間の迫った依頼がある』とか『その日は別の場所に向かう』とかいえば、貴女は冒険者ですから無理強いはできない。面倒なのは、受け取ってからなのです。断りの旨を書いた書簡を、相手に使者を立てて渡さなくてはならないからです」
 うわ、面倒くさい。
「そうしても、向こうが受け取らなかったら?」
「それは向こうの落ち度です。わざわざ使者を立てて書簡を送ったのを断るのは非礼ですからね。基本的にそういった案内は、私を経由しますから、今まで通り受け取らない方針です。ただ、貴女に有益になりそうな物だけは丁寧にお断りの連絡をしておきます」
 そう、グーデオークションでサエキ様と会った時に、そんな話になり、サエキ様経由は全てお断りしてもらうようにお願いしていた。まあ、サエキ様経由するのが、本来の招待状の渡し方だそうだ。私はランクは高いとは言え、一般人。お茶会やパーティーなんか開くのは、地位のある人達。そんな人達が、一般人の私にそういった事に招待するには、地位のある後見人を通すのがマナーなんだって。いきなり前触れなく私に招待状を渡すのは、地位のある人にしてみたら、失礼の極み。地位や権力を振りかざしてます、みたいな感じになると。因みに、両親はそういった事には呼ばれない、それは両親を盾に私に何か要求すると、あからさまに分かるからだ。
「国を離れている間は、アルベルトが代行をします。血筋の贔屓目がありますが、アルベルトは優秀です。問題はないでしょう」
「ありがとうございます、お手数をおかけします」
 サエキ様はそれからも幾つか注意事項を伝える。
「くれぐれも決して1人で出歩かない事、いいですね」
「はい」
「それから、貴女がダメなら、次に狙われるのはコウタ殿です」
「はあ」
 晃太は気のない返事。
「貴方は弟という立場にありますが、そのアイテムボックスの容量は規格外。商人なら、喉から手が出る程に欲しています。爵位のない商人なら気軽に貴方に接する可能性があります。貴方も1人では出歩かないように」
「はい」
「出来れば、貴女方2人の後見人になれればいいのですが、立場上複数人を短期間で受けることができません。折を見て、申請しましょう」
「あの、サエキ様、私は姉のようにランクが高くないのですが」
「その点は心配ありませんよ。貴方にはアイテムボックス以外にも、素晴らしい作図能力があるでしょう? 確かに今すぐにランクが上がることはないでしょうが、地道に活動していけば、自ずと上がりますよ。その頃には、申請できるはず」
 おお、さすが時空神様から頂いたマッピング能力。
 晃太が神妙に頷く。
「そうだ、これから何か行動計画を立てていますか?」
「はい。装備品が揃ったらスカイランの軍隊ダンジョンに行きます。来年以降になりますが、カルーラにも行こうかって話しています。基本的にはユリアレーナから出る予定は今のところないです」
『シーラって国に行きたいのです』
『そうね、『試練のダンジョン』に行きたいわ』
「しーっ」
 何を恐ろしい事を。爬虫類の親玉のドラゴン出るダンジョンなんていやや。あ、でもマデリーンさんとミゲル君の生まれ故郷や、晃太のスキルアップが上手く行かなかったら、考えようかな。
 サエキ様はクスクス笑う。
「きっと、ザイームが自ら出迎えるでしょう。向こうもドラゴンを一体でも確保してくれたら、多くの民が救われますからね」
 うっ、そう言われると、行かんといかん。今までドラゴンと遭遇したのは幸運だっただけ。軍隊ダンジョンの装甲竜(アーマードラゴン)もあれ以来出ていないそうだし。まあ、レベル500超えがボス部屋の扉開けたせいかなって思っている。
 とりあえず、晃太のスキルアップ次第や。春先までにランクアップ出来なければ、冬前に魔境にはいけない。そうなれば、シーラに行くかな?
「さて、私はこれで」
「あ、はい」
 サエキ様は結局リンゴタルトはお持ち帰りした。あの逃げたフクロウと食べますと。うーん、一度でいいから触ってみたい。きっとふかふかやろうから。
 私達は、護衛も付けずに来たサエキ様をお見送りした。あ、フクロウが戻って来た。きちんと肩に着地。
 見えなくなるまでお見送りした。
 さあ、色々忙しくなる。
 明日から、冷蔵庫ダンジョンだ。
しおりを挟む
感想 678

あなたにおすすめの小説

『完結済』ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。