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結婚式まで⑨

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「よかやん、テオ君。良く似合うやん」
 フロイスさんの工房。無事にテオ君の鎧が出来た。うん、いい感じやん。正に冒険者って感じや。右肩に桜の刻印あり。
「へへ……」
 テオ君が照れてる。
 フロイスさんが細かくサイズと稼働のチェック。ミゲル君も出来上がった剣を見ている。シーサーペントの鱗は黒っぽいから、刀身も黒っぽい。滑らかな輝きを持つ刀身。切れ味鋭そう。鞘にも小さく桜の彫刻入り。
「いいようですな。シーサーペントの鱗を使用しておりますから、強度と魔法防御は十分。鞘でも十分武器として通ります。後は付与はどうされますか?」
「そうですね。衝撃吸収と、重量軽減を出来るだけ。あ、追加の魔法補助も、スライ厶のコア要ります?」
「手に入りますか?」
「もちろん」
 ちょっといったらいくつでも手に入れられるよ。
「でしたら鎧の方に衝撃吸収を主にして、重量軽減、そうですなクラウンスライ厶のコアなら3割は行けましょう。ああ、風魔法補助を付けられます。剣には土と水属性の補助を追加、衝撃吸収、重量軽減を2割」
「フロイスさんにお任せします」
 ついでにチュアンさんのベストや籠手にも衝撃吸収と無と土魔法補助もお願いした。但し、王冠スライムコアの使用前提だ。
 それからの数日間、なんだかんだと忙しい日々を送る。
 スライム部屋に行ったり、査定を受け取ったり、出来上がった孤児院を見せてもらったり。査定はやっぱり億を越えたし、新しい孤児院は木の温もりを感じるような内装だった。新しい家具も順次運び込まれる予定だと。
 パーカーさんのお店にいって、ダイアナちゃんと遊んだりもした。お姉ちゃん言われたから嬉しかった。きゅう、と抱きついてきたので、きゅう、と抱き締めた。思い出す、従姉妹のかわいい娘。
 マーファの東にある海に面した町アノに、両親も連れて観光と魚介類の買い出しに行ったり。ブルーオイスターや鯵等大量購入した。鯵フライ、鯵フライ、鯵フライ。タルタルソースの鯵フライ。
『『鯵フライ、鯵フライ、鯵フライ、タルタルソースの鯵フライ』』
 口に出てたのか、ビアンカとルージュが大合唱。
「わんわん」
「がうがう」
『あじふらぁい~』
『たるゅたるゅ~』
『そーすのあじふらい~』
 仔達も合唱。
「やめて、優衣、変な歌、歌わんと」
 母が注意してきたが、しばらく大合唱が続いた。その日の夜、鯵フライになりました。
 そんな感じに数日後、マーファは再び歓迎ムードになる。王族の皆さんがマーファに入った。私達は多分大騒ぎになるだろうからと、パーティーハウスで大人しく過ごす。結婚式は明明後日だ。
 マーファの教会で式を挙げて、ハルスフォン伯爵家までパレードだ。道端でお見送りだね。何着ようかな? 顔パックしよ。あ、コラーゲン鍋にしてもらわんと。
「見送るだけやん」
 夢も希望もない晃太のセリフ。
 身嗜みやねん。こんな機会がないと、こんな格好できんのやけん。私はパーカーさんに作ってもらったワンピースを出して、ルンルンと悩む。2着しかないけどね。あ、今度新しいワンピース、作ってもらっちゃおうかなあ。ピアスは真珠かな。ルンルン。
 その日の夜、来客が。
 ビアンカとルージュが察知していたから、慌てて着替える。パジャマだったから。鷹の目の皆さんもバタバタ装備している。
 来客はサエキ様だった。あ、後ろの馬車に、護衛の騎士の中にオスヴァルトさんがいる。白いマントの騎士の中でも、赤いマントのオスヴァルトさんだけど、本日一際凄みがあるようだ。
「突然、夜分にすみません。今日のこの時間しか取れずに。すぐにお暇します」
 申し訳なさそうなサエキ様。
「いえ、どうされましたか? どうぞ中に」
「ありがとうございます。実は同行者がおりますが。無理でしたら、そのまま帰ります」
「サエキ様が大丈夫と言う方なら、問題はありません」
 なんとなく、お断りしてはいけない気がした。勘だけど。
「感謝します」
 サエキ様が合図を送る。さ、と白いマントの騎士が馬車のドアを開ける。
 中から4人降りてきた。あ、エレオノーラ様や。
 ………………………………………
 え、エレオノーラ様? あら、あの茶色の髪の女性、綺麗や、あ、フェ、フェリアレーナ様に似てる。え、まさかカトリーナ様やないよね。だって、あの茶色の髪の人、正にフェリアレーナ様が美しいまま歳を取った感じだけど。え、カトリーナ様? それから金髪の素敵なおじさまが、高齢女性の手を引いて降りてきた。
「サ、サエキ様、まさかあの方達は?」
「はい、ユリアレーナの王族の皆様ですよ。貴女にどうしてもお礼が言いたいと」
 わぁぁぁぁーっ。
 ど、どうしよう。後ろの晃太とホークさんも戸惑ってる。
 どうぞした以上、案内しないわけにはいかない。わたわたしながら、どうぞどうぞ。両親も目が点だ。
「わんわんっ」
「は、いかん」
 花が吠える。いかん、いかん。
 仔達は従魔の部屋で寝てるし、花はチュアンさんに託し、エマちゃんとテオ君、ミゲル君にルームに行ってもらう。
 プチパニックの私達、わたわたしながら居間にご案内。お茶は取り敢えずさくら庵の日本産の紅茶をタップしておいたけど。飲まないよね。王族の方ですもん。あ、この格好失礼じゃないかな? あ、こんな時の為のワンピースなのにっ。わぁぁぁ、すっぴんやねんっ。基本的に日焼け止めで、ほぼ化粧はしないけど、寝る前だから余計すっぴん。母なんて、眉がないっ。
『何を焦っているのです?』
『大丈夫よユイ、敵意はないわよ』
「いやそうやなくてね」
 わたわた。わたわた。
 王族の皆様を、いいのかな? 居間にご案内。サエキ様だけ付いてきた。ホークさんとマデリーンさんは居間の外の廊下で待機している。
 ソファーを勧め、私はどうしたものかと迷う。
「すぐにお暇します。ミズサワ殿、ユリアレーナ国王、セレドニア陛下です」
 サエキ様が素敵な金髪のおじさまをご紹介してくれた。やっぱり国王様やったっ。あ、膝突かんといかんやつやっ。私は両膝を突く。両親と晃太も慌てて膝を突く。
「ミズサワ殿、まずは急にお訪ねした失礼をお詫びします」
「イ、イエ」
 言葉がおかしくなる。声も素敵。
「ミズサワ様、どうかお立ちください」
 エレオノーラ様が、私の手を取り、立ち上がらせてくれる。相変わらずお美しい、女優のYさんや。そこに私の前にセレドニア陛下が。あわわわわ、素敵なおじさまー。
「我が娘フェリアレーナを守って頂いたこと、感謝の言葉がありません」
「イエ、ソンナ」
 素敵なおじさまー。
 一般人が、こんな間近に国王様の近くにいて良かったっけ? いかん、正常な判断ができん、正に夢見心地や。
 フェリアレーナ様に似た女性が私の前に。そっと私の手を握る。あわわわん、綺麗な人やー。晃太が後ろで綺麗な人やー、と呟く。いや、エレオノーラ様もこちらの方も綺麗で、目がちかちかしてきた。あ、フェリアレーナ様と同じオレンジ色の瞳は、優しい色だ。
「ミズサワ殿、フェリアレーナ王女殿下の母君、カトリーナ様です」
 サエキ様の説明。あ、やっぱりー。あわわん、綺麗な人ー。
「ミズサワ様、フェリアレーナを守っていただきありがとうございます。これでやっと娘を送り出せます。ありがとうございます」
 そう言ったカトリーナ様のオレンジ色の瞳に、涙が浮かぶ。
 …………………………………………
 王族だって、構えたけど。普通にお母さんや。娘の無事な結婚を喜んで感謝しているお母さんや。
「私達だけの力ではありません。色んな人が尽力したからです。私はちょっとだけ最後に加わっただけです」
「それでも感謝しています」
 そこに高齢女性が少し足を引きずりながら、私の前に。わあ、上品な女性だあ。
「ミッシェル王太后様です」
 サエキ様のご紹介。
 お辞儀するミッシェル王太后様。あわわん。私もお辞儀。
「孫娘フェリアレーナが無事に嫁ぐ事ができました。そして、ガーガリア様が無事にマクレデーナ様の元に帰ることができました。貴女がすべての起点なのですよ」
 そ、そうなの? 思い当たるのは転移門しかないけど。まあ、ガーガリア元妃が無事にお母さんの元に帰れたんだね。良かった。
「私も生きている間に初孫の結婚式に出る事ができました」
「良かったです」
 上品に微笑むミッシェル王太后様。優しいおばあちゃんや。孫娘の結婚式を喜んでいるおばあちゃんや。
 それから少しだけお話、やっぱり結婚式は無理でも披露宴にと言われた。
「貴女から寄贈して頂いた生地で素晴らしい花嫁衣装ができました。是非にそれを纏ったフェリアレーナを見て欲しいのです」
 と、カトリーナ様。
 そりゃ、見たいけど。色んな偉い人が来るんでしょ? 嫌な予感しかせん。
「あまりの美しさに、私昇天しそうですから」
 ふふふ、と上品に笑うカトリーナ様。
 サエキ様がちゃんとガードしてくれると言うが、着ていく服がないから、遠くからお見送りします、とお伝えする。
 ならば、前日にハルスフォン伯爵家にお泊まりを、と。フェリアレーナ様はハルスフォン伯爵家から準備して出るから。セレドニア陛下達はちゃんと王族の別邸があってそちらに滞在している。それも申し訳ないからとお断りしたかったけど、色んな迫力に負けて頷いてしまった。私だけ、お泊まり。ハルスフォン伯爵家の敷地内に別邸があるので、そちらにお泊まりだ。ビアンカとルージュだけは付いてきてオッケーとなる。いいのかな? いいのかな? でも、見たい、フェリアレーナ王女様の花嫁姿。
 お泊まりセットを準備せんと。ビアンカとルージュのご飯の準備せんと。あ、ルームあるから大丈夫かね。
「ミズサワ殿」
「あ、はい」
 お泊まりセットを考えていると、セレドニア陛下が素敵な声で話しかけてきた。
「貴女はフェリアレーナの恩人です。そしてこのユリアレーナとアルティーナの均衡を守ってくれた恩人。父親として、国王として、感謝します。何かあれば、私達ユリアレーナ王家は貴女の為に出来るだけの力を尽くしましょう」
「ありがとうございます陛下」
 ありがたやー。ありがたやー。
 最後にエレオノーラ様が申し訳なさそうな表情。
「姪が貴女にご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」
「姪? ああ、あの。気にしていません。ギルドや色んな人が味方になってくれていますから。私は気にしていませんので」
 実質被害受けた気がしてないし。
 エレオノーラ様は少し安心したような顔だ。
 それからセレドニア陛下ご一行をお見送り。そっとカトリーナ様が私の手を握る。
「本当にありがとうございます」
「私は当然の事をしただけです」
 そう、それだけ。最後にちょっと加勢しただけで、実際私はなんの役にも立ってない。
 最後に出るサエキ様が、私に振り返る。
「前日に迎えにオスヴァルトを寄越しますので」
「はい、サエキ様」
 私達はパーティーハウスから出て、馬車をお見送り。オスヴァルトさんが軽く会釈して、颯爽と馬車に並走する為に馬に乗って去って行った。
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