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隠れて護衛⑨

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 次の日、早くに目が覚めた。まだ、5時やん。
 昨日はホークさんに、ビアンカとルージュに心配させてしまったなあ。
 顔でも洗って、シャキッとしよう。
 寝室を出て、開けっ放しのルームのドアノブに触れる。こうすることで、自然に閉まるドアがリセットされる。そのうち晃太や鷹の目の皆さんが起きてくるだろう。従魔の部屋と厩舎の清掃をタップ。
 洗面を済ませて、顔を見ると、浮腫んでいた。仕方なか、その内引くかな? 時間あるから、ホットタオルでも当てようかな? あ、お湯沸かそう。
 つらつら考えながら、ヤカンを火にかける。
 ………………………………………
 あ、昨日の事が、頭に浮かぶ。いかん、いかん、いかん、あれは事故、ホークさんが言ったように、事故に遭遇した。自分に言い聞かせる。
 あれは、事故。
 ふわ、と胸が温かくなる。晃太が起きて支援魔法をかけてくれたのかな? 寝坊助なのに、もう、起きたのかな?
「晃太、ありがとう」
 顔を上げると、そこには晃太やない、お久し振りの超絶イッケメンの時空神様が。しかも、近距離。近距離。ちょっと近距離。
 朝っぱらから、きつか、このイッケメン。目が、目が、まぶしか。しかも、慈しむように見てるから、余計にイッケメン度がアップしてる。平々凡々の私には、きつか、この慈しむような超絶イッケメン。さっきの事故云々が、彼方に行こうともがいている。
「ひどい顔だな」
 そう言って、時空神様は私の顔に触れる。
 ………………………………………………………………
 ………………………………………………………………
 ………………………………………………………………イッケメンが私の顔、触ってる。
 あ、全身が沸騰しそうやっ。超絶イッケメンが、私の顔を撫でてますよーッ。近いですよーッ。お巡りさーんッ、私はここですーッ、私が捕まりますよーッ、息が上がった変質者がここにいますよーッ。
 ぜはーっ、ぜはーっ。
「どうした? 顔は治ったぞ」
「いやあの」
 時空神様の顔がいいせいです。なんて、言えない。
「昨日、きつかったな」
「う」
 時空神様の言葉に、いろいろ思いだしそうになるが、何故か映画のワンシーンの様にしか思えないのは、時空神様が何かしてくれたのかな? そう言えば昨日『神への祈り』が発動しなかったけど。
「昨日、お前の声に応えたかったが、すまんな。他にもいろいろ話してやりたいが、今は必要はないだろう」
 時空神様の手が、再び私の顔を包む。私は呼吸が停止寸前。なんで、こんなにこの人イッケメンなやねん。
「お前を支えてくれるものがいるのなら、俺の出番もないだろう。お前は1人ではない、少し、頼れ、その者達に」
「時空神様は?」
 呼吸が僅かに出来て、とんでもなく失礼な言葉が出た気がする。
「俺達神は、下界にあまり介入は許されない。スキルを与えた者に、ほんの僅かだけだ。だが、お前の事は、見守っている」
 すごく優しい声。
「見守っている」
 時空神様の声が温かく心地よく染み込んでくる。
 そうだよね。この『ルーム』というスキルを頂いただけでも、私は、恵まれている。ダイチ・サエキ様のお母さん、佐伯ゆりさんを思う。彼女は全くの1人ではなかったが、家族や友人と引き離されて、どんな思いで過ごしたのだろう。あのサエキ様が落とした手紙に書かれた『家族へ』。それを思い出すと切ない。私は、恵まれている。
 家族がいて、ビアンカやルージュがいて、かわいか5匹の仔達がいて、マーファには私によくしてくれる人達がいる。私に、許される限り付いてきてくれると言ってくれた、鷹の目の皆さんがいる。
「ありがとうございます時空神様」
「それくらいしか、俺達は出来ないからな」
「その言葉を聞けるだけでも、私は、救われます」
 実際に神様が、見守ってくれると、言ってくれただけでも、心強い。
「なら、良かった」
 時空神様は私の顔から手を離す。私は悟られまいと、内心息を整える。
 あ、昨日の亡くなった人達は神様的にどうするんだろう? 私には土に還るという考えがあるんだけど。
「昨日の者達の魂は、全て始祖神様が保護している」
 私の考えをお見通しな時空神様。まさか、私の考えが聞こえてないよね。
「お前は顔に出るからな」
「うっ」
「この世界で生まれた命は全て、始祖神様の愛で包まれている。だから、心配するな。お前もそうだ」
「私、こちらの生まれではないのに」
「そうだな。お前は、お前達は、ちょっと特別だ」
 嬉しか、ものすごく嬉しか。
「見守っている。俺が助けてやれることは少ないだろうが、お前をずっと、見守っている」
 ……………………嬉しか、恥ずかしか。超絶イッケメンに言われたら、恥ずかしか。ここはきっと勿体なきお言葉です、か、平伏さないとダメか? あら、どうしたらよか? 超絶イッケメン時空神様の慈愛に満ちた顔に、思考が破壊されそうやけど。
 あ、これ、パニックや。
「時間だ」
「あ、あ、はい、なんのお土産もなくて…………」
 パニックの私はわたわたしながら答える。
「いつも気にかけてくれて、ありがとう。その気持ちだけで十分だ」
「あ、あ、はい」
 いかん、本日の時空神様のイッケメン度、限界を突破してない? 犯罪レベルやない? ちょっと私の脳ミソ、破壊されそうなんやけどっ。イッケメン過ぎてっ。なんか、なんか、言わんと。は、そうやっ。
「良かったら、魔法の神様とも来てください。声が聞こえなくて、寂しくて」
 次の瞬間、私は激しく後悔。
 時空神様が、これまた綺麗な笑みを浮かべた。ギャーッ、イッケメン過ぎやーッ。くらくらしそうやーっ、いや、くらくらしてますがなーっ。ああああぁぁぁぁ。
 ぷつん。
 私の思考は考えを停止。
 この人は何しても、イッケメン。うん、イッケメン。イッケメーン。イッケメンメーン。
「ありがとう、次に許しがあれば、連れてこよう」
「ハイ、オマチシテマス」
 すう、と姿が消える。いつものてってれってー、が耳を通り抜けていった。
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