もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
274 / 853
連載

試運転⑤

しおりを挟む
「皆さん、お騒がせしました」
 晃太がデザートのミルクアイスをアイテムボックスからだし、手分けして配膳。
「いえいえ、こちらがご馳走になったんですから」
「ああそうだな。あんなに旨いんだ、我慢出来ないのは仕方ないさ」
 ロッシュさんとファングさんは笑って許してくれる。
 Aの特産ミルクアイスが行き渡り、それぞれぱくり。
「うわあ、この氷菓子、うまあっ」
「ミルクの味が濃いっす」
「パクパクっ、んっ」
 未成年組が大好評だ。アルスさんなんてあっという間に食べて、私ににこおっとアイスの器を差し出す。
「アルス、遠慮って言葉を覚えような」
 ガリストさんが手付かずの自分のアイスを半分渡す。
「ん?」
 アルスさんはキラキラの青い目で、こてん。くっ、かわいか。これが意図してやってないから、余計にかわいか。
「ユイさん、本当にあの依頼、もう出さないんすか? あ、出さないんですか?」
 ハジェル君が最後の一口を食べて聞いてくる。
「依頼、あ、晃太のスキルアップね。そうやね、どうしようかね」
 うーん。
「しばらくは出さないかな? 私達も上層階に行かないといけないしね」
「そおっすか」
 ガックリと肩を落とすハジェル君。マアデン君まで。
「こら、ハジェル」
「だってリーダー」
「どうしたん?」
「だって、あの依頼の時、ケイコお母さんのご飯食べれるから、楽しみだったんす。あ、です」
 母が嬉しそうに笑っている。
「なら、もしスキルアップが上手く行かなくなったら、あの依頼出して、手伝ってくれる?」
「「はいっ」」
 あははん、シンクロしてる。
 どちらにしても、しばらくは依頼をこなして、それから晃太の支援魔法のスキルアップや。まだDになるのには時間がかかるだろうし、更にCに上げるなら、あの依頼を出さざるを得ない状況になるはず。山風の皆さん、いい人達だし、仔達も懐いているからね。頼むなら、山風さんかな?
「ユイちゃん、俺も手伝う」
 やめて、かわいか未成年。そんな純粋無垢に言われたら、三十路女の息が上がるがな。はーっ、はーっ。
「あんたどうしたん? 動悸ね?」
 母が私のおかしな息づかいに、変な目をしている。隣の晃太が、聞かんどき、と言ってる。
「ちゃん付けされて、興奮しとるだけや」
「あんた、本当に張り倒すよ」
 はーっ。

 それから和やかにお話しして皆さんご帰宅。
「ケイコさん。急に押し掛けてしまったのに、たくさんご馳走になりました」
「ご馳走さまです」
「どれも美味しかったです」
「ケイコお母さん、ご馳走様でした」
「ケイコお母さん、美味しかったっすっ。あ、です」
 山風の皆さんがペコリ。
「テイマーさんのお母さん、なんの手土産もないのに、ご馳走になりました」
「ご馳走さまです。ほら、アルス」
「また食べたい」
「アルスちゃん。ご馳走になったんだから、そのご挨拶よ」
「ん。ごちそうさま」
「奥さん、ご馳走になりました」
 金の虎の皆さんもご挨拶したが、いざ帰る時に、アルスさんがごねる。
「いや、帰らない。ユイちゃんとこがいい」
 ぷい、みたいな。
 かわいかね。
「ダメだアルス、帰るぞ」
「そうよ、迷惑になるよ」
「今日は帰りましょうね」
「アルス、帰らないといかんぞ」
 一斉に言われて、アルスさんがぶー。か、かわいか。
「ユイちゃんとこのご飯、美味しい」
 あ、それね。ふふん、大分なれたよ。かわいか未成年の、ちゃん。
 母が嬉しそうだ。
「また、遊びにおいで。美味しいの作っとくけんね」
 母がそう言うと、アルスさんはにこおっ、と笑う。か、かわいかあ。マアデン君とハジェル君も後ろで自己主張して、母が笑っている。
「うん、バイバイ」
 アルスさんは大人しくリィマさんの元に。
 金の虎の皆さんがペコペコしながら帰って行く。
 山風の皆さんもペコリして帰って行った。

「シュタインさん、やばいっすよっ」
「何がだよ?」
「ユイさん、あのホークって人に取られちゃいますよっ」
「ぶふっ、な、何を言ってんだよっ」
 ハジェルの言葉にシュタインが噴き出す。
「せっかく髪切ってユイさんが格好いいって言ってくれても、シュタインさん、アピール力が弱いっす」
「黙れ、つい最近まで未成年が」
「だって姉ちゃんが言っていたっす。アピールされなきゃ、言葉にされなきゃ、分からないって」
「ぐっ」
 妙な説得力があるハジェルの言葉。
「そう言えば、ハジェルの姉さん、いつ祝福を受けるんだ?」
 祝福を受ける、こちらの結婚式の意味がある。教会で親族、親しい人達が立会人となり祝福を受ける。ほとんどがそれで終了。金銭的に余裕があるか、社会的地位があるものはレストラン等を貸し切り食事をする。こちらで言う披露宴だ。
「2ヶ月後っす。あの、それでリーダー」
「分かっているさ、その頃にはマーファにいるようにするから心配するな」
「ありがとうございますっ」
 ハジェルにとっては兄が父親で、姉が母親代わりだ。その姉が結婚するまでの行程で、相手の男性に、ずばあ、と言いはなっていた。
「まあ、ユイさん、そっち系には鈍そうだしなあ。ハジェルの言うことも一理あるんじゃないか?」
 ラーヴが他人事だ。
「な、なんでそう言えるんだ? あ、相手は、その戦闘奴隷だし」
「お前なあ」
 ため息をつくラーヴ。
「ユイさんとあの戦闘奴隷達の関係みたら、普通じゃないだろ? 奴隷相手でも『さん』や『ちゃん』だぞ。おそらく護衛していた時の延長みたいじゃないか。ユイさん、奴隷と言う扱いしてないし、多分自覚もなさそうだし」
 ふう、と息をつくラーヴ。
「どんな理由であの魔法馬に乗るのか知らんが、数日内にはホークって奴と一緒に乗るだろ。そうなれば、ユイさんでも嫌でも意識するんじゃないか?」
「だからどうして?」
「あのさ、あんな馬にユイさんみたいな素人乗せるなら、後ろに乗せるわけないだろ? 前に乗せるだろ。そうなりゃ、すげえ密着だぞ」
 想像する、ユイの後ろにホークが乗り、たくましい腕で包み込む。
「あー…………」
 真っ赤になってるユイが簡単に想像できる。
「でも、あのホークって人が、ユイさんに気があるかどうか分からないんじゃないですか?」
 マアデンが援護する。
「まあ、それならいいけどさ。確かに見た感じ、忠臣って感じだったけどさ。タオル渡して風邪引きますよって、どこかの夫婦みたいに見えたぞ。意識してなかったとしてもだ、俺にはそう見えた。しかもあの魔法馬を乗りこなして、男の俺でも格好よく見えたし」
「確かに、まさかあの魔法馬を乗りこなせるとは思えなかった。あれはかなりの騎乗能力だな」
 ラーヴの言葉にロッシュが同意。
「ラーヴさんもリーダーもどっちの味方っすかっ。シュタインさんの甲斐性ピンチっす」
 ガツンッ。
 シュタインのげんこつが落ちる。
「お前、一言多いんだよ」
 マアデンが呆れる。
「どちらにしても、俺達はどっちの味方じゃない。男女の仲なんて、関わるわけないだろ?」
「そうだな。シュタイン、まあ、頑張れや」
 ロッシュ、ラーヴの妻帯者2名がなんともあっさりと応援。
 かくん、と肩を落とすシュタイン。
「でも、もしユイさんとシュタインさんが仲良くなったら、コウタさんがうちに同行してくれるかもしれないっす。あのアイテムボックスに支援っす。それにきっとケイコお母さんがご飯持たせてくれるかもしれないっす」
 一瞬止まる、ロッシュとラーヴ。
「それが無理でも、ユイさんなら弁当持たせてくれるかもしれないっす。カレー、食えるかも知れないっす」
「結局、食欲かよ」
 シュタインがハジェルに突っ込み。
「だったら、シュタインさん、ユイさんが他の男と仲良くしてもいいんすか?」
「ぐっ」
 ハジェルの指摘に詰まるシュタイン。
「もうよせハジェル。シュタインを焚き付けるな」
 ロッシュがため息交じりにハジェルに注意。
「シュタイン、ユイさんをどう想うかは、お前の自由だ。ただ、向こうに迷惑だけはかけるなよ。それに、ユイさんの後ろに何が控えているか分かっているんだろ?」
 魔の森の守護者、フォレストガーディアンウルフ。
 通った後は血の道ができる、クリムゾンジャガー。
 そして、ユリアレーナのご意見番、ダイチ・サエキ。
「ハードルが高い事は、分かっているさ」
 息を吐き出すシュタイン。高位貴族でさえ、囲い込む、もしくは手に入れることが困難な女性だ。
 分かっている。誰もが欲するのは、ユイではない、後ろにいる従魔達だ。
 だが、シュタインにとって、従魔は二の次だ。
 ただ、ユイが命の恩人だからじゃない。
 見舞いに来てくれた時に、ユイは帰り際に引っ込みのつかなくなってしまったシュタインの手を、「お大事に」と両手で包み込んだ。ユイにしてみたら、なんてことない行動だったが。ユイを女性として意識していたシュタインが、完全に落ちた。
 もう、ドラゴンを一撃にした従魔達を従えてるとか関係がない。ただ、ずっと手を繋いでいたいし、それ以上の事を考える。
 ユイはわざわざ、身を屈めてシュタインの手を包んだ。その瞬間、見えてしまった。あの日、ゆったりとした襟元のシャツだったためか、はっきりシュタインは見てしまった。
 くっきりと、ユイの胸元を。ちらり、と見えた、それを覆う、白いレースを。並ぶ、黒子まで、はっきりと。
 女の裸を見たことがないわけでない。シュタインも健全な成人男性だし、女性と付き合った事もある。
 だが、日頃ポンチョを纏い、首もとを見せないユイのそれはシュタインに衝撃を与えてしまった。
 ユイとコウタが帰った後、真っ赤になって口を押さえていたシュタインを、病室に訪れたロッシュが発見。
「惚れたか?」
「あの状況で惚れるなって方が無理だろッ」
 それからシュタインはユイを目線で追いかけているが、どうしたらいいものか分からない状態だ。子供じゃあるまいし、と思っていたが、アルストリアの出現でユイの男性経験のなさが露見。そうなると積極的にいってドン引きされたらどうしよう、と情けなく悩んだ。そうこうしているうちに、ユイは戦闘奴隷を購入して帰って来た。
 そして、今日の魔法馬の乗馬だ。
 ラーヴの言うことも、ハジェルの言うことも分かる。そしてマアデンの言うこともだ。まだ、あの戦闘奴隷のリーダーが、ユイに好意を抱いているか分からないし、立場を弁えている可能性が高い。まだ、ユイに仕えて時間は経ってないはずだし。様子を見るべきか?
(いいや、うかうかしていられない)
 シュタインは首を振る。
(言葉にしないと伝わらない)
 よし、とシュタインは腹を括った。

 その後、冒険者特有の不規則な生活の為に、ユイになかなか会えず、シュタインはギリギリしていたと、見習い2人が証言したとかしないとか。
しおりを挟む
感想 681

あなたにおすすめの小説

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました

あさひな
ファンタジー
二児の子供がいるワーキングマザーの私。仕事、家事、育児に忙殺され、すっかりくたびれた中年女になり果てていた私は、ある日事故により異世界転生を果たす。 転生先は、前世とは縁遠い公爵令嬢「イザベル・フォン・アルノー」だったが……まさかの乙女ゲームの悪役令嬢!? しかも乙女ゲームの内容が全く思い出せないなんて、あんまりでしょ!! 破滅フラグ(攻略対象者)から逃げるために修道院に逃げ込んだら、子供達の扱いに慣れているからと孤児達の世話役を任命されました。 そりゃあ、前世は二児の母親だったので、育児は身に染み付いてますが、まさかそれがチートになるなんて! しかも育児知識をフル活用していたら、なんだか王太子に気に入られて婚約者に選ばれてしまいました。 攻略対象者から逃げるはずが、こんな事になるなんて……! 「貴女の心は、美しい」 「ベルは、僕だけの義妹」 「この力を、君に捧げる」 王太子や他の攻略対象者から執着されたり溺愛されながら、私は現世の運命に飲み込まれて行くーー。 ※なろう(現在非公開)とカクヨムで一部掲載中

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。