もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
272 / 850
連載

試運転③

しおりを挟む
 仔達が玉遊びしている様にしか見えない。ほのぼの。
「わんわんっ」
「わんわんっ」
「わんわんっ」
「にゃーっ」
「みゃーっ」
 本人達は至って本気なんだろうが、ほのぼの。
 黒いバスケットボールは不規則に動いて、なかなか的が絞れない様子。元気は尻尾ブンブンしているから、ありゃ、遊んでいると勘違いしてるな。
 ルージュが黒いバスケットボールを追加して出す。
『さあ、皆。周囲にも注意しなさい。敵は正面からだけ来ることはないわ』
 そう言うと、黒いバスケットボールの動きが加速。
「きゃいんっ」
 ルリの足元を掬い上げ、回転、背中を打ち付ける。
『ルリ、敵に腹を見せたら最後よ。注意しなさい。クリス、前ばかり見てはダメよ』
 ルージュの注意と指導が飛ぶ。
「きゃいんっ」
 クリスが正面の黒いバスケットボールに飛びかかった瞬間に、横から攻撃が来て、転がっていく。
『全身に魔力を流しなさい。そうすれば力だけじゃない。スピードも上がるわ。動きも格段に良くなるし、周囲を把握しやすくなるわよ』
 なんか、スパルタ気味なんやけど。
「ルージュ、厳しくないね?」
『これくらいしないと。多方向からの攻撃に耐えられないわ。それに私達は発現系を使うわ。その時周囲を把握していないと、誤射に繋がるし、そうされても避けられないわ。ユイ達もケガじゃ済まないのよ』
「そ、そうな」
 ルージュが正論なんだろう。私は黙る。
 元気とコハクはなんとか黒いバスケットボールを破裂させてる。あの弾力がある黒いバスケットボールを元気は噛んで破裂。コハクはベビージャガーパンチで破裂させてる。まあ、コハクのベビージャガーパンチはGの首をへし折るからねえ。ヒスイは完全に玉遊びだよ。べしべししてるけど、まったく割れない。ヒスイも足元を掬い上げられているが、立ち上がりが早い。猫系だからかな?
『ほら。魔力を全身に隅々まで行き渡らせなさい。これは基本よ。これが出来れば、効率よく少ない魔力で戦闘が進むわよ』
 そうなのかね?
 私は隣のチュアンさんに聞いてみる。
「そうですね。ルージュさんが教えているのは、私達で言う身体強化ですね。私とホークが使っています」
 チュアンさんが説明してくれる。
「簡単に言いますと、自分で自分を支援しているような状態です。これが出来れば身体強化の最中は、常に力やスピードが上がります。ただ、使いこなすには鍛練が必要ですし、保有魔力、そして魔力を巡らせるだけの集中力が必要です。属性魔法がないものは、無属性魔法を覚醒しなくてはなりません」
 なるほど。そういえば、晃太のスキルアップの依頼の時、Dランク以上の人はほぼ無属性魔法があった気がする。
「そうですね。これが出来れば1人前から中堅になります。ある程度の魔物を相手にするなら、この身体強化があるとないとでは、戦闘に差が出ますしね。身体強化出来れば、武器強化にしてもかなりスムーズに発動します」
「なるほど。勉強になります。私も出来たりしますか?」
「理論上出来ますよ。誰にでも魔力がありますから、無属性魔法の覚醒をさせる事ができます。ただ、鍛練が必要です。ひたすら魔力を操り流して覚醒したら、自然と身体強化も出来るようになります」
「ほうほう」
「ただし、ユイさんはまだダメですよ」
「うっ」
 まだ中毒症でした。あと数日でなんとかなりそうなんだけど。
 うむ、とチュアンさんが悩む。
「ユイさん、ミゲル達の魔力訓練をしてもいいですか?」
「はい、いいですよ」
 早速チュアンさん、マデリーンさんの指導でミゲル君達の訓練が始まる。鷹の目の皆さんは毎朝早くに起きて、よく訓練をしている。ストレッチやジョギングが主で、その次に素振りをしている。マデリーンさんは素振りには参加せず、瞑想している。
 魔力訓練に晃太も参加している。
 晃太はやはりGの巣で、ヒスイにたどり着けなかったのを気にしていて、よく訓練に参加している。やはり支援魔法の件もあるが、自身のレベルアップもすれば保有魔力も増える、無属性魔法の覚醒もすれば戦力アップにも繋がると。私はまだ魔力を流すのが怖いし、中毒症だからね、見てるだけ。
 元気達のルージュによる戦闘訓練は続く。元気とコハクはこつを得たのか、次々に黒いバスケットボールを破裂させている。ルリとクリスとヒスイは苦戦している。
『ルリ、クリス、ヒスイ、集中しなさい。耳を済まし、空気の揺れを感じるのよ』
 なかなか難しそうな事を言ってるよ。
 しばらくしてやっと訓練終了。
『ねえね~』
『いちゃい~』
『にゅー、にゅー』
 ヒスイ、ルリ、クリスが情けない声で私に駆け寄ってくる。
「はいはい、お疲れ様。頑張ったね。晃太、牛乳出して」
「ん」
 晃太が皿を出して牛乳を入れると、興奮したままで走り回っていた元気とコハクもやって来た。勢いよく飲んで、三人娘はおねむの態勢になる。コハクも一呼吸して丸くなり、元気は牛乳を晃太に催促。
「いたかっ、いたかっ」
 前肢で晃太の足をバリバリ。元気の足は太い。まあ、母親のビアンカが大きいからね。仕方ないけど、まだ子供だからパワーの加減が利かない。晃太が追加で牛乳を皿に入れる。それでやっとおねむさん。かわいかね。元気以外は丸くなっているのに、元気だけ大の字だ。もう、男の子丸出し。ふふん、かわいかあ。
「ユイさん、いつもこんな感じなんですか?」
 そっとシュタインさんが聞いてくる。
「いえ、あの黒いのは私も初めて見ました。あんなに本格的なのは初めてです」
「そ、そうなんですか」
 ミゲル君達の魔力訓練に触発されてか、マアデン君とハジェル君も一緒に訓練していた。それも終わり、お茶で一服。アルスさんは元気達と混ざってお昼寝している。
 寝顔、かわいかね。
 ………………は、いかん、変質者臭がしてきた、自分が。
『ユイ、ビアンカ達が帰ってきたわ』
「そうね」
 視線を走らせると、ホークさんを乗せたノワールが爆走して戻ってきた。
「ブヒヒーンッ」
 ノワールは前肢で空中をかく。あははん、すごい迫力。
「お待たせしました」
 ホークさんまで汗びっしょり。
「やはりノワールは聞き分けがいいですね」
「そ、そうなんですか?」
「ブヒヒンッ」
 ホークさんが身軽に降りる。さすが、格好いいなあ。
「ユイさんを乗せるには、数日、時間を頂けますか?」
「はい」
 私は汗びっしょりのホークさんにタオルを渡す。
「ありがとうございます。ふう、暑い」
 水も出すと、一気に飲み干す。よく見たら鎧の下のもへじ生活の服までびっしょりだ。
「このままにしていたら風邪引きますよ。帰ったらシャワー浴びて着替えてください」
「はい」
 ノワールには晃太が水を飲ませる。
「ビアンカもお疲れ様」
『暑いのです。冷たいアイスが食べたいのです』
「はいはい、今日は特別ね」
 そろそろお昼だ。
「さあ、帰りましょうかね」
 振り返る。
『ダメなのです』
『ユイが困るわ』
 顔面までに迫ったキラキラの青い目、さっきまで元気と並んで寝てたやんっ。パーカーをビアンカとルージュが咥えて止めてくれている。
 ホークさんがぐいっと後ろに引き寄せてくれる。
「アルスーッ」
「あんたって子はーッ」
 ファングさんとリィマさんの声が通り抜ける。いかん、かわいか未成年の男の子のドアップ、くる、三十路女の心臓にくる。はー、はー。
「ユイちゃん」
 こてん、とアルスさん。やめて、ユイちゃん、きゅんきゅんする。青い目、かわいか。無邪気でかわいか。いかん、16歳の男の子にかわいかは、いかんね。耳がピコピコ、こてん、かわいか。はー、はー。
「お腹減った」
「お昼、ご馳走しますよ。皆さんもご一緒にどうぞー」
しおりを挟む
感想 669

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

押し付けられた仕事は致しません。

章槻雅希
ファンタジー
婚約者に自分の仕事を押し付けて遊びまくる王太子。王太子の婚約破棄茶番によって新たな婚約者となった大公令嬢はそれをきっぱり拒否する。『わたくしの仕事ではありませんので、お断りいたします』と。 書きたいことを書いたら、まとまりのない文章になってしまいました。勿体ない精神で投稿します。 『小説家になろう』『Pixiv』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

誰も残らなかった物語

悠十
恋愛
 アリシアはこの国の王太子の婚約者である。  しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。  そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。  アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。 「嗚呼、可哀そうに……」  彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。  その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。