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試運転②

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 ビアンカとノワールに乗ったホークさんを見送ってしばらく待つが、帰ってこない。
「時間かかるかね?」
『そうね。ずいぶん向こうまで走って行ったわ』
「そうね」
 仕方ない。
 晃太に説明して、シートを敷いて、日陰用の布を出してもらう。まず2本の棒を立てて、日陰用の布は四隅の2つをくくりつけ、残り2つはペグで地面に固定。簡易の日除けだけど、これ便利。母がシートに遮断、日陰用の布に冷却の一時付与をつけてくれた。これからの時期は必須だ。
 日陰に入ると、少しひんやり、気持ちいい。エアコンまでとはいかないが、十分涼を得られる。広さは10畳ほどだ。
「皆さん、良かったらお茶でもどうぞ」
 言うと皆さん日陰にはいってくる。
 晃太のアイテムボックスから紅茶やオレンジジュース、リンゴジュースを出して、配布する。
「ここ、涼しいですね」
 ロッシュさんがリンゴジュースをのみながら、不思議そうだ。
「色々一時付与してますから」
 説明すると、なるほどみたいな顔だ。
 さすがに全員で入ると狭い。だけど思い思いに座り、ジュースを飲む。
 冷えてて好評だ。
 私はシュタインさんのカップにおかわりの紅茶を入れる。
「シュタインさん、髪、すっきりしましたね」
「そ、そうですね。変ですか?」
「いいえ、似合ってますよ。そっちのほうが格好いいですよ」
 うん、爽やかスポーツイケメンさん、みたいになってるし。
「そ、そうですか?」
 うーん、イケメンが照れてる。目の保養になるー。
 それから近況報告をする。
 山風はシュタインさんの鎧を修繕中。マアデン君とハジェル君の革鎧の作成中。あの21階の牛の革を使用しているそうだ。
 金の虎はアルスさんの革鎧一式作成中だと。革は21階の牛の革、それも上位の革を使用していると。
「ユイさんの依頼がなかったら、マアデンとハジェルの鎧を新調出来ませんでしたからね。本当に感謝してます」 
「ああ、そうだな。あれだけの質のいい革はなかなか手に入らないからな。かなり安くすんだ分、付与に予算を回せる」
 あの依頼の時に21階にかなり挑み、牛の革をかなり手に入れているから、スムーズに鎧の製作が出来たそうだ。
 マアデン君もハジェル君も嬉しそうだ。アルスさんは元気をもふもふ。
「あ、そうだ。マアデン君、ハジェル君」
「はい」
「ユイさん、なんすか?」
「うちのエマちゃんとテオ君もまだ見習いなんよ。やから仲良くしてやってね」
「「はいっ」」
 歳も近いし、ね。同年代のお友達は大切だ。
 しばらく和やかに話をしていたけど、ビアンカ達が帰って来ない。大丈夫かな?
 首を伸ばして見ていると、チュアンさんが隣に来た。
「ユイさん、ホークなら心配ありませんよ。あいつは調教師としての腕も一流ですから。どんなに荒馬でも、ホークの手にかかれば大人しくなります。時間はかかりますがね」
「そうなんですか?」
「ええ、うちのパーティーの最大の強みが、ホークの騎乗能力ですから」
 なんでも護衛依頼の際に気性の荒い馬を乗りこなした上に、調教までしてずいぶん感謝されたし、依頼料の上乗せまでしてもらったと。それも1度や2度じゃないと。
「ホークの騎乗能力は天賦の才なんです。だから、大丈夫ですよ」
「そうですか」
 なら、大丈夫だね。
 チュアンさん、ホークさんを信頼してるんだ。
『ねえユイ、ちょっといいかしら』
「なんね、ルージュ」
 シートで寝そべっていたルージュが起きてきた。
『時間かかりそうだから、元気達の戦闘訓練をしてもいいかしら。暑い状況でも、経験させないといけないし』
「よかけど。街に近いから派手にせんでよ」
『分かっているわ。皆、いらっしゃい』
 ルージュが呼ぶと、もふもふ集団が起き上がり集合。
「わんわん」
「くうーん」
「くうーん」
「にゃあ~」
『かあか~』
 大きくなった仔達が並ぶと壮観だね。
「ユイさん、何が始まるんですか?」
 シュタインさんが心配そうに聞いてくる。他の皆さんも興味津々。
「今からルージュの訓練が始まります」
「へぇ」
 ずらりと並んだ仔達を前に、ルージュの説明が始まる。元気の尻尾がバタバタしている。
『皆、よく聞きなさい。今から戦闘訓練を始めるわよ。発現系を使わず、自分の力だけで対象を蹴散らしなさい。発動系は使ってもいいけど、発現系はダメよ。いいわね、元気、分かっている?』
「わんわんっ」
 聞いてるかね?
「ルージュ、支援はどうする?」
 晃太が聞くが、ルージュは首を横に振る。
『純粋に自分の力がどれくらいあるか実感させるから、今回はいいわ』
「ん」
 晃太が引っ込む。
『さあ、始めるわよ』
 ルージュはそう言って集中する。そして出現したのはバスケットボールサイズの真っ黒な塊が出現。初めて見る。
「ルージュ、これは?」
『闇の魔法よ。これは光の魔法とは違って触るくらいでケガはしないわよ』
「へぇ」
 光のリンゴとは違うんだね。光のリンゴは熱を持つそうで、こちらの闇の玉は熱はない。試しに触って見ると、うん、熱くないし、冷たくもない。感触として、本当にバスケットボールみたいや。
「弾力があるね」
『そうよ。光の魔法は魔力を纏った攻撃だけど、この闇の魔法は物理に寄るものなの。使い勝手は光の方が攻撃力が高いから、そっちを使っているの』
「へぇ」
『さあ、始めるわよ』
 開始のようや、私は一歩下がる。
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