もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
269 / 850
連載

覚醒⑨

しおりを挟む
「ルリ、クリス。ばあばよ、ばあば」
「じいじだよ~」
 両親が必死に誘導尋問。
 ヒスイの時はうまく行ったが、なかなかルリとクリスから出てこない。
『ばあば、じいじ』
「そうよヒスイ。ばあばよ」
「じいじだよ~」
 ヒスイが連発。両親が、おお、よしよしとヒスイをもふもふ。そしてルリとクリスをちらり。ヒスイに触発されるかな?
「くうーん」
「くうーん」
 上手くいかんなあ。
 しばらくしてやっと、気配が。
 私はそっとスマホを構える。
『ばぁば? じぃじ?』
『ばーば? じーじ?』
「そうよ、ばあばよーっ」
「じいじだよ~」
 でれれれん、と破顔する両親。我が親や。
 うむ、よき映像取れたね。
 元気とコハクも加わり、もふもふの海が発生。嬉しそうに沈没する両親。
 夕御飯はブラックツナたっぷりの豪勢な丼にした。仔達も大好きだしね。デザートにはうららのプレーンパンケーキを付けて、と。ビアンカとルージュは色々注文するので、タップタップと。
 私達もたらふく食べる。げふう。
「姉ちゃん、明日からどうするん?」
 晃太が爪楊枝で、しーしーしながら聞いてくる。
「そうやね。まずは依頼の確認。そん時に秋のグーテオークションの相談してから、ノワールの鞍ば受け取りに行って、玄武のドロップ品相談やな。あ、ダワーさんにも会えるか聞かんとね」
 結構忙しか。
 しかも時期は夏。冷蔵庫ダンジョンは、夏は余計に暑いそうだから、動く時間を考慮しないと。
「ホークさん、明日時間があればノワールに乗ってみます?」
「そうですね。おそらく時間はかからないと思います。ノワールは素直ですから」
「私という荷物を抱えるので、そこんとこはよろしくお願いしますね」
「お任せください」
 頼もしか。
 で、次の日。
 御用聞きの冒険者と総出でギルドに向かう。
 すぐにいつもの応接室に。
 ホークさんとテオ君だけついて、残りはロビーで待機だ。
 すぐにリティアさんがやって来た。
「ミズサワ様、昨日は対応が遅れ申し訳ありません」
「いいえ、騒ぎになったのに最後は押し付けるような事になってしまって。あの人達どうなりました?」
「警告はしました。ただ、大声を出しただけですし、もし、ミズサワ様が名誉毀損で被害届けを出されるなら色々対応出来ます」
「被害届けですか?」
 うーん、どうしようかなあ? 昨日結局ビアンカとルージュが気絶させたしなあ。サエキ様の名前も出したし。それに私が騒いでエレオノーラ様やサエキ様に迷惑かけるのはなあ。フェリアレーナ様の輿入れもあるし。うーん。
「今回は見送ります。何を言われても、私には信じてくれる家族がいますし」
「マーファのギルドも、ミズサワ様のお側におります」
「ありがとうございます」
 嬉しかあ。
「それで依頼ですが。私達が出来そうなものはあります?」
「マーファにミズサワ様に出来ぬ依頼はございません。現在必要とされているのはバーザ」
 はい、蛇、シャットアウト。
 だが、どこも蛇のポーションを待っている人達は多い。鮫のサプリメントもそうだしね。あのザイーム様もそんなこと言ってた。手術なんてことが出来ない世界だ、ポーションやサプリメント、魔法に頼るしかない。
「21階の乳製品や、ホワイトアルメナの依頼が多いです。フレア紅やアルガン、ミストローズも好評なんです。それからフレアタートルの依頼もございます」
「20階以上のドロップ品ですね。期限はありますか?」
「直近のものが2週間ですね。シーサーペントの牙と鱗ですね」
「分かりました。20~25階を中心に回ります。26階以上は次回でも大丈夫ですか? どれだけ確保できるか分かりませんが、準備を整えて冷蔵庫ダンジョンに行きます。ただ、暑いと思うので、以前のような数にはならないかもしれません」
「それでも構いません」
 依頼はこれでいいかな。あ、いけん。
「リティアさん、首都のリンデン工房からの依頼はあります?」
「リンデン工房ですか。お待ちください」
 リティアさんは書類の束を出して、ぱぱぱ、とチェック。
「ございます。シーサーペントの牙ですね。羽系もありましたが、こちらは別の冒険者が依頼をこなしています」
「首都でよくしてもらったので、リンデン工房を優先してもらえます?」
「承知しました」
 これでよし。それから秋のグーテオークションについても相談。
「寄贈したいのですが、どういったものがいいか品定めしていただきたくて」
「それでしたらタージェルが適任です。話を通しておきます」
「お願いします」
 ダワーさんとも2週間後に面会する手はずを整えてもらう。ダワーさん忙しいんだね、やっぱり。
 リティアさんに挨拶して、チュアンさん達と合流して、倉庫に向かう。そこには防具類を扱う工房主さんが勢揃いしていた。やはり、玄武のドロップ品見たさだ。晃太がアイテムボックスから出すと、私達そっちのけ。
「これが玄武かあ」
「いやあ、素晴らしいな、ドラゴンとひけはとらん」
「だが、加工となるとどうなる? ワイバーンと比較にならんぞ」
 わいわい。
 結局。
「「「「「時間をください」」」」」
 はい。
「そうだ。シーサーペントの鱗、あれで何か出来ます? 晃太、出して」
「ん」
 近いテーブルに出すと、再び私達そっちのけ。
『ユイ、つまらないのです』
『時間かかる? コハクが飽き出したわ。元気もほら』
 1人の職人さんのポケットかじる元気。こらこら。
 職人さんはびっくりしてたけど、元気を撫でて許してくれた。
「これは誰の装備品になりますか?」
 かなり歳の職人さんが聞いてくる。
「えーっと、特に決めてはないのですが」
「これは潜在付与が高品質の水属性があります。防具を作るなら水属性があるものが最適です」
 なるほど。
「うちには3人、水属性保持者がいます」
 マデリーンさんと、ミゲル君、テオ君だ。
 だが、マデリーンさんは辞退。水魔法は使えるが、あまり得意ではないため、ミゲル君とテオ君の防具に回してと。
「フム」
 お歳の職人さんは、まずミゲル君をチェック。
「この革鎧まずまず上質、これは勿体ないので、この鎧に被せるように鱗を加工した方がよろしいでしょうな」
「なるほど」
「で、こちらの少年、おそらくまだ背が伸びるはず。それを鑑みて、このチュニックの上から着る形はどうでしょう?」
「お願いします」
 私はそのお歳の職人さんにミゲル君とテオ君の鎧をお願いした。
「それでも残りますが。どうされます?」
「そうですね…………鱗で剣とか作れません?」
「出来ますよ。長さ的にはこれくらいですな。鞘を含めて」
 私の腕の長さだ。話がトントン拍子に進む。
「ずるいぞフロイスさんっ」
「そうだっ、そうだ、全部持っていきやがってっ」
「交渉力と言っておくれ」
 大ブーイングが飛ぶ。
「だが、お前さんがた、この上位シーサーペント、加工する自信あるのか? 剣に出来るか?」
「「「「きぃっ」」」」
「ではテイマーさん、この仕事は儂がお受けします。書類作成いたしますので」
 まずはミゲル君の鎧に加工するため、一旦鎧をフロイスさんに預ける事になる。しばらく無防備になるがしかたない。
 職人ギルドで書類作成し、テオ君のサイズも手際よく測る。
「フロイスさん、もし火属性の革があったら加工出来ます?」
「いや、儂には無理だな。属性を含むものは、扱うものによって得手不得手があってな。儂は水属性が得意でな、逆に火属性が不得意なんですよ」
「そうですか」
 エマちゃんとマデリーンさんに、サラマンダーの革で何か出来ないかと思ったけど。
「火属性の革なら、他の職人が扱えるはずですぞ。モノはありますか?」
「いえ、手元には。その内、軍隊ダンジョンに行こうと思って」
「ほう、軍隊ダンジョンですか。ならば、ワイバーンの革は案外万能ですよ。マントにすれば最高の空調装備ですから」
「空調?」
「はい」
 ワイバーンは加工できる職人がまずまずいて、質もいい。遮断の付与をすれば夏の暑さや、冬の寒さを遮断する。物理防御力も魔法防御力も優秀だと。
 なるほど。使い勝手がいいなら、色々出来るかな。
「フロイスさんはワイバーン加工出来ます?」
「はい、出来ますよ」
「もしかしたらお願いするかも」
「お任せください」
 秋のグーテオークションの後に行ってみよう。マジックアイテムも出るしね。解毒と回復のマジックアイテムが欲しい、特に元気に欲しい。
 私達はフロイスさんに挨拶し、ノワールの鞍を受けとる。うわあ、でかかあ。
 時間に余裕があるし、ノワールの試運転だ。
 ロビーに行くと、ビアンカとルージュが反応。
『ユイ、あの雄達よ』
『ロッシュとかシュタインとかの雄の群れよ』
「山風の皆さんね」
 入り口で見知った面々が。
「「ミズサワさーんっ」」
 わー、とマアデン君とハジェル君。相変わらず元気やなあ。
 後ろにはロッシュさんと、ラーヴさんと、シュタインさん。あら、シュタインさん、髪すっきり。
「皆さん、お久し振りです」
 挨拶しないと。
『ダメなのです』
『ユイが困るわ』
 はい?
 振り返ると、青い、キラキラの目。ちらり、と覗く赤い舌。
 …………………
 数ミリ前で、ぴしり、と止まる。ビアンカとルージュが、パーカーの裾を咥えて止めている。
 …………………
「アルスーッ」
「あんたって子はーッ」
 …………………
 また、三十路女がパニック、起こしそうになる。
しおりを挟む
感想 669

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下

七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」 死の床で陛下はわたくしに謝りました。 「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」 でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

押し付けられた仕事は致しません。

章槻雅希
ファンタジー
婚約者に自分の仕事を押し付けて遊びまくる王太子。王太子の婚約破棄茶番によって新たな婚約者となった大公令嬢はそれをきっぱり拒否する。『わたくしの仕事ではありませんので、お断りいたします』と。 書きたいことを書いたら、まとまりのない文章になってしまいました。勿体ない精神で投稿します。 『小説家になろう』『Pixiv』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。