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首都でも、帰途でも⑧

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 次の日、魔の森に入る。
 負傷した冒険者パーティーの情報から、ディラの魔の森に入り北東に進む。
『ゴブリンは臭いのです』
『本当、やになるわ』
 ぷりぷり言いながらも臭いを嗅ぎながら進む。お留守番予定のノワールだったが、案の定ブヒヒン、ブヒヒン。哀愁漂う目で訴えてきたので、連れてきた。
「どれくらい奥かね?」
 私がビアンカとルージュに聞く。すでに森に入り休憩を挟みながら、3時間過ぎている。
『そうなのですね、あと、もう少しなのです。そろそろ向こうに気付かれないように風の結界を張るのです』
『そうね、見つかって逃げられたら厄介だし』
「頼むね」
 進みながら、ホークさんに本来の緑の巣の掃討作戦を聞く。
 基本的に複数のパーティーで行うそうだ。取り零すと、Gはぽこぽこ増えるから。巣を多方向から取り囲み、時間差で魔法や矢で遠距離攻撃し、逃げ惑うGを総出で始末。ランクの高いパーティーが上位種を打ち倒し、他のパーティーが援護に回る。とにかく、周囲の把握、取り零しだけは避ける。
 ビアンカとルージュ曰く、そんな面倒くさい事はしない。ビアンカが戦闘モードで突っ込み、ルージュが撃ち漏らしを始末すれば、あらかた片付くと。そりゃそうだろうけど。
 しばらくして、やっと緑の巣に到着。うわあ、いるう、緑がうようよいるう。アルブレンの時とあまり規模が変わらないようだけど。
『一旦休憩するのです』
『そうね。喉が乾いたわ』
「はいはい」
 私はルームを開けて全員で入り、水分補給する。
「で、どう動くと?」
 落ち着いて、お茶を飲んでいるビアンカとルージュに聞く。
『そうなのですね』
『前と同じでいいんじゃないかしら』
「ブヒヒンッ、ブヒヒーンッ」
 ビアンカとルージュに、ノワールが自己主張を始める。だいたい分かるよ、自分も、でしょ。ノワールは馬車牽く魔法馬なのに、なぜか戦闘をしたがる。
『仕方ないのですね』
『分かったわ、大人しくなさいノワール』
「ブルブルッ」
「ビアンカ、ルージュ。ノワール、なんば言いようと?」
『自分も戦うと言っているのです』
『海では留守番ばっかりだったから、ですって』
「やっぱり」
 私はため息。
「どうすると?」
『そうなのですね、私が逃げ道を防いで』
『ノワールを突撃させるわ。私が逃げるのを叩くから』
『あ、コウタの支援魔法のスキルアップを忘れていたのです。逃げ道を誘導するのです。逃げてきたのは、ホーク達に仕留めさせるのです』
『そうね。そろそろコハク達にもダンジョン以外の魔物を相手させてもいいわね』
「「ちょっと待った」」
 私と晃太がストップをかける。
 流石にまだ成体でもない元気達に、緑の相手をさせるのは抵抗があった。スライムくらいならまだしも、緑はガチに人型だし、フォルムがいかん。
『何を言っているのですか? 元気ならゴブリンくらいもう大丈夫なのですよ』
『そうね。コハクもそろそろ戦闘モードがしっかり発動出来る頃だし。いい機会になるわ』
「でもさあ」
「まだ、早くないかね?」
 私と晃太は気が進まない。そりゃさ、元気は雷一発で王冠スライムを倒せているし、コハクのベビージャガーパンチの威力はあがっているけどさ、気が進まない。
『私達だって、元気くらいの頃に、母様にゴブリンの巣に叩き落とされたことがあったのですよ』
『そうだったわね』
 なんやねん、その鬼教官。獅子は我が子を谷底に、って聞いたことあるけど、フォレストガーディアンウルフよね? 犬系よね?
『あの時は、兄がいたから何とかなったのです』 
『そうね、日頃うざったいけど、戦闘に関してだけは頼りに出来たわね』
 なんやねん、その血生臭そうな小さい頃の思い出話は?
 押し問答の末に、ルージュの光のリンゴをたくさん出してもらうことで合意する。
 作戦はこうだ。
 まずビアンカが逃げ道を防いで、ノワールとルージュが突撃。ビアンカがつづく。奥の上位種はお任せだ。突撃した時点で入り口付近は壊滅するだろうけど。その後に私達と仔達、鷹の目の皆さんが入り口付近で展開。三人娘とエマちゃんとテオ君はルームに避難してほしかったが。
「私、大丈夫ですっ」
「俺も戦えますっ」
「くうん、くうん」
「くーん、くーん」
『ヒスイも、ヒスイも~』
 まあ、エマちゃんとテオ君は分かるよ、見習いとはいえ冒険者だもんね。ただ、心配なのは三人娘や。人見知りで、スライム部屋でも母親にべったりなのに。
『ルリとクリスにもいい経験になるのです』
『そうね。ヒスイには刺激になって属性魔法が覚醒するかもしれないわ』
「でもさあ」
『大丈夫なのですよ』
『私達の娘よ、信じて』
 う。
「そこまで言われたらね。分かった、そうしようかね」
 仕方ない。
 私は鷹の目の皆さんに説明。
「これでいいですか? ビアンカとルージュがいるので取り零しがないようにしてもらうだけになると思いますが」
「構いません。その為の俺達ですから」
 皆さん、頷いてくれる。
 うーん、エマちゃんとテオ君が心配や。ルリとクリス、ヒスイも大丈夫かな。女の子やし。うーん。ルージュに多めに光のリンゴ、出してもらおう。
「それから、元気達も加わりますが、元気とはある程度の距離を保ってください。雷に巻き込まれる可能性がありますから」
「「「「「「はい」」」」」」
 よし、戦闘や。久しぶりや。
 私はフライパンを持つ。人型やけど、見習いのエマちゃんとテオ君が頑張ってくれるんや。大人の私が後ろでみているだけではいけない。
『ユイ、何をしているのですか?』
『何をしているの?』
「姉ちゃん、なんばしようと?」
「ユイさん、何を?」
 異口同音。
「いや、私も戦闘を」
『ダメなのです』
『そうよ、体調、まだ半分くらいしか回復してないでしょう? ユイに何かあったら私達どうしたらいいの?』
「姉ちゃんはいかん、まだ、中毒症なんやから」
「ユイさんはルームに避難していてください。戦闘は俺達に任せてください。ユイさんにかすり傷でもできたら、リュウタさんとケイコさんに合わす顔がない」
「えー…………」
 一気に正論を言われて、細やかな反撃も出来ず。私は大人しくルームで待機となる。
「ヒスイちゃん。ねえねとルームにおらんね?」
『……………やっ』
 ぐさあ。そっぽ向かれたっ。てか、ヒスイちゃん、そんなに戦いたいの? 緑よ、相手。
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