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連載

首都でも、帰途でも①

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 グーテオークションの次の日。
 朝早くゲストハウスを出てクレイ港に向かった。
 昨日、新しく開放された『マダラ電気』『やじろ家具』に行って見たかったけど、父のOKがでなかった。少し回復しているが、いけても5分だけ。おそらく興奮して5分じゃ戻ってくる自信ないしね。でも、やっと許可が出た。朝早くてディレックスが開いてないから、時間を見て卵を手に入れないと。後は両親のビールもないし、米も心細いしね。あ、神様用の飲み物もなくなってるし。最低限必要なものを母がリストにしている。
 私はリストを書き出している母を見ながら、小指の指輪を見る。解毒の指輪。これは先日魔力回復ポーション中毒になった時、反応しなかった。これは、攻撃とかされて体内に入って来た毒に対するものにしか反応しない。私は自分から魔力回復ポーションを多飲して中毒症になったので、これには反応しないそうだ。マジックアイテムも万能じゃないんだね。
 晃太の支援とチュアンさんの解毒魔法で、通常より回復する過程は短いそうだ。私は中毒死寸前だったのを時空神様ができるだけ回復してくれた事が大きく、もし、それがなければ、数ヶ月寝たきりになってもおかしくなかったと。時空神様と晃太とチュアンさんに感謝だね。
 だけど、回復傾向や。父の鑑定によると、徐々に時間が長くなり、後3週間もすれば完全に戻れるそうだ。
 のんびり待とう。
 で、只今、海上です。
 ノワールはお留守番。
 ブラックツナは2隻の船の間に網を張って追い込んでするそうだ。今日は1隻のみ、ビアンカとルージュがいるからね。甲板にはごつい銛が並び、船員さん達がてきぱき働いている。私達が乗る船のいかつい船長さんに挨拶をする。ビアンカとルージュに引いたが、仔達にはメロメロだ。
 船長さんから説明を受けていると。
「これで風を受けて船が進むんよ」
 と、晃太がビアンカとルージュに説明していた。
『この白いのが、風を受けて、この木の箱が動くのですね』
「そやな、白いのは帆や。後は舵やな」
『カジ? それは何?』
「進む方角を操作するんよ」
「わんわんっ」
「にゃあにゃあ」
「くうん、くうん」
「くんくん」
『にいに~』
 賑やかやね。元気とコハクは船員さんにじゃれついてる。もう、お仕事の邪魔して。
 今日はオスヴァルトさんとブエルさんが付いてきてくれた。
 オスヴァルトさんを見て、船員さん達、一瞬、え、付いてくるの、この人? みたいな顔をしたけどね。
「で、テイマーさん。今から向かう漁場ですが、あっちですね。ブラックツナの仕留め方ですが」
 船長さんが説明してくれる。
 ブラックツナはエラに一撃入れたらほぼ即死する。ただ、スピードが半端ないので、網で囲って追い込んで銛を突くと。ふーん。
「この時期なら400キロ以上のクラスが期待出来ます」
 ふーん。
 私としては鮪大好きな父と晃太の為に欲しい。ちなみに母はあまり刺身は食べない。好んで自分から欲しがることはない。出されれば食べる位だ。私は普通かな? 父と晃太が刺身大好き。特に晃太が。
「できれば、一撃してもらうと得られる量がですな………」
「あ、大丈夫ですよ。うちのビアンカとルージュは優秀なので。ブラックツナを傷つけずに一撃しますよ」
 本来ならこのギルド所有の大型船で同行する冒険者には、漁獲の売り上げの1割しか手に入らない。それでも一回の漁でかなりの額が手に入る為に、かなり人気だそうだ。私達が乗れたのは、ひとえにビアンカとルージュがいるから。ビアンカとルージュ曰く、網で追い込まなくても、どうにでもなると。頼もしいが、やり過ぎないか心配だ。私達は売り上げではなく、獲れた魚の一部がほしいだけで、快く聞いてくれた。
「ビアンカ、ルージュ、聞いた? ブラックツナの仕留め方」
『聞いたのです』
『大丈夫よ。肉を傷つけないようにするわ。火はダメね。光も熱を持つことがあるし』
『なら、私が水か風で仕留めるのです』
『私は闇でフォローに回るわ』
 うちの稼ぎ頭の作戦会議が始まる。
『ユイ、あっちに気配が沢山あるのです』
『そうね、あっちの方が良さそうね』
 ビアンカとルージュが示したのは、船長さんとは全く逆だ。
 私が船長さんに説明すると、ものすごい勢いで首を横に振る。
「あっちはダメだっ、魔の海域なんだっ」
 あ、向こうでも聞いたことある、怖いやつ。
「ビアンカ、ルージュ、危ないみたいよ」
 やめとかん?
『何を言っているのです? 私とルージュがいれば大丈夫なのです』
『そうね、海竜くらいなら何とかなるわよ』
「海竜って何? さらっと恐ろしいワード言わんで」
『ユイ、大丈夫なのです』
『そうよ、大丈夫よ』
「ううーん…………」
 ちらっと船長さんを見ると、海竜の言葉に停止してるし。
 やっぱり、ヤバいワードやね。
 いかにも荒くれ者を束ねてそうないかつい船長さんが停止してるし。
 他の船員さん達もこちらをガン見してくるし、ブエルさんはちょっと動揺していた。オスヴァルトさんだけは変わらず、話を聞いている。
『せっかく神様から頂いたブーストがあるのに、全然使えていないのです』
『久しぶりに動きたいわ』
「そっちが本音やね」
 なんやねん、もう。
「あの船長さん、あっちに行くのには時間とかかかります?」
 私はあまり遅くなりたくない、そんなニュアンスを含めてみた。ほら、遅くなると両親が心配するしね。なんて言い訳、こわかもん。魔の海域なんて、こわかもん。
「あ、そうだな。今の風向きなら、時間はかかるな。帰り着くのはかなり遅くなるぞ」
 よし、よし。
 船長さんがしっかりキャッチしてくれる。
『風? それなら大丈夫なのですよ』
『そうね、ビアンカなら問題ないわね』
「どうするん?」
『この白いのに、風が当たればいいのですよね?』
「まあ、そうやね」
『だったら風魔法を当てるのです』
「やめて、マストが根本から折れるわ」
『ちゃんと調整するのです』
『私もフォローするし、方角をチェックするわ』
 きゅるん、きゅるん、きゅるーん。
 仔達も加わって、破壊力倍増。
 きゅるん、きゅるん、きゅるーん。
 きゅるん、きゅるん、きゅるーん。
 結果、私と船長さんが根負けした。
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