もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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偽善者⑨

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「申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました」
 私は御詫び行脚をしている。
 あの、ビアンカとルージュの咆哮、もっと凄か音かと思ったが、そうではなかった。耳を塞いだのに。ただ、破壊力が半端なく、ビアンカとルージュ曰く、放つ咆哮にちょっと魔力を乗せたと。つまり、キャノン砲ね。まあビアンカとルージュのちょっとは半端ない。なので、趣味の悪い男はお向かいのお宅の壁まで吹き飛んだし、衝撃波で縛られたチンピラ達共々鼓膜が破れたようで、痛いと喚いていた。御愁傷様。
 他の住人の方が心配だったが、キャノン砲の向こう側には誰もおらず、ホッとした。ビアンカもルージュも、放つ先に誰もいないのを確認していたと。うん、さすがや。
 それから趣味の悪い男とチンピラ達は引きずられていった。見送って、私は色々やらかされた後を目の当たりにする。例の矢を放った連中が潜んでいた民家の壁が大破していたのだ。そう言えば、ルージュがあの黒い触手で、拘束していた時に、破壊音が響いていたけど、これか。ルージュは隙間から黒い触手を滑り込ませて、男達を引きずり出していた、壁を無視して。私は血の気が引いていく。民家や、民家。空き家もあるが、当然住人がいた。住人の方々がいたのは2軒。1軒は留守番していたおばあちゃんとお孫さん3人、そしてもう1軒はなんと妊婦さん。いきなり男達が不法侵入し、占拠されて、混乱していたが、ルージュの黒い触手がその男達を外に引きずり出した。話を聞いたらホラーや。ケガがないのは幸いだけどね、きっとかなり怖かったはず。壁まで粉砕したから、住めないよ。私がそれで御詫び行脚だ。セザール様が間に入ってくれて、家の修繕が済むまで、とりあえず宿に移ってもらうことで許してもらえた。もちろん私が全額出すことに。空き家に関してはハルスフォン様の持ち家。セザール様は笑って許してくれた、元々解体予定だったからと。ここいら一帯は、開発予定の為、ほとんどハルスフォン伯爵が地主になっていた。その2組の家族が納得したのは、借家であることと、やはりセザール様が間に入ってくれたことが大きかった。騒ぎを聞き付けて帰って来た1組目の若夫婦。おばあちゃんの娘さん夫婦だったが、3人の子供達がビアンカやルージュにすがり付いて悲鳴を上げていた。私は平謝り。修繕と宿の件を伝えたが、納得しない顔だったが。
『痛いのですッ』
 子供の1人がビアンカの片耳にぶら下がって、きゃいんと悲鳴を上げたのに驚いて、真っ青。そしてセザール様に真っ青。で、私の謝罪を受けてくれた。
 妊婦さんが心配だったが、ビアンカとルージュも大丈夫だと断言。その旨を血相変えて来た旦那さんに伝えると、揃ってホッとした表情になる。こちらは宿に関してはなんの問題もなく受けてくれた。どちらにしても、引っ越しを考えていたそうだ。ただ奥さんが臨月だし、寒いしで悩んでいたと。この際だから、狙っていた新居に移ると。その引っ越しの間、宿に滞在。引っ越しにはハルスフォン伯爵家の召し使いさんを数人助っ人に出すとセザール様が言うと、旦那さんは感謝していた。宿は商人ギルドの方が来て、すぐに手配してくれた。
 馬車まで手配してもらい、見送ろうとしたら妊婦さんがお腹を庇いながら私の元に来る。どうしたんだろう?
「あの」
「はい」
「もし、この子達が女の子なら、従魔様のお名前をいただいてもいいですか?」
 そう、妊婦さんのお腹には双子ちゃん。
「ビアンカとルージュですか? もちろん構いませんが」
「ありがとうございましす。ちょっと悩んでて。こんなに凄い従魔様にあやかれるなんて思いませんでした」
 妊婦さんは嬉しそうだ。旦那さんに手を引かれ馬車に乗り、去っていった。
 無事に、産まれますように。
「ねえ、ビアンカ、ルージュ」
『いたた、どうしたのです?』
『何?』
「妊婦さんの赤ちゃん、女の子かね?」
『さあ、そこまでは分からないのですが、2匹いたのは確かなのです』
『呑気に寝てたわよ』
「そうね」
 さすがに性別までは分からないか。
 でも、その後、無事に双子の女の子が産まれたと、タージェルさんから聞く事になる。

 御詫び行脚から孤児院に帰って来ると、何故か元のサイズになっていたダーウィンさんがワインを呑んでいた。
 何でも、私がいない間に父と晃太と話をしてこうなったと。晃太がブドウの風の赤ワインを出すと、あっという間に自前のワインオープナーで開けて、一杯、もう一杯な具合で呑んだと。
「いやあ、なんと薫り高いワインじゃ。カルーラ産のワインにひけをとらん。ほっほっほっ」
 多少のワインならいいだろうけど、既にワインボトルが半分以下。しかも空瓶がある。私は残りを取り上げる。今のダーウィンさんは、見た目ガチに高齢者だ。いくらなんでも飲み過ぎ。
「そんなあ、お嬢さん、もう一杯、もう一杯だけ」
「ダメです。飲み過ぎです。お持ち帰りするならお渡ししますが、もうダメです」
「儂、鬼人族じゃから、大丈夫」
 てへぺろ。
 なんやねん、もう。
 ダーウィンさんは魔族の一種で鬼人族。魔族にも多数の種族があるが、ダーウィンさんの種族は基本的には人族との見分けはつかない。先ほどみた、あの変身は、身体強化の一種。つまり鬼人族特有の戦闘モードで、あの間だけ、筋力が最盛期までに一気に増強し、鬼人族の印の角が出ると。あれがダーウィンさんの最盛期の姿なのね。おっかなかった。
 ダーウィンさんが私の手をしきりに触るけどダメです。お持ち帰り頂きました。晃太のアイテムボックス内に残っていたワイン。ブドウの風の赤1本と白3本も渡した。
「いやあ、ありがとうなあ、お嬢さん。何かあれば相談に来ておくれ、ほっほっほっ」
 ダーウィンさんは上機嫌で帰って行った、改めてお礼に行こう。セザール様にもお礼を言ったけど、きっと足りない。
 色々片付けて、やっと私達も帰宅。真っ暗だ。
 ザックさんとマーヤさんがしきりにお礼を言ってくれた。
 挨拶して、孤児院を後にする。
 ああ、つかれた。
 しかし、今回反省ばかりや。ビアンカとルージュがいるからと、たかをくくり、天狗になっていた。やはり、私ができることなんてたかが知れている。初めからギルドやハルスフォン様に相談すべきだった。
 パーティーハウスに戻り、母と花、元気達が迎えてくれる。
 丸一日付き合ってくれたジョアンさんには、改めてお礼しよう。
 母と夕飯の準備、
 鯵の塩焼き、ほうれん草のお浸し、ハムとパプリカのサラダが並ぶ。
 当たり前の光景。
 当たり前のように準備された、夕御飯。
 当たり前のように囲む食卓。
 もしかしたら、逆恨みとかされたら、いくら御用聞きの冒険者の人達がいても、防ぎきれない事態になるかもしれない。私達がダンジョンに行っている間とか特に。
 …………………………………………
 ああ、色々、締め直さないと。私自身が。
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