上 下
184 / 820
連載

スキルアップ⑦

しおりを挟む
「おはようございます。本日は冒険者ギルドまでご一緒します」
 新しい御用聞きの冒険者パーティー『ジャカランタ』。
 リーダーのジョアンさんは垂れ耳の獣人さんだ。ごつい男性で背中に斧を背負っている。本日のもう一人は丸耳の獣人さん。小柄な男性はダニーロさん。杖を持っているから魔法使いかな。『ジャカランタ』には後2人。アリソンさんとロドリゴさん。2人とも獣人さんで、男性のみのパーティーだ。
「よろしくお願いします」
「はい」
 父にはジョアンさんが付き、私達にはダニーロさんが付く。
 母と花、仔達に見送られてパーティーハウスを出る。
 少し早めに行ったつもりだったが、既にギルド前に『ルベル・アケル』の姿が。
 付いてきたダニーロさんにお礼を言って、小走りで駆け寄る。
「すみません、お待たせしました」
「いいえ、さっき着いたので」
 ギルドに全員で入り、私はフォリアさんとカウンターに向かう。
 予め出来上がった書類を受け取る。それから、依頼板に向かう。
 何人かチラチラとみてくる。
 形式的だけど、依頼書を貼り付けると、それをフォリアさんが剥がす。
 それを持ち、依頼受付カウンターに戻る。
「これを受けます」
 フォリアさんが依頼書を出す。受付の男性は、私達を見て察知。予めこうやって前もって話を付けて、依頼書を出すことは良くあることらしい。
「報酬の話は?」
「済んでいます」
「では」
 男性は依頼書を水晶にかざす。
「では、サインと魔力を」
「「はい」」
 私とフォリアさんが魔力とサインをする。
「依頼成立です。お気をつけて」
 さて、いざ、冷蔵庫ダンジョンへ。
「スキップシステムなんて初めてだよ」
 ドワーフのセーシャさんは盾を担ぎ直す。セーシャさんはタンクだそうだ。女性でもタンクなんているんだね。フォリアさんより実力は上なんだってさ。フォリアさんが、リーダーしているのは、セーシャさんがめんどくさいからしたくないそうで。まあ、冒険者のリーダーは、強いだけでは務まらないそうだけど。
 改めて『ルベル・アケル』はメンバーは5人。
 アスリート美人のフォリアさんは剣士、無属性魔法を覚醒させている。属性魔法を持たない冒険者が、この無属性魔法を覚醒させられるかが、一人前から中堅になるかならないかの差だ。サブ・リーダーのセーシャさんは、ドワーフのタンク。パーティー内の実力は一番。種族的に火・土属性、無属性魔法があると、身体強化や武器強化ばかりで発現系は全く出来ないと。武器は斧。魔法使いの獣人ブルーメさんは、火と水と風の魔法を使う。回復魔法を使う魔法剣士は、すらっとした人族のコーレンさん。そして見習いエルバちゃん。
 皆さん、楽しみなようだ。
 ぞろぞろと魔法陣に移動。
 さ、と魔法陣のある小屋の入り口を、警備兵さんが開けてくれる。いつもありがとうございます。
 開けてもらえるのに、皆さんちょっと驚いている。
 魔法陣に全員乗ったのを確認。
「皆さん、はみ出さないでくださいね」
『いいみたいね。流すわよ』
 確認し、ルージュが魔力を流してスキップシステムが発動。
 景色が変わる。
 わあ、と歓声が上がる。
 初めてだからね。
 ボス部屋近くのセーフティゾーンだ。
「凄いわね」
 フォリアさんが驚いている。
 ボス部屋には2組パーティーが並んでいる。
「こんにちは」
 私は挨拶する。確認しないとね。
 皆さん、ぎょっとした顔だ。ビアンカとルージュに驚いているだけだね。
「こ、こんにちは………」
 一番近くの冒険者の方が返事をしてくれる。
「皆さん、ボス部屋に臨まれます?」
「あ、はい、そうです、あ、素通りどうぞ」
「いえ。私達もボス部屋に臨むので」
 ボス部屋の扉は閉まっている。中に冒険者パーティーがいるんだ。確か復活時間は、1時間かからない。約2時間待ちか。
 ちらり、と話し合う。
「ちょっと体を温めるために少し動きたい」
 との事で、私が並んで待つことに。
「ビアンカ、ルージュ、皆さんを守ってよ」
『大丈夫なのです』
『ユイ、1人でいいの? 私が残るわよ』
「大丈夫よ。ここで何かはないやろ」
 ビアンカとルージュ、晃太、『ルベル・アケル』を見送る。
 私はこんなこともあるかと、アイテムボックスから折り畳み式の椅子を出し、列に並ぶ。
 チラチラみられるけど、仕方ない。テイマーなのに、従魔がいないなんてね。
 しかし、することない。
 魔力流しても、そう長く続かない。ぼんやりし、魔力を流しを繰り返す。
 しばらくして、ボス部屋の扉から開いて、中からくたびれた冒険者パーティーが。あ、ケガしてる。
「大丈夫ですか?」
 慌てて立ち上がると、くたびれ冒険者は手を振る。
「ああ、はい、かすり傷ですから。素通りする方はどうぞ」
 私のすぐ後ろのパーティーが、お疲れ様と会釈してボス部屋に入っていく。
 出てきた冒険者パーティーはしっかり自分の足で歩いて、セーフティゾーンで休み出す。大丈夫みたいやね。
 45分程でボス部屋の扉が閉まる。
 先頭に並んでいた冒険者パーティーが、扉を開けて入っていき、しばらくして顔に土を付けて顔を出す。
「俺らはこれで脱出します。素通りどうぞ」
 私の後ろにいた冒険者パーティーが、会釈して素通りする。
 それから、しばらくして皆が帰って来る。
「お怪我は?」
「ありません。初めて支援を受けましたが、凄いですね」
 フォリアさんがやや興奮している。他の皆さんもそんな感じだ。
『ユイ、お昼なのです』
『腹拵えよ』
「はいはい」
 丁度お昼時だから、私達は昼食を取る。前に冒険者パーティーがいるから、まだ1時間以上待つからね。
 晃太が、アイテムボックスから大皿に盛られた麦美ちゃんのパンを出す。こちらはご飯もあるけど、やはり、パンが主だからね。ちょっと多いかもしれないけど、足りないよりはいい。残ればビアンカとルージュが食べるしね。カツサンド×2、卵サンド、アボカドとエビサンド、ハムとチーズサンド×3、白身魚のフライサンド×2、あんぱん、クリームパン×3、コーンパン、カレーパン×2、メロンパン×4、ブルーベリーパン、クロワッサン、ゴマとチーズのパン×3、ウインナーロール×2。
 人数分のカップも出し、リンゴジュース、ストレートティーが入ったピッチャーも出す。
「あの、ミズサワさん、これは?」
 出てきたパンの山に、戸惑う皆さん。
「はい、賄いですよ。さ、食べて栄養付けてください」
「え、これ、賄い?」
 セーシャさんが言うが、どうぞと再度勧める。
「食べないと、ビアンカとルージュが狙いますよ」
「「「「「頂きます」」」」」
 ぱくり。
「わあ、パンが柔らかいし、このお肉が美味しい」
 フォリアさんがカツサンドを一口食べて、歓声を上げる。
「これならいくらでも入るよッ」
 セーシャさんは豪快にウインナーロールにかぶりつく。
「まさかダンジョン内でエビが食べれるなんて」
 ブルーメさんはアボカドとエビサンドに感動している。
「これ魚? 全然臭みがないわ。この白いソースがとっても美味しい」
 コーレンさんは白身魚のフライサンドに、舌鼓を打つ。
「美味しいっ、卵、美味しいっ」
 エルバちゃんは卵サンドに、必死にかぶりついている。
 ビアンカとルージュにも、大量のパンとリンゴジュース。私は卵サンドと明太子バケット。晃太はカツサンドとカレーパンとあんぱん。
 視線を感じる。振り返ると、ボス部屋に並んでいる冒険者パーティーの皆さんが凝視してきている。
 気にしないでおこう。
 残るかな、と思ってたけど、綺麗になくなった。セーシャさんがすごく食べる。晃太の軽く倍は食べていた。
「驚いたかい? ドワーフは基本的に大食漢なんだよ。しっかし、この中に入っているソース、絶品だね」
 カレーパンを2口で食べてるよ。
「ミズサワさん、こんなにたくさんのパン、お金がかかったのでは?」
 フォリアさんが心配しているが、これくらいしないとね。わざわざボス部屋に臨んで頂くのだから。
「気にしないでください。こちらから言い出した事ですから。母の手作りなんですよ」
 ごまかす。どこで買った? て、聞かれたらまずいからね。
 私の明太子バケットはルージュが食べたいわ、と言って来たので、半分にしたら、ビアンカまで来て、二つになった明太子バケットをぱくり。卵サンドだけでは足りない。結局、晃太があんぱんを半分くれた。
 食後休憩だ。魔力回復に勤める。魔力はじっとしていても回復するが、食事をすると少し回復率が上がる。
 私達の前の冒険者パーティーが、脱出する旨を告げて、50分後、いよいよ我々の番となる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~

大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア 8さいの時、急に現れた義母に義姉。 あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。 侯爵家の娘なのに、使用人扱い。 お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。 義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする…… このままじゃ先の人生詰んでる。 私には 前世では25歳まで生きてた記憶がある! 義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから! 義母達にスカッとざまぁしたり 冒険の旅に出たり 主人公が妖精の愛し子だったり。 竜王の番だったり。 色々な無自覚チート能力発揮します。 竜王様との溺愛は後半第二章からになります。 ※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。 ※後半イチャイチャ多めです♡ ※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。