上 下
166 / 820
連載

帰途⑤

しおりを挟む
 ノータの冒険者ギルドの解体現場は騒然となってる。
 対応してくれた冒険者副ギルドマスターのウィークスさんが、目を覆う。
 マジックバッグから出てきたのは、軽自動車並みにデカイ猪、ノワール並みにデカイ鹿、灰色の鱗の蛇は、10メートル以上の長さだ。イヤやあ。直視したくない。晃太は察知して、外で待っている。灰色の毛並みの熊は立ち上がれば、2メートルを超す。ワニは見たことある、シュバルツアリゲーターだ。3匹いる。リザードは2匹だ。
 で、最後に出た、デスフラワー。赤黒い花弁に斑に黒い斑点がある。茎の部分には、馬蹄の跡がくっきりついている。長さは、2メートル超えだ。
「テイマー殿? これらは?」
「ああ、従魔がちょっと散歩してきまして」
 私はそっぽ向く。
「散歩? ちょっと散歩?」
「はい、散歩です」
 私はそっぽ向いたまま答える。
 ため息をつくウィークスさん。
「あの、買い取っていただけます?」
「もちろん、すべて買い取らせていただきますよ。何か欲しいものは?」
「そうですねえ」
 お肉よね。
 でもまだホワイトキングボアもあるし、ドラゴンのお肉もあるし、軍隊ダンジョンのお肉もある、ワイバーンとか猪とか
 ちょっと失礼して、ビアンカとルージュに確認。
「まだ、お肉の在庫あるけど、食べたいのある? あ、蛇はダメよ」
『そうなのですね。猪は食べれるのですが。あ、あの熊はまずいのでいらないのです』
「そうね。まだ、ホワイトキングボアあるんよ」
『なら、そっちの方が美味しいからいらないわ』
「じゃあ、よかね」
 私は戻りウィークスさんにお断りする。
「明後日のドロップ品買い取りの際に、査定額を出します」
「お願いします」
 ウィークスさんに挨拶して、ギルドを出た。

 宿に戻り、ルージュに魔法のカーテンを広げてもらう。
 ルームに入り、サブ・ドアを開けて、両親と花を迎え入れる。
「おお、広くなっとうね」
「本当やね」
「くうん、くうん、くうん」
「花ちゃん、花ちゃん」
「花ちゃん」
 ぽちゃぽちゃボディのかわいかこと。
 元気達が両親に集まりもふもふ。もふもふ。もふもふ。
「実はね、神様がね」
 私が今日の事を説明する。
「そうね」
「今度神様にお礼せんとね」
 怒られていたけど、結果的にはルームが広がったしね。感謝だ。
 広くなったルームの中で、私と晃太と父で家具の位置を変える。母は夕食の準備だ。
 広くなったから、壁に余裕が出来て新しく部屋が追加出来そう。
 念願の自室が手に入る。
 いつも寝る時にルームにベッドを晃太のアイテムボックスから、いちいち出しているから面倒なんだよね。
「なあ、姉ちゃん、部屋手に入らんかね?」
「あんたもな? そうやね、HP貯まっているしね。ご飯後にしようかね」
 家具の位置を変えて、私は夕御飯の準備の手伝いに入る。父と晃太はブラッシングに入る。
 お乳と補助食も済み、ノワールのご飯の準備も済んだ。
 ビアンカとルージュには、たっぷりのホワイトキングボアのお肉を焼いて、特製どんぶりのご飯と軽く湯通したもやしの上に乗せる。それから冷蔵庫ダンジョンの貝柱のバター焼き。勢いよく食べるビアンカとルージュ。
『美味しいのですっ』
『動いた後は格別ねっ』
 ようございました。
 私達はタコとワカメとキュウリの酢の物。貝柱のバター焼き、ホワイトキングボアのステーキだ。チューハイオッケーと。
「「「「いただきます」」」」
 うん、酢の物美味しい、貝柱美味しい。ホワイトキングボアはおろし大根のステーキソースで、チューハイが進む。これなら、ご飯も進むメニューだ。
『足りないのです』
『おかわり欲しいわ、貝柱の方ね』
「ごめんね。猪あるけど、貝柱はもうないんよ」
 母がビールを呑みながら答え、ステーキを焼き始める。私も手伝い。
『貝、もうないのですか?』
『残念だわ、でも、ダンジョンで出たわね。また、ダンジョンに行きましょう』
 そうなりますか。
「あ、そうそう、冷蔵庫ダンジョンね。なんか今おかしいんよ」
 母がステーキを焼きながら話してくれる。
「冷蔵庫ダンジョン、何かあったん?」
 ご飯盛りながら聞く。冷蔵庫ダンジョンには、牛乳やチーズ、お肉、貝柱と魚の切り身でかなり助かった。特に牛乳は5匹の仔達の栄養になってるし、お肉や貝柱がビアンカとルージュの食事になってる。私達もずいぶんお世話になってるし。
 冷蔵庫ダンジョンに何かあると、ちょっと困る。
「私はよう分からんけど。お父さん、何か聞いとる?」
「確か、ダンジョンが改修に入ったって聞いたよ。今は誰も入れんって」
「改修?」
 確か、シュタインさんが言ってたな。ダンジョンが広くなるってやつね。
『あのダンジョン、どうかなるのですか?』
『コハク達の牛乳、どうなるの?』
 ビアンカとルージュも心配そうだ。
「聞いた話やと、大きくなるとか、階層が増えるとかやったはずやけど………」
 確か、冷蔵庫ダンジョンの改修はずいぶん前だったはずだけど。
「様子ば、見るしかないね。マーファに帰る頃には落ち着いているかもしれんし。ねえ、冷蔵庫ダンジョンの経過ば適宜聞いといてくれる?」
「ん、分かった」
 父が貝柱を食べながら答えてくれる。
 ステーキどんぶりが出来上がる。
 日本酒で顔を赤くした晃太と手分けして運ぶ。
「はい、どうぞ」
『ガブガブッ』
『ガブガブッ』
 ステーキどんぶりがあっという間になくなって行く。
 さて、私もご飯食べよう。
 でも、冷蔵庫ダンジョン、どうなるんだろう?
 貝柱、美味しい。これを使ったグラタン、美味しかったなあ。ダンジョン改修して、貝柱が手に入らなくなったらどうしよう。牛乳とかも手に入らなくなったら、元気達の大事な栄養源がなあ。
 困るなあ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~

大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア 8さいの時、急に現れた義母に義姉。 あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。 侯爵家の娘なのに、使用人扱い。 お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。 義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする…… このままじゃ先の人生詰んでる。 私には 前世では25歳まで生きてた記憶がある! 義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから! 義母達にスカッとざまぁしたり 冒険の旅に出たり 主人公が妖精の愛し子だったり。 竜王の番だったり。 色々な無自覚チート能力発揮します。 竜王様との溺愛は後半第二章からになります。 ※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。 ※後半イチャイチャ多めです♡ ※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。