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帰途③

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 スカイランを出て、2日後のお昼。
 ルージュに周囲に誰もいないのを確認してもらい、ルームを開ける。
 従魔の足拭きをタップする。
 元気達のお昼の準備をする。母が作ってくれた特製おじやだ。専用の器に盛って、並べると、気持ちよく食べてる。
 ビアンカとルージュのご飯も準備。さくら庵のとろとろ親子丼と、JOY-Pの焼き肉丼をたっぷり。
「さて、と」
 私は神棚にお祈り。
「神様、いらっしゃいますか? お昼良かったら、伯父のお店のランチはいかがですか?」
 昨日はお忙しかったみたいで、お返事がなかった。
 せっかくの異世界のメニューだし。スキルを与えてくれた時空神様にお礼しないとね。

 いただくぞ-

 お返事あり。
「何人いらっしゃいます?」

 俺と雨の女神と、チビが6人ー

「はい、お待ちください」
 町の洋食みつよしのメニューから選ぶ。
 まず、時空神様と雨の女神様に、本日のランチのチキンソテー。オニオングラタンスープを付けて、と。お子様には、オムライス・ビーフシチューを3つ、フライドポテトとボロネーゼ。こんなもんかな? あ、時空神様、たくさん食べるから、足りないね。えーっとI市特産野菜のサラダと、明太子とポテトのグラタン、本日の魚のソテー、と。
 晃太と手分けして、お地蔵さんの前に並べる。
「どうぞ」
 お祈り。
 目を開けると、綺麗にお皿は空になっていた。

 いつも、ありがとうー
 いただきまーす
 わーい

 賑やかな声が響く。
 喜んで頂いたようだ。
「さ、私達も食べようかね」
「そやな」
 私達も町の洋食みつよしのランチをタップ。白身魚のカルパッチョもタップ。
「「頂きます」」
 チキンのかりっ、とした表面、ニンニクがちょっと効いたトマトソースにご飯がすすむ。
 ご飯が足りずに、追加注文する。
 時空神様、足りたかな?

 すまん、チビ達の食欲がー。こらー、座って待ってろー

 大変そうだ。
 私は液晶画面をタップする。
「どうしたん?」
「足りないみたいや、時空神様大変みたいよ」
 サーモンマリネ、エビのフリット、フライドポテト、シーフードドリア、フライドチキン。こんなもんかな?

 卵の食べたいー

 小さな男の子の声。魔法の三柱神様かな。もちろんつけますよ、オムライス・ビーフシチューをタップ。
『ユイ、私も食べたいのです』
『食べたいわ』
「はいはい。ちょっと待ってね」
 まず、神棚に。
「どうぞー」

 ありがとうー、あ、こら、ちゃんと座れー

 また、お供えしますからね、時空神様の言うこと聞いてくださいね

 はーい、はーい、はーい、はーい、はーい、はーい

 元気な返事が来ました。
 うふふ、かわいい。
『ユイ、ユイ』
『こっちこっち』
「はいはい」
 ビアンカとルージュが、そわそわしながら、お皿を咥えている。
 オムライス・ビーフシチューをそれぞれの器に2人前を乗せたら、あっという間になくなった。
『美味しいのですッ』
『また、食べたいわッ』
 2人にも大好評だ。気に入ってもらえて良かった。
「いいよ、伯父さんのオムライス、美味しいけんね」
 伯父さんのお店が誉められたようで嬉しかった。

 帰りはもと来た道を進むだけ、来た時と比べてずいぶん風が冷たくなったが、ノータに無事に到着する。
 門番さんは私達を覚えていてくれた。まあ、ビアンカとルージュを覚えていただけかな。
 一泊予定で、まず、ギルドに到着報告。ギルドには私だけ入る。結構人がいたからね。
 窓口の男性も私を覚えていてくれた。
「はい、ミズサワ様、確認しました」
「ありがとうございます。明日には出ますので」
「はい」
 あ、そうだ。
「あの軍隊ダンジョンのドロップ品があるのですが、買い取って貰えますか?」
「それはもちろん。担当者を呼んで参ります」
 男性は別のデスクで作業していた中年男性を呼ぶ。
「こちらが、買取・査定をしています、ビリィです」
「ミズサワ様、ビリィと申します」
「ミズサワです、よろしくお願いします。現物はすべて弟が持っていますので、呼んでもよろしいですか?」
「はい、ご案内しますよ」
 ビリィさんと外で待つ皆と合流。
 ノワールの手綱を、手綱持ちの兄妹に託す。
 私達はビリィさんの誘導で、ぞろぞろと応接室に行こうとしたが、さすがに狭いため、ギルドの中庭にビアンカと仔達に残ってもらう。ルージュだけ、付いてきてもらう。
「これがドロップ品のリストです」
「拝見します」
 ビリィさんが晃太からリストを受け取り、フリーズする。
「あ、あのミズサワ様、これは今回のダンジョンアタックでのすべてのドロップ品ですか?」
 ビリィさんが計算してから聞いてくる。私達がノータを出たのは、約2ヶ月前だ。多分、普通の冒険者パーティーが一度に持ってくる量とは桁外れなんだろう。
「いいえ、三度目のダンジョンアタックでのドロップ品です」
「さ、左様ですか………」
「ビアンカとルージュが優秀なので」
 ほほほ、みたいな。
「半分はアルブレンに持って行きたいので、それ以内で」
「ははは、半分も買い取る資金はございませんよ。ミズサワ様、ギルドマスター達と相談してもよろしいでしょうか? これは吟味して買い取らせて頂きたいのです」
「構いません。どれくらいお時間かかります?」
「そうですね、明後日まで頂きたいのですが」
「分かりました、明後日の朝、伺っても?」
「はい」
 一泊延長だ。
 私達はビリィさんに挨拶してギルドを出る。
 手綱持ちの兄妹に銀貨1枚渡すと、ぴょんぴょんして喜んでいる。
 ノワールも大丈夫な宿もあったし。ちょっとのんびりしようかね。
 よし、ここは異世界のメニューで、お茶でも。
『ねえ、ユイユイ』
「なんねルージュ」
『散歩に行きたいのです』
「今、座ったばっかりなんやけど。ほら、ちょっとお茶でもさ」
『最近、動いてないのです』
『勘が鈍るわ』
 何の勘やねん。てか、ノワールとずっと並走してたやん。
『行きたいのです』
『散歩散歩』
「ただの散歩やなかろうもん」
『せっかくお母さんが、マジックバッグを付けてくれたのです』
『使ってみたいわ』
 そう、マジックバッグを下げるベルトが出来上がっていた。革のベルトで首から下げる感じだ。雪山とかの遭難探索犬が下げる感じになってる。
『行きたいのです』
『ねえ、ちょっとだけ。ね、ちょっとだけ』
 きゅるん、とされて、結局陥落するダメな飼い主。
 総出でノータを出て、近くの森に。出る時門番さんが不思議そうな顔していたが、従魔の散歩してきます、というと納得してくれた。
 ある程度進んで、周囲に誰もいないのをルージュが確認。私はルームを開けて、晃太と仔達で入る。
「早く帰って来てね。門が閉まると大変やけん」
『分かったのです』
『行くわよ、ノワール』
「ブヒヒヒンッ」
 颯爽と駈けていく三匹を見送り、私はルームに入る。
 変なの捕って来ませんように。
 このお祈りが届くことはなかった。
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