上 下
150 / 820
連載

エリクサー⑥

しおりを挟む
 現在、ユリアレーナ王国の王子様は4人。
 第2側室カトリーナ様の一人息子、第1王子ジークフリード様。
 第1側室エレオノーラ様には、第2王子ゲオルグ様、第3王子ローラント様、第4王子エアハルト様。
 第1王位継承権はフェリアレーナ様だけど、セザール様と結婚したら、自然消滅。王子様達が1つずつ繰り上がりになる。
 で、その王子様達には、婚約者がいないそうで。
 原因はガーガリア妃だ。
 いろいろあって、婚約できていないそうで。
 ただ、今年22歳のジークフリード王子様と、19歳のゲオルグ王子様には、ほぼ正室に内定しているご令嬢がいる。
 ここまではワルド君が説明。
「ただ、フェリアレーナ様の時のように、ご破談になる可能性があるんですよ」
 ハーフエルフのコロンフルさんが追加で説明。
「ああ、最初の婚約は白紙になったって」
 リティアさんの話を思い出す。
「そうです。だから、ジークフリード王子とゲオルグ王子もご破談になる可能性があり、未だに候補に名を上げようとする者達が混戦しているんです」
 特に王座に近いジークフリード様とゲオルグ様の正室候補にと、爵位のある人達が、自分の娘や身内をあの手この手を使いアピール。
 表はきらびやかだが、裏はどろどろのどろんどろんのお妃レース。
 うわあ。
「それにラーバフ伯爵は、フェリアレーナ様を自分の息子と結婚させる事が出来なかった。あの膿のせいで。初めのフェリアレーナ様の婚約相手はカルーラの辺境伯の嫡男だったんです。その婚約がご破談、なら、自分の息子を婚約者にって画策したけど、結果、膿のせいでハルスフォン伯爵にってことになり、相当煮え湯を飲まされたようですよ」
 ここで言う膿って言うのは、ガーガリア妃の事。
 貴族の世界とか、王族の世界とかよく分からないけど、お世継ぎ的なのはいいのかね? よく分からん。
 しかし、コロンフルさん、よく知ってるなあ。綺麗な顔して女はこの手の話は、好きなんです、と。
 ふ、ふーん。
「だからフェリアレーナ様がダメならどちらかの王子の妃にって事で、3人の娘に、かなりの額を注ぎ込んでいるんです」
 ワルド君が興味のない顔で続ける。
 ちなみにローラント王子は10歳、エアハルト王子は8歳の為、このお妃レースには関係ないが、いずれこの幼い王子達を巡って似たような状況になるはずと。
 現在、3人のラーバフ伯爵の娘は首都サエーキにいて、最高の英才教育を受けているそうだ。もちろん身の回りの物も、最高級の物で囲み、豪華なお茶会や夜会を開催。他の婚約者候補開催のお茶会や夜会にも積極的に出ている。そうなれば衣装や装飾品にお金がかかる。見くびられないように、と。他にも根回しやらなんなら、いろいろお金がかかるそうで。
 よお、分からん、貴族の世界。
 その3人の娘さん達は、そこまでして、王子が好きなのかね? まあ、好きなら頑張りんしゃい。親でもあるラーバフ伯爵も、そんな娘さんを応援しているだけだろう。
「そのせいで、孤児院の予算が削られているんです。街の壁の修繕や、他の予算もです」
「それって、いいの?」
 肩を竦めるワルド君。
「よくはないですね。ラーバフ伯爵の妹がかなり注意して、なんとか遣り繰りしてるようですよ」
「そう」
 その妹さん、苦労しているね。
『ユイ、ユイ、お腹空いたのです』
『帰りましょう。コハク達が心配だわ』
「ああ、ごめん。皆さん、私達これで」
「引き留めて申し訳ないな。テイマーさん、お気をつけて、ああ、この2体の従魔がいるから心配ありませんな」
 はははと笑うダルダールさん。だが、気にかけてくれるのは嬉しい。
 挨拶して別れる。
「ねえ、ビアンカ、ルージュ。あの孤児院に寄付ばしたいけどよか?」
『? お金を渡すのですか?』
『人が生きていくには、お金がいるんだったわね』
「そう、それが、あそこにはそのお金が少なくて、子供達がお腹を空かせているんよ」
『ユイの考えなら構わないのです』
『そうね。いくらやんちゃでも、小さな子がひもじい思いをしているなら、かわいそうだわ。お金で解決できるなら、別に構わないわ』
『そうなのです。ひもじいのは、見ていると切ないのです』
「ありがとう2人とも」
 本当にありがたい。
 2人をこんな風に育ててくれた、フォレストガーディアンウルフのお母さん、感謝します。

 ダンジョンドロップ品の、ギルド買い取り日まで、私はもへじ生活やぺんたごん、ディレックスを往復する。
 あの後、晃太にお妃レースの件、寄付の件を説明する。
 なら、今、必要そうな物も添えようと言うことに。
 靴や服、下着、靴下、タオル、文房具。ナチュラルコットンの生地。赤ちゃんの哺乳瓶、粉ミルク。あ、自然素材の石鹸もあるから、それも追加。思い付く限りのものを揃える。
 ヘルプに来てくれた母もタグを外したり、シチューを作ってくれた。私は異世界への扉に通い過ぎてダウン。花とヒスイのペロペロ攻撃を受けながら、魔力回復をまつ。嬉しいのだが、窒息しそう。うつ伏せになれば、元気とコハクが踏み越えるし、結局母の寝室に避難した。だけど、ヒスイがドアをバリバリして、ドアにキズが入る。もう、と思いながらドアを開けると、ヒスイがすり寄って来たので、全てを許します。あははははん、かわいかあ。中庭で遊んでいたルリとクリスまで来たので、もふもふ、すべすべに囲まれて休んだ。極楽や。クリスのお尻が微妙に私の顔にのる。あはははん、窒息しそう。まあ、よかか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~

大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア 8さいの時、急に現れた義母に義姉。 あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。 侯爵家の娘なのに、使用人扱い。 お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。 義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする…… このままじゃ先の人生詰んでる。 私には 前世では25歳まで生きてた記憶がある! 義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから! 義母達にスカッとざまぁしたり 冒険の旅に出たり 主人公が妖精の愛し子だったり。 竜王の番だったり。 色々な無自覚チート能力発揮します。 竜王様との溺愛は後半第二章からになります。 ※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。 ※後半イチャイチャ多めです♡ ※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。