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軍隊ダンジョン⑥

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 軍隊ダンジョンから出た次の日。スカイランをゆっくり観光する。まず、噴水広場の屋台を回る。
 果物や野菜が並び、串焼きや焼き小籠包、おやき、パンの香りに誘われて、ビアンカとルージュが屋台を覗き込むので、大量に買い込む。
 屋台の皆さん、ひーっ、となるが売ってくれた。あちこち回り、いろんな店を覗く。高級店付近は避けつつ、お酒屋さんで試飲していった。人の良さそうな笑顔で小さなカップを渡されたので、飲んでみたら、甘いスパークリングワインだ。飲みやすい。
 え? スパークリングワイン? シャンパン? しゅわしゅわよ。蓋は? コルクじゃ気が抜けるんじゃないの?
「スパークリングワインは初めてですか?」
 私の反応を見て、店員さんが聞いてくる。
「はい、甘くてしゅわしゅわしてますね。この蓋はどうなっているんですか?」
「シーサーペントの骨ですよ。気密性が高いですからね。こちらの蓋は樹液を固めた物です。スカイランのすぐ北の森で採れるんです」
 見せてくれたのはシリコン感のある蓋、これはシーサーペントの骨。もう一方は少し茶色の蓋だ。こちらでも、ゴムの樹みたいのがあるんだね。
 話を聞いていると、ビアンカとルージュがカップの匂いを嗅ぐ。
『甘い匂いなのです』
『そうね。甘い匂いだわ』
「飲んでみる? あ、母乳に悪かか」
『少しなら、大丈夫なのですよ』
『一口くらい、いいと思うわ』
 まあ、そうか、これだけの体格で一口くらいなら、母乳に影響しないかな。あ、お乳タイムの後に一口ならいいかな。あ、父の最強スキル鑑定SSSの出番だ。
「1本ください」
「ありがとうございます」
 店員さんは笑顔で包んでくれた。
 その後、お酒屋さんが大繁盛していた。
 それからもゆっくり回り、夕方宿に戻る。
 で、父に鑑定してもらった。1本くらいなら、問題ないが、やはり多少は母乳に影響すると。
「ただ、2時間くらいで分解されるけん、飲む時間を考えたら大丈夫や」
「なら、お乳タイムが終わってから飲んでみる?」
『飲みたいのです』 
『飲みたいわ』
 お乳タイムが終わり、仔達が寝たのを確認。私が飲む一杯分だけ残して、ビアンカとルージュのお皿に注ぐ。
「どうぞ」
『これは、なんだか不思議な飲み物なのです』
『そうね。甘いけど、私はあんまり、好きじゃないわ』
 ビアンカには好評だが、ルージュはいまいちのようだ。なんでだろう? アルコールの所為(せい)かな?
「ちょっと待っとき」
 私はディレックスでリンゴの炭酸飲料を購入する。ルージュの皿に注ぐ。
「さ、ルージュどうぞ」
『ごくごく、あ、これは飲みやすいわ』
『私も飲みたいのです』
「はいはい」
 ビアンカはアルコール大丈夫、ルージュは苦手のようだ。
 これで、晩酌メンバーが増えることになる。ただし、ダンジョンにいるときは避けること、お乳タイムの後、週に1~2回までとすることになった。
 次の日、ドロップ品の買い取りの為に、皆で冒険者ギルドに向かう。
 キーナさんがにっこり笑って、奥に誘導してくれる。ビアンカとルージュには引いていたが、かわいか5匹の仔達には好意的な視線だ。
 マーファと同じ広さの応接室に案内してくれる。ビアンカとルージュはごろり、元気とコハクはうろうろ、ルリとクリスはビアンカにびったり。ヒスイは私の膝に乗り上がる。あははん、重かあ。
 若い女性職員さんが、さ、とお茶を出してくれる。
 キーナさんが、書類片手にやって来た。
「まず、ドロップ品の査定でございます。金属からでよろしいですか?」
「はい」
 鉄    10  248キロ
 鉛    30  120キロ
 錫    30  95キロ
 銅    50  130キロ
 銀    100  60キロ
 金    5800  30キロ
 魔鉄   500  180キロ
 ミスリル 3000  20キロ
 価格はグラムだ。鉱石の価格はよくわからない。鉄はスカイラン近くの鉱山で良質な鉄が出るそうで。ミスリルってもっとするかと思ってけど、インゴットにするのは比較的簡単らしい。武器などに加工するのに、熟練した鍛冶師の腕が必要でそちらにお金がかかると。どちらかというと魔鉄が人気。無属性魔法を覚醒させた中堅~ベテラン冒険者がまず欲しがるのは、魔鉄の武器と。この魔鉄やミスリルを含んだ武器になら、付与を多く付けることができると。鉄の剣なら精々1個が限界と。魔鉄やミスリルなら、含有量にもよるが、3個は余裕を持って付けられると。金属だけで3億越えたよ。
 Dサイズのマジックバッグは100万。絵具は1箱5万。魔法の水筒は30万。武器類もすべて買い取ってくれた。ただ、オーガの棍棒は使いこなせる人はそういないので、単なる金属として扱われる。カブトムシの角は弓や、大きなサイズなら槍の柄などに使われる。軍隊蟻の装甲は加工したら靴底とかに使われるそうだ。ボス部屋で出てきた猪の肝は高級食品と。フォアグラかね? 他にも色々あったけど、長くなりそうなのでやめた。
「合計は5億1680万5000になります」
 やっぱり凄い額。
 白金貨、大金貨、金貨、銀貨確認。大丈夫だ。私がサインと魔力を流す。
「それから、地図ですが、よろしいですか?」
「はい」
 キーナさんが地図を広げて、晃太に色々質問。
「ここは?」
「岩でした。で、周囲を藪で囲まれていました」
「では、こちらは?」
「ここは傾斜になっています」
 私は地図が読めない女なので、聞き流す。ヒスイの顎の下をかいかい。かわいかあ。
「はい、ありがとうございます。情報料として30万でよろしいですか?」
「え。そんなにもらっていいんですか?」
 晃太が困惑。
「はい。そうですよ。特に詳しく分かっていない階層の情報は、とても貴重なんです。冒険者も戦闘し、周囲を警戒しながら進むため、後からどうだったか、なんて覚えていません。仮に覚えていたとしても不確かな情報を頼りに作成した地図を指標に進んで大怪我なんて、よくあります。下手をしたら命に関わりますからね。それを防ぐためにより正解な情報には、相応の対価をお支払しています」
 なるほど。
 晃太が書類にサイン、魔力を流す。金貨を受け取ると、口が尖っている。
「ミズサワ様、これだけのドロップ品を回していただきありがとうございます。特に魔法の水筒は多くの冒険者達が望んでいた物です。本当にありがとうございます」
 魔法の水筒は、たまに出るが、ほとんどが見つけた冒険者の方が、手放さずに確保するため、なかなか市場に出ないそうだ。今回のように、ビールケースのように出てくるのは、まずないと。マジックバッグに関してもそうらしい。
 キーナさんに丁寧に見送られて、私達はギルドを出た。
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