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行動計画①
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「晃太が生まれる前の話や」
ルームに入り、ダイニングキッチンに入る。
仔達はお昼寝モードに入る。従魔の部屋から空調調整して、ビアンカとルージュが毛繕いすると、直ぐにおねむ。確認して、椅子に腰掛ける。
「家を買って直ぐの事件やったし、K町で起きた事やから覚えとう」
父が記憶を頼りに話し出す。
今から30年前。K町にある公立高校の生徒が7名、忽然と姿を消した。K町は隣町だ。
学年も性別も違う生徒が消えた。当然大騒ぎになり、大捜索になった。だが、誰1人見つからなかった。この中の一年生の女子高生の名前が、佐伯ゆり。父の同僚に、同じ佐伯の名前の人がいたので、同僚皆で心配したが、全く関係ない事だったが、父の記憶に深く残っていた。
「当時、かなり探し回ったんやけど、誰も見つからんかった。平成最大の誘拐事件や怪事件とか呼ばれとる」
「あったなあ、そんな事件」
母も思い出す。
「同一人物なん? だって、ビアンカを産んだのは288年も前やろ? その人はその前から、こっちにおったって事やろ? おかしくない?」
晃太が疑問の声を上げる。
「確かに、それはおかしかなあ」
そう言われて、私も疑問になる。
「だけど、無関係とは思えん」
父の言葉で、同一人物説に傾く。
うーん。
詳しい事を知ってる可能性があるのは。
「なあ、ビアンカ、ルージュ。2人のお母さんの主人の事、何か知っとう?」
ダイニングキッチンの境界線でお座りしているビアンカとルージュに聞くしかない。
『母様のマスターなのですか?』
『そうねえ』
考え込む2人。
『母様は、あまり、話さなかったのです』
『そうね。母様のマスターの事は。うーん。従魔の心得とか、人や町の過ごし方とか。ああ、マスターとの約束くらいかしら』
「そう言えば、何か約束とか、原始のダンジョンとか言いよったよね」
赤い髪の神様のブーストをもらった日だったはず。
『そうだったのです。確かに、母様は主人と約束を果たしたいと言っていたのです』
「それ、どんな約束?」
そう聞くも、2人は顔を見合わせる。
『母様は教えてくれなかったのです。ただ、約束とだけ言っていたのです』
『そうねえ。聞いても、まだ、早いとか言って。原始のダンジョンの場所も教えてくれなかったわ』
肝心な所が。
ビアンカを産み、ルージュを種族関わらず育てた2人のお母さん。元々はハンターウルフだったお母さん、フェンリル、通称リルさんは主人とたくさん冒険してフォレストガーディアンウルフに進化した。そして、その主人が亡くなった後、ビアンカのお父さんに見初められたそうだ。それで産まれたのが、ビアンカとお兄さん。
「ねえ、他に誰か、知っとる人おらんね?」
聞くと、初めて見るビアンカとルージュの渋い顔。まるで、梅干しでも食べたような顔だよ。
『そう、なのですねえ』
『そうねえ』
追加でレモンを食べたような顔。
『知っているとしたら』
『そうねえ』
『兄、なのです』
ビアンカより大きなもふもふ。違う、フォレストガーディアンウルフのお兄さん。
『まあ、母から聞いて、知っているかも知れないのです』
『可能性が、あるかしらねえ』
えらい歯切れの悪か2人。
「じゃあ、お兄さんなら、分かる?」
『そう、なのですねえ』
『あ、聞いても忘れているかもしれないわッ』
『そうなのですッ。きっと忘れているのですッ』
「お二人さん、お二人さん」
急に勢いついた2人。
なんやねん、そのお兄さん。
「本当に他に知っとる人おらんの?」
晃太が念のために聞いている。
『父が生きていたら、知っていたかも知れないのです』
『そうね。後は、主様がもしかしたら』
冷蔵庫ダンジョンで聞いたワードだ。
「その主様って、会えるような人?」
『そうなのですね。会ってはくれるとは思うのですが』
『そうかしら? 会いに行くとしても、母様に連れられてしか会った事はないわ。母様がいなくなってから、一度もお会いしなかったし』
悩む2人。
「その主様はどこにおるん?」
『魔境なのです、最奥にいるのです』
ドラゴンが住むような場所よね。魔の森の奥地よね。そんな所の最奥って。
「え? 人やないの?」
『ドラゴンよ』
「食べたやんっ」
ステーキにして、丼にして、胡椒や塩ガリガリして、煮込んで食べたやんっ。
『主様は普通のドラゴンではないのです。あの鰐と一緒にいたドラゴンとは、次元が違うのです』
『そうよ。主様はこの世界で勝てる者は存在しないくらいの方よ。皇帝竜(カイザードラゴン)なんだから』
ぶーぶーとビアンカとルージュ。
やっぱり、とんでもなさそうな感じね。
「左様ですか。その主様とは会えんね、却下やね」
「意義なし」
晃太が同意してくれる。
よく分からない顔の両親。
「その主様っていう人は、ビアンカとルージュを可愛がってくれたん?」
母が聞く。
『そうなのですね、どちらかと言うと父様に会いに来ていて、私もルージュも声をかけてくれたのです』
『そうだったわ。ふふ、私の目を見て、一番綺麗なクリムゾンジャガーだって誉めてくれたわね』
『私も母様に似て、毛並みが一番だって言ってくれたのです』
ふーん、へえ、優しい感じの人、いや皇帝竜(カイザードラゴン)さんかね。
「おじいさんみたいな人なんやね。元気達を見せんでよかね?」
「行くの、不可能やない?」
母の言葉に私が切り返す。魔境の最奥やねん。
「やっぱり、あのサエキ様に話を聞いた方が早いかね? 手紙もあったし」
「わいはそれ反対や。あの人、食えん人や。全部信用するには早くない?」
晃太が待ったをかける。
「あのサエキ様って人のお母さんは、もしかしたら、日本人の可能性はあるよ。やからと言ってこちらもそうです、なんて言えんやろ? もし追及されてん? うちらがディレナスで召喚された事がばれたら、ヤバくない? それにあの手紙、わざと目に付くように落としたんやないの? うちらの反応みるために。姉ちゃん、コロッと信用して話しそうやけど、今は止めといた方がよくないね? やっと生活基盤が揃い出したんやからさ」
返す言葉がございません。
ビアンカとルージュは、サエキ様が嘘は言っていないと判断したが、今の生活が壊れるのは困る。
「あえてこちらから接触するのは、止めた方がよか」
晃太の意見は採用された。
だが、ビアンカとルージュのお母さんがいると思われる原始のダンジョン。場所さえ分かれば、孫にあたる元気達を見せにいけるし、2人だって会いたいはず。
「姉ちゃん、神様にお願いして場所だけでも聞いたら?」
「あ、その手があったったい」
ルームに入り、ダイニングキッチンに入る。
仔達はお昼寝モードに入る。従魔の部屋から空調調整して、ビアンカとルージュが毛繕いすると、直ぐにおねむ。確認して、椅子に腰掛ける。
「家を買って直ぐの事件やったし、K町で起きた事やから覚えとう」
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学年も性別も違う生徒が消えた。当然大騒ぎになり、大捜索になった。だが、誰1人見つからなかった。この中の一年生の女子高生の名前が、佐伯ゆり。父の同僚に、同じ佐伯の名前の人がいたので、同僚皆で心配したが、全く関係ない事だったが、父の記憶に深く残っていた。
「当時、かなり探し回ったんやけど、誰も見つからんかった。平成最大の誘拐事件や怪事件とか呼ばれとる」
「あったなあ、そんな事件」
母も思い出す。
「同一人物なん? だって、ビアンカを産んだのは288年も前やろ? その人はその前から、こっちにおったって事やろ? おかしくない?」
晃太が疑問の声を上げる。
「確かに、それはおかしかなあ」
そう言われて、私も疑問になる。
「だけど、無関係とは思えん」
父の言葉で、同一人物説に傾く。
うーん。
詳しい事を知ってる可能性があるのは。
「なあ、ビアンカ、ルージュ。2人のお母さんの主人の事、何か知っとう?」
ダイニングキッチンの境界線でお座りしているビアンカとルージュに聞くしかない。
『母様のマスターなのですか?』
『そうねえ』
考え込む2人。
『母様は、あまり、話さなかったのです』
『そうね。母様のマスターの事は。うーん。従魔の心得とか、人や町の過ごし方とか。ああ、マスターとの約束くらいかしら』
「そう言えば、何か約束とか、原始のダンジョンとか言いよったよね」
赤い髪の神様のブーストをもらった日だったはず。
『そうだったのです。確かに、母様は主人と約束を果たしたいと言っていたのです』
「それ、どんな約束?」
そう聞くも、2人は顔を見合わせる。
『母様は教えてくれなかったのです。ただ、約束とだけ言っていたのです』
『そうねえ。聞いても、まだ、早いとか言って。原始のダンジョンの場所も教えてくれなかったわ』
肝心な所が。
ビアンカを産み、ルージュを種族関わらず育てた2人のお母さん。元々はハンターウルフだったお母さん、フェンリル、通称リルさんは主人とたくさん冒険してフォレストガーディアンウルフに進化した。そして、その主人が亡くなった後、ビアンカのお父さんに見初められたそうだ。それで産まれたのが、ビアンカとお兄さん。
「ねえ、他に誰か、知っとる人おらんね?」
聞くと、初めて見るビアンカとルージュの渋い顔。まるで、梅干しでも食べたような顔だよ。
『そう、なのですねえ』
『そうねえ』
追加でレモンを食べたような顔。
『知っているとしたら』
『そうねえ』
『兄、なのです』
ビアンカより大きなもふもふ。違う、フォレストガーディアンウルフのお兄さん。
『まあ、母から聞いて、知っているかも知れないのです』
『可能性が、あるかしらねえ』
えらい歯切れの悪か2人。
「じゃあ、お兄さんなら、分かる?」
『そう、なのですねえ』
『あ、聞いても忘れているかもしれないわッ』
『そうなのですッ。きっと忘れているのですッ』
「お二人さん、お二人さん」
急に勢いついた2人。
なんやねん、そのお兄さん。
「本当に他に知っとる人おらんの?」
晃太が念のために聞いている。
『父が生きていたら、知っていたかも知れないのです』
『そうね。後は、主様がもしかしたら』
冷蔵庫ダンジョンで聞いたワードだ。
「その主様って、会えるような人?」
『そうなのですね。会ってはくれるとは思うのですが』
『そうかしら? 会いに行くとしても、母様に連れられてしか会った事はないわ。母様がいなくなってから、一度もお会いしなかったし』
悩む2人。
「その主様はどこにおるん?」
『魔境なのです、最奥にいるのです』
ドラゴンが住むような場所よね。魔の森の奥地よね。そんな所の最奥って。
「え? 人やないの?」
『ドラゴンよ』
「食べたやんっ」
ステーキにして、丼にして、胡椒や塩ガリガリして、煮込んで食べたやんっ。
『主様は普通のドラゴンではないのです。あの鰐と一緒にいたドラゴンとは、次元が違うのです』
『そうよ。主様はこの世界で勝てる者は存在しないくらいの方よ。皇帝竜(カイザードラゴン)なんだから』
ぶーぶーとビアンカとルージュ。
やっぱり、とんでもなさそうな感じね。
「左様ですか。その主様とは会えんね、却下やね」
「意義なし」
晃太が同意してくれる。
よく分からない顔の両親。
「その主様っていう人は、ビアンカとルージュを可愛がってくれたん?」
母が聞く。
『そうなのですね、どちらかと言うと父様に会いに来ていて、私もルージュも声をかけてくれたのです』
『そうだったわ。ふふ、私の目を見て、一番綺麗なクリムゾンジャガーだって誉めてくれたわね』
『私も母様に似て、毛並みが一番だって言ってくれたのです』
ふーん、へえ、優しい感じの人、いや皇帝竜(カイザードラゴン)さんかね。
「おじいさんみたいな人なんやね。元気達を見せんでよかね?」
「行くの、不可能やない?」
母の言葉に私が切り返す。魔境の最奥やねん。
「やっぱり、あのサエキ様に話を聞いた方が早いかね? 手紙もあったし」
「わいはそれ反対や。あの人、食えん人や。全部信用するには早くない?」
晃太が待ったをかける。
「あのサエキ様って人のお母さんは、もしかしたら、日本人の可能性はあるよ。やからと言ってこちらもそうです、なんて言えんやろ? もし追及されてん? うちらがディレナスで召喚された事がばれたら、ヤバくない? それにあの手紙、わざと目に付くように落としたんやないの? うちらの反応みるために。姉ちゃん、コロッと信用して話しそうやけど、今は止めといた方がよくないね? やっと生活基盤が揃い出したんやからさ」
返す言葉がございません。
ビアンカとルージュは、サエキ様が嘘は言っていないと判断したが、今の生活が壊れるのは困る。
「あえてこちらから接触するのは、止めた方がよか」
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だが、ビアンカとルージュのお母さんがいると思われる原始のダンジョン。場所さえ分かれば、孫にあたる元気達を見せにいけるし、2人だって会いたいはず。
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