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新しい扉③

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「姉ちゃんっ、出たばいっ」
「はいよっ」
「アップッ」
 只今スライム部屋。
 王冠スライムが出てきた。元気とコハクはぽよんと弾かれる。
 私は新調したフライパンを握り締める。晃太の支援で私は王冠目掛けて振り下ろす。
 王冠がひしゃげて、スライムの体を貫通する。

 てってれってー
【レベル44 アップしました】

「よし」
 フライパンをくるくるする。
 レベルが40越えてからなかなか上がりにくくなっているけど、順調や。神様から頂いた経験値5倍が効いてる。
「姉ちゃん、様になってきたやん」
「やめて」
 せっせとコアを拾い上げる。最後に出てきた宝箱をルージュにチェックしてもらう。
『大丈夫よ』
「ありがとう、晃太どうぞ」
「ん」
 晃太が開けると、ポーションが2本入っていた。
「これは引き取りやね」
「そやな」
 ポーション系はすべて引き取りにしている。晃太のアイテムボックスに収まる。
『明日から上階に行くのですか?』
「2、3日待って。残るお母さん達やノワールの食料の確保が必要やしね」
『分かったわ。ノワール、食べるものね。何階から行くの?』
「そうやねえ、どうする?」
 アイテムボックスのリストを見ている晃太に声をかける。
「うーん、牛が出る階に行かんとなあ。元気達の牛乳が少なくなってきとるけん」
 花や元気達はダンジョンから出た牛乳をよく飲む。2リットルの牛乳瓶が毎日1本なくなる。栄養満点なので、孤児院への炊き出しのシチューによく使っている。ミルクプリンを作った時は、子供達は大歓声を上げていた。80人の子供達のミルクプリンの材料になったので、かなりの牛乳瓶を消費した。ビアンカとルージュにも大好評で、巨大プリンをまるで飲み物のように平らげていた。そして、皿を咥えて母におねだりするので、そのあまりの可愛さに、せっせと母が作っている。
 それに牛乳は19階か21階のが他の階で出たものより、断然美味しい。
「なら、19階とか21階やね。20階から行こうか? あの目玉も少し手に入れたら。ダワーさんがポーションにしてくれるやろうし」
 スタートは20階となる。予定は最長の10日だ。
 私達は冷蔵庫ダンジョンを出て、パーティーハウスに戻った。

 ディレックスに通い、必要な物を手に入れる。
 晃太と手分けして買い物袋を下げて出る。
 母が確認して、アイテムボックスに入れている。母のアイテムボックスはSクラス。かなり大量に入る。
 それから私は液晶画面をタップ。サンサンサンのお弁当をいくつか頼む。さくら庵の蕎麦シリーズもだ。そのままアイテムボックスに入れておけば、好きな時に出して出来立ての状態で食べれる。麦美ちゃんのパンもだ。
「大丈夫かね?」
 リストをチェックしていた母に確認。炊き出しの為の材料もある。
「うーん、まあ大丈夫やろ。必要ならマルシェで買うけん。あ、花のドックフードが少ないけん買ってきて」
「分かった」
 チーズクリームで花のドックフードを手に入れる。
 母がせっせとお米を炊き、料理を作る。カレーにシチュー、卵焼き、肉じゃが、がめ煮、切り干し大根等々。鍋やタッパーにたっぷり。すべて晃太のアイテムボックスに。
 よし、準備万端かな?
 丸3日かかって準備した。
 ダンジョンに潜る前日、山風の皆さんの御用聞きが終了する。
 皆さんで挨拶に来た。
「明日から、別の冒険者が付きます。ミズサワさんもご存じかと思いますよ。冷蔵庫ダンジョンで会っているパーティーです」
 あの剣を向けた人がいたパーティーだそうだ。
 あの人達か。いろいろ誤解があったけど、感じの悪い人達ではなかった。
 お礼を含めて山風の皆さんに菓子折りを渡す。中身はいろいろだ。銀の槌やもへじ生活の焼き菓子をたくさん詰め込んだ。
 ロッシュさんは遠慮していたが、さんざんお世話になったからね。なんとか受け取ってもらえる。最後にハジェル君が改まる。
「ミズサワさん、ミズサワさんのお陰でデニスが良くなりました。本当にありがとうございました」
「いいんよ。ハジェル君、ダンジョンに行くんやろ? 気をつけるんよ」
「はいっ」
 いい返事。
 山風の皆さんは、明後日スカイランに向かうそうだ。
 花や元気達が皆さんにすがり付き、十分撫で撫でしてもらう。人見知りのルリとクリスも、すっかりなついている。
「ロッシュさん、皆さん、ありがとうございました」
 父がお礼を言う、私達も頭を下げる。
「これが、俺達の仕事ですから気にしないでください。こちらこそ色々頂いてありがとうございます。ミズサワさん、皆さん、本当にありがとうございました」
 名残惜しいが、お別れだ。
「クンクンッ」
 何かを察したのか、花がシュタインさんの膝にすがり付くので、私が抱える。シュタインさんが優しく撫でると、その手をはみはみする。
「ユイさん、これからも声をかけられると思いますが、気をつけてください」
「はい、ありがとうございます。シュタインさん、お世話になりました」
『ユイにおかしなやつを近づけないのです』
『そうね、私の気配感知から外れて近づけないわ』
「ビアンカとルージュが頼もしいので、大丈夫ですよ」
「そうでしたね」
 私の返答に、シュタインさんは笑う。
「皆さん、お気をつけてください」
「はい。ミズサワさんも」
 山風の皆さんを家族みんなで見送った。

 次の日。
 新しい御用聞きの新しい冒険者の方がみえた。
 やはり、見たことある人だ。
「今日から御用聞きの冒険者、クラベルのリーダー、アーロンです」
 細マッチョのリーダーさん、人族のアーロンさん。サブリーダーさんはがっしりした人族男性ブルーノさん。で、剣を向けたのは垂れ耳の犬系の獣人のルーベン君。耳、触りたか。あ、ダメダメ、失礼だよね。残るメンバーは3人いて、もう1つのパーティーハウスの御用聞きに行っていると。確か女性が2人と中年男性だったはず。
 両親と花の紹介も済み、早速アーロンさんが父に付き添いファベルさんの工房に。私達は元気達がしっかり覚醒してから、ブルーノさんとルーベン君に付き添われて冷蔵庫ダンジョンに。
「気を付けるんよ」
「分かっと」
「ん」
『大丈夫なのです』
『そうよ、私達がいるわ』
『帰ったら、プリンが食べたいのです』
『そうね、大きいのがいいわ』
 行く前からおねだりしてる。あれ作るのに、いくつ卵いると思っとるん? コレステロールが心配だが、父の鑑定で大丈夫な量は大体分かっているし、稼ぎ頭だし、ドラゴンの件があるからしばらくよかか。食べる姿がかわいかし。
 母は基本的にビアンカとルージュに甘いので、よかよ、と二つ返事。
「じゃあ、行って来るね」
「気を付けるんよ」
「ん」
 私達は冷蔵庫ダンジョンに向かった。
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