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乗り越えよう⑧

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 夏の暑さをやり過ごし、比較的穏やか日々。
 こっちに来てから初めてじゃないかな?
 治験も始めはトラブルあったようだけど、何とかやっているようだ。
 孤児院の引っ越し作業も進んでいる。
 父だけは毎日忙しく、朝ファベルさんの工房に向かい、夕方帰って来て、夕食後書斎で図面を広げる。前と同じような生活や。
 私と晃太は母の手伝いだ。週2回の孤児院に持って行くスープ作りだ。母のスイッチが入り、花や元気達の新作バンダナや服を作っている。最新作はセーラー服だ。元気とコハクは青いラインと青いリボン。ルリとクリス、ヒスイには赤いラインに赤いリボン。花はレースの着いたピンクの襟にピンクのリボン、ピンクのスカート付き。
 かわいかぁぁぁぁぁぁッ。
 パシャパシャパシャパシャパシャ。
 もちろん冷却の一時付与付き。
 それで散歩すると、女性の黄色い悲鳴。鼻が高い。
 母も嬉しかったのか、今はノワールの為に作成している。
 ビアンカとルージュは、戦闘モードになると服が破れる可能性が高いのでバンダナのみ。まあ、サイズデカイし、作るの大変だしね。
 元気のスライム効果は約1週間。目安は私に突撃するかどうかで判断だ。なので、冷蔵庫ダンジョンの1階には定期的に通うことになる。カートと新しい乳母車の図面は、予定より長引いたが先日無事に図面が立ち上がる。製作期間は1ヶ月だ。それまで元気を運ぶために、通常の台車を購入した。ないよりましだしね。冷蔵庫ダンジョンから出ると元気はすぐにその場で寝てしまうから。
 そんなこんなで過ぎていく。
 本日もスライム効果の為に、冷蔵庫ダンジョンに行ってきた。台車に元気を乗せると、すごい見られるけど仕方ない。本日はコハクまで抱っこ抱っことねだるため、晃太が抱っこ。
「重かあ、コハク、重かなあ」
「みぁ………」
「あはは、寝たばい」
「そうやな、ん、ヒスイ何ね? 抱っこね」
「にぁあにぁあ」
 私の足にヒスイがすがり付く、かわいか。コハクが抱っこされてるから、自分も、と思ったのかな。
 抱っこしたけど、重かあ。確実に重かあ。こりゃ10キロ越えたかなあ。カートをビアンカに押してもらいながら帰る。たまに落ちそうになる。そんな感じでもう冷蔵庫ダンジョンを何度か往復しているので、ざわざわされない。ああ、今日も寝てますねえ、かわいいですねえ、で済んでる。
 無事にパーティーハウスへ。
 元気とコハクを従魔の部屋に寝かせる。
「なあ、姉ちゃん、レベルどうなったん?」
「ん? レベルは43よ、ルームは26」
 あれからも王冠スライムが出たら、私がフライパンで一撃している。ルームの為だけどね。私だってこってり中華食べたい。
「そうなあ」
「まだ、かかりそうやね」
「そやなあ」
 2人で悩んでいると、父が帰宅し夕御飯。
 久しぶりに亀の鍋だ。
 お肌の為に、日焼けした肌の修復を助けると、父の鑑定に出ましたので。
 〆まで食べます、残らず食べます、汁も残しません。
 食べていると、父が改まって話出す。
「あのなあ、実は、お父さんな、職人ギルドに登録ばしようとおもっとう」
 今父はファベルさんの大工工房に通いながら、冷蔵庫やオーブンの図面を書いている。360度回転するキャスターについてはすでに書き上げてある。
「ファベルさんやヘラフィさんから、特許取った方がよかし、今後も仕事をするなら便利やからって」
 ヘラフィさんは、乳母車や籠の注文の時に対応してくれた男性店員さん。あの人は信用出来るかな、元気やコハクをかわいいって言ってたから。うん、悪い人やなか。
 ヘラフィさん曰く、キャスターはすぐに申請をした方がいいと。
「お父さんもな? 実はお母さんもなんよ」
「え? お袋もな?」
 柚子胡椒を追加している晃太が驚いた声をあげる。
「パーカーさんからね、元気達にセーラー作ったやん? 特許申請したら、それは使用料とれますよって」
 使用料ね。
 母的にはあまり高額にはしないと。一般のお母さんが作ることがあるので、サイズ違いの型紙を作り販売する事で使用料にするつもりらしい。
「だから優衣、もへじ生活で80~150センチの服ば一式買って来ちゃんね? 明日でよかけん」
「ん、分かった」

 次の日。
 肌がてかてかになった晃太、おでこがてかてかになった父。
 私は踵がてかてか、母は肘がてかてか。
 ビアンカとルージュは全体的にてかてか。
 なぜ?
 本日はシュタインさんとマアデン君が来て、ギルドまで両親を送ってくれる。
 私はその間にルームの掃除をして、もへじ生活の開店を待つ。晃太は花や元気達のブラッシングだ。
「晃太、姉ちゃんもへじ生活行くけど、何かいる?」
「そやなあ、特になかよ」
「分かった」
『ユイ、甘いおやつがいいのです』
『私も食べたいわ』
「はいはい」
 私はもへじ生活に。
 サイズ違いで子供服をゲット。シャツとワンピースだ。ただ、全サイズが手に入らず。また、来なくては。それから神様用の個包装のお菓子と、ビアンカとルージュのお菓子だ。スコーンなんて一度に何個も食べるしね。私は1つで十分なんだけど。こんなものかね。さ、出よう。両手いっぱいに荷物を持って出る。
 どうにか全サイズ手に入れ、片付けた頃に両親が帰って来る。
「お帰り、どうやった?」
 私が麦茶を出しながら聞く。
「大丈夫や」
「案外簡単やったよ」
 花の熱烈歓迎を受けていた両親が、職人ギルドカードを見せてくる。冒険者ギルドカードとあまり変わらない。難しい手続きを考えていたようで、ほっとしている。
 お昼を食べながら話を聞くことに。
 本日はジョイップがスタミナフェアをしていたので、私と晃太はサイコロステーキのガーリックソース。両親はさくら庵の天ざる蕎麦。ビアンカとルージュはサイコロステーキのガーリックソース、ライス大盛りを5人前。
「「「「いただきます」」」」
 ぱくり、うん、ドラゴンのお肉と比べたらダメよね。ソースが美味しい。
「で、どうやったん?」
 晃太が聞く。
「まず、説明からやった」
 母が教えてくれる。
 職人ギルドは、パーカーさんのようなテーラーや、大工、シェフ、針子さん等様々な職業の人が所属。父は技術者、母は針子として登録したと。こちらも冒険者のようにランクがあり。SからEだ。
 E 見習い、弟子の位置。もしくは時間労働者として雇い入れてもらえる。
 D 弟子から一人前へ自立したと認められる。
 C 屋台や露店を持つことが出来る。
 B 弟子を取り、自分の店舗を構える許可が出る。業種により指名依頼を受けることが出来る。弟子をとる場合、最低限の賃金と生活の保証が義務付けられ、相応の収入がないとなれない。
 A 支店を構えることが許される。このランクになれば、職人ギルドの要職につける。国からの指名依頼を受けることが出来る。
 S 国外からの指名依頼を受けることが出来る。
 それぞれのランクと前年度の収入で、人頭税が変わる。
 なるほど。
 母はセーラー服の型紙を立ち上げることもあり、Dランク。父はキャスターの特許申請や冷蔵庫やオーブンの設計とかあったため、Bランク。父は工房に興味はないため、フリーランスの技術者になる。
 これで収入があることになり、晃太の扶養から外れることになる。
「なんか、地に足が着いた感じやなあ」
 晃太がしみじみ。
「わい、なんか、しようかなあ」
「なら、姉ちゃんの代わりにスライム部屋に行ってよ」
 毎回王冠スライム倒してるの私なんだけど。
「それはよか」
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