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手土産③

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 戦闘しています、ご注意ください。




 次の日。
 ボス部屋を、ちゅどん、どかん、してドロップ品を拾う。
 それから、ビアンカにお願いして、果物の樹を地面ごと、抉るように取り出す。
「ありがとうビアンカ」
『これくらい大したことないのです』
 一つずつ果物も埋める。
 これで孤児院への手土産大丈夫かな。あと、あの藪をどうにかして、果樹のお世話方法を教えてくれる人を探して。
「姉ちゃん、全部、入れたばい」
「ん、ありがとう」
 さて、22階に行こう。
 元気とコハクのリードを確認。
 長靴に履き替える。
 21階のボス部屋を抜けて、階段を昇る。
 なんか、ワクワクしてきた。
「浜やな」
「そうやな」
 白い浜に、打ち寄せるのは優しい波。
 で、恐ろしくでかく、凶悪な目の亀達。
「いきなりーッ」
 ビアンカとルージュが魔法を飛ばす。
『ユイ、コウタ、ルームにッ』
「姉ちゃんッ」
「はい、ルームッ」
 ダッシュで避難、あ、元気がっ。リードを振り切って、何故かルームと反対方向に駆けていく。一気に血の気が引く。
 私は咄嗟にルームのドアを閉める。中には晃太とルリ、クリス、コハク、ヒスイだ。
「元気ーッ」
『元気ッ、待つのですッ』
 長靴で走りにくいけど、全力疾走。
 元気の目の前には、あんぐりと口を開けた凶悪な目の亀。
 火の塊があんぐり開けた口に吸い込まれ、いつの間にか走り込んだビアンカの爪が、亀の首を明後日の方に向ける。ぼき、じゃない、ドギイっていう、すんごい音。
『元気ッ、ユイの近くにいるのですッ』
 ビアンカの怒声に、さすがの元気も止まり、伏せる。
 もたもたしながら、伏せた元気にたどり着く。伏せる元気を抱え、られない、重い、無理、踏ん張ってるもん。
「晃太ッ」
 ルームのドアを小さいサイズで開けて、晃太が中から腕を伸ばして元気を引き入れる。私も滑り込む。
「元気、大丈夫ね」
「くうーん」
 情けない声を上げる元気。ケガはないようや、ああ、良かった。
 ルームの窓から窺うと、まるで怪獣映画のような光景だ。あんなに大きな亀が、空に舞い上がっている。重力、ないのかな?
 亀以外にも、波の間から飛び出しながら、放水する魚。いや、放水する時点で魚じゃない。その放水も普通じゃない、砂浜を凪ぎ払う。
『戦闘モード 火炎姫(フレアジャンヌ)』
 薔薇の模様が浮かんだルージュが、炎の塊を無数に放つ。全弾着弾。あはははん、すごかあ。だけど、いつもの口上がない。いきなり薔薇の模様が浮かび上がった。
 ものの数分で終了。
『終わったわ。流石、闘神様のブーストね、短時間で発動したわ』
 あれだけの力だから、いつもはいろいろ集中したり魔力を操ったりが必要らしい。だけど、闘神様のブーストは、それをすっ飛ばして発動可能にすると。もともと強いルージュが、もっと強くなる。まあ、いいかあ。ケガがなければ。
 砂浜に転がったり、波に乗って打ち上げられるドロップ品。
 さて、拾いますか。
 ルームから出ると雷が落ちる。
『元気ッ、あれだけ、いきなり飛び出してはいけないと言っていたのですッ』
「くうーん、くうーん」
『お前は何を聞いていたのですッ』
「くうーん………」
 ビアンカの雷が。
 雷女帝(エル・カテリーナ)の雷には、腹を出して寝てたのに。
 まあ、仕方ない。しばらく様子見よう。
 ビアンカの雷中に、亀の甲羅に、笹に包まった白っぽい肉、瓶に詰まった血や肝。魚のふりして放水していたのは、白身魚みたいな切り身が笹に包まっている。それと牙だ。うわあ、鋭い。魔石もたくさん。
「ビアンカ、もう良かろう? 先に行こうや」
『分かったのです』
 ビアンカが怒ったままでは、進まないし、流石に元気も反省しているみたいだし。
 元気が耳と尻尾を下げて、私に駆け寄る。
 それから元気は私と晃太の間に陣取る。反省したかね。
 晃太が地図片手に誘導。私は付いていくだけ。
 時々、亀が来たけど、我等のビアンカとルージュに勝てる訳なく。空に舞い上がっていくか、首が明後日を向く。
「あ、桟橋あったばい。あの先がボス部屋や」
「あの桟橋? 危なくない?」
 狙い撃ちされそう。
『大丈夫なのです。ふんッ』
  バリバリバリバリッ
 海面を雷が走る。
 ぷかーと浮かぶ、魚もどきとドロップ品。
 拾えるドロップ品は拾う。
 無事にボス部屋前に。
 ルージュが行くことに。
 本日2回目の火炎姫(フレアジャンヌ)で突入。
  ちゅどどどどどーんっ
  ちゅどどどどどーんっ
 相変わらず凄い熱気。
『終わったようなのです』
「そうね」
 ルージュがとことこ出てくる。
『終わったわ』
「お疲れ様。晃太、お茶ば。なんやった?」
『貝よ』
 貝? 流石海フィールド。
 ボス部屋を覗く。地底湖みたいだ。いろいろ転がってる。
 笹に包まっているのは、貝柱かな。形的に、ただ、サイズが違うけど。多分5、6キロありそう。キラキラした粉が入った袋に、不揃いの真珠に魔石。
 途中で晃太も参加。
 貝柱、ビアンカとルージュがモグモグ。良かか、たくさんあるし。
「幾つね?」
「えーっとな、貝柱が34、粉が13、真珠が66、小粒魔石が60、魔石が49、大きめ魔石が6やな」
「小粒魔石が多いなあ。この粉、何に使うんやろ?」
「さあ? あ、宝箱や」
 ルージュがチェック。
『罠があるわ、待ってね』
 黒い靄が、宝箱を包み、小さな音を立てる。
『大丈夫よ』
「ありがとう。では、開けましょう」
 ワクワク。
 中級ポーションが3本、解毒ポーションが2本、ビロードの箱。箱の中身は、涙形の真珠とダイヤモンドのイヤリングと、イヤリングと同じデザインのペンダント。立派なデザインやね。
「貝柱は食べられるなら、いくつか引き取りやね」
「そやな、天婦羅にしてもらおうや」
 口が尖る晃太。
 貝柱は食べれるはず。
『テンプラ? 美味しいのですか?』
『それ、そのままでも美味しいわよ』
「お母さんの出汁の天つゆは最高よ。それに浸して食べたら更に最高たい」
『もう一度行くのです』
『そうね』
 はい、ちゅどん、どかん。
 その日はそれで終了。
 いつもならビアンカにくっついて寝る元気は、今日は私のベッドに潜り込んで来た。
 まあ、仕方なか。
 だけど、大型柴犬サイズのため、私のスペースがなくなる。ただ、母のベッドに行こうとすると、元気が追いかけてくるので、晃太のベッドとくっつけて寝た。元気を真ん中にして川の字で寝た。だけど、途中で元気が横に伸びきって寝たので、私と晃太は結局ベッドから追い出されてしまった。
 まあ、かわいかけん、許そう。
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