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連載

手土産①

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『戦闘モード 風乙女(シルフィリア)』
  どかかかぁぁぁぁんっ
  どかかかぁぁぁぁんっ
  どっかぁぁぁぁぁんっ
『終わったようよ』
「はいはい。行くよ晃太」
「ん」
 軍手装備し、トングに籠を持ちボス部屋へ。
 冷蔵庫ダンジョン2日目。
 転がるドロップ品。目玉の入った瓶を拾う。これで目のことで悩んでいる人が救われるなら、何てことない。と、思うけど、直視せずせっせと拾う。晃太もその話を聞いてから、渋い顔はするが、せっせと拾っている。
 最後に出てきた宝箱をルージュにチェックしてもらう。
『ユイ、これは宝箱ではないわ、ちょっと待って』
 ルージュがジャガーパンチ一発。
 木が嫌な音を立てて割けるような音と共に、宝箱が消える。
「なんやったん?」
『擬態魔物よ。こうやって油断させて、相手に噛みつくの』
「怖っ」
 擬態魔物の後に、やっと出てきた宝箱。ルージュのチェック。罠なし。
「どうぞ、晃太」
「ん」
 この宝箱開ける瞬間のわくわくは、いまだに続いている。
 ビロードの箱。
 晃太が開けると、小粒のダイヤモンドが飾られた指輪とブレスレット、ネックレスだ。まあ、エレガント。
「晃太、目玉だけで、いくつね?」
 他はよか。
「えっとなあ、325や」
「結構集まったね。そろそろ21階に行ってみる?」
『そうなのです。蛇はもういいのです』
『そうね、飽きたわ』
 それではと、21階へ。階段を昇る。
 21階も草原だが、あちこち木が生えている。実のなる木が。
 カリン、レモン、プラム、ブルーベリー、イチジク等々。季節感なし。
「いっぱい実なっとうやん。お土産に持って帰らん?」
「そやな」
 蛇がいないかチェックしてもらい、果物を籠に入れる。元気が飛びかかるので、ビアンカにリードを持ってもらう。
「あ、なあ、姉ちゃん」
「なんね?」
 急に思い付いたように、晃太が言う。
「この木ばさ、孤児院の庭に植え替えれんね?」
「え。あ、そうやな。でも、大丈夫かね? ほら、寄生虫とか、土問題とか」
「あ、そうやね、誰かに聞かんとなあ」
 晃太の考えはいいと思うけど、誰に聞こうにも、ここはダンジョンだしなあ。
 うーん。
 とりあえず、果物を晃太のアイテムボックスに入れる。
 再び移動開始、猪やら角の生えたウサギが来たけど、我等のビアンカとルージュに勝てるわけない。
 果物回収したので、ボス部屋には2時間で到着。
『私が行くわ』
『いいのです』
「決まった?」
『ええ、私が行くわ』
 ルージュがドアの前に移動し、魔法発動。
『戦闘モード 光の貴婦人(リュミライトレディ)』
  ドガガガガガガガガガガァァァァァンッ
  ドガガガガガガガガガガァァァァァンッ
『終わったようなのです』
「早かねえ」
 相変わらず。
 ボス部屋覗くと転がるドロップ品。
「チーズがあるって事は牛?」
『ええ、そうよ』
「ルージュ、お疲れ様。休んどって、晃太お茶ば」
「ん」
 せっせと拾う。大きいのは晃太に直接アイテムボックスに入れてもらう。丸太みたいなチーズはとてもじゃないけど、持ち上げることはできない。しれっとモッツァレラ食べてるビアンカとルージュ。良か、たくさんあるし。お肉も大量だ。ただ、今までの牛のドロップ品とは違い、角がやたら綺麗だ。まるでガラスみたい。全部拾います。
 で、最後に出てきた宝箱。ちょっと大きな宝箱。ルージュにチェックしてもらう。罠はない。
 今度は私が開ける。
「あ、バイオリンやない?」
「そやね、2台もあるよ」
「姉ちゃん、バイオリンは2丁や。あ、奥になんかあるばい」
「あ、本当や。これは」
 小さなビロードの箱だ。私が開ける。
 小粒の石の指輪だ。
「小さいなあ」
 贅沢な事を口にしてしまう。だが、換金して、ビアンカとルージュのご飯に。
『ユイ、待ってなのです』
『それから魔力を感じるわ』
「え? これ?」
「なんやろうなあ。親父に見てもらうな? 良ければ姉ちゃんすればいいやん」
「そやね」
 とりあえずすべて晃太のアイテムボックスに。
 この次は確か、海フィールドのはず。
「どうする? この上は海ばい。今日はボス部屋前でルーム開けるね? 22階まで上がるの?」
 相談し、ボス部屋前でルームを開ける。
 元気達が中庭で駆け回るのを、確認して、夕御飯の準備。
「何にするん?」
「そやねえ」
 屋台で買っておいた、大量のケバブと、野菜たっぷりトルティーヤ、焼き小籠包もつける。
「で、どう?」
「よかよ。今日、わい、ビールにする」
「軽くにしてよ。ビアンカとルージュが食後の運動とか言いそうやけん」
「あ、そうやったな」
 さて、夕御飯の準備、と。あ、その前に、お地蔵に向かって手を合わせてみる。
 神様、ダンジョンの木を持ち帰っても大丈夫でしょうか?

 ……………………………………

 返事はなし。
 まあ、そうやね。
「姉ちゃん、姉ちゃん」
「なんね? おうっ」
「お嬢さん方、久し振りじゃの」
 わざわざ、来ていただきました。
 始祖神様がっ。後は5歳くらいの黒髪の女の子。わあ、かわいかっ。
「始祖神様、わざわざ、ありがとうございます。お座りください。晃太、お茶お茶。姉ちゃん、ちょっと、行ってくるけん」
「あ、あ、あ、分かった」
 挙動不審の晃太にお茶を任せて、私はダッシュで銀の槌へ。
 お待たせするわけにはいかない。
「すみませんっ、全種類1個ずつくださいっ、あ、フルーツケーキとプリンを3つください」
 ホールケーキも含めて、合計8050なり。
 白い箱を合計3つ、大きなビニール袋に入れてもらい、銀の槌を出る。あ、ポイントカード。次回でよか。
 ルームでは、中庭の窓からビアンカとルージュがこちらを見ている。口で、ごめん、待っとって。
 ダイニングキッチンでは、既に晃太がリンゴジュースを出し、お皿とフォークも出してる。
「お待たせしました、始祖神様、どうぞお好きなものを」
 ホールケーキ以外を開けると、女の子の顔が輝く。
 手を出そうとした女の子を、優しく止める始祖神様。
「これ、まずは、なんと言うんだ?」
「えっと、ありがとうございます」
 かわいか。
「はい、どうぞ、お好きなものを」
「これが、いいです」
 と、指したのはあまおうが乗った色鮮やかなタルト。ケーキのなかで一番高いの選んだね。さすが。
 私がお皿に移す。
「いただきます」
「はい、どうぞ。始祖神様はどれにされます」
「ごちそうになるぞ。毎日供え物、本当にありがとうお嬢さん方。ほっほっほっ、こんなにあると迷うなあ。では、儂はそれを」
 始祖神様はオレンジのムースだ。
「いやあ、本当に旨いなあ」
 好評で良かった。
 残りのケーキ、ホールケーキ、フルーツケーキ、プリンはお持ち帰りで。
「まず、お嬢さん方に改めて礼を」
「え、何でしょう?」
 お供えのお礼なら、さっき聞いたけど。
「あのダイアナという娘のことだ」
「ダイアナちゃん?」
「そうだ。儂らは地上に介入はできん。極々限られた者の限られたスキルで、僅かな力を与えられるがな。お嬢さんの『神への祈り』のようにな。儂らはスキルの管理、魂の保護、それらは地上を見守ることしかできん。だがな、人々の祈りは届くのだよ」
 始祖神様は視線を落とす。
「我が子を救ってください、と親の痛みを含んだ祈りは、儂に届くがどうもしてやれなくてなあ。いつもいつも、胸が苦しくなる。だが、お嬢さん達のお陰で、あの家族は救われた。我が世界の住人を助けたのだ、始祖神として感謝する」
「そんな、私達はできる事をしただけです。それも全部神様から頂いたスキルがあってこそです」
 これは本当だ。
 私のルーム、父の鑑定、母の生活魔法。これが揃わなくては、ダイアナちゃんは治らなかったと思う。
「本当に惜しいな。いや、逆によかったかもしれん」
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