もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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すべきこと②

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 パーティーハウスに戻り、母に事情説明。
 母はすぐに納得してくれた。
「お母さん大変やけど、抗生剤と解熱剤を作るのには、お母さんの魔法が必要なんよ」
「そうね、分かった」
「姉ちゃん、わい、なんばすればいい?」
「そうやね。あ、記録お願いね」
「ん」
 よし、ルームを開けて、異世界への扉を開ける。
 ディレックスだ。
 カゴ片手に回る。
 さて、どうしよう。
 こんな時はどうしたらいい?
 のど越しのいいゼリーかな? 冷たいのは、うーん、いや、そう言ってはいられない。とりあえず、口に出来そうな物を思いつく限りカゴに入れる。
 まずは子供用の内服ゼリー。それからパックに入った栄養ゼリー、プリン。かなり迷ったけどアイスクリームにシャーベット。一口くらいなら、いいかな? とりあえず、カゴに入れる。念のためスープのもとも入れる。最後に額に貼る冷却材だ。怪しまれるかもしれないけど、誤魔化そう。
 ビニール袋を下げて出る。買ったゼリー等を器に移しアイテムボックスに入れる。準備したはいいが、ダイアナちゃんが起きてくれないと話にならない。無理に起こすのはかわいそうだが、どうしたものか。
 無理に起こして嫌がられたら、それこそもともこもない。どうしよう?
 悩みながらルームを出る。
「お父さんは?」
「まだたい」
「なら、私一旦パーカーさんとこに行って来るけん」
 ビアンカには残ってもらい、私はルージュとパーティーハウスを出る。もし遅くなったら灯りを出してもらわないといけないし。そろそろロッシュさん達も帰る時間だ。
「俺達は大丈夫ですよ」
 そうシュタインさんは言ってくれたけど、そこまで甘えられないが、付いてきてくれた。
『ねえ、ユイ、どうしてそこまでするの? あの子供の雌、かなり弱ってるわよ』
 歩きながらルージュが聞いてきた。
「そやねえ、自己満足とか、偽善とかかな? なんかね、せんといかんって思うんよ。上手く説明出来んけどね」
『よく分からないわ、何かいいことあるの?』
「そうね。そうや、ねえルージュ、ルージュにお乳をくれて育ててくれたお母さん。ルージュが大人になってから、あれが欲しいとか、これしてとか言ってきた?」
『いいえ、ないわ』
「それと一緒たい」
 ルージュが首を傾げる。
「何か返して欲しいわけやないと。ダイアナちゃんにね、よくなって欲しいだけよ」
 ただ、それだけ。
 ルージュは目を細める。
『そう。なら、いいわ。私はユイの従魔だから、従うだけよ』
「頼りにしてるけんね。でも、私はルージュやビアンカを従えている気はないけんね。家族やけんね」
『ふふふ、分かっているわ』
 ルージュが頭をすり寄せてきた。私は腕を抱き寄せるように回した。

 パーカーさんの家に到着。ルージュに外で待ってもらう。
「ミズサワさん」
 ジョシュアさんが出てきた。
「フィナさんは?」
「母は今休んでます。父は店に戻りました。パトリックがいまダイアナについてます」
「そうですか」
 子供部屋を覗くと、パトリックさんがベッド横の椅子に腰かけて、ダイアナちゃんをじっと見ている。
「失礼します」
 ドアを小さくノックする。
 顔を上げるパトリックさん。
「ダイアナちゃん、目を覚ましました?」
「いいえ」
 疲労の滲んだ顔で、パトリックさんは首を振る。
 私はアイテムボックスから色々出す。ゼリーに冷却材。
「これは何です?」
 ジョシュアさんが額に貼る冷却材を見て聞いてくる。
「おでこに貼るんですよ。冷たくて気持ちいいですよ。どうぞ、貼ってみてください」
 1枚渡す。パトリックさんが貼ってみて驚いている。
「冷たいけど、気持ちいい」
 では、1枚ダイアナちゃんのおでこにぺたり。
 さと、これからどうしよう?
 悩んでいると、パトリックさんが声を上げる。
「ダイアナッ、ダイアナッ」
 え、目が覚めた? あ、冷却材で目が覚めたかな?
 ダイアナちゃんはぼんやりしたような顔で、私達を見ている。
「ダイアナちゃん、分かる?」
「…………だれ?」
 掠れた声のダイアナちゃん。パトリックさんが慌てて出ていく。
「ミズサワよ。お父さんから聞いてない? 大きなウルフとジャガーのテイマーよ」
 私の言葉に思い出したのか、ダイアナちゃんはキョロキョロ。
「どこ?」
「外で待ってもらってるよ」
「いないの?」
「いるよ。会ってみたい?」
 なんとなく聞いたけど、ダイアナちゃんの目が少し輝く。あ、いい感じかな。
「うん」
 興味を引くことができたけど、どうしよう? 流石に家に入れるわけにはなあ。ちょっと狭いし。うーん、うーん、どうしよう? 病人の部屋に動物は、うーん、でも、期待に満ちた目に見上げられて、少しなら良かろうと思う。少しだけ。
 後はどうやって会わせよう。いやまず、ご家族の許可を。
 あ、そういえば、ここ1階だ。庭に面した窓がある。
「ジョシュアさん、お庭にルージュを入れてもいいですか?」
「え、ええ、いいですが」
 ジョシュアさんが迷うが、ダイアナちゃんからじっと見上げられて、答えてくれる。
「はい、大丈夫です。誘導してきますね」
「お願いします。さて、ダイアナちゃん、ゼリー持ってきたけど食べれるかな?」
 ダイアナちゃんは小さく首を横に振る。うーん、どうしよう?
「ああ、ダイアナッ、ダイアナッ」
 フィナさんが子供部屋に駆け込んで来た。
 震える手でダイアナちゃんの頭を撫でるフィナさん。
 そんなフィナさんを見て、なんて、声をかけよう。多分、亡くなったローナちゃんとダイアナちゃんが被って見えるんだろうけど。子供が先に逝く、私には想像できない苦しみを抱えているのだろう。
 私は、なんて、声を掛けたら、いい?
 ゼリーの器を持ち、突っ立ったままで悩む。
「あのミズサワさん、ダイアナのおでこのは?」
「冷却材ですよ。冷たくて気持ちいいんです」
 迷っているとフィナさんが聞いてきたので説明していると、窓から、ぬっとルージュが顔を出す。
 ひい、とフィナさんが引く。大丈夫ですよと、声をかける。
『ユイ、どうしたの?』
「ちょっとね、ダイアナちゃん、クリムゾンジャガーのルージュよ。綺麗な目でしょう?」
『毛並みも自慢なのよ』
「はいはい」
 ダイアナちゃんの顔を見ると、興味津々な様子だ。
「触ってみる?」
「うん」
「ルージュ、ちょっと寄って」
 首を伸ばすルージュ。
「ほら、触ってみて、すべすべよ」
 ゼリー片手に撫でると、ダイアナちゃんはおずおずと手を伸ばす。鼻先にちょっと触れている。
「すべすべだあ」
「でしょう?」
 ルージュは大人しく撫でられていたが、急に私の持つゼリーの器に顔を寄せる。
「あらあら、ダイアナちゃん、食べないとルージュが食べちゃうよ」
 そう言うと、ダイアナちゃんは何故か抵抗なく頷く。
 良かった、食べる気になってくれた。
 フィナさんが驚いた表情になっている。何日も口にしていない、フィナさん達も試行錯誤したはずなのに、あっさりダイアナちゃんが頷いたのに、驚いているのだろう。
「ちょっと起きようか。フィナさん、支えてください」
「は、はい」
 ダイアナちゃんをフィナさんが支えて、私はゼリーを少しずつスプーンで口に運ぶ。
 ぱくん、こくん、ぱくん、こくん。
 喉とか大丈夫かな?
「もういい」
「はい、よく食べました。じゃあ、もうちょっと寝よっか」
「うん。ウルフは?」
「明日、連れてくるからね」
 ダイアナちゃんを横たえて、布団を掛けなおす。
 眠ったのを確認しフィナさんが、わなわな泣き出す。
「ああ、ミズサワさん、ありがとうございます。ダイアナが食べました。食べました」
「フィナさん、これからですよ」
 第一段階かな。
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