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マーファ⑤

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 木皿を購入後、両親と花はマルシェに向かい、私と晃太とビアンカとルージュ、5匹の仔達は冒険者ギルドに向かう。
 冒険者ギルドに入ると、受付で昨日の女性職員さんがスマイル炸裂。
「ミズサワ様、こちらにどうぞ」
 応接間に案内してくれた。ビアンカとルージュでも入れる広さ。動き回ろうとする元気のリードを、ビアンカが足で押さえる。
 ソファーに座ると、ヒスイが私の膝に乗る。あははん、重か。
「では、ダークコブラの査定額ですが。まず、あれは特殊個体でした。皮は50万、肉は190万、肝は20万、牙は15万、魔石は2つありました、1つ20万です。解体料を引いて290万です」
 ダークコブラは、もともと闇魔法のブレスを吐く魔物で、素材には闇属性魔法を補助する力があると。皮は闇属性魔法を得意とする魔法使いのローブやケープになる。質のいい皮なのでブーツなんかにもなると。肝は薬の材料、闇属性魔法の補助するドリンク剤になる。ドーピングやん。牙は護符になる。肉はいいや、聞かない。
「ところでミズサワ様、ダンジョンに潜られるとお聞きしましたが」
 あ、昨日のあれ、知られてる。
「はい、潜るつもりですが。実はご相談したいことがありまして」
 私が残される両親と花の説明をする。
「なるほど、安全な宿をお探しと」
「そうです」
「ならば、冒険者ギルド管理のパーティーハウスでいかがでしょう?」
「パーティーハウス?」
「はい」
 高ランクの冒険者パーティーや、大所帯のパーティー、複数のパーティーが借りたりする借家だ。冒険者ギルドが管理しているのは、やはり残される家族が心配という人もいるみたいだ。借りれるのは、信頼のできる高ランクの冒険者のみ。パーティーハウスには魔道具や家具一式揃いすぐに生活できるし、毎日御用聞きも来るため、買い物に行かなくてもいいし、そのまま護衛として、マルシェに付いてきてもらうもよし。護衛はもちろん冒険者。護衛はそこそこランクの冒険者にしか出来ない、当番制だったり、他のパーティーメンバーが休養中の人がおこづかい稼ぎですると。週に2回シーツ交換や掃除もしてくれ、近くに高級住宅街があるため、警備兵さんが巡回もしてくれる。厩舎もあり、これは毎日お掃除に来てくれる。魔道具に必要な魔石も、燃料切れしたら、月で借りる場合一回まで無料交換してくれる。大きな街やダンジョンを持つ街にはある、特有のものらしい。アルブレンにもあったかもしれない。少し高めだが、今借りている平屋よりは週単位で考えると安く済む。ただし、一泊とかではなく、週、もしくは月単位でしか借りれない。
 いいやん。
「あの、話が上手すぎません? 自分らは一般人と変わらないんですけど」
 晃太が待ったをかける。
 確かに、いい話しすぎる。
 私達は下手したらこちらの一般人以下だ。
「もちろん、こちらの思惑はあります」
 にっこり女性職員さん。
「ミズサワ様、これからダンジョンに潜られるのですよね?」
「はい」
「その時に出るドロップ品を出来るだけ回して頂きたいのです」
 ドロップ品。ダンジョンで魔物を倒すと、死体は残らず、素材だけが解体された状態で出てくる。マーファは冷蔵庫ダンジョンと呼ばれるだけはあり、食材系がよく出るが、冒険者がすべてのドロップ品をギルドに回す義務はない。中には独自の販売ルートを持つ冒険者もいる。そういった冒険者は高ランク、そんな彼らが回すのも、高ランクのドロップ品。ギルドとしては正規なルートで販売したい、という気持ちもあるが、なかなか上手く行かない。クエストという形にしても、なかなか受理されないことが多い。
「特に今、乳製品が不足しておりまして。ぜひ、回して頂きたいのです。首都からも、問い合わせがよく来るんですよ。そちらのフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーの戦闘力は、アルブレンから連絡を受けています。私共で提供できるものは、すべて提供します。ですので是非上階層のドロップ品を回して頂きたいのです」
『嘘ではないようよ』
 ルージュが教えてくれる。
 ギブアンドテイクか。
「ちなみに、乳製品って、何階位から出ます?」
「15階から、牛系の魔物が出ます。21階までは草原のフィールドですので。それ以上は海フィールドです。もちろん、海フィールドで得られるドロップ品も回して頂きたいです」
 うーん、どうしよう?
 安全面を考えると持ってこいだけど。
「どうする?」
「任せるばい」
 うーん。
「今、そのパーティーハウスは空いていますか?」
「はい、二軒空いています」
「ではお願いします」
 私は決断した。
「日数はいかが致します?」
「そうですね。では、1ヶ月でお願いします」

 次の日。平屋を引き払い。冒険者ギルドが管理するパーティーハウスに移動した。二軒空きがあったが、小さい方にした。大きいのは、本当に大所帯のパーティー用で、かなりの大きさだ。私達が借りたのは、引き払った平屋より少し大きめ、居間がゆっくりして、ビアンカとルージュも寛げる。キッチンもミニじゃない。小さいが書斎とロフトもあり、食糧庫的な地下室もあり。庭も広く、ウッドデッキもある。掃除も行き届いている。
 1ヶ月、家賃65万。光熱費込みだ。考えようには安いと思う。食事はないけど、十分に生活できるし、何より安全だ。このパーティーハウスまで、わざわざ護衛の冒険者さん達が付いてくれたしね。ビアンカとルージュを見て、俺達必要? って顔はしていたけど。
「十分やん」
 母が納得。
 案内してくれた冒険者の皆さんと女性職員さんにお礼を言う。お金はすでに支払い済み。
「ダンジョンには潜りますが、私達自身は初心者以下ですので、初回はあまり期待しないでください」
「はい、承知しております」
 女性職員さんは笑顔で理解してくれた。
 一旦、パーティーハウス内をチェックし、私は父と冷蔵庫ダンジョンに出かける。
 スキップシステムで、どれくらいの魔力が必要か鑑定してもらうためだ。
 ビアンカとルージュにも、付いてきてもらう。
 運よく、スキップシステムを教えてくれた警備の人がいて、魔法陣を見せてくれた。
 魔法陣の上に、小屋を建てて、周りを警備していると。すぐ近くには救護用の小屋もあり。魔法陣は直径5メートルほどの円形で、見たことのない字がびっしり刻まれている。
「踏んでも大丈夫なんですか?」
「はい、問題ありません。そこに丸がありますよね、そこに魔石を置くと、魔法陣が作動します。魔力を流すのもその丸にながしてください。ただ、向こうから脱出してきている最中は使えません。その印は、魔法陣が白く光っているので、注意して見てください」
「はい」
 説明を聞きながら、父が魔法陣をチェック。
「お父さん、よか?」
「よかよ」
 説明してくれた警備の人にお礼を言って、パーティーハウスへ戻る。
「で、どうやった? 10階くらいまでなら、スキップ出来そう?」
「全然問題ないな。20階までなら大丈夫や。ただ、24階となると、ちょっときついみたいやな」
「そうね」
『ユイ、明日、ダンジョン?』
 ルージュがルビーみたいな目で訴えてきた。
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