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本領?⑥
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少し移動して、野営となる。
『ユイ、お腹空いたのです』
『ご飯ご飯』
「ちょっと待ってね」
金の虎、警備兵の皆さんがそれぞれ準備している。
あっという間に薪が集められて焚き火がつく。ルージュのリンゴサイズな光も漂っているから、そこそこ明るい。
皆さんは出したのは固そうな黒いパンだ。
「晃太、ビアンカとルージュのご飯お願いね。君たち、ご飯は?」
聞くと一昨日から食べてないと。何でも薬草摘んでいたら、知らずに森に入ってしまい。浅い場所だからと甘くみたら、帰り道が判らなくなったと。固まって移動していたが、マーラちゃんが見えにくい傾斜に足を取られて滑り落ち、動けなくなっていた所にあの白黒のヒヒに襲われそうになっていたと。
「そうね」
「お姉さん、怒らないの?」
「もう十分怖い思いもしたし、怒られたやろ? 私はちゃんとした冒険者やないけんね。ご飯、私たちの予備があるけん、食べなさい」
私は昨日作ったシチューを出そうとして迷う。鍋一杯に作ったから、平たい所じゃないと溢れる。
「ねえ、ビアンカ、ルージュ。食べてる所悪いけど」
『はぐはぐ、なんなのですか?』
「こうさ、平たい場所作れん?」
『なら、えい』
ビアンカが近くの岩に魔法を放つ。すっぱり、切れてる。岩がね、発泡スチロールみたいに。
いろいろ、視線が来るけど、まあ、よか。
綺麗な断面の岩のテーブルに、私のアイテムボックスからシチューの入った鍋を出す。
「晃太、皿とコップ、スプーン出して。後、パンもね」
「分かった」
出されたシチュー皿に、たっぷりシチューをよそう。
「ほら、手伝って」
キラキラ少年に声をかける。
「う、うん。でも、いいの?」
「良かよ。しっかり食べりい」
籠にあらかじめ入れていたパンも渡す。
「晃太、晃太」
私は小声で呼ぶ。
「なんね」
「マーラちゃんに、回復力アップの魔法をかけられる? 体力を削られんくらいのね」
「分かった」
晃太が小声で魔法発動。
回復魔法っていうのは、支援魔法の一種で、諸刃の刃だ。自身の回復力を上げるために、体力がない時に使うと、逆に体力を削ってしまい、キズが治る前に力尽きるらしい。ディードリアンさん情報です。治療魔法っていうのは回復魔法の上位魔法。魔力だけで治療するが、術者の魔力頼りになるらしい。
シチューはキラキラ少年達に行き渡る。
「わあ、美味しいっ」
「肉、一杯入ってる」
「パンも柔らかくて美味しい」
「こんなにたくさんの具があるシチュー、初めて」
「あ、あつっ、美味しいっ」
良かった、おきに召して頂いたようだ。
『私も食べたいのです』
『私も』
ビアンカとルージュが巨大ハンバーガーを平らげて、迫って来る。
「はいはい」
皿にシチューを入れると、飲み物のようになくなる。鍋一杯だったけど、半分になった。
さて、私達も食べるか。
スプーンを持つと、視線が。
振り返ると、金の虎のアルスなんとかさんが、しゃがんでジーッと見ている。た、食べにくい。
「た、食べます?」
こくこく頷くアルスなんとかさん。
「こら、よせ、アルス」
ファングさんが言うが、アルスさんは私に両手を出す。なんだろう、丸い耳がぴこぴこしている。あら、よく見たら幼い顔立ちしている。まだ、十代だよこの人。
うわあ、目が綺麗な青だ。純粋にキラキラしてる。
か、かわいかあッ。
「はい、どうぞ」
「うん」
渡すとがつがつシチューを食べる。気持ちいい食べっぷり。
「すみません………」
「たく、食い意地が張って、すみません」
ファングさんとリィマさんが謝って来る。
「うまい、うまい」
「もう、あんたって子は」
リィマさんは困った顔をしている。夢中で食べてるアルスなんとかさんの口元を拭いて上げてる。リィマさんはアルスなんとかさんの一回り年上のお姉さんだと。でも、何だかアルスなんとかさん、年のわりには、その、幼いというか。
空になった皿を出す姿も子供みたいだ。
私はシチューを追加していれると、がつがつ。
再び、ファングさんとリィマさんがすみません。
でも、結局皆さんに少しずつお裾分けした。ずいぶん少ない量になったけどね。
ビアンカとルージュが、食べたそうだったが、また作ればいい話だからね。了承してもらった。
「いやあ、このシチュー、美味しいですな」
バラダ―さんが感心した声をあげる。良かった、煮込んで。
他の皆さんのお口に合ったみたいで良かった。
「これ、ミズサワさんが?」
フリンダさんが聞いてくる。
「ええ、お口に合いました?」
「とっても美味しいです。お料理上手なんですね」
「まともに作れるのこれくらいですよ」
後はカレーくらい。ルウを変えるだけだからね。
和やかに夕食終了。
ビアンカが水の玉を出してくれて、それで皿やスプーンを皆さんで洗ってくれた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらがごちそうになったんですから」
バラダ―さんが皿やスプーンを回収。キラキラ少年達もお手伝い。
「お姉さん、ありがとう」
「ごちそう様でした」
「すごく美味しかったです」
「ありがとうございました」
腰を下ろしているマーラちゃんもペコリ。
「足りたね?」
私が聞くとうん、と頷くキラキラ少年達。
良かった良かった。
それから、就寝となる。
ブランケットはマーラちゃんともう一人の女の子、ハイナちゃんに一枚貸し出す。
丸くなったビアンカの影で、私は小さなルームの扉を開ける。ばれないように交代で晃太と入り、シャワー、洗面し、下着だけ着替えた。明日の朝ごはんの準備をした。パック入りのコーンスープを鍋に入れて温めただけ。後はパンだ。クルミパン、ブドウパン、ロールパンを籠に補充。ビアンカとルージュの朝ごはんはジョイップのミックスグリル、ライス付きを五人前。皿にてんこ盛りのせる。ルーム内のテーブルに置き、交代で入った晃太のアイテムボックスに入れてもらう。そうしてやっと外でブランケットに丸くなって眠った。
『ユイ、お腹空いたのです』
『ご飯ご飯』
「ちょっと待ってね」
金の虎、警備兵の皆さんがそれぞれ準備している。
あっという間に薪が集められて焚き火がつく。ルージュのリンゴサイズな光も漂っているから、そこそこ明るい。
皆さんは出したのは固そうな黒いパンだ。
「晃太、ビアンカとルージュのご飯お願いね。君たち、ご飯は?」
聞くと一昨日から食べてないと。何でも薬草摘んでいたら、知らずに森に入ってしまい。浅い場所だからと甘くみたら、帰り道が判らなくなったと。固まって移動していたが、マーラちゃんが見えにくい傾斜に足を取られて滑り落ち、動けなくなっていた所にあの白黒のヒヒに襲われそうになっていたと。
「そうね」
「お姉さん、怒らないの?」
「もう十分怖い思いもしたし、怒られたやろ? 私はちゃんとした冒険者やないけんね。ご飯、私たちの予備があるけん、食べなさい」
私は昨日作ったシチューを出そうとして迷う。鍋一杯に作ったから、平たい所じゃないと溢れる。
「ねえ、ビアンカ、ルージュ。食べてる所悪いけど」
『はぐはぐ、なんなのですか?』
「こうさ、平たい場所作れん?」
『なら、えい』
ビアンカが近くの岩に魔法を放つ。すっぱり、切れてる。岩がね、発泡スチロールみたいに。
いろいろ、視線が来るけど、まあ、よか。
綺麗な断面の岩のテーブルに、私のアイテムボックスからシチューの入った鍋を出す。
「晃太、皿とコップ、スプーン出して。後、パンもね」
「分かった」
出されたシチュー皿に、たっぷりシチューをよそう。
「ほら、手伝って」
キラキラ少年に声をかける。
「う、うん。でも、いいの?」
「良かよ。しっかり食べりい」
籠にあらかじめ入れていたパンも渡す。
「晃太、晃太」
私は小声で呼ぶ。
「なんね」
「マーラちゃんに、回復力アップの魔法をかけられる? 体力を削られんくらいのね」
「分かった」
晃太が小声で魔法発動。
回復魔法っていうのは、支援魔法の一種で、諸刃の刃だ。自身の回復力を上げるために、体力がない時に使うと、逆に体力を削ってしまい、キズが治る前に力尽きるらしい。ディードリアンさん情報です。治療魔法っていうのは回復魔法の上位魔法。魔力だけで治療するが、術者の魔力頼りになるらしい。
シチューはキラキラ少年達に行き渡る。
「わあ、美味しいっ」
「肉、一杯入ってる」
「パンも柔らかくて美味しい」
「こんなにたくさんの具があるシチュー、初めて」
「あ、あつっ、美味しいっ」
良かった、おきに召して頂いたようだ。
『私も食べたいのです』
『私も』
ビアンカとルージュが巨大ハンバーガーを平らげて、迫って来る。
「はいはい」
皿にシチューを入れると、飲み物のようになくなる。鍋一杯だったけど、半分になった。
さて、私達も食べるか。
スプーンを持つと、視線が。
振り返ると、金の虎のアルスなんとかさんが、しゃがんでジーッと見ている。た、食べにくい。
「た、食べます?」
こくこく頷くアルスなんとかさん。
「こら、よせ、アルス」
ファングさんが言うが、アルスさんは私に両手を出す。なんだろう、丸い耳がぴこぴこしている。あら、よく見たら幼い顔立ちしている。まだ、十代だよこの人。
うわあ、目が綺麗な青だ。純粋にキラキラしてる。
か、かわいかあッ。
「はい、どうぞ」
「うん」
渡すとがつがつシチューを食べる。気持ちいい食べっぷり。
「すみません………」
「たく、食い意地が張って、すみません」
ファングさんとリィマさんが謝って来る。
「うまい、うまい」
「もう、あんたって子は」
リィマさんは困った顔をしている。夢中で食べてるアルスなんとかさんの口元を拭いて上げてる。リィマさんはアルスなんとかさんの一回り年上のお姉さんだと。でも、何だかアルスなんとかさん、年のわりには、その、幼いというか。
空になった皿を出す姿も子供みたいだ。
私はシチューを追加していれると、がつがつ。
再び、ファングさんとリィマさんがすみません。
でも、結局皆さんに少しずつお裾分けした。ずいぶん少ない量になったけどね。
ビアンカとルージュが、食べたそうだったが、また作ればいい話だからね。了承してもらった。
「いやあ、このシチュー、美味しいですな」
バラダ―さんが感心した声をあげる。良かった、煮込んで。
他の皆さんのお口に合ったみたいで良かった。
「これ、ミズサワさんが?」
フリンダさんが聞いてくる。
「ええ、お口に合いました?」
「とっても美味しいです。お料理上手なんですね」
「まともに作れるのこれくらいですよ」
後はカレーくらい。ルウを変えるだけだからね。
和やかに夕食終了。
ビアンカが水の玉を出してくれて、それで皿やスプーンを皆さんで洗ってくれた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらがごちそうになったんですから」
バラダ―さんが皿やスプーンを回収。キラキラ少年達もお手伝い。
「お姉さん、ありがとう」
「ごちそう様でした」
「すごく美味しかったです」
「ありがとうございました」
腰を下ろしているマーラちゃんもペコリ。
「足りたね?」
私が聞くとうん、と頷くキラキラ少年達。
良かった良かった。
それから、就寝となる。
ブランケットはマーラちゃんともう一人の女の子、ハイナちゃんに一枚貸し出す。
丸くなったビアンカの影で、私は小さなルームの扉を開ける。ばれないように交代で晃太と入り、シャワー、洗面し、下着だけ着替えた。明日の朝ごはんの準備をした。パック入りのコーンスープを鍋に入れて温めただけ。後はパンだ。クルミパン、ブドウパン、ロールパンを籠に補充。ビアンカとルージュの朝ごはんはジョイップのミックスグリル、ライス付きを五人前。皿にてんこ盛りのせる。ルーム内のテーブルに置き、交代で入った晃太のアイテムボックスに入れてもらう。そうしてやっと外でブランケットに丸くなって眠った。
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