30 / 820
連載
生活環境③
しおりを挟む
『お金になりそうなのですか?』
『猪は今日食べれるの?』
「はいはい、大丈夫よ。お金になるから大丈夫よ。ただね、お肉に関してはお父さんの鑑定待ちよ」
魔物のお肉だからね。念には念を入れよだ。蛇は無理だが、まあ、食べれるならボタン鍋くらいなら大丈夫かなって。
『そのまま食べれるのです』
『私達、そのままでも食べれるわ』
さすが野生。
だが、私の家族、従魔になったのなら、生より美味しく栄養たっぷりに食べて頂こう。
「お母さんの手にかかれば、もっと美味しくなるよ」
『そうなのです?』
『なら、待つわ』
「ありがとう二人とも」
よし、ディレックスで鍋の野菜を買わなくては。
「ひーッ、ご主人の方ーッ」
「は?」
悲鳴が上がる。
慌てて振り返ると、ビアンカとルージュが屋台を覗いている。え、さっきまで隣を歩いていたのに、1秒くらいで移動してるよ。覗いている屋台はお肉を焼いてる。
「こらこらこらこらこら」
私と晃太は慌ててビアンカとルージュを捕まえる。
「なんばしようと、ダメよ、お金払っとらんとよ」
『食べてないのです』
『小腹が空いたわ』
「もうすぐ着くけん、我慢しい。すみません」
私と晃太は叫んだ店主にペコペコ。
「さあ、帰るよ」
押すが、びくともしない。
「帰るよ、ほら」
私の説得を聞いてくれたのか、するりと動いてくれた。
良かった。
動いてくれたビアンカとルージュは改めてお座りしてる。
そして、やおら、左前足を出して、次に右前足を出す。
ん? ん? ん?
左前足を出して、右前足を出して。
『効いてないのです』
『もう一度してみましょう』
左前足を出して、右前足を出して。
あ、花の必殺技、エアーお手とエアーおかわりだ。
いつ、覚えたん?
てか、デカイビアンカとルージュが、繰り返してエアーお手、エアーおかわりをしている。
でっかい蛇やら猪やら狩って来た、とっても強いフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーが、必死にエアーお手、エアーおかわりをしている。屋台のお肉欲しさに。私の言い付け守って勝手に食べないで、おねだりしてる。
か、かわいかぁぁぁぁぁぁぁぁッ
多分晃太も、そんか感じだ。プルプルしながら口が尖る尖る。
「姉ちゃん、ちょっと買っちゃらんね?」
「そやなあ」
はい、陥落します。ダメな飼い主の代表だ。
「ビアンカ、ルージュ、どれくらい欲しいと?」
私がそう言うと、ビアンカは尻尾をぶんぶん。ルージュは目を見開いている。
もう、かわいかねえ。
『全部食べたいのです』
『食べたいわ』
ジリジリ迫って来る。
「すみません、今焼いているお肉、全部いただいてもいいですか?」
店主に声をかけると、驚いた顔をしたがすぐに反応。
「はい。ありがとうございます。1枚、500です。10枚なので5000です」
よく見たら、クリスマスの時のローストチキンみたいだ。ちょっと大きめだが、骨、ダメよね。
「ねえ、骨外す?」
『大丈夫なのです』
『これくらい砕けるわ』
そんな牙してるからね。
屋台は焼いたお肉を紙に包むタイプだ。
5枚ずつだけど、紙はちょっとね。だが、私はあいにく皿はもっていない。
「晃太、皿ある?」
「持ってなか」
仕方ない。近くの店で皿を購入し、お金を払ってお肉をのせてもう。
骨ごとパクパク食べるビアンカとルージュ。なんだか柔らかそう。
「あれは、なんのお肉ですか?」
「ウサギのももですよ。うちの肉は厳選し、特製のハーブソースに漬けて焼いてますから臭みが少なく、柔らかいんです」
屋台の主人は少し誇らしいように説明してくれる。
「へえ。美味しいそう」
「まだ、焼きましょうか? ちょっとお時間かかりますが」
「いえ、大丈夫です」
『まだあるなら、食べたいのです』
『食べたいわ』
ペロッと口を舐めてるビアンカとルージュ。空になった皿を舐め始めようとする元気達。慌てて皿を取り上げて、晃太のアイテムボックスへ。危ない危ない、まだ、お乳なのに。
「なあ、姉ちゃん、焼いてもらったら? アイテムボックスに入れとけば焼きたてのままやし」
「ん? そうやねえ」
「それに、いつも作るのはお袋大変やしさ。ある程度買っておかん?」
「確かに、そやなあ」
異世界への扉や異世界のメニューの値段は向こうが基準だ。こちらの方が同じサイズのパン(カンパーニュみたいなの)でも安価だ。野菜にしてもそうだ。そうだね、パンとかにこのウサギ肉を挟めばかさましになるし。肉ばっかりだと、お金がいくらあっても足りない。
よし。
「ひーッ、ご主人の方ーッ」
悲鳴が上がる。
違う屋台で悲鳴が上がる。
「あ、すみません、後で来ますので出来るだけ焼いてください」
「ありがとうございます」
屋台の主人にお願いして私と晃太は覗き込むビアンカとルージュの確保に向かった。
結局、あれから魚のソテーみたいなのと、野菜とウサギ肉の炒めたもの、バケットやカンパーニュみたいなパンをたくさん買った。
『食べれないのですか?』
『一口、一口』
ログハウスに戻った時にはかなり時間がかかっていた。
「と、言うことで、屋台でいろいろ買ったんよ」
ビアンカとルージュが散歩がてらにいろいろ捕ってきて冒険者ギルドに持ち込んだことも説明。蛇はスルー。母が大嫌いだからね。
「猪と亀ね。お父さんの鑑定待ちやね」
「今からもらいに行ってくるけん、元気達はよろしく。たくさん遊んだけん、疲れとると思うんよ」
「分かった。おいでみんな」
ミルクを出した母が呼ぶと、わさわさと寄っていく5匹。花も寄っていく。
「晃太、冒険者ギルドに行こう。猪受けとらんと」
「ん」
念のためルージュの魔法のカーテン発動。
「ビアンカ、ルージュは来てね」
冒険者ギルドに戻る。
買い取り窓口で声をかけると、すぐに分かってもらえた。まあ、後ろにビアンカとルージュがいるからね。
カウンターにででん、と置かれた肉の塊。デカイ。そして多量だ。
「斑猪の半身です」
「あ、ありがとうございます」
ビアンカとルージュがよだれを垂らしそうだから、直ぐに晃太のアイテムボックスへ。
「亀は明日の朝にはできるそうですが、残りの素材の買い取り価格については明後日の昼までお待ちくださいとのことです」
「分かりました」
解体職員さんたち徹夜なのかな?
『ユイ、お腹が空いたのです』
『早く帰りましょう』
「はいはい、帰ろかね。では、明日伺います」
「お待ちしております」
急かされて冒険者ギルドを後にする。
あの頼んでいたウサギ肉の屋台で、持参した皿にのせてもらっていると、急にビアンカとルージュが唸り声を上げた。それも今まで聞いたことのない低音で。いきなり、ルージュが右前足で地面を激しく叩きつける。
「なん? どうしたん?」
『この童がユイに石を投げつけたのよ』
牙を剥き、身を低くして唸り声を上げるルージュ。ビアンカも背中の毛を逆立たせて、牙を剥いている。
『私達の主人に、よくも石を投げつけたのですね。許さないのです』
二人の視線の先には腰を抜かした10歳くらいの男の子だ。
「この子が?」
『この私の気配感知に間違いはないわ。しかもこんな近距離で、間違えようはない。この童、面白半分に石を投げつけたのよ。許さないわ』
ぐるるるるる
唸り声を上げるルージュ。
石はルージュが叩き落としたのね。
「ストップルージュ。君、どうして石なんて投げたの?」
私が聞くと、男の子は震えながらも大声で叫ぶ。
「石、投げてないッ」
ちらっとルージュを見る。
『嘘だわ』
『誤魔化すことなんてできないのです』
うん、きっとビアンカとルージュの言うことが正しいのだろうな。ビアンカやルージュを連れた私に面白半分で石を投げつけたのだろう。
私はため息をつく。
ビアンカとルージュが唸り出したので、一斉に人が引いている。
「ねえ、君、人に石を投げるって、意味分かる? 故意に怪我をさせることなんよ」
「投げてないッ、そっちのウルフとジャガーに投げたんだッ」
「投げたことには変わらないでしょうが。これが野生だったらどうする気? ケガじゃすまんとよ。ビアンカとルージュは私との約束守って、故意に人を襲わない。賢いんよとっても」
「魔物だッ」
「だから?」
私はなんだかいらいらしてきた。自分が仕出かしたことに、言い訳して逃れようとしている。子供とはいえ見苦しい。
「魔物だからなに? 知らない人に石を投げるようなバカなことをするような子に、言われる筋合いはないわ。君、今は言い逃れ出来てもね、いずれ痛い目みるわよ。その態度を改めなさい」
私はちょっと強めに言うと、男の子は何とか立ち上がり、逃げていく。全く。まあ、ちょっと大人げなかったかな。
「大丈夫ですか、ご主人」
屋台の主人が心配して聞いてくれる。
「はい、頼もしい従魔のおかげで」
「いやあ、あれであの坊主も反省すればいいですがね」
屋台の主人曰く、なかなか有名な悪童のようだ。人に石を投げる、屋台の中に入り込み商品を触り、引っ掻き回す。目を盗んで小さな品を盗る。え、万引きじゃん。
「盗むことは別の誰かにやらせているんですよ。気の弱い子とかにね」
子供ながらに性質悪いな。
「親は? 知らんぷりですか?」
屋台の主人は苦い顔をする。
「その親が問題なんですよ。母親の父親、坊主にとってはじいさんですね。それがどっかの町のギルドの偉い地位にいるみたいで、坊主が何をやっても知らぬ存ぜぬ。しかも坊主は被害者だと言いがかりまでつける始末で、手に負えません。まあ、それでもいろいろあって前の町にいられなくなってこっちに流れて来たんです」
話を聞いて華憐親子が浮かぶ。うわあ、なんかデジャブ。
この世界の引っ越しにはお金がかかるし、危険が伴う。よく流れてこれたね。どこの世界にもいるんだね、華憐みたいな親子。
屋台の主人は皿にお肉を山盛りにしてくれる。美味しそう、よし、今のことは忘れよう。うん、1枚くらい食べてもいいかな? 全部で16枚、8000だ。金貨を出して銀貨2枚もらう。横からビアンカとルージュが食べようとするので、直ぐにアイテムボックスに。
「ありがとうございます。たぶん明日も来るかも」
「お待ちしております」
屋台の主人は笑顔を返してくれた。
『猪は今日食べれるの?』
「はいはい、大丈夫よ。お金になるから大丈夫よ。ただね、お肉に関してはお父さんの鑑定待ちよ」
魔物のお肉だからね。念には念を入れよだ。蛇は無理だが、まあ、食べれるならボタン鍋くらいなら大丈夫かなって。
『そのまま食べれるのです』
『私達、そのままでも食べれるわ』
さすが野生。
だが、私の家族、従魔になったのなら、生より美味しく栄養たっぷりに食べて頂こう。
「お母さんの手にかかれば、もっと美味しくなるよ」
『そうなのです?』
『なら、待つわ』
「ありがとう二人とも」
よし、ディレックスで鍋の野菜を買わなくては。
「ひーッ、ご主人の方ーッ」
「は?」
悲鳴が上がる。
慌てて振り返ると、ビアンカとルージュが屋台を覗いている。え、さっきまで隣を歩いていたのに、1秒くらいで移動してるよ。覗いている屋台はお肉を焼いてる。
「こらこらこらこらこら」
私と晃太は慌ててビアンカとルージュを捕まえる。
「なんばしようと、ダメよ、お金払っとらんとよ」
『食べてないのです』
『小腹が空いたわ』
「もうすぐ着くけん、我慢しい。すみません」
私と晃太は叫んだ店主にペコペコ。
「さあ、帰るよ」
押すが、びくともしない。
「帰るよ、ほら」
私の説得を聞いてくれたのか、するりと動いてくれた。
良かった。
動いてくれたビアンカとルージュは改めてお座りしてる。
そして、やおら、左前足を出して、次に右前足を出す。
ん? ん? ん?
左前足を出して、右前足を出して。
『効いてないのです』
『もう一度してみましょう』
左前足を出して、右前足を出して。
あ、花の必殺技、エアーお手とエアーおかわりだ。
いつ、覚えたん?
てか、デカイビアンカとルージュが、繰り返してエアーお手、エアーおかわりをしている。
でっかい蛇やら猪やら狩って来た、とっても強いフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーが、必死にエアーお手、エアーおかわりをしている。屋台のお肉欲しさに。私の言い付け守って勝手に食べないで、おねだりしてる。
か、かわいかぁぁぁぁぁぁぁぁッ
多分晃太も、そんか感じだ。プルプルしながら口が尖る尖る。
「姉ちゃん、ちょっと買っちゃらんね?」
「そやなあ」
はい、陥落します。ダメな飼い主の代表だ。
「ビアンカ、ルージュ、どれくらい欲しいと?」
私がそう言うと、ビアンカは尻尾をぶんぶん。ルージュは目を見開いている。
もう、かわいかねえ。
『全部食べたいのです』
『食べたいわ』
ジリジリ迫って来る。
「すみません、今焼いているお肉、全部いただいてもいいですか?」
店主に声をかけると、驚いた顔をしたがすぐに反応。
「はい。ありがとうございます。1枚、500です。10枚なので5000です」
よく見たら、クリスマスの時のローストチキンみたいだ。ちょっと大きめだが、骨、ダメよね。
「ねえ、骨外す?」
『大丈夫なのです』
『これくらい砕けるわ』
そんな牙してるからね。
屋台は焼いたお肉を紙に包むタイプだ。
5枚ずつだけど、紙はちょっとね。だが、私はあいにく皿はもっていない。
「晃太、皿ある?」
「持ってなか」
仕方ない。近くの店で皿を購入し、お金を払ってお肉をのせてもう。
骨ごとパクパク食べるビアンカとルージュ。なんだか柔らかそう。
「あれは、なんのお肉ですか?」
「ウサギのももですよ。うちの肉は厳選し、特製のハーブソースに漬けて焼いてますから臭みが少なく、柔らかいんです」
屋台の主人は少し誇らしいように説明してくれる。
「へえ。美味しいそう」
「まだ、焼きましょうか? ちょっとお時間かかりますが」
「いえ、大丈夫です」
『まだあるなら、食べたいのです』
『食べたいわ』
ペロッと口を舐めてるビアンカとルージュ。空になった皿を舐め始めようとする元気達。慌てて皿を取り上げて、晃太のアイテムボックスへ。危ない危ない、まだ、お乳なのに。
「なあ、姉ちゃん、焼いてもらったら? アイテムボックスに入れとけば焼きたてのままやし」
「ん? そうやねえ」
「それに、いつも作るのはお袋大変やしさ。ある程度買っておかん?」
「確かに、そやなあ」
異世界への扉や異世界のメニューの値段は向こうが基準だ。こちらの方が同じサイズのパン(カンパーニュみたいなの)でも安価だ。野菜にしてもそうだ。そうだね、パンとかにこのウサギ肉を挟めばかさましになるし。肉ばっかりだと、お金がいくらあっても足りない。
よし。
「ひーッ、ご主人の方ーッ」
悲鳴が上がる。
違う屋台で悲鳴が上がる。
「あ、すみません、後で来ますので出来るだけ焼いてください」
「ありがとうございます」
屋台の主人にお願いして私と晃太は覗き込むビアンカとルージュの確保に向かった。
結局、あれから魚のソテーみたいなのと、野菜とウサギ肉の炒めたもの、バケットやカンパーニュみたいなパンをたくさん買った。
『食べれないのですか?』
『一口、一口』
ログハウスに戻った時にはかなり時間がかかっていた。
「と、言うことで、屋台でいろいろ買ったんよ」
ビアンカとルージュが散歩がてらにいろいろ捕ってきて冒険者ギルドに持ち込んだことも説明。蛇はスルー。母が大嫌いだからね。
「猪と亀ね。お父さんの鑑定待ちやね」
「今からもらいに行ってくるけん、元気達はよろしく。たくさん遊んだけん、疲れとると思うんよ」
「分かった。おいでみんな」
ミルクを出した母が呼ぶと、わさわさと寄っていく5匹。花も寄っていく。
「晃太、冒険者ギルドに行こう。猪受けとらんと」
「ん」
念のためルージュの魔法のカーテン発動。
「ビアンカ、ルージュは来てね」
冒険者ギルドに戻る。
買い取り窓口で声をかけると、すぐに分かってもらえた。まあ、後ろにビアンカとルージュがいるからね。
カウンターにででん、と置かれた肉の塊。デカイ。そして多量だ。
「斑猪の半身です」
「あ、ありがとうございます」
ビアンカとルージュがよだれを垂らしそうだから、直ぐに晃太のアイテムボックスへ。
「亀は明日の朝にはできるそうですが、残りの素材の買い取り価格については明後日の昼までお待ちくださいとのことです」
「分かりました」
解体職員さんたち徹夜なのかな?
『ユイ、お腹が空いたのです』
『早く帰りましょう』
「はいはい、帰ろかね。では、明日伺います」
「お待ちしております」
急かされて冒険者ギルドを後にする。
あの頼んでいたウサギ肉の屋台で、持参した皿にのせてもらっていると、急にビアンカとルージュが唸り声を上げた。それも今まで聞いたことのない低音で。いきなり、ルージュが右前足で地面を激しく叩きつける。
「なん? どうしたん?」
『この童がユイに石を投げつけたのよ』
牙を剥き、身を低くして唸り声を上げるルージュ。ビアンカも背中の毛を逆立たせて、牙を剥いている。
『私達の主人に、よくも石を投げつけたのですね。許さないのです』
二人の視線の先には腰を抜かした10歳くらいの男の子だ。
「この子が?」
『この私の気配感知に間違いはないわ。しかもこんな近距離で、間違えようはない。この童、面白半分に石を投げつけたのよ。許さないわ』
ぐるるるるる
唸り声を上げるルージュ。
石はルージュが叩き落としたのね。
「ストップルージュ。君、どうして石なんて投げたの?」
私が聞くと、男の子は震えながらも大声で叫ぶ。
「石、投げてないッ」
ちらっとルージュを見る。
『嘘だわ』
『誤魔化すことなんてできないのです』
うん、きっとビアンカとルージュの言うことが正しいのだろうな。ビアンカやルージュを連れた私に面白半分で石を投げつけたのだろう。
私はため息をつく。
ビアンカとルージュが唸り出したので、一斉に人が引いている。
「ねえ、君、人に石を投げるって、意味分かる? 故意に怪我をさせることなんよ」
「投げてないッ、そっちのウルフとジャガーに投げたんだッ」
「投げたことには変わらないでしょうが。これが野生だったらどうする気? ケガじゃすまんとよ。ビアンカとルージュは私との約束守って、故意に人を襲わない。賢いんよとっても」
「魔物だッ」
「だから?」
私はなんだかいらいらしてきた。自分が仕出かしたことに、言い訳して逃れようとしている。子供とはいえ見苦しい。
「魔物だからなに? 知らない人に石を投げるようなバカなことをするような子に、言われる筋合いはないわ。君、今は言い逃れ出来てもね、いずれ痛い目みるわよ。その態度を改めなさい」
私はちょっと強めに言うと、男の子は何とか立ち上がり、逃げていく。全く。まあ、ちょっと大人げなかったかな。
「大丈夫ですか、ご主人」
屋台の主人が心配して聞いてくれる。
「はい、頼もしい従魔のおかげで」
「いやあ、あれであの坊主も反省すればいいですがね」
屋台の主人曰く、なかなか有名な悪童のようだ。人に石を投げる、屋台の中に入り込み商品を触り、引っ掻き回す。目を盗んで小さな品を盗る。え、万引きじゃん。
「盗むことは別の誰かにやらせているんですよ。気の弱い子とかにね」
子供ながらに性質悪いな。
「親は? 知らんぷりですか?」
屋台の主人は苦い顔をする。
「その親が問題なんですよ。母親の父親、坊主にとってはじいさんですね。それがどっかの町のギルドの偉い地位にいるみたいで、坊主が何をやっても知らぬ存ぜぬ。しかも坊主は被害者だと言いがかりまでつける始末で、手に負えません。まあ、それでもいろいろあって前の町にいられなくなってこっちに流れて来たんです」
話を聞いて華憐親子が浮かぶ。うわあ、なんかデジャブ。
この世界の引っ越しにはお金がかかるし、危険が伴う。よく流れてこれたね。どこの世界にもいるんだね、華憐みたいな親子。
屋台の主人は皿にお肉を山盛りにしてくれる。美味しそう、よし、今のことは忘れよう。うん、1枚くらい食べてもいいかな? 全部で16枚、8000だ。金貨を出して銀貨2枚もらう。横からビアンカとルージュが食べようとするので、直ぐにアイテムボックスに。
「ありがとうございます。たぶん明日も来るかも」
「お待ちしております」
屋台の主人は笑顔を返してくれた。
2,225
お気に入りに追加
7,674
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~
大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア
8さいの時、急に現れた義母に義姉。
あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。
侯爵家の娘なのに、使用人扱い。
お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。
義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする……
このままじゃ先の人生詰んでる。
私には
前世では25歳まで生きてた記憶がある!
義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから!
義母達にスカッとざまぁしたり
冒険の旅に出たり
主人公が妖精の愛し子だったり。
竜王の番だったり。
色々な無自覚チート能力発揮します。
竜王様との溺愛は後半第二章からになります。
※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。
※後半イチャイチャ多めです♡
※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。