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26 甲斐無し(貝なし)-かいなし-
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燕の子安貝を要求した石上麿足には少し進展があった。
燕について詳しい者を見つけたらしく、巣がいくつかある場所を屋敷内にて見つけたようだ。
しかし、家臣達に探らせてもなかなか子安貝を見つけることは出来ない。
…ついに石上麿足も業を煮やして自ら燕の元へと通っている。
最初は燕の巣の周りに足場を作って様子を見させようよしたが、そうすると燕は寄ってこない。
人も沢山配置すると警戒されるので最低限の人数で見張っているようだ。
燕が卵を産んだ時に家臣の支える籠を釣り上げそのまま近づき巣の中を探らせている。
-「…こういった物は思いの強い者の元へと渡るものではないでしょうか…」-
-「なるほど…では、私が自ら探すのが1番良いな…」-
家臣の言葉によって籠へは石上麿足自らが乗る事にしたようだ。
「なんか…コイツだけちゃんと頑張ってるな…」
『…そうですね』
無茶な要求を出したのに一生懸命事に当たっている石上麿足を見ていると罪悪感を感じる。
『…あ、あの燕…』
「…ん?」
お姫様の声に反応して空を見ると1匹の燕が降りてきて巣へと入っていく。
他の燕と違ってうっすら光っていたように見える。
-「あ、燕が1匹巣に戻ってきました!」-
-「…ほぉ…次こそは産むとよいのだか…」-
燕には気が付いたようだが、光って見える者はいないようだ…。
「あ、尾を上げてます!卵を産むのでは…!」
-「おぉ、きっとそうであるな…。早く籠を上げよ!燕を驚かせぬように慎重にの!」-
光って見えた燕の巣へと手を入れる石上麿足。
「…あれ、あの光ってみえる燕って…」
『…』
ひょっとしてあの燕…子安貝持ってるんじゃないか…?
-「よし、掴んだぞ!はよう降ろせ!」-
興奮した様子の石上麿足に家臣達も慌て出す。
-「は、すぐに!…おい」-
-「あ、ハイ…あっ!」-
バタバタっとして慌てて下ろそうとした時家臣の1人が不意に手を離してしまった…。
「あ、」
-「ウワァぁぁ」-
ドスンッ
石上麿足の乗った籠は見事に落ち白目を剥いて気絶してしまっている。
周りにいた者達は慌てて石上麿足に近寄るとどうにか助けようとわたわたとしている。
1人が水を口へと持っていき水を含ませた事で石上麿足はなんとか意識を取り戻した。
-「…ご気分は…ご気分はいかがですか?」-
-「うむ…気は確かだ…しかし、いや、腰、腰が動かぬ…。だが、手にはしっかりと何かを握ったはずだ、今も手に感触がある。…これは貝に違いない…」-
しっかりとした受け答えに家臣達は安堵の息を吐いている。
-「貝を…貝を確認したい」-
色々と支えられた状態で身体を少し起こし、手のひらを確認する…。
-「…こ、…これは…」-
手の上には黒い塊。
-「…なんと、…これは…貝ではない…のか…?」-
-「…こちらは…古い糞の塊ですね…」-
家臣の言葉に石上麿足は手に持っていた糞を振り払い、身体中の力を抜いた。
-「…か、貝では…ないのか…。
…貝は…貝は無かった…のか…」-
ショックを受ける石上麿足から家臣達はそっと視線を外し、皆で支えて主人を屋敷へと運ぶ。
「…」
『…』
家臣達もそれぞれが石上麿足へと着いて屋敷へと戻っていく。
他の者達も困った顔をしつつ自分の持ち場へと戻っていった。
そして、一部始終をずっと見ていた俺たちだが、視線はずっと石上麿足の投げ捨てた糞に釘付けだ。
「…お姫様、あれ、光って見えるんだけど…」
『…そうですね』
そう、石上麿足の投げ捨てた糞が光って見えるのだ…。
ガサッ
「…ん?」
人が居なくなったと思っていたら、1人、ソッと戻ってきた人物がいた。
家臣の1人ではなく、下働きか庭仕事でもしていそうな厳つい男だ。
男は周りをキョロキョロと見回した後にソッと糞へと近づき持ち上げる。
しばらくジッと見つめるとそれを持って何処かへと去っていく。
俺は迷わず後を付けることにした。
厳つい男は小汚い建物へと入っていく。
どうやら家のようだな。
-「おい、おいこれ、これを!」-
-「…いったいなんですか…?」-
中から妻かと思われる疲れ切った表情の痩せた女が出てくる。
-「…これを、これをあの子に飲ませてくれ!」-
必死であの光る糞を女へと渡す。
訝しむ女だったが、次の言葉に顔色を変える。
-「これは、子安貝だ!母子を守ってくれる!」-
女は男の言葉を聞くなり奪うようにして光る糞を受け取り奥へと去っていく。
どうやら奥にはお腹は大きいが痩せて顔色の悪い若い娘が寝ているようだ。
どうもお腹に子がいるようだが、母子共にあまり良い状態ではないらしい…。
子安貝は母子が安全に出産するための守りだ。
石上麿足の家臣が言っていた…
「…子安貝…思いの強い者の元へ来たのかな」
『…そう…ですね』
子安貝が実際に見つかった事も衝撃だったが、それが必要とされる場所へと渡った事にも驚いた。
ひとまずこのことは胸に仕舞い、俺とお姫様はその日はそっと家へと帰る。
子安貝はこの家にこそ必要だったのだ。
翌日、お屋敷へと石上麿足が落ちて怪我をしたという知らせが来たので、貴人の方に頼んでお見舞いの手紙を送ってもらった。
ここまでさせて怪我までしてしまった事に対して申し訳なく思う。
影の移動で様子を見てみたが、割と元気そうであった。
ついでに気になっていた、あの子安貝を持っていった家も見に行ってみた。
子安貝を飲ませてからは見るからに顔色も良くなり、体調も安定しているようだ。良かった。
…どうも、娘が悪い男に騙されて捨てられた上、妊娠してしまい元々身体が弱かった為に母子共に命まで落とすところだったようだ。
可愛い一人娘を孫と共に失う寸前だったらしい。
どうかこのまま無事に出産して欲しい。
そして、しばらく寝込んでいる様子の石上麿足からお見舞いの返信が届いたのだが、どうも会いたいという内容のようだ…。
求婚には応えることはできないが、一度くらい会いに行っても良い気もする…。
1番まともで1番正当な頑張りをしてくれていたしな…。
「…夜に少しだけ顔を出してみようかな…」
『…好きにして下さい…』
お姫様も反対はしなかった。
-「娘から子安貝を取り出せ」-
-「…ッ。…そんな、そんな事をしたら娘も赤ちゃんも死んでしまいます!」-
-「…あれは、元々私の物だ」-
-「…しかし、あの娘のお腹の子は貴方の子でもあります…」-
-「…ふん、そんな事は知らぬ」-
夜になり石上麿足の様子を伺いに来た所、ヤバい現場へと直面してしまった…。
人気のない寝室で石上麿足と庭から膝だけ乗り上げて話す昨日子安貝を持って行った男が揉めていた。
どうも、話を聞くとあの死にかけていた娘を騙した悪い男は石上麿足だったようだ。
そして、昨日の男は馬鹿正直にも子安貝の事を話しに来たらしい。
-「あんな娘とは価値が違うのだ…。腹をさいてでも取り出せ」-
-「…そ、そんな…」-
-「…すぐに持ってこれば許してやろう。これは最後の慈…ひ…うっ…ぐっ…」-
-「…ち、中納言様?…どうされたのですか?」-
-「…ぐぁ…う…うぁぁ…」-
-「だ、だれか!」-
-「…うぅ…ぐぅ…ぁぁ」-
-「だれか!だれかいないか!中納言様が!中納言様がぁ!!」-
男との口論中に突如苦しみ出した石上麿足。
別に男が何かしたわけではない。むしろ、あんなに酷い事を言われていたのに必死に助けようと人を呼んでいる。
『…これは…』
「どうしたんだ?」
呆然と成り行きを見ていた俺に、お姫様は複雑な感情の籠った声で話す。
『子安貝…ですね』
「…?」
どういうことだ?
『子安貝が母子を守っているのでしょう…』
「…」
翌日、石上麿足の……訃報が届いた。
聞いた話では落ちた傷と精神的な心労にて急な衰弱により息絶えてしまったらしい…。
『あの者は母子を本気で儚くするつもりだったのですね…』
母子を守るために子安貝は命の危険を取り去ったのだとお姫様は言う。
子安貝のために母子の腹を裂こうとした為…自分の命を失ってしまった。
何もしなければ…いや、せめて無事な出産を待ってから排出されるのを待っていれば結果は違ったであろうに…貝はあったのだから。
燕について詳しい者を見つけたらしく、巣がいくつかある場所を屋敷内にて見つけたようだ。
しかし、家臣達に探らせてもなかなか子安貝を見つけることは出来ない。
…ついに石上麿足も業を煮やして自ら燕の元へと通っている。
最初は燕の巣の周りに足場を作って様子を見させようよしたが、そうすると燕は寄ってこない。
人も沢山配置すると警戒されるので最低限の人数で見張っているようだ。
燕が卵を産んだ時に家臣の支える籠を釣り上げそのまま近づき巣の中を探らせている。
-「…こういった物は思いの強い者の元へと渡るものではないでしょうか…」-
-「なるほど…では、私が自ら探すのが1番良いな…」-
家臣の言葉によって籠へは石上麿足自らが乗る事にしたようだ。
「なんか…コイツだけちゃんと頑張ってるな…」
『…そうですね』
無茶な要求を出したのに一生懸命事に当たっている石上麿足を見ていると罪悪感を感じる。
『…あ、あの燕…』
「…ん?」
お姫様の声に反応して空を見ると1匹の燕が降りてきて巣へと入っていく。
他の燕と違ってうっすら光っていたように見える。
-「あ、燕が1匹巣に戻ってきました!」-
-「…ほぉ…次こそは産むとよいのだか…」-
燕には気が付いたようだが、光って見える者はいないようだ…。
「あ、尾を上げてます!卵を産むのでは…!」
-「おぉ、きっとそうであるな…。早く籠を上げよ!燕を驚かせぬように慎重にの!」-
光って見えた燕の巣へと手を入れる石上麿足。
「…あれ、あの光ってみえる燕って…」
『…』
ひょっとしてあの燕…子安貝持ってるんじゃないか…?
-「よし、掴んだぞ!はよう降ろせ!」-
興奮した様子の石上麿足に家臣達も慌て出す。
-「は、すぐに!…おい」-
-「あ、ハイ…あっ!」-
バタバタっとして慌てて下ろそうとした時家臣の1人が不意に手を離してしまった…。
「あ、」
-「ウワァぁぁ」-
ドスンッ
石上麿足の乗った籠は見事に落ち白目を剥いて気絶してしまっている。
周りにいた者達は慌てて石上麿足に近寄るとどうにか助けようとわたわたとしている。
1人が水を口へと持っていき水を含ませた事で石上麿足はなんとか意識を取り戻した。
-「…ご気分は…ご気分はいかがですか?」-
-「うむ…気は確かだ…しかし、いや、腰、腰が動かぬ…。だが、手にはしっかりと何かを握ったはずだ、今も手に感触がある。…これは貝に違いない…」-
しっかりとした受け答えに家臣達は安堵の息を吐いている。
-「貝を…貝を確認したい」-
色々と支えられた状態で身体を少し起こし、手のひらを確認する…。
-「…こ、…これは…」-
手の上には黒い塊。
-「…なんと、…これは…貝ではない…のか…?」-
-「…こちらは…古い糞の塊ですね…」-
家臣の言葉に石上麿足は手に持っていた糞を振り払い、身体中の力を抜いた。
-「…か、貝では…ないのか…。
…貝は…貝は無かった…のか…」-
ショックを受ける石上麿足から家臣達はそっと視線を外し、皆で支えて主人を屋敷へと運ぶ。
「…」
『…』
家臣達もそれぞれが石上麿足へと着いて屋敷へと戻っていく。
他の者達も困った顔をしつつ自分の持ち場へと戻っていった。
そして、一部始終をずっと見ていた俺たちだが、視線はずっと石上麿足の投げ捨てた糞に釘付けだ。
「…お姫様、あれ、光って見えるんだけど…」
『…そうですね』
そう、石上麿足の投げ捨てた糞が光って見えるのだ…。
ガサッ
「…ん?」
人が居なくなったと思っていたら、1人、ソッと戻ってきた人物がいた。
家臣の1人ではなく、下働きか庭仕事でもしていそうな厳つい男だ。
男は周りをキョロキョロと見回した後にソッと糞へと近づき持ち上げる。
しばらくジッと見つめるとそれを持って何処かへと去っていく。
俺は迷わず後を付けることにした。
厳つい男は小汚い建物へと入っていく。
どうやら家のようだな。
-「おい、おいこれ、これを!」-
-「…いったいなんですか…?」-
中から妻かと思われる疲れ切った表情の痩せた女が出てくる。
-「…これを、これをあの子に飲ませてくれ!」-
必死であの光る糞を女へと渡す。
訝しむ女だったが、次の言葉に顔色を変える。
-「これは、子安貝だ!母子を守ってくれる!」-
女は男の言葉を聞くなり奪うようにして光る糞を受け取り奥へと去っていく。
どうやら奥にはお腹は大きいが痩せて顔色の悪い若い娘が寝ているようだ。
どうもお腹に子がいるようだが、母子共にあまり良い状態ではないらしい…。
子安貝は母子が安全に出産するための守りだ。
石上麿足の家臣が言っていた…
「…子安貝…思いの強い者の元へ来たのかな」
『…そう…ですね』
子安貝が実際に見つかった事も衝撃だったが、それが必要とされる場所へと渡った事にも驚いた。
ひとまずこのことは胸に仕舞い、俺とお姫様はその日はそっと家へと帰る。
子安貝はこの家にこそ必要だったのだ。
翌日、お屋敷へと石上麿足が落ちて怪我をしたという知らせが来たので、貴人の方に頼んでお見舞いの手紙を送ってもらった。
ここまでさせて怪我までしてしまった事に対して申し訳なく思う。
影の移動で様子を見てみたが、割と元気そうであった。
ついでに気になっていた、あの子安貝を持っていった家も見に行ってみた。
子安貝を飲ませてからは見るからに顔色も良くなり、体調も安定しているようだ。良かった。
…どうも、娘が悪い男に騙されて捨てられた上、妊娠してしまい元々身体が弱かった為に母子共に命まで落とすところだったようだ。
可愛い一人娘を孫と共に失う寸前だったらしい。
どうかこのまま無事に出産して欲しい。
そして、しばらく寝込んでいる様子の石上麿足からお見舞いの返信が届いたのだが、どうも会いたいという内容のようだ…。
求婚には応えることはできないが、一度くらい会いに行っても良い気もする…。
1番まともで1番正当な頑張りをしてくれていたしな…。
「…夜に少しだけ顔を出してみようかな…」
『…好きにして下さい…』
お姫様も反対はしなかった。
-「娘から子安貝を取り出せ」-
-「…ッ。…そんな、そんな事をしたら娘も赤ちゃんも死んでしまいます!」-
-「…あれは、元々私の物だ」-
-「…しかし、あの娘のお腹の子は貴方の子でもあります…」-
-「…ふん、そんな事は知らぬ」-
夜になり石上麿足の様子を伺いに来た所、ヤバい現場へと直面してしまった…。
人気のない寝室で石上麿足と庭から膝だけ乗り上げて話す昨日子安貝を持って行った男が揉めていた。
どうも、話を聞くとあの死にかけていた娘を騙した悪い男は石上麿足だったようだ。
そして、昨日の男は馬鹿正直にも子安貝の事を話しに来たらしい。
-「あんな娘とは価値が違うのだ…。腹をさいてでも取り出せ」-
-「…そ、そんな…」-
-「…すぐに持ってこれば許してやろう。これは最後の慈…ひ…うっ…ぐっ…」-
-「…ち、中納言様?…どうされたのですか?」-
-「…ぐぁ…う…うぁぁ…」-
-「だ、だれか!」-
-「…うぅ…ぐぅ…ぁぁ」-
-「だれか!だれかいないか!中納言様が!中納言様がぁ!!」-
男との口論中に突如苦しみ出した石上麿足。
別に男が何かしたわけではない。むしろ、あんなに酷い事を言われていたのに必死に助けようと人を呼んでいる。
『…これは…』
「どうしたんだ?」
呆然と成り行きを見ていた俺に、お姫様は複雑な感情の籠った声で話す。
『子安貝…ですね』
「…?」
どういうことだ?
『子安貝が母子を守っているのでしょう…』
「…」
翌日、石上麿足の……訃報が届いた。
聞いた話では落ちた傷と精神的な心労にて急な衰弱により息絶えてしまったらしい…。
『あの者は母子を本気で儚くするつもりだったのですね…』
母子を守るために子安貝は命の危険を取り去ったのだとお姫様は言う。
子安貝のために母子の腹を裂こうとした為…自分の命を失ってしまった。
何もしなければ…いや、せめて無事な出産を待ってから排出されるのを待っていれば結果は違ったであろうに…貝はあったのだから。
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