かぐや姫奇譚?ー求婚者がダメンズばかりなんですがー

青太郎

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4 お金持ちになりました

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『興味深くはありますが、こんな場所で生活するのは無理でしょう』

婆さんがせっせとエジコにボロ布を敷いているとお姫様に話しかけられる。

「そうは言っても、貧乏なんだししょうがないだろ。
…むしろこんな状況でよく俺を拾ってきたな…」

婆さんには聞こえないようにコソコソと話をする。

爺さんは何やら外でゴソゴソと竹を加工しているようだ。

『しょうがありません。
…功徳を積む事にもなりますし、下賎なこの者達に施しを与えましょう』

「…?」

また、お姫様がよくわからない事を言っている。

『施しを与えて下位の者の位を上げる事は善き事とされています』

何やらよくわからないが、一体何を与えるのだ?

『先程、私達を見つけた場所に行くように伝えてください』



…これは、俺が知っている物語的にお金でも出てくるのではないだろうか?

「…お金…出せるのか…?…でも、どうやって?」

『そもそも、このような場所に連れてこられた事は天界の者の不手際です。
…相応しき衣食住を整えるのは、本来天界の役割です』

罪人なくせにやたら口うるさいが、これは大丈夫なのだろうか。

『しかし、あえて私が施す事によって罪の償いにもなるでしょう』

結局、お姫様は一人納得した様子で俺の聞いたどうやってお金を出すのかという問いの答えを返す事はなかった。

ひとまず、爺さんと婆さんには伝えるが。


「お婆さん。お婆さん。」

俺の呼び掛けに、婆さんは顔を上げて手にエジコを持って嬉しそうに寄ってくる。

「あらあら…ふふ、なんですか。…もう少しであったかくできますよ。」

エジコを催促されたとでも思ったのかエジコを見せつつ嬉しそうに話す。

「あの、お婆さん。…お爺さんに私を見つけた竹の辺りに行くように伝えて貰えませんか?」

婆さんは少し驚きつつも優しく問いかける。

「あら、…何かあったのですか?」

…こういう時、何と言ったら良いのだろう…?
そもそも俺の金?でもないしな。

「…そこに行けば、お爺さんとお婆さんの助けになるかと…」

婆さんは不思議そうな顔をしつつもとりあえず、爺さんへと伝えてくれた。

「おぉ、おぉ。可愛い娘の頼みじゃ、すぐにでも行ってこよう」

爺さんは初めての娘の頼みに、深く問う事もなく嬉しそうにすぐに山へと向かって行った。



「婆さんや、婆さんや」

少しして爺さんが帰ってきた。
かなり慌てている様子からして無事見つけれたらしい。

「婆さんや、コレをみてくれ。」

お爺さんの手には金色に光る小さい粒が入った竹の筒。

そう、金らしき物がギッシリと入っている。

しかも金が入っていたのはひとつの節だけでは無く、一本の竹の節ごとにギッシリと入っていたらしい。

爺さんは興奮しつつ婆さんへと説明している。

「まぁ、…何という事でしょう…。
…。

…これはきっと…この子を授けてくださった神様がこの子に不自由させるなとおっしゃっているのですね…。」

婆さんの言葉に爺さんはしっかりと頷く。

「そうじゃ、そうじゃ。
…この子には苦労をさせぬようにせねばならんの。」

爺さんと婆さんはお互いの顔を見てうなづき合っている。

『下賤の者にしてはよくわかっていますね』

お姫様は施す事によって罪の償いになると言っていた。

しかし、これは快適な生活を手に入れる為、しいては自分の為にお金を出したのではないだろうかと俺の中で疑惑が生じた。


今日は爺さんに山を往復させたし、そろそろ日が暮れる。

これから何かを用意するのは無理だろう。

夕飯は婆さんがうっすい汁を作ってくれた。

ほとんどない具を俺の小さな椀に入れてくれた。

もちろん、椀は爺さんの手作りだ。

味は薄いし上手くもないが、お腹は暖かくなった。

その日は文句を言うお姫様を気にする事なく、爺さんと婆さんの作ってくれたエジコで休む事にした。

『お前は下界の者なのに思っていたより役には立ちませんね』

寝る直前にお姫様に言われた言葉が胸に刺さった…

そもそも、俺の知ってる下界と時代からして何もかも違うのだが…何故俺はここに居るのだろう。




次の日、爺さんと婆さんの朝は早いらしく朝起きると既に爺さんは居なかった。

「あら、起きたのですか」

俺がエジコから顔を出すと、近くに居た婆さんがすぐに気付く。

きっとずっと気にしていたのだろう。

「おはようございます。
…お爺さんは?」

「おじいさんはもう少し部屋が暖かくなるように棟梁さんのトコに相談に行ってますよ。」

棟梁って大工かな?
そうだよな。爺さん婆さんが寒くないように、もう少ししっかりした家になると良いなぁ。


「…お腹はすいてないですか?
…なんと、もちがあるのですよ。」

婆さんは嬉しそうに何やら手に持っている物を見せながらこちらにやってくる。

餅なんて昨日は無かった。

きっと婆さんも早くから動いており、俺に食べさせる為にこの餅を手に入れてきたのだろう。

爺さん婆さんにとってご馳走と言われて思い浮かんだのが餅だったに違いない。

手には赤っぽいような茶色っぽいような丸い物に白い粉が付いた物を持っている。

餅って白じゃないんだな…。

確か赤米だったか古代米だったかなら健康食品のコーナーで見た事ある気がするが、…そんな感じなのかな…?

『…』

何故かお姫様は静かだ。

昨日の夕飯には散々文句を言っていたが、餅ならば文句は無いのだろう。

「つきたてを貰ったので、まだ柔らかいですよ。今、食べやすく小さくしますからね。」

婆さんは狭いながらも食器の置いてある所で餅を小さいサイズにして、竹の皿に乗せてくれた。

可愛い小さくて丸い餅が3つ。
婆さんはニコニコとコチラを見ている。

「…あの、ありがとうございます。
…お爺さんとお婆さんの分は?」

「ふふ、大丈夫。ちゃんとありますよ。」
  
婆さんに見つめられつつ餅を食べる。
餅自体の甘みをほのかに感じて何とも美味い。
ただ、モチモチとしていて噛み切る事は難しかった。

果たしてただの餅をこんな風に味わって食べた事なんてあっただろうか…。

この小さい体でもついペロンと3つ食べてしまった。

自分だけ食べて申し訳ない気持ちもあったが、婆さんは全く気にしていないようで嬉しそうにしている。

「お腹は膨れましたか…?…ふふ、良かったですね」

ニコニコしながら皿を下げてくれた。



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