4 / 31
4 お金持ちになりました
しおりを挟む
『興味深くはありますが、こんな場所で生活するのは無理でしょう』
婆さんがせっせとエジコにボロ布を敷いているとお姫様に話しかけられる。
「そうは言っても、貧乏なんだししょうがないだろ。
…むしろこんな状況でよく俺を拾ってきたな…」
婆さんには聞こえないようにコソコソと話をする。
爺さんは何やら外でゴソゴソと竹を加工しているようだ。
『しょうがありません。
…功徳を積む事にもなりますし、下賎なこの者達に施しを与えましょう』
「…?」
また、お姫様がよくわからない事を言っている。
『施しを与えて下位の者の位を上げる事は善き事とされています』
何やらよくわからないが、一体何を与えるのだ?
『先程、私達を見つけた場所に行くように伝えてください』
…
…これは、俺が知っている物語的にお金でも出てくるのではないだろうか?
「…お金…出せるのか…?…でも、どうやって?」
『そもそも、このような場所に連れてこられた事は天界の者の不手際です。
…相応しき衣食住を整えるのは、本来天界の役割です』
罪人なくせにやたら口うるさいが、これは大丈夫なのだろうか。
『しかし、あえて私が施す事によって罪の償いにもなるでしょう』
結局、お姫様は一人納得した様子で俺の聞いたどうやってお金を出すのかという問いの答えを返す事はなかった。
ひとまず、爺さんと婆さんには伝えるが。
「お婆さん。お婆さん。」
俺の呼び掛けに、婆さんは顔を上げて手にエジコを持って嬉しそうに寄ってくる。
「あらあら…ふふ、なんですか。…もう少しであったかくできますよ。」
エジコを催促されたとでも思ったのかエジコを見せつつ嬉しそうに話す。
「あの、お婆さん。…お爺さんに私を見つけた竹の辺りに行くように伝えて貰えませんか?」
婆さんは少し驚きつつも優しく問いかける。
「あら、…何かあったのですか?」
…こういう時、何と言ったら良いのだろう…?
そもそも俺の金?でもないしな。
「…そこに行けば、お爺さんとお婆さんの助けになるかと…」
婆さんは不思議そうな顔をしつつもとりあえず、爺さんへと伝えてくれた。
「おぉ、おぉ。可愛い娘の頼みじゃ、すぐにでも行ってこよう」
爺さんは初めての娘の頼みに、深く問う事もなく嬉しそうにすぐに山へと向かって行った。
「婆さんや、婆さんや」
少しして爺さんが帰ってきた。
かなり慌てている様子からして無事見つけれたらしい。
「婆さんや、コレをみてくれ。」
お爺さんの手には金色に光る小さい粒が入った竹の筒。
そう、金らしき物がギッシリと入っている。
しかも金が入っていたのはひとつの節だけでは無く、一本の竹の節ごとにギッシリと入っていたらしい。
爺さんは興奮しつつ婆さんへと説明している。
「まぁ、…何という事でしょう…。
…。
…これはきっと…この子を授けてくださった神様がこの子に不自由させるなとおっしゃっているのですね…。」
婆さんの言葉に爺さんはしっかりと頷く。
「そうじゃ、そうじゃ。
…この子には苦労をさせぬようにせねばならんの。」
爺さんと婆さんはお互いの顔を見てうなづき合っている。
『下賤の者にしてはよくわかっていますね』
お姫様は施す事によって罪の償いになると言っていた。
しかし、これは快適な生活を手に入れる為、しいては自分の為にお金を出したのではないだろうかと俺の中で疑惑が生じた。
今日は爺さんに山を往復させたし、そろそろ日が暮れる。
これから何かを用意するのは無理だろう。
夕飯は婆さんがうっすい汁を作ってくれた。
ほとんどない具を俺の小さな椀に入れてくれた。
もちろん、椀は爺さんの手作りだ。
味は薄いし上手くもないが、お腹は暖かくなった。
その日は文句を言うお姫様を気にする事なく、爺さんと婆さんの作ってくれたエジコで休む事にした。
『お前は下界の者なのに思っていたより役には立ちませんね』
寝る直前にお姫様に言われた言葉が胸に刺さった…
そもそも、俺の知ってる下界と時代からして何もかも違うのだが…何故俺はここに居るのだろう。
次の日、爺さんと婆さんの朝は早いらしく朝起きると既に爺さんは居なかった。
「あら、起きたのですか」
俺がエジコから顔を出すと、近くに居た婆さんがすぐに気付く。
きっとずっと気にしていたのだろう。
「おはようございます。
…お爺さんは?」
「おじいさんはもう少し部屋が暖かくなるように棟梁さんのトコに相談に行ってますよ。」
棟梁って大工かな?
そうだよな。爺さん婆さんが寒くないように、もう少ししっかりした家になると良いなぁ。
「…お腹はすいてないですか?
…なんと、もちがあるのですよ。」
婆さんは嬉しそうに何やら手に持っている物を見せながらこちらにやってくる。
餅なんて昨日は無かった。
きっと婆さんも早くから動いており、俺に食べさせる為にこの餅を手に入れてきたのだろう。
爺さん婆さんにとってご馳走と言われて思い浮かんだのが餅だったに違いない。
手には赤っぽいような茶色っぽいような丸い物に白い粉が付いた物を持っている。
餅って白じゃないんだな…。
確か赤米だったか古代米だったかなら健康食品のコーナーで見た事ある気がするが、…そんな感じなのかな…?
『…』
何故かお姫様は静かだ。
昨日の夕飯には散々文句を言っていたが、餅ならば文句は無いのだろう。
「つきたてを貰ったので、まだ柔らかいですよ。今、食べやすく小さくしますからね。」
婆さんは狭いながらも食器の置いてある所で餅を小さいサイズにして、竹の皿に乗せてくれた。
可愛い小さくて丸い餅が3つ。
婆さんはニコニコとコチラを見ている。
「…あの、ありがとうございます。
…お爺さんとお婆さんの分は?」
「ふふ、大丈夫。ちゃんとありますよ。」
婆さんに見つめられつつ餅を食べる。
餅自体の甘みをほのかに感じて何とも美味い。
ただ、モチモチとしていて噛み切る事は難しかった。
果たしてただの餅をこんな風に味わって食べた事なんてあっただろうか…。
この小さい体でもついペロンと3つ食べてしまった。
自分だけ食べて申し訳ない気持ちもあったが、婆さんは全く気にしていないようで嬉しそうにしている。
「お腹は膨れましたか…?…ふふ、良かったですね」
ニコニコしながら皿を下げてくれた。
婆さんがせっせとエジコにボロ布を敷いているとお姫様に話しかけられる。
「そうは言っても、貧乏なんだししょうがないだろ。
…むしろこんな状況でよく俺を拾ってきたな…」
婆さんには聞こえないようにコソコソと話をする。
爺さんは何やら外でゴソゴソと竹を加工しているようだ。
『しょうがありません。
…功徳を積む事にもなりますし、下賎なこの者達に施しを与えましょう』
「…?」
また、お姫様がよくわからない事を言っている。
『施しを与えて下位の者の位を上げる事は善き事とされています』
何やらよくわからないが、一体何を与えるのだ?
『先程、私達を見つけた場所に行くように伝えてください』
…
…これは、俺が知っている物語的にお金でも出てくるのではないだろうか?
「…お金…出せるのか…?…でも、どうやって?」
『そもそも、このような場所に連れてこられた事は天界の者の不手際です。
…相応しき衣食住を整えるのは、本来天界の役割です』
罪人なくせにやたら口うるさいが、これは大丈夫なのだろうか。
『しかし、あえて私が施す事によって罪の償いにもなるでしょう』
結局、お姫様は一人納得した様子で俺の聞いたどうやってお金を出すのかという問いの答えを返す事はなかった。
ひとまず、爺さんと婆さんには伝えるが。
「お婆さん。お婆さん。」
俺の呼び掛けに、婆さんは顔を上げて手にエジコを持って嬉しそうに寄ってくる。
「あらあら…ふふ、なんですか。…もう少しであったかくできますよ。」
エジコを催促されたとでも思ったのかエジコを見せつつ嬉しそうに話す。
「あの、お婆さん。…お爺さんに私を見つけた竹の辺りに行くように伝えて貰えませんか?」
婆さんは少し驚きつつも優しく問いかける。
「あら、…何かあったのですか?」
…こういう時、何と言ったら良いのだろう…?
そもそも俺の金?でもないしな。
「…そこに行けば、お爺さんとお婆さんの助けになるかと…」
婆さんは不思議そうな顔をしつつもとりあえず、爺さんへと伝えてくれた。
「おぉ、おぉ。可愛い娘の頼みじゃ、すぐにでも行ってこよう」
爺さんは初めての娘の頼みに、深く問う事もなく嬉しそうにすぐに山へと向かって行った。
「婆さんや、婆さんや」
少しして爺さんが帰ってきた。
かなり慌てている様子からして無事見つけれたらしい。
「婆さんや、コレをみてくれ。」
お爺さんの手には金色に光る小さい粒が入った竹の筒。
そう、金らしき物がギッシリと入っている。
しかも金が入っていたのはひとつの節だけでは無く、一本の竹の節ごとにギッシリと入っていたらしい。
爺さんは興奮しつつ婆さんへと説明している。
「まぁ、…何という事でしょう…。
…。
…これはきっと…この子を授けてくださった神様がこの子に不自由させるなとおっしゃっているのですね…。」
婆さんの言葉に爺さんはしっかりと頷く。
「そうじゃ、そうじゃ。
…この子には苦労をさせぬようにせねばならんの。」
爺さんと婆さんはお互いの顔を見てうなづき合っている。
『下賤の者にしてはよくわかっていますね』
お姫様は施す事によって罪の償いになると言っていた。
しかし、これは快適な生活を手に入れる為、しいては自分の為にお金を出したのではないだろうかと俺の中で疑惑が生じた。
今日は爺さんに山を往復させたし、そろそろ日が暮れる。
これから何かを用意するのは無理だろう。
夕飯は婆さんがうっすい汁を作ってくれた。
ほとんどない具を俺の小さな椀に入れてくれた。
もちろん、椀は爺さんの手作りだ。
味は薄いし上手くもないが、お腹は暖かくなった。
その日は文句を言うお姫様を気にする事なく、爺さんと婆さんの作ってくれたエジコで休む事にした。
『お前は下界の者なのに思っていたより役には立ちませんね』
寝る直前にお姫様に言われた言葉が胸に刺さった…
そもそも、俺の知ってる下界と時代からして何もかも違うのだが…何故俺はここに居るのだろう。
次の日、爺さんと婆さんの朝は早いらしく朝起きると既に爺さんは居なかった。
「あら、起きたのですか」
俺がエジコから顔を出すと、近くに居た婆さんがすぐに気付く。
きっとずっと気にしていたのだろう。
「おはようございます。
…お爺さんは?」
「おじいさんはもう少し部屋が暖かくなるように棟梁さんのトコに相談に行ってますよ。」
棟梁って大工かな?
そうだよな。爺さん婆さんが寒くないように、もう少ししっかりした家になると良いなぁ。
「…お腹はすいてないですか?
…なんと、もちがあるのですよ。」
婆さんは嬉しそうに何やら手に持っている物を見せながらこちらにやってくる。
餅なんて昨日は無かった。
きっと婆さんも早くから動いており、俺に食べさせる為にこの餅を手に入れてきたのだろう。
爺さん婆さんにとってご馳走と言われて思い浮かんだのが餅だったに違いない。
手には赤っぽいような茶色っぽいような丸い物に白い粉が付いた物を持っている。
餅って白じゃないんだな…。
確か赤米だったか古代米だったかなら健康食品のコーナーで見た事ある気がするが、…そんな感じなのかな…?
『…』
何故かお姫様は静かだ。
昨日の夕飯には散々文句を言っていたが、餅ならば文句は無いのだろう。
「つきたてを貰ったので、まだ柔らかいですよ。今、食べやすく小さくしますからね。」
婆さんは狭いながらも食器の置いてある所で餅を小さいサイズにして、竹の皿に乗せてくれた。
可愛い小さくて丸い餅が3つ。
婆さんはニコニコとコチラを見ている。
「…あの、ありがとうございます。
…お爺さんとお婆さんの分は?」
「ふふ、大丈夫。ちゃんとありますよ。」
婆さんに見つめられつつ餅を食べる。
餅自体の甘みをほのかに感じて何とも美味い。
ただ、モチモチとしていて噛み切る事は難しかった。
果たしてただの餅をこんな風に味わって食べた事なんてあっただろうか…。
この小さい体でもついペロンと3つ食べてしまった。
自分だけ食べて申し訳ない気持ちもあったが、婆さんは全く気にしていないようで嬉しそうにしている。
「お腹は膨れましたか…?…ふふ、良かったですね」
ニコニコしながら皿を下げてくれた。
5
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
ずっとあのままでいられたら
初めての書き出し小説風
恋愛
永遠の愛なんてないのかもしれない。あの時あんな出来事が起きなかったら…
同棲して13年の結婚はしていない現在33歳の主人公「ゆうま」とパートナーである「はるか」の物語。
お互い結婚に対しても願望がなく子供もほしくない。
それでも長く一緒にいられたが、同棲10年目で「ゆうま」に起こったことがキッカケで、これまでの気持ちが変わり徐々に形が崩れていく。
またあの頃に戻れたらと苦悩しながらもさらに追い討ちをかけるように起こる普通ではない状況が、2人を引き裂いていく…

転生したら災難にあいましたが前世で好きだった人と再会~おまけに凄い力がありそうです
はなまる
恋愛
現代世界で天鬼組のヤクザの娘の聖龍杏奈はある日父が連れて来たロッキーという男を好きになる。だがロッキーは異世界から来た男だった。そんな時ヤクザの抗争に巻き込まれて父とロッキーが亡くなる。杏奈は天鬼組を解散して保育園で働くが保育園で事件に巻き込まれ死んでしまう。
そしていきなり異世界に転性する。
ルヴィアナ・ド・クーベリーシェという女性の身体に入ってしまった杏奈はもうこの世界で生きていくしかないと心を決める。だがルヴィアナは嫉妬深く酷い女性で婚約者から嫌われていた。何とか関係を修復させたいと努力するが婚約者に好きな人が出来てあえなく婚約解消。そしてラノベで読んだ修道院に行くことに。けれどいつの間にか違う人が婚約者になって結婚話が進んで行く。でもその人はロッキーにどことなく似ていて気になっていた人で…

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」にも掲載。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる