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無事(?)伯父様達への挨拶も終わり、実家の伯爵家へと帰る事になりました。


ケジメとして一度、元嫡男様に会ってから自宅へと帰る事にしようかなと思います。

今は平民となり、一般の牢に移動しているのかと思いきや、まだ城の牢にて収容されているみたいです。

せっかく(?)なので帰る前に寄っていこうと思い付きました。



とりあえず、会いに行きたいと近くの人に伝えると、何やら色々な人が色々とバタバタと手配してくださり、案内人として騎士が派遣されてきました。

なんだか思っていたより、大変な事だったみたいです。(ごめんなさい)



しかも、城の中といっても王宮とは少し離れた距離にあるらしく、まわりが木に囲まれた辺鄙な場所にあるので行く為には馬車に乗って少し移動する事になります。

…それは城の中なの?

と、思いましたが、そもそも城というのは王宮、離宮、その他諸々含めての城と呼ぶそうです。(へぇー)

べつにそこまでして会いたかったわけでは無いので、会うと言ってしまった事を後悔しました…。(でも今さら止めますって言えない…)

王宮には何度も訪れていますが、こんな離れたところに牢があったなんて全く知りませんでした。(王宮の地下に牢があると思ってました)




騎士の案内のもと、何やら重々しい建物に辿り着きました。


見張りの方々も報告を受けていたのかスムーズに入れてくれ、何人か居る兵士の方達も道を開けてくれます。


建物の中は扉を入って進むといくつかドアがあり、その横を通り過ぎ廊下の奥へと進み、突き当たりに少しゴツい感じの扉があり、そこを開けて入ると階段があるので、それを降ります。

なんだか、とても厳重なのですね。(当たり前)

奥に進むと暗くてじめっとしたかび臭いと少し据えた臭いがします。

壁は決して汚れているわけではないのになぜか薄汚れているように見えて不思議です。

前を歩いて案内してくれた騎士の方について少し進むと奥に鉄格子が見えました。


「こちらになります。」

そう言い、騎士が後ろに下がると、そこにいた見張りらしき兵士もそっと席を外してくれました。





「…。…!?」


牢の中を見ると薄汚れた男がこっちを見て驚愕の表情を浮かべています。





あれ、こんな顔だったかしら?


前に会った時は、いかにも貴族然とした様相でしたが、今はそんな事は全く無く、こちらを見る彼は無精髭が生え、髪の毛には前には見かけなかった白い物がチラホラ見えます。

一気に老けたわね…


「…き、…君は…」








あら。

あらあらあら。






これは。


私は思わず目を見開きました。

所々、髪に白い物あり、少し老けたようにみえるその姿…




…あぁ、これは


…前世の旦那さんに似ていたんだわ。

若い時の痩せていた頃。


…結婚してすぐにポチャになったのでその姿の方が印象が強く、今まで気付きませんでした。

勿論、こんなにイケメンだったわけではありませんが、出会った頃に少し似ているのです。

…私には勿体無いような旦那さんでした。


懐かしく思い返したその暖かい気持ちに、うっかり口元に優しい微笑みが浮かびます。



「…。…君は、まだ僕のことを愛し「あ、そういうのはありません。嫌いですし、キモいですし、関わりたくないし、顔も見たくありません。今後苦労したらよろしいのにと思っております。」」

「…」

「…」

彼、すごいです。

一瞬で現実に引き戻されました…。

そしてウッカリ素が出てしまいました。

…まぁ、問題ありません。

「…今はもう嫌いですし、キモいですし、関わりたくありません。今後苦労すれば良いと思っております。」

とりあえず既に出てしまったなら仕方ありません。

どうせなら多少残念な方にもわかる様にしっかり伝えました。

そして、大事な事なので2回言いました。

わかりやすく、はっきりと。


今まできっとこんな事は言われた事無かったのでしょう(私だってこんな事誰かに言った事ありませんが。)なにやらポカンとした後に、少しして意味が解ったのか眉間に皺を寄せ不満そうに口を閉じ、こちらをにらんでおります。


こうしてみると前世の旦那とは全く違います。

似てると思ってしまった自分に不快な気持ちです。

…本当に、…色々とおバカなわたし…。




さてそれでは、仕切り直して伝えたかったことだけ伝えます。


コホンッ。

「…お久しぶりです。

今回の事は非常に残念な事でした。」

私の言葉に、彼の目に怨みのような物が宿りました。

「しかし、…侯爵家が潰れた一番の原因は、無知な貴方と貴方にキチンと対処出来なかった私が主な原因でしょう。」

「…っ。」

自覚があるのか無いのか悔しそうです。

しかし、貴方にそんな顔をする資格はありません。

「高位貴族には高位貴族としての義務があります。

私達はそれを全うしなかった。

…通常でしたら、貴方含め侯爵家にて私達の事に関係した者達、全て処刑されておりました。(私除く)」

「…え?」

彼は目を見開き何故か驚愕の表情です。

取り調べで聞いていないのでしょうか。

…ひょっとして私が知らなかったように彼も、もう少し軽い物を想像していたのかもしれません。

「…貴方の無知な行動により、侯爵家当主は処刑となります。

本当ならあなたが償うべき罪ですが、色々な要因により貴方ではなく当主が責任をとる事となりました。」

当主は取り潰し直前に彼を離籍させていました。

それが、保身なのか親心なのかはわかりません。

だから、今の彼は平民です。

平民に責任はとれません。(見下すわけではありませんが、平民には今回の責任を取らせる程の価値がないのです。)



「私は(一応)王家の血筋です。

そんな私を蔑ろにすれば当然それ相応の罰が下されます。」

そこはすでに聞いていたのか、彼は反論する事も無く顔を真っ青にして下を向いています。


「通常でしたら、たとえ侯爵家でも一族郎党処刑となっております。

もちろん貴方も。」

「…。」

彼は何も反応しなくなりました。

「…しかし、あなたがたは私の持つ領地にて引き受ける事になりました。

…これは貴方に対する温情ではありません。

むしろ逆です。

関係ない罪無き人々が貴方達の罪を一緒に償わされる所をその目で見てください。

これからは、その目と体で貴方には見えていなかった現実を実感する事が出来ると思います。」


彼は下を向いてしまったので表情は見えませんがなにやら考えてはいる様です。


「勿論彼女も貴方と一緒に受け入れる予定です。

貴方は全てを犠牲にして真実の愛を見事手に入れたのです。

きっと、後悔なんていたしませんよね…。

…ぜひ、彼女に語った愛を責任もって最後まで貫いて下さい…。」


「…」


「そして最後に…



私を騙して幸せになろうなんて、ふざけるなバーカ!」


「…っ⁉︎」


彼は驚愕の表情でこっちを見てます。



…よし。

子供っぽいと言われようと、これで私の中のケジメはつけれました。(自己満足万歳)

撤収です。



驚いてる彼の事は気にもとめず、私は来た道を戻ります。





ところで、案内してくれた騎士が、何故か腕を組んで壁際でずっと頷いてくれていたのが気になって仕方がなかったです。(校長先生みたい)










…いやぁ、それにしても私ってば、なんであんな男に惚れたのか不思議だったけど…

…間違えるなんて、やっぱりマヌケだわ。






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