4 / 18
侍女頭
しおりを挟む
彼女に会ったのは王都の学校だった。
爵位を継ぐ予定のない貴族や裕福な商人等が通う学校。
高位貴族や王族等の通う王立学園や、高位ではないものの嫡男や何かしらの才能のある者が通う王立学院などとは天地の差があるものの、王都学校を出ているか出ていないかで、将来が変わる事もまた事実である。
私は子爵家の次女として産まれた。決して裕福ではないが仮にも子爵の娘が学校も行けないなどと言われぬようにとりあえずと入れられたのが王都の学校だ。
正直、学校では同じような子爵や下の男爵、あとは平民などの子爵よりも下の者ばかりなので居心地は悪く無かった。
裕福な商人の子が繋がり欲しさにプレゼントを贈ってきたり、自分よりも爵位の高い存在もいない為、気を使うような事態も少なく過ごせた。そして、それなりに仲の良い友人も出来た。
その友人の中の1人が花屋の娘であった。
平民ではあったけれど、いつもニコニコとして、目立った事も言わず、正直存在さえ忘れる事もある程で特に不快さも無く、一緒にいることを許していた。
学校を卒業後、今後についてどこかの商人か男爵あたりとの結婚かどこか高位貴族で雇ってもらえないかと焦っている時にそんな存在さえ忘れていた彼女から連絡が来た。
拙い文章で書かれていたその内容は、とある侯爵家について聞きたいとの事であった。
正直、面倒に感じたのと気安く手紙を送ってくる不敬さを不快に感じたけれど、手紙の内容が気になったので返事を書く事にした。
その侯爵家について両親に聞くと、そこの嫡男がなんとも上手い事やったらしく、これから注目されるだろうと言っていたので、そのまま書いて伝えた。
すると、返信の内容に驚かされた。
まさかそこの嫡男に見初められお屋敷に形式上雇われる事になるとは。
何度かやり取りをする内に、彼女の補佐という形で就職が決まった。
両親に報告すると、今1番注目度の高い高位貴族に雇って貰える幸運を喜んでいた。
なんと、最近王族も侯爵家を気にかけているという噂もあるらしい。
平民の補佐という事に不満を感じていた気持ちが両親の喜びぶりと侯爵家の注目度を聞いて霧散した。
むしろ、彼女を導く立場の自分は侯爵家でも重要な地位にいるのではないかと考え直したのだ。
学校時代の友人達に手紙を送ると皆に羨まれ、中には自分も一緒に働かせて欲しいという懇願の手紙もあった。
実際、働き始めるとお屋敷では最近大幅な異動があったらしく、元々の使用人は現侯爵夫妻について王都に行ってしまった為、新しい者ばかりであった。
働きたいという友人を侯爵家へと紹介する事によって侯爵家と働く友人双方に恩を売れる形となった。
私の侯爵家での地位はこれで確定し、なんと侍女頭まであっという間に登りつめたのだ。
これもすべて真実の愛によって巡り合った侯爵様と平民の身分違いの愛を応援した私の健闘の賜物だろう。
2人が心地良く過ごせる様に心を込めてお仕えした。
時には夜の庭園で、また時には夕焼けの綺麗な図書館で、2人が偶然会える様にと心を配り、心ときめくシチュエーションを作り上げた。
その甲斐あって、2人は屋敷の其処此処でラブラブな様子で過ごしている。
ただ、家には形だけのお飾りな奥様が存在した。
私も貴族ゆえに政略結婚の大切さは理解しているつもりではあった。
しかし、この侯爵家に至っては必要なかったのではないだろうか。
財政にも困っておらず、王族からも注目されるようなすでに評価が高い侯爵様がわざわざ爵位が下の伯爵家から嫁を貰う理由がわからなかった。
しかも、顔は良いが頭はたいして良くなさそうな、いかにも箱入りな貴族令嬢を。
いつも見た目だけ綺麗にしていて、派手なデザインのやたら高そうな服やアクセサリーを身につけては散財し、偉そうに振る舞っていたが、所詮は形だけの妻で愛されてもいない。
結婚後、侯爵様直々に真実の愛の相手を紹介され、夜の訪れはもちろん、空いた時間を彼女と過ごす様子はない。
もちろん一緒にお食事どころか、侯爵様からの贈り物も伝言等何も無い。
かろうじて、夫婦で出席しなければならない最低限のお付き合いにまれに一緒に参加する程度だ。
つまりは彼女との関係は取り繕う必要さえないという事だろう。
それでも最初はこの屋敷を引っ掻き回そうとしたので、身の程を知る事が出来るようにみんなで親切にも助言を徹底した。
そのおかげか、最近では身の程をわきまえれるようになっていたが、彼女は侯爵家に必要ないのではないだろうか。
きっと子供ができない事を理由にそのうち離縁されるだろうと私筆頭に皆、噂していた。
そんな私達の、いや私の勘違いに気付くのは、やっと身の程を知り大人しくなったと思っていた彼女の存在を忘れつつあった何でもない日の事だった。
いつもと違う彼女の行動の報告を受け、そろそろ本気で侯爵家の為に追い出すべきが考えつつ向かった先で、知らなかった衝撃の事実を聞くことになった。
初めて聞いた彼女の血統に猜疑心が無かったわけではない。
しかし、彼女がそんな大それた嘘の手紙を王宮に向けて送るなどとは思えなかった。
貴族だからこそ当然知っている王家の血筋の詐称の罪の重さ。
それこそ不敬罪であっさり打首になる程の事だ。
王家への私信を紛失など、故意でなくとも大変な過失となる。
ましてや万が一故意で行ったと発覚すれば、本当に冗談ではなく一族郎党の罰もありうる。
ひょっとしたら、あの女の精一杯の嫌がらせの可能性を信じて、ひとまず定期的に訪れる侯爵家専用の配達員へと手紙は渡した。
いつもその場で可笑しな物や間違った物がないか軽く確認される。
王家宛の物を見て一瞬動きが止まったが、特に再確認される事も無く受け取られた。
裏にはしっかりと奥様の封印と記名がある。
何も言われない、と言う事はつまり、改めて確認する必要がないという事だ。
間違った物やおかしな物はないと判断された。
ただの配達員ではあるが、侯爵家の物を預かると言う事はそれだけ信頼のできる相手という意味でもある。
そんな彼が普通に受け取ったと言う事はこのまま宛先の王家へと届けるのだろうか。
イタズラであれば王宮の監査にて弾かれるだろう。
宛先が王家の時点で私にはどんなに恐れ多くとも届けるしか選択肢がない。
勝手に廃棄出来ないのだから、イタズラであれば私には責任はない。
しかし、もしこれが本当に王家の方々の手へと渡るような手紙であれば、一体手紙の内容には何が書かれているのか。
死ぬ前に見るという走馬灯の様に今までの奥様に対する対応がグルグルと頭の中で周り始める。
なぜわざわざ爵位が下の女性と結婚したのか。なぜ彼女だったのか。
ずっと疑問だった答えがわかりそうであったが、わかりたくない気持ちの方が強い。
最後に彼女に会った時、今までにない優雅さと余裕を感じた。
あの時は考える事が多すぎて気が回らなかったが今思えばいつもと違いすぎる。
いつもなら私達の言葉や態度に反応し、不安そうにこちらの様子を伺っていた。
それが、あの時はこちらに冷たい視線をよこしつつ話など聞く気もないような態度であった。
まるで、高位貴族らしく下の者を見限ったような…
何をどうすれば良いのか。
まずは事実を確認するべきではあるがしたくない気持ちが強い。
自分達はどうなってしまうのか。
かといって今まで通りに対応する勇気も無ければいきなり態度を変える図太さも持ち合わせてはいない。
私に罪がある?
どれが?
何が罪に当たる?
雲の上の王族と血縁?
本当に?
わからない。
いったいどうしたらいいのだろうか。
私は一体どうすれば良いのだろう。
爵位を継ぐ予定のない貴族や裕福な商人等が通う学校。
高位貴族や王族等の通う王立学園や、高位ではないものの嫡男や何かしらの才能のある者が通う王立学院などとは天地の差があるものの、王都学校を出ているか出ていないかで、将来が変わる事もまた事実である。
私は子爵家の次女として産まれた。決して裕福ではないが仮にも子爵の娘が学校も行けないなどと言われぬようにとりあえずと入れられたのが王都の学校だ。
正直、学校では同じような子爵や下の男爵、あとは平民などの子爵よりも下の者ばかりなので居心地は悪く無かった。
裕福な商人の子が繋がり欲しさにプレゼントを贈ってきたり、自分よりも爵位の高い存在もいない為、気を使うような事態も少なく過ごせた。そして、それなりに仲の良い友人も出来た。
その友人の中の1人が花屋の娘であった。
平民ではあったけれど、いつもニコニコとして、目立った事も言わず、正直存在さえ忘れる事もある程で特に不快さも無く、一緒にいることを許していた。
学校を卒業後、今後についてどこかの商人か男爵あたりとの結婚かどこか高位貴族で雇ってもらえないかと焦っている時にそんな存在さえ忘れていた彼女から連絡が来た。
拙い文章で書かれていたその内容は、とある侯爵家について聞きたいとの事であった。
正直、面倒に感じたのと気安く手紙を送ってくる不敬さを不快に感じたけれど、手紙の内容が気になったので返事を書く事にした。
その侯爵家について両親に聞くと、そこの嫡男がなんとも上手い事やったらしく、これから注目されるだろうと言っていたので、そのまま書いて伝えた。
すると、返信の内容に驚かされた。
まさかそこの嫡男に見初められお屋敷に形式上雇われる事になるとは。
何度かやり取りをする内に、彼女の補佐という形で就職が決まった。
両親に報告すると、今1番注目度の高い高位貴族に雇って貰える幸運を喜んでいた。
なんと、最近王族も侯爵家を気にかけているという噂もあるらしい。
平民の補佐という事に不満を感じていた気持ちが両親の喜びぶりと侯爵家の注目度を聞いて霧散した。
むしろ、彼女を導く立場の自分は侯爵家でも重要な地位にいるのではないかと考え直したのだ。
学校時代の友人達に手紙を送ると皆に羨まれ、中には自分も一緒に働かせて欲しいという懇願の手紙もあった。
実際、働き始めるとお屋敷では最近大幅な異動があったらしく、元々の使用人は現侯爵夫妻について王都に行ってしまった為、新しい者ばかりであった。
働きたいという友人を侯爵家へと紹介する事によって侯爵家と働く友人双方に恩を売れる形となった。
私の侯爵家での地位はこれで確定し、なんと侍女頭まであっという間に登りつめたのだ。
これもすべて真実の愛によって巡り合った侯爵様と平民の身分違いの愛を応援した私の健闘の賜物だろう。
2人が心地良く過ごせる様に心を込めてお仕えした。
時には夜の庭園で、また時には夕焼けの綺麗な図書館で、2人が偶然会える様にと心を配り、心ときめくシチュエーションを作り上げた。
その甲斐あって、2人は屋敷の其処此処でラブラブな様子で過ごしている。
ただ、家には形だけのお飾りな奥様が存在した。
私も貴族ゆえに政略結婚の大切さは理解しているつもりではあった。
しかし、この侯爵家に至っては必要なかったのではないだろうか。
財政にも困っておらず、王族からも注目されるようなすでに評価が高い侯爵様がわざわざ爵位が下の伯爵家から嫁を貰う理由がわからなかった。
しかも、顔は良いが頭はたいして良くなさそうな、いかにも箱入りな貴族令嬢を。
いつも見た目だけ綺麗にしていて、派手なデザインのやたら高そうな服やアクセサリーを身につけては散財し、偉そうに振る舞っていたが、所詮は形だけの妻で愛されてもいない。
結婚後、侯爵様直々に真実の愛の相手を紹介され、夜の訪れはもちろん、空いた時間を彼女と過ごす様子はない。
もちろん一緒にお食事どころか、侯爵様からの贈り物も伝言等何も無い。
かろうじて、夫婦で出席しなければならない最低限のお付き合いにまれに一緒に参加する程度だ。
つまりは彼女との関係は取り繕う必要さえないという事だろう。
それでも最初はこの屋敷を引っ掻き回そうとしたので、身の程を知る事が出来るようにみんなで親切にも助言を徹底した。
そのおかげか、最近では身の程をわきまえれるようになっていたが、彼女は侯爵家に必要ないのではないだろうか。
きっと子供ができない事を理由にそのうち離縁されるだろうと私筆頭に皆、噂していた。
そんな私達の、いや私の勘違いに気付くのは、やっと身の程を知り大人しくなったと思っていた彼女の存在を忘れつつあった何でもない日の事だった。
いつもと違う彼女の行動の報告を受け、そろそろ本気で侯爵家の為に追い出すべきが考えつつ向かった先で、知らなかった衝撃の事実を聞くことになった。
初めて聞いた彼女の血統に猜疑心が無かったわけではない。
しかし、彼女がそんな大それた嘘の手紙を王宮に向けて送るなどとは思えなかった。
貴族だからこそ当然知っている王家の血筋の詐称の罪の重さ。
それこそ不敬罪であっさり打首になる程の事だ。
王家への私信を紛失など、故意でなくとも大変な過失となる。
ましてや万が一故意で行ったと発覚すれば、本当に冗談ではなく一族郎党の罰もありうる。
ひょっとしたら、あの女の精一杯の嫌がらせの可能性を信じて、ひとまず定期的に訪れる侯爵家専用の配達員へと手紙は渡した。
いつもその場で可笑しな物や間違った物がないか軽く確認される。
王家宛の物を見て一瞬動きが止まったが、特に再確認される事も無く受け取られた。
裏にはしっかりと奥様の封印と記名がある。
何も言われない、と言う事はつまり、改めて確認する必要がないという事だ。
間違った物やおかしな物はないと判断された。
ただの配達員ではあるが、侯爵家の物を預かると言う事はそれだけ信頼のできる相手という意味でもある。
そんな彼が普通に受け取ったと言う事はこのまま宛先の王家へと届けるのだろうか。
イタズラであれば王宮の監査にて弾かれるだろう。
宛先が王家の時点で私にはどんなに恐れ多くとも届けるしか選択肢がない。
勝手に廃棄出来ないのだから、イタズラであれば私には責任はない。
しかし、もしこれが本当に王家の方々の手へと渡るような手紙であれば、一体手紙の内容には何が書かれているのか。
死ぬ前に見るという走馬灯の様に今までの奥様に対する対応がグルグルと頭の中で周り始める。
なぜわざわざ爵位が下の女性と結婚したのか。なぜ彼女だったのか。
ずっと疑問だった答えがわかりそうであったが、わかりたくない気持ちの方が強い。
最後に彼女に会った時、今までにない優雅さと余裕を感じた。
あの時は考える事が多すぎて気が回らなかったが今思えばいつもと違いすぎる。
いつもなら私達の言葉や態度に反応し、不安そうにこちらの様子を伺っていた。
それが、あの時はこちらに冷たい視線をよこしつつ話など聞く気もないような態度であった。
まるで、高位貴族らしく下の者を見限ったような…
何をどうすれば良いのか。
まずは事実を確認するべきではあるがしたくない気持ちが強い。
自分達はどうなってしまうのか。
かといって今まで通りに対応する勇気も無ければいきなり態度を変える図太さも持ち合わせてはいない。
私に罪がある?
どれが?
何が罪に当たる?
雲の上の王族と血縁?
本当に?
わからない。
いったいどうしたらいいのだろうか。
私は一体どうすれば良いのだろう。
285
お気に入りに追加
6,981
あなたにおすすめの小説
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
けじめをつけさせられた男
杜野秋人
恋愛
「あの女は公爵家の嫁として相応しくありません!よって婚約を破棄し、新たに彼女の妹と婚約を結び直します!」
自信満々で、男は父にそう告げた。
「そうか、分かった」
父はそれだけを息子に告げた。
息子は気付かなかった。
それが取り返しのつかない過ちだったことに⸺。
◆例によって設定作ってないので固有名詞はほぼありません。思いつきでサラッと書きました。
テンプレ婚約破棄の末路なので頭カラッポで読めます。
◆しかしこれ、女性向けなのか?ていうか恋愛ジャンルなのか?
アルファポリスにもヒューマンドラマジャンルが欲しい……(笑)。
あ、久々にランクインした恋愛ランキングは113位止まりのようです。HOTランキング入りならず。残念!
◆読むにあたって覚えることはひとつだけ。
白金貨=約100万円、これだけです。
◆全5話、およそ8000字の短編ですのでお気軽にどうぞ。たくさん読んでもらえると有り難いです。
ていうかいつもほとんど読まれないし感想もほぼもらえないし、反応もらえないのはちょっと悲しいです(T∀T)
◆アルファポリスで先行公開。小説家になろうでも公開します。
◆同一作者の連載中作品
『落第冒険者“薬草殺し”は人の縁で成り上がる』
『熊男爵の押しかけ幼妻〜今日も姫様がグイグイ来る〜』
もよろしくお願いします。特にリンクしませんが同一世界観の物語です。
◆(24/10/22)今更ながら後日談追加しました(爆)。名前だけしか出てこなかった、婚約破棄された側の侯爵家令嬢ヒルデガルトの視点による後日談です。
後日談はひとまず、アルファポリス限定公開とします。
欲しいのならば、全部あげましょう
杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」
今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。
「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」
それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど?
「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」
とお父様。
「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」
とお義母様。
「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」
と専属侍女。
この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。
挙げ句の果てに。
「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」
妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。
そうですか。
欲しいのならば、あげましょう。
ですがもう、こちらも遠慮しませんよ?
◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。
「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。
恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。
一発ネタですが後悔はありません。
テンプレ詰め合わせですがよろしければ。
◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。
カクヨムでも公開しました。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
だってそういうことでしょう?
杜野秋人
恋愛
「そなたがこれほど性根の卑しい女だとは思わなかった!今日この場をもってそなたとの婚約を破棄する!」
夜会の会場に現れた婚約者様の言葉に驚き固まるわたくし。
しかも彼の隣には妹が。
「私はそなたとの婚約を破棄し、新たに彼女と婚約を結ぶ!」
まあ!では、そういうことなのですね!
◆思いつきでサラッと書きました。
一発ネタです。
後悔はしていません。
◆小説家になろう、カクヨムでも公開しています。あちらは短編で一気読みできます。
彼だけが、気付いてしまった
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約なぞ破棄してくれるっ!」
学院の卒業記念パーティーで、またしても繰り返される王子による婚約者への婚約破棄。だが今回は何やら様相が違った。
王子が傍らに抱き寄せた男爵家令嬢を虐めたと婚約者をなじり、婚約者は身に覚えがないと真っ向から否定する。物証を持ち出しても、証人を立てても彼女は頑なに認めようとしない。
あまりのことに王子の側近候補として取り巻く男子たちも糾弾に加わる。
その中に、彼は、いた。
「大勢でひとりを取り囲んで責め立てるなど、将来の王子妃としてあるまじき……………ん?」
そう。彼は、彼だけが気付いてしまった。
そして彼が気付いたことで、その場の全てがひっくり返っていくことを、王子たちは気付いていなかった⸺!
◆最近こればっかですが設定なしの即興作品です。
思いついたので書いちゃいました。
◆全5話、約12000字です。第1話だけすこし短め(約2000字)です。
◆恋愛ジャンルで投稿しますが恋愛要素はやや薄め、ほぼ最後の方だけです。
もし違和感あればご指摘下さい。ジャンル変更など対応致します。
◆この作品は小説家になろうでも同時公開します。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
【完結】王家の血統〜下位貴族と侮るなかれ〜
杜野秋人
恋愛
「貧乏子爵家出身の貴様ごときが私の婚約者などと、もう我慢ならんっ!貴様との婚約なぞ、今この場で破棄してくれるわ!」
王宮主催の晩餐会の会場で、エスコートもなさらずわたくしを放置していた婚約者様。ようやく姿を見せたと思ったら指を突き付けて声高にそう宣言されました。
ああ、殿下。
やはりわたくしとの婚約の意味を理解されておられなかったのですね。
まあ、構いませんわ。わたくしも愛のない結婚など望んでもおりませんし。
けれど、しでかしたことの責任はきっちりと取って頂きますよ?後悔なさっても知りませんからね?
王子は婚約者が嫌いだった。借金を抱えた貧乏子爵家の娘で、特に美貌を誇るわけでもない。王家の遠縁なのは知っているがそれだけだ。
そんな女など、嫡出たる自分には相応しくない。もっと美しく、地位の高い⸺そう、他国の姫などが我が妻として相応しい。
そうして王子は婚約者に対して婚約破棄を言い渡す。
彼女がなぜ、自分の婚約者と決められたのか気付かないままに。
そう、彼は知らなかったのだ。
そして王命で集められた謁見の間にて、王子は自分が何をしでかしたのか、思い知ることになる⸺!
◆政略結婚の目的のひとつは縁繋ぎ。累代で婚姻を重ねていけば、長い歴史のある国ならこういう事もありうるよね、って話です。
全5話、完結しました。約2万字ほどの短めの物語です。
◆異世界恋愛ですが異世界要素がちょっと薄いです。一応、魔力があって魔術が存在するいつもの世界(のつもり)です。
◆設定は深く考えていませんが、家系図はきっちり組みました。ただし若干ややこしいので、やる気のある方は読みながら自分で家系図を書いてみると分かりやすいかも知れません。
大変申し訳ないですが、スッキリしたものが書けなかったので家系図の添付はありません。ご了承下さい。
◆この作品は例によって小説家になろうでも公開します。あちらも全5話です。
◆1/16、恋愛ランキング、HOTランキング入り確認しました!お読み頂きありがとうございます!
1/17、人気ランキング入り確認!読んで下さる皆様のおかげです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる