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五度目の人生
第46話 罪にふさわしい罰
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エレーヌ王女殿下の罪にふさわしい罰は。
「……わたくしは。エレーヌ王女殿下の病死は――賛同しかねます」
慈悲ではない。
私は処刑されて回帰することになった。それが私だけに起こった奇跡だとは思えない。もしかしたらエレーヌ王女殿下にも起こるかもしれない。
ならば神様の気まぐれで、私のように人生をやり直す機会を与えられないようにしなければならない。
もし誰かの手によって命を絶ち切られた者であることがこの奇跡の条件の一つなのだとしたら、年老いて寿命が尽きるその瞬間まで牢屋で過ごさせ、その機会を失わせなければならない。
「もちろん罪はとても大きいものです。いえ、大きすぎるものゆえ、償うには膨大な時間が必要となります。娯楽を与えられず、外の情報を一切知らされず、人としての尊厳も奪われ、薄暗い牢屋で長い間、朝夕も分からなくなるくらいの、日付けの感覚もなくなるくらいの永い時間の中、孤独と戦いながら自分の行動を省み、自分が犯した罪の重さを知らなければなりません。生涯その罪を背負い、後悔しながら生き続けなければなりません。生きることほどつらい刑罰はないのです。死など軽すぎます」
「経験者が語る言葉は重いね……」
ユリウス殿下は硬い表情でこくんと息を呑まれた。
「じゃあ、リーチェ嬢と兄上の罰はどう考える?」
今の彼らの人生は、この世界たった一つだ。だから偏った見方をしてはならない。混同してはならない。
「リーチェも共犯者です。生涯囚われるべきです。……ですが、ミラディア王女殿下を直接傷つけておりません。どうかご慈悲を」
「と言うと?」
「貴人用の監獄は人がとても少ないのです。そんな場では心を病んでしまいます」
彼女はたくさんの人からの視線を浴びるのが好きだから。
「ですからどうか平民用の監獄に収容し、清掃担当として従事させてやってください。綺麗好きですし、虫好きですから虫の棲家となっているような汚部屋ですと、なお懸命に取り組むでしょう。生きる気力になります」
確かリーチェは選民意識が高い人間で、潔癖症で侍女に徹底的に掃除をさせていただろうか。好きな虫は蝶だけだっただろうか。――いいえ。記憶が定かではないわ。
「名案だわ、それ! あの子、平民を見下していたものね。平民の立場で物事を見られるいい機会になるかもしれないわ」
「いや、アリシア嬢。それ、本当に慈悲? 私的な恨み入ってない!?」
ミラディア王女殿下は楽しそうに笑い、ユリウス殿下は顔を引きつらせた。
「ではオースティンは?」
今世の王太子殿下は、最初、自分のことは棚上げにして私を罵倒してきただけだ。
私の取り澄ました顔が大嫌いだったとは言っていないし、私のことを計算高く、男を誑かすふしだらな女だとは言っていないし、私を凶悪犯がいる監獄へ放り込んで脅してもいないし、怯える私を見て喜んでもいないし、囚人の前で服を破こうともしていないし、床に這いつくばらせて殿下の靴に口づけするように強要もしていない。シメオン様は暴行されていないし、処刑もされていないし、彼が処刑される姿を私に見せつけてもいない。
偏った見方をしてはならない。混同してはならない。ただ彼がこの世界で行ったことだけを粛々と裁くだけだ。
心の中でもう一度決意を固める。
「そうですね。たとえ直接手を下していなくても、敬愛すべきお姉様であるミラディア王女殿下を害した犯人を幇助したことは万死に値する行為です。王女殿下の足元で潰れたカエルのように這いつくばらせて靴に口づけさせ、何なら頭を足で踏みつけながら謝罪と永遠の忠誠を誓わせたのち、指先一つで破けそうなくらいのうっすいボロ囚人服をあてがえ、平民用の監獄の暴行罪、強盗罪、殺人罪にまで至る一級犯罪者の階層、中でもとりわけ男性を愛し、傷害することで悦びを感じる歪んだ性癖の囚人男性が数多く収容されている階層に収容されるのが望ましいかと思われます」
今世ではしていなくても、人間の本質は変わらない。元々私を虐げたいという考えの持ち主である。それに今世も、脱獄を予測して手ぐすね引いて待ち受けていたわけだし、そういうことを私にさせる高いポテンシャルは秘めていた。やはり彼の一部として裁くべきである。私情ではない、私情では。
「何か具体的すぎない? それに今、淡々と言ったけど、めちゃくちゃ私情入ったよね? 何か積年の恨み入ったよね!?」
「あはははっ! いいわね、いいわね。その案、採用しちゃうわ!」
「……姉上まで。まったく」
ユリウス殿下は苦笑いするとため息を一つ吐く。そして再び私を見た。
「……わたくしは。エレーヌ王女殿下の病死は――賛同しかねます」
慈悲ではない。
私は処刑されて回帰することになった。それが私だけに起こった奇跡だとは思えない。もしかしたらエレーヌ王女殿下にも起こるかもしれない。
ならば神様の気まぐれで、私のように人生をやり直す機会を与えられないようにしなければならない。
もし誰かの手によって命を絶ち切られた者であることがこの奇跡の条件の一つなのだとしたら、年老いて寿命が尽きるその瞬間まで牢屋で過ごさせ、その機会を失わせなければならない。
「もちろん罪はとても大きいものです。いえ、大きすぎるものゆえ、償うには膨大な時間が必要となります。娯楽を与えられず、外の情報を一切知らされず、人としての尊厳も奪われ、薄暗い牢屋で長い間、朝夕も分からなくなるくらいの、日付けの感覚もなくなるくらいの永い時間の中、孤独と戦いながら自分の行動を省み、自分が犯した罪の重さを知らなければなりません。生涯その罪を背負い、後悔しながら生き続けなければなりません。生きることほどつらい刑罰はないのです。死など軽すぎます」
「経験者が語る言葉は重いね……」
ユリウス殿下は硬い表情でこくんと息を呑まれた。
「じゃあ、リーチェ嬢と兄上の罰はどう考える?」
今の彼らの人生は、この世界たった一つだ。だから偏った見方をしてはならない。混同してはならない。
「リーチェも共犯者です。生涯囚われるべきです。……ですが、ミラディア王女殿下を直接傷つけておりません。どうかご慈悲を」
「と言うと?」
「貴人用の監獄は人がとても少ないのです。そんな場では心を病んでしまいます」
彼女はたくさんの人からの視線を浴びるのが好きだから。
「ですからどうか平民用の監獄に収容し、清掃担当として従事させてやってください。綺麗好きですし、虫好きですから虫の棲家となっているような汚部屋ですと、なお懸命に取り組むでしょう。生きる気力になります」
確かリーチェは選民意識が高い人間で、潔癖症で侍女に徹底的に掃除をさせていただろうか。好きな虫は蝶だけだっただろうか。――いいえ。記憶が定かではないわ。
「名案だわ、それ! あの子、平民を見下していたものね。平民の立場で物事を見られるいい機会になるかもしれないわ」
「いや、アリシア嬢。それ、本当に慈悲? 私的な恨み入ってない!?」
ミラディア王女殿下は楽しそうに笑い、ユリウス殿下は顔を引きつらせた。
「ではオースティンは?」
今世の王太子殿下は、最初、自分のことは棚上げにして私を罵倒してきただけだ。
私の取り澄ました顔が大嫌いだったとは言っていないし、私のことを計算高く、男を誑かすふしだらな女だとは言っていないし、私を凶悪犯がいる監獄へ放り込んで脅してもいないし、怯える私を見て喜んでもいないし、囚人の前で服を破こうともしていないし、床に這いつくばらせて殿下の靴に口づけするように強要もしていない。シメオン様は暴行されていないし、処刑もされていないし、彼が処刑される姿を私に見せつけてもいない。
偏った見方をしてはならない。混同してはならない。ただ彼がこの世界で行ったことだけを粛々と裁くだけだ。
心の中でもう一度決意を固める。
「そうですね。たとえ直接手を下していなくても、敬愛すべきお姉様であるミラディア王女殿下を害した犯人を幇助したことは万死に値する行為です。王女殿下の足元で潰れたカエルのように這いつくばらせて靴に口づけさせ、何なら頭を足で踏みつけながら謝罪と永遠の忠誠を誓わせたのち、指先一つで破けそうなくらいのうっすいボロ囚人服をあてがえ、平民用の監獄の暴行罪、強盗罪、殺人罪にまで至る一級犯罪者の階層、中でもとりわけ男性を愛し、傷害することで悦びを感じる歪んだ性癖の囚人男性が数多く収容されている階層に収容されるのが望ましいかと思われます」
今世ではしていなくても、人間の本質は変わらない。元々私を虐げたいという考えの持ち主である。それに今世も、脱獄を予測して手ぐすね引いて待ち受けていたわけだし、そういうことを私にさせる高いポテンシャルは秘めていた。やはり彼の一部として裁くべきである。私情ではない、私情では。
「何か具体的すぎない? それに今、淡々と言ったけど、めちゃくちゃ私情入ったよね? 何か積年の恨み入ったよね!?」
「あはははっ! いいわね、いいわね。その案、採用しちゃうわ!」
「……姉上まで。まったく」
ユリウス殿下は苦笑いするとため息を一つ吐く。そして再び私を見た。
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