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四度目の人生
第37話 残酷な断罪
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そうして私はまた断罪への階段を上る。
壇上には相変わらず国王陛下、王妃殿下、王太子殿下に第二王子、第二王女がいた。さらには薄ら笑いを浮かべるリーチェもやはりいた。
しかし辺りを見回したが、シメオン様の姿はない。殿下が考え直してくれたのだろうか。それならばいい。それなら私はこのまま穏やかな気持ちで断頭台に向かえる。
そう思って視線を流した時、今世はエレーヌ王女殿下と目が合った。しかし王女殿下はまるで興味がなさそうに、退屈そうに私を一瞥するだけでふいと視線を逸らす。
一方、第二王子殿下とも目が合った。第二王子殿下は苦々しい表情で私を睨みつけている。殿下にとって私は、尊敬すべき姉を害した憎き犯人に違いない。これまで視線を合わせたことがなかったが、このような目で見送られていたようだ。
私は刑史に促されるまま、定位置につく。
もう私には最初に飛んできた小石が届かないことも、二番目に飛んできた小石が足に当たることも、五番目の小石が頬をかすることも全部知っていた。知っていても微動だにしなかった。
きっとこれは、婚約者がいる身で他の男性に心を寄せ、その気持ちを抱いたまま、神様の前で心にない誓いを立てようとしていた私への罰なのだろう。私だけが受けるべき罰だ。他の者まで罰を受けてはならない。決して。決して。
「これよりアリシア・トラヴィス侯爵令嬢、改め、トラヴィス侯爵による除籍願いが受理され、名字を失ったアリシアの公開裁判を始める。罪状、アリシアは」
罪状が声高らかに読み上げられるのを聞き流しながら、民衆の中にシメオン様の姿を探す。しかし彼の姿はない。
なぜ? では彼はどこに?
焦る気持ちで視線を動かしていたその時、さらにこれまでにない罪状が続いて読み上げられた。
「――及び、ミラディア王女殿下の暗殺計画の主犯格であるアリシアを幇助していた罪でシメオン・バーナードも同様に死刑に処する!」
「っ!」
背後の気配に振り返ると、そこには後ろ手にされたシメオン様が連れられてきていた。
頬にはいくつも青あざができており、特に口元は酷く切れている。
「シメオン様!」
私はとっさに王太子殿下へと視線を移す。
「どうして! どうして! どうして! あなたには人の心がないのですか!」
「いいや? 最後の慈悲だ。少しだけ時間をやろう」
叫ぶ私に構わず、殿下はシメオン様に顎で示した。
「……ありがとうございます」
「シメオン様! シメオン様! シメオン様!」
「アリシア様、暴行は受けていないようですね。良かった」
こんな時なのに、シメオン様のほうが暴行を受けているのに、彼は私への気遣いばかりだ。
「こんな結果になってしまい、誠に申し訳ありません」
「そんなっ、謝らないでください! 謝るのはわたくしのほうです。わたくしが、わたくしのせいでシメオン様が」
「いいえ。私はいつもあなたを泣かせてばかりですね。笑顔にはして差し上げられない」
「ち、違っ。そうじゃありません」
悲しそうに笑うシメオン様のために、流れた涙を拭って安心させたい。けれど後ろ手に縄がかけられている今の私にはそれすら許されない。
「私はあなたともっと同じ時を生きたかった。あなたが生きる未来を共に歩みたかった。けれど自分の行動に後悔はありません。何度時を繰り返しても、私はまた必ず同じ道を選びます。何度でもあなたに手を差し伸べます」
「シメオン様! シメオン様!」
「さあ、もういいだろう」
殿下の合図でシメオン様は刑史に歩いて行くよう背中を押され、私は誰かに後ろ手を引っ張られて離される。
「待って! お願い! お願いだから! シメオン様は違う! 彼は違うの! 彼は違うから、止めて!」
「アリシア様、心より愛しております」
最後に笑顔だけ残し、シメオン様は私の元を去って行く。私はその背中に向かって必死に叫ぶ。
「シメオン様! わたくしも! わたくしも愛しております! シメオン様、シメオン様! 愛してっ、シメオン様、シメオ――あ、いっ、いや、いやっ、いやぁああああああ――っ!」
壇上には相変わらず国王陛下、王妃殿下、王太子殿下に第二王子、第二王女がいた。さらには薄ら笑いを浮かべるリーチェもやはりいた。
しかし辺りを見回したが、シメオン様の姿はない。殿下が考え直してくれたのだろうか。それならばいい。それなら私はこのまま穏やかな気持ちで断頭台に向かえる。
そう思って視線を流した時、今世はエレーヌ王女殿下と目が合った。しかし王女殿下はまるで興味がなさそうに、退屈そうに私を一瞥するだけでふいと視線を逸らす。
一方、第二王子殿下とも目が合った。第二王子殿下は苦々しい表情で私を睨みつけている。殿下にとって私は、尊敬すべき姉を害した憎き犯人に違いない。これまで視線を合わせたことがなかったが、このような目で見送られていたようだ。
私は刑史に促されるまま、定位置につく。
もう私には最初に飛んできた小石が届かないことも、二番目に飛んできた小石が足に当たることも、五番目の小石が頬をかすることも全部知っていた。知っていても微動だにしなかった。
きっとこれは、婚約者がいる身で他の男性に心を寄せ、その気持ちを抱いたまま、神様の前で心にない誓いを立てようとしていた私への罰なのだろう。私だけが受けるべき罰だ。他の者まで罰を受けてはならない。決して。決して。
「これよりアリシア・トラヴィス侯爵令嬢、改め、トラヴィス侯爵による除籍願いが受理され、名字を失ったアリシアの公開裁判を始める。罪状、アリシアは」
罪状が声高らかに読み上げられるのを聞き流しながら、民衆の中にシメオン様の姿を探す。しかし彼の姿はない。
なぜ? では彼はどこに?
焦る気持ちで視線を動かしていたその時、さらにこれまでにない罪状が続いて読み上げられた。
「――及び、ミラディア王女殿下の暗殺計画の主犯格であるアリシアを幇助していた罪でシメオン・バーナードも同様に死刑に処する!」
「っ!」
背後の気配に振り返ると、そこには後ろ手にされたシメオン様が連れられてきていた。
頬にはいくつも青あざができており、特に口元は酷く切れている。
「シメオン様!」
私はとっさに王太子殿下へと視線を移す。
「どうして! どうして! どうして! あなたには人の心がないのですか!」
「いいや? 最後の慈悲だ。少しだけ時間をやろう」
叫ぶ私に構わず、殿下はシメオン様に顎で示した。
「……ありがとうございます」
「シメオン様! シメオン様! シメオン様!」
「アリシア様、暴行は受けていないようですね。良かった」
こんな時なのに、シメオン様のほうが暴行を受けているのに、彼は私への気遣いばかりだ。
「こんな結果になってしまい、誠に申し訳ありません」
「そんなっ、謝らないでください! 謝るのはわたくしのほうです。わたくしが、わたくしのせいでシメオン様が」
「いいえ。私はいつもあなたを泣かせてばかりですね。笑顔にはして差し上げられない」
「ち、違っ。そうじゃありません」
悲しそうに笑うシメオン様のために、流れた涙を拭って安心させたい。けれど後ろ手に縄がかけられている今の私にはそれすら許されない。
「私はあなたともっと同じ時を生きたかった。あなたが生きる未来を共に歩みたかった。けれど自分の行動に後悔はありません。何度時を繰り返しても、私はまた必ず同じ道を選びます。何度でもあなたに手を差し伸べます」
「シメオン様! シメオン様!」
「さあ、もういいだろう」
殿下の合図でシメオン様は刑史に歩いて行くよう背中を押され、私は誰かに後ろ手を引っ張られて離される。
「待って! お願い! お願いだから! シメオン様は違う! 彼は違うの! 彼は違うから、止めて!」
「アリシア様、心より愛しております」
最後に笑顔だけ残し、シメオン様は私の元を去って行く。私はその背中に向かって必死に叫ぶ。
「シメオン様! わたくしも! わたくしも愛しております! シメオン様、シメオン様! 愛してっ、シメオン様、シメオ――あ、いっ、いや、いやっ、いやぁああああああ――っ!」
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