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五. 文通
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オレは、挫折感を味わいながら大学に入ったが、自分の目指す研究ができるような大学ではなく、どんどんやる気を失い、人工知能の構築もやめてしまっていた。
そんなオレにとって、彼女との出会いは衝撃的だった。
なぜ、見ず知らずの彼女が、突然オレの稚拙な行動に対して張り倒すというような態度をとったのか、考えれば考えるほど、わからなかった。
いろいろ考えたあげく、なぜかオレはマジで、また人工知能の開発を再開してみようという気になった。オレ自信のことなのに、何故そんな気持ちになったのかわからなかった。
三流大学で、オレに人工知能システムを開発するための理論や技術をレクチュアできるような教授はいなかった。しかし、情報処理に関する研究をしている一人の教授が、新歓コンパの時に「何かやる気があるのなら、いつでも空いてるコンピュータなら使っていいよ。自由にやってみなさい」と言ってくれていたことを思い出した。
それで、オレは4回生でもないのに、時間があればずっとその研究室と学校の図書館で時間を費やし始めた。
それから1か月ほど経ったある日、たまたま大学の図書館で、ローカル新聞の情報処理に関する連載コラムを読むために、そのバックナンバーを遡ってパラパラとめくっていくと、モンゴルの児童福祉使節団の写真が目に飛び込んできた。
まったくの偶然だった。
その記事は、丁度一か月前の記事で、オレの胸が高鳴った。記事の写真に写った人物画像は、まぎれもなく彼女だった。
オレは、その記事を元に、そのモンゴル使節団のことを調べてみた。
もちろん、インターネットで調べるしかなく、しかも日本語や英語のサイトを調べても知りえるはずもなかった。しかし、人工知能の設計・開発を進めてきたオレにとって、そんなことを調べることは朝飯前だった。
翻訳サイトを駆使して、日本語→英語→モンゴル語で検索し、それらしきサイトを逆の手順で翻訳し、彼女の存在を突き止めることができた。
彼女は使節団の一員として日本へやってきていたという記事を発見してしまった。
その時の強烈な印象を忘れられずに、思わず彼女のモンゴルの施設のHPに英語で書き込んでしまった。
「今年の夏、日本でキミに張り倒された男のこと覚えているかな。ボクは、あの時のキミの言葉で、諦めかけていた夢を実現するために、また人工知能の研究を始めたんだ・・・」
彼女からの返事も英語で、すぐに彼女のメールアドレスから返ってきた。
「覚えているは、あの時のこと。ホント、ごめんなさいね。今のモンゴルのことを考えると、恵まれた環境にあるアナタを見た瞬間、なんかもどかしくなっちゃって」
「ホントにごめんなさい」
それから、彼女との文通が始まった。
彼女の悩みを聞くこともあった。
そして、いつしか文通だけの間柄から、いつか逢おうという約束までかわすようにまでなった。
オレの大学生活は、アルバイトと人工知能の開発に費やされていった。いや、正確には、モンゴルの彼女と毎日のように文通も交わした。
遠く離れた国。
いや、距離はそんなに遠くはなかったかもしれない。しかし、お互いに行き来することができるほど裕福ではなかった。全く逢うことはできなかったが、お互いのことを文通だけですべてを語りあえる仲になっていった。
彼女は、孤児院の教員をしていたが、彼女自身も子供の頃、親のいないマンホールチルドレンだったことを聞いたときは、衝撃的だった。
そんなオレにとって、彼女との出会いは衝撃的だった。
なぜ、見ず知らずの彼女が、突然オレの稚拙な行動に対して張り倒すというような態度をとったのか、考えれば考えるほど、わからなかった。
いろいろ考えたあげく、なぜかオレはマジで、また人工知能の開発を再開してみようという気になった。オレ自信のことなのに、何故そんな気持ちになったのかわからなかった。
三流大学で、オレに人工知能システムを開発するための理論や技術をレクチュアできるような教授はいなかった。しかし、情報処理に関する研究をしている一人の教授が、新歓コンパの時に「何かやる気があるのなら、いつでも空いてるコンピュータなら使っていいよ。自由にやってみなさい」と言ってくれていたことを思い出した。
それで、オレは4回生でもないのに、時間があればずっとその研究室と学校の図書館で時間を費やし始めた。
それから1か月ほど経ったある日、たまたま大学の図書館で、ローカル新聞の情報処理に関する連載コラムを読むために、そのバックナンバーを遡ってパラパラとめくっていくと、モンゴルの児童福祉使節団の写真が目に飛び込んできた。
まったくの偶然だった。
その記事は、丁度一か月前の記事で、オレの胸が高鳴った。記事の写真に写った人物画像は、まぎれもなく彼女だった。
オレは、その記事を元に、そのモンゴル使節団のことを調べてみた。
もちろん、インターネットで調べるしかなく、しかも日本語や英語のサイトを調べても知りえるはずもなかった。しかし、人工知能の設計・開発を進めてきたオレにとって、そんなことを調べることは朝飯前だった。
翻訳サイトを駆使して、日本語→英語→モンゴル語で検索し、それらしきサイトを逆の手順で翻訳し、彼女の存在を突き止めることができた。
彼女は使節団の一員として日本へやってきていたという記事を発見してしまった。
その時の強烈な印象を忘れられずに、思わず彼女のモンゴルの施設のHPに英語で書き込んでしまった。
「今年の夏、日本でキミに張り倒された男のこと覚えているかな。ボクは、あの時のキミの言葉で、諦めかけていた夢を実現するために、また人工知能の研究を始めたんだ・・・」
彼女からの返事も英語で、すぐに彼女のメールアドレスから返ってきた。
「覚えているは、あの時のこと。ホント、ごめんなさいね。今のモンゴルのことを考えると、恵まれた環境にあるアナタを見た瞬間、なんかもどかしくなっちゃって」
「ホントにごめんなさい」
それから、彼女との文通が始まった。
彼女の悩みを聞くこともあった。
そして、いつしか文通だけの間柄から、いつか逢おうという約束までかわすようにまでなった。
オレの大学生活は、アルバイトと人工知能の開発に費やされていった。いや、正確には、モンゴルの彼女と毎日のように文通も交わした。
遠く離れた国。
いや、距離はそんなに遠くはなかったかもしれない。しかし、お互いに行き来することができるほど裕福ではなかった。全く逢うことはできなかったが、お互いのことを文通だけですべてを語りあえる仲になっていった。
彼女は、孤児院の教員をしていたが、彼女自身も子供の頃、親のいないマンホールチルドレンだったことを聞いたときは、衝撃的だった。
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