放課後高速騎兵隊クラブ

LongingMoon

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二五. 馬社会の終焉

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烏騅が、十勝の海に消えてから2ヶ月が経った。必死の捜査にもかかわらず、彼女を見つけることはできなかった。
その十勝の大津港の海岸に、降り積もる雪の中、ポツンと立っている小さなお墓に、1人の右腕のない男が人参を供え、線香をあげている風景があった。
 沖田は、烏騅が命を懸けて届けてくれた心臓で一命を取り留めた。その後も昏睡状態が続き、総理の職は副総理に委ねざるを得なかった。
 1ヶ月後、沖田はまだ病院のベッドでテレビを見ていた。沖田が命懸けでやろうとしたことが実現に向かっていることを実感できつつあった。任期を1ヶ月残して、沖田は政界を去った。
 更に、1か月が経ち沖田は退院して、自分の命の恩人である烏騅の墓に単身でやってきていた。
もう、テロリストが何をしても、世の中は、世界史の流れは、変えることなどできないレベルに到達していた。
 世界中の多くの人々が、沖田や真悟や烏騅たちが守り抜いた何かに共鳴し、歴史は大きくうねり始めていた。
もう、そのうねりを誰も止めることは、できなくなっていた。

 沖田は、家族のいる大阪へ帰り、リハビリと療養生活の日々を送っていた。家族の心配を他所に、一人で大阪城公園や御堂筋をぶらぶらしながら、いろんなことを考えた。
 「馬は寒さに強いんだな。2020年末、馬社会も終わろうとしているはずなのになぁ。みんな、21世紀になっても馬が公道を走りまくるという前代未聞の異常なシチュエーションを楽しんでいるんじゃないのか。それとも、惜しんでいるのかな」
 馬社会を作り出した張本人の沖田にも、国民の真意は図りかねた。

 真悟のおやじの賢哉は、2021年から再開する車社会に向けて、馬社会に後ろ髪をひかれながらも、再び車の営業を始めていた。
「ライバルの自動車メーカーに負けるわけにはいかない。他社は相次ぎ電気自動車の発表を行い、年始からのスタートダッシュを期している。もちろん、オレの会社も馬社会の中で、電気自動車の開発を進めてきた。この1年の間に、道路やガソリンスタンドは電気自動車対応工事を済ませていた。もう、ガソリンで走る自動車は、日本から消えていくのは時間の問題だな」
真悟には、おやじが確信しているように映った。
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