26 / 33
ただ存在していた
しおりを挟む
ある街の、ある高い電柱の上には死神が居る。
いや、死神だと霊が見える人たちには云われている真っ黒な霊体が
戦後からずっと佇んでいるそうだ。
ある一定以上の高さの建物の屋上や建築物、銭湯の煙突など
数年から長くて十年ほどの間隔で居場所を変え続け
今は、少し低い場所、その電柱へと降りてきたと
自分に話をした人は語っていた。
死神の姿をはっきりと見える人は
真っ黒なぼろきれの様なローブのフードをすっぽり被り
フードの中の真っ黒な輪郭しかない顔で
その電柱の下を行きかう人々を見下ろしているそうだ。
何をするでもないその死神は地元の霊能者の間では
「かみさん」
と言われ、触らないように不文律が出来ている。
時折、見える子供が石などを投げつけるが
報復で祟りを与えたりはしないそうだ。
だが、目的と存在理由が一切不明なので
見える大人たちは一切干渉も、拝みも
近くを通りがかっても見もしないらしい。
その街自体に戦後から何かが起こったわけでもない。
闇市が立ち、赤線地帯があり、やがてそれらは規制され廃れ
高度経済成長と共に発展して、バブル崩壊後に
シャッター商店街が増え、今は廃れるでも栄えるでもないという
日本のどこにでもある、それなりの規模の地方都市らしい歴史をたどってきた。
そして死神は、それを街の上から見下ろしていたそうだ。
何をするでもなく。
ただ存在していたらしい。
その話を聞いた後日、地元のある霊能者に
「かみさん」についての興味深い話を聞かされた。
「かみさん」が出現したのは戦後で
そして高いところから少しずつ低いところへと降りてきている。
高い位置にいる霊体は天国に近いそうだ。
そこから下へと降りてきているということはつまり
次第に現実世界に関心を増していっているのではないかと
何が「かみさん」の関心を引いているのかは
はっきりとは言えないがと、その霊能者は前置きをしてから
「死神だとすれば、大きな災厄か。戦争を待っているのかもしれない」
と言った。そして「かみさん」が下へと近づくほど
その時が迫っているのではないかと付け足した。
まったくの的外れな意見であることを願う。
いや、死神だと霊が見える人たちには云われている真っ黒な霊体が
戦後からずっと佇んでいるそうだ。
ある一定以上の高さの建物の屋上や建築物、銭湯の煙突など
数年から長くて十年ほどの間隔で居場所を変え続け
今は、少し低い場所、その電柱へと降りてきたと
自分に話をした人は語っていた。
死神の姿をはっきりと見える人は
真っ黒なぼろきれの様なローブのフードをすっぽり被り
フードの中の真っ黒な輪郭しかない顔で
その電柱の下を行きかう人々を見下ろしているそうだ。
何をするでもないその死神は地元の霊能者の間では
「かみさん」
と言われ、触らないように不文律が出来ている。
時折、見える子供が石などを投げつけるが
報復で祟りを与えたりはしないそうだ。
だが、目的と存在理由が一切不明なので
見える大人たちは一切干渉も、拝みも
近くを通りがかっても見もしないらしい。
その街自体に戦後から何かが起こったわけでもない。
闇市が立ち、赤線地帯があり、やがてそれらは規制され廃れ
高度経済成長と共に発展して、バブル崩壊後に
シャッター商店街が増え、今は廃れるでも栄えるでもないという
日本のどこにでもある、それなりの規模の地方都市らしい歴史をたどってきた。
そして死神は、それを街の上から見下ろしていたそうだ。
何をするでもなく。
ただ存在していたらしい。
その話を聞いた後日、地元のある霊能者に
「かみさん」についての興味深い話を聞かされた。
「かみさん」が出現したのは戦後で
そして高いところから少しずつ低いところへと降りてきている。
高い位置にいる霊体は天国に近いそうだ。
そこから下へと降りてきているということはつまり
次第に現実世界に関心を増していっているのではないかと
何が「かみさん」の関心を引いているのかは
はっきりとは言えないがと、その霊能者は前置きをしてから
「死神だとすれば、大きな災厄か。戦争を待っているのかもしれない」
と言った。そして「かみさん」が下へと近づくほど
その時が迫っているのではないかと付け足した。
まったくの的外れな意見であることを願う。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる