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システムベッドの下にあったもの
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ある友達がいる。彼は二年ほど、仕事が激務過ぎて
マンションの自室のシステムベッドの下を掃除するのを忘れていた。
彼の寝ているシステムベッドは床から五十センチほどあり
長さは二メートルほど、床とベッドの間に
取り出せる小さな箪笥が三つほど並んでおり
中には読んでない漫画とか着なくなった服などが詰め込まれている。
そんな感じで二年が経ち、彼の仕事が一段落したころ
綺麗好きの彼女が出来た。
会社の同僚のその子は、乱雑な彼の部屋を見るなり
「片付けていい?」
と言って、彼から了承が取れると、その週の日曜一日かけ
彼を手伝わせながら、見事に不用品と必要な品を分別して
汚かった部屋を殆ど片付けてしまった。
日も暮れかけたころに
最後に部屋奥のシステムベッドの掃除に二人はとりかかった。
システムベッド下のタンスを外して、中の漫画など取り出し
古本屋に持っていくべく、段ボールに詰め終えた。
いよいよベッドの下の掃除にとりかかろうとするときに
彼女が不思議なものを見つけた。
「これ……なに?」
差し出された、十センチ四方の
三等身ほどの人型に切り出された真っ白な紙は
汚れ一つ、しわ一つ、ついていなかった。
「……見たことある気がするな」
漫画や映画で、彼はそれと似たようなものを
見たことがあると思い出して
ネットで検索すると、陰陽師が式神を使役するときの
人型の紙そっくりだった。
彼は気味悪がって、すぐに田中さん(仮名)にラインを送り
日曜なので家に籠ってゲームをしていた田中さんが喜んで駆けつけ
そして何故かそのまま、自分(作者)のうちに持ってきた。
「いや、要らんよ。ほんとに要らん。家に持ち込まんでくれ」
と渋る自分を押し切って
真っ黒なショルダーバッグを背負った田中さんは
高いワインを手土産にそのまま家に上がり込んだ。
「これはガチだろ。あいつ、陰陽師に監視されるようなことを
何かしでかしたんだな」
田中さんは、うちの冷蔵庫を勝手に開けて
チーズと漬物を取り出し、ワインを開けてキッチンで飲みだした。
「どうすんのこれ……」
「瓶に詰めて監視しよう。見つかったからには
持ち主のもとに帰るはずだ」
田中さんは、空いていた大きく透明な漬物瓶を
勝手に探し出し、そして中に紙を入れて、ふたを閉めた。
すぐに猫が、キッチンに入ってきた。
そしてテーブルに飛び乗って、カリカリと瓶をかき始める。
「いいねー。何かおこるなこれは」
ほんのり赤ら顔になった田中さんは
ショルダーバッグからビデオカメラを取り出し
瓶の前に固定して、そしてビデオを固定して映し出した。
その後
リビングに移り、酒飲んで、適当に話していると
いつの間にか二人とも早朝まで寝ていた。
田中さんはもともと有休を取る予定で、自分は午後までは仕事は無かったので
問題は無かったが、問題があるとするならば
瓶の中身とビデオの中に映ったものだった。
瓶の中には何もなかった。
ビデオで撮影された瓶の中にも最初から何も映っていなかった。
「昨日の夜中は映ってたよな……ってか、どこ行ったんこれ……」
と戸惑う自分の横で
田中さんはそれを見るとなぜかガッツポーズをして
「よっしゃ。ガチ陰陽師の力の一端を感じたな!いい経験した」
とまだ酒が抜けきっていない自分の肩を叩いて
颯爽とタクシーを呼んで家へと帰っていった。
後には空の漬物の瓶と、瓶をカリカリと爪でひっかいている猫が
視界の中にあるだけだった。
その後、発見した彼と彼女にも何事もなく
自分や田中さんにもおかしなことは起こらなかったが
本当に、あの人型の紙は、陰陽師の作ったものなのだろうか。
むしろ、何か別の……などと時折、頭に過ぎる。
マンションの自室のシステムベッドの下を掃除するのを忘れていた。
彼の寝ているシステムベッドは床から五十センチほどあり
長さは二メートルほど、床とベッドの間に
取り出せる小さな箪笥が三つほど並んでおり
中には読んでない漫画とか着なくなった服などが詰め込まれている。
そんな感じで二年が経ち、彼の仕事が一段落したころ
綺麗好きの彼女が出来た。
会社の同僚のその子は、乱雑な彼の部屋を見るなり
「片付けていい?」
と言って、彼から了承が取れると、その週の日曜一日かけ
彼を手伝わせながら、見事に不用品と必要な品を分別して
汚かった部屋を殆ど片付けてしまった。
日も暮れかけたころに
最後に部屋奥のシステムベッドの掃除に二人はとりかかった。
システムベッド下のタンスを外して、中の漫画など取り出し
古本屋に持っていくべく、段ボールに詰め終えた。
いよいよベッドの下の掃除にとりかかろうとするときに
彼女が不思議なものを見つけた。
「これ……なに?」
差し出された、十センチ四方の
三等身ほどの人型に切り出された真っ白な紙は
汚れ一つ、しわ一つ、ついていなかった。
「……見たことある気がするな」
漫画や映画で、彼はそれと似たようなものを
見たことがあると思い出して
ネットで検索すると、陰陽師が式神を使役するときの
人型の紙そっくりだった。
彼は気味悪がって、すぐに田中さん(仮名)にラインを送り
日曜なので家に籠ってゲームをしていた田中さんが喜んで駆けつけ
そして何故かそのまま、自分(作者)のうちに持ってきた。
「いや、要らんよ。ほんとに要らん。家に持ち込まんでくれ」
と渋る自分を押し切って
真っ黒なショルダーバッグを背負った田中さんは
高いワインを手土産にそのまま家に上がり込んだ。
「これはガチだろ。あいつ、陰陽師に監視されるようなことを
何かしでかしたんだな」
田中さんは、うちの冷蔵庫を勝手に開けて
チーズと漬物を取り出し、ワインを開けてキッチンで飲みだした。
「どうすんのこれ……」
「瓶に詰めて監視しよう。見つかったからには
持ち主のもとに帰るはずだ」
田中さんは、空いていた大きく透明な漬物瓶を
勝手に探し出し、そして中に紙を入れて、ふたを閉めた。
すぐに猫が、キッチンに入ってきた。
そしてテーブルに飛び乗って、カリカリと瓶をかき始める。
「いいねー。何かおこるなこれは」
ほんのり赤ら顔になった田中さんは
ショルダーバッグからビデオカメラを取り出し
瓶の前に固定して、そしてビデオを固定して映し出した。
その後
リビングに移り、酒飲んで、適当に話していると
いつの間にか二人とも早朝まで寝ていた。
田中さんはもともと有休を取る予定で、自分は午後までは仕事は無かったので
問題は無かったが、問題があるとするならば
瓶の中身とビデオの中に映ったものだった。
瓶の中には何もなかった。
ビデオで撮影された瓶の中にも最初から何も映っていなかった。
「昨日の夜中は映ってたよな……ってか、どこ行ったんこれ……」
と戸惑う自分の横で
田中さんはそれを見るとなぜかガッツポーズをして
「よっしゃ。ガチ陰陽師の力の一端を感じたな!いい経験した」
とまだ酒が抜けきっていない自分の肩を叩いて
颯爽とタクシーを呼んで家へと帰っていった。
後には空の漬物の瓶と、瓶をカリカリと爪でひっかいている猫が
視界の中にあるだけだった。
その後、発見した彼と彼女にも何事もなく
自分や田中さんにもおかしなことは起こらなかったが
本当に、あの人型の紙は、陰陽師の作ったものなのだろうか。
むしろ、何か別の……などと時折、頭に過ぎる。
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