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新たなる支配者
実感
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バムの柔らかい体温が背中に伝わってきて
少しずつ落ち着いていく。
「終わったのか……?」
「はい。終わりました」
「そうかぁ……」
よく分からないが倒したらしい。
「なあ、仲間たちは……」
「もう、モルズピックに用意していた施設に
大天使たちを集めて
身体を造り始めています。
みんなの魂もゴルダブル様から取り出しましたよ」
「よ、よかった……な、なあ、こういうのって
実は食王が生きていたとか、そういう
続きが……」
不安になって尋ねると、バムは肩を叩いて
扉を指さす。するといきなり自動で扉が開いて
真っ黒な姿の食王……ではなくて
全身鎧に身を包んだマリアンヌ帝が、
似たような恰好をした数人の屈強な男女の武人たちと
部屋に入ってきた。
体液を吐きつくして、動けない俺を
マリアンヌ帝は見つけるとしゃがみこんで
「飛行船が落ちたと聞いて
精鋭たちと加勢に駆け付けたのだが……」
「あ、ああ……」
俺は言葉が出ないので、バムが代わりに
「食王は、ゴルダブル様に身体精神共に、完全に乗っ取られて
消滅しました」
とんでもないことを言ってくる。
「……えっ?」
「……あれ?気づいていませんでした?
冥王が身体を提供したときに、体細胞の逆浸食機能を
抜け目なく付けていたようです。
それと、ゴルダブル様の頑強なメンタルの相乗効果で
食王は最終的には、ゴルダブル様に吸収されました」
「そうなの?」
衝撃的な真実である。
「つまり、俺が新しい食王ってこと?」
「そういうことになります」
「……」
マリアンヌ帝は立ちあがり、そして武人たちに
「新食王ゴルダブル様を丁重に医療テントまで搬送しろ!」
と告げると、俺に
「私たちは、この宇宙船の散策を、バムさんとする。
しばらく一人だが堪えてくれ」
俺は頷くと、すぐに武人たちに担ぎ上げられて
食堂の外へ、さらに瞬く間に宇宙船の外へと搬送されていった。
宇宙船から遠巻きに張られたテント内で
ガチムチの軍医たちに
物凄く丁寧かつ丁重に、俺は身体検査を受けさせられ
綺麗な白いローブへと着替えさせられる。
「異常はありません、ただ……」
と俺の腕の裏を軍医に手に取って見せられる。
そこには蚯蚓腫れで
"エッチなのはいけないにゃ"
と字が大きく浮き出していた。
「……ペップか……」
たぶん精神融合していた時に何か
したのだろう。そのうち消えそうだし
気にすることもないなと、医者たちにお礼を言って
近くに張られた指揮官専用のテントへと
案内される。
中には金銀の刺繍の入った絨毯が敷かれて
派手な調度品が置かれ
ベッドも見るからにフカフカである。
しばらく休みたいので一人にしてほしいと
ついてきた兵士に告げて、彼が去ると
ベッドへとそのままダイブする。
寝よう。好きなだけ一人で寝たい。
大変だったけど、何とかなってよかった。
寝入ってしまう。
気付くと
吹雪が吹いている
雪原のど真ん中に俺は立っていた。
"食王に知覚世界で真っ向から挑み、そして
なんと、制したようだな。見事なり、新たなる食王よ"
聞き覚えのある威厳のある声が辺りに響いてくる。
吹雪に隠れながら周囲に巨大なゴーレムたちが
少しずつ集まってくる。
"我ら、新たなる主の命令を待っている"
俺の真正面に立つ、苔むした岩が髭を生やしたような
巨大なゴーレムは、そう言うとその巨体を跪いて
俺を見下ろす。
そういえば、そうか、思い出した。
北の方に鉱石を取りに行ったときに
世界を作り変えられるゴーレムたちから
色々と話を聞いたんだった。
本当のことだったのか……いや、さっきまで
テントで寝ていたのに、いきなりここに
居るのはおかしい。寒さも感じないし、やはり夢なのか……。
などと一通り考えてから
「試しに、俺のすぐ前に、
マクネルファーの雪像を造ってみてくれないか?十秒以内で」
そうゴーレムたちに告げてみると
目の前にいきなり氷でできた褌一丁で仁王立ちしている
マクネルファーの五メートルほどの高さの像が
足元からせり出してきた。
「……」
凄い再現度である。マクネルファーの枯れた肉体と
彼のわけのわからなさを完璧に模倣している。
「よ、よーし……じゃあ次は、
その横にファイナの雪像を。水着姿で!」
すぐに同じくらいの高さのファイナの雪像が
せり出してきて、マクネルファーと並ぶ。
なんか面白くなってきたので
ペップや、ピグナやパシー、それにバムの大きな雪像も
横に並べて作ってみた。
なかなかの壮観だな。と満足して見上げていると
"他にはないのか。我ら、この世界の形を根本から変え得るが"
「ああ、満足したよ。また何かあったら頼む。
あっ、それから、どうやったら俺が
この世界の味覚を元に戻せるか分かるか?」
"天界の主、バムスェルがその答えを持っている。
では行く。我らは常に新食王と共に在る……"
吹雪の中へと様々な形状のゴーレムたちは消えていき
そして俺は雪原のど真ん中
仲間の像たちをしばらく見上げると
早くまた、会いたいなと少し切なくなった。
同時に景色が歪み始めて、意識が途切れる。
目覚めると帝都宮殿内の宿泊室のベッドの上だった。
前も気づいたら、この部屋だったよな。
と思いながら、ベッドから下りて
身体を思いっきり伸ばしてみる。
調子は良さそうだ。眠気も全くない。
食王になったからかな。
それとも魔王のくれた肉体が強いからなのか。
まあ、いいか。窓の外の中庭に射しこむ朝日を見つめる。
見た夢の内容は完璧に覚えている。
いや、あれは恐らく夢ではなく
現実のことだろうなという確信がある。
あの雪原には、雪像が仲間の分だけ立っているはずである。
腹も減ってないな。お、テーブルの上に畳まれた着替えがある。
手鏡とヘアブラシもあるな。
部屋の隅には、温かいお湯が入ったタライまで用意してある。
身なりを整えろと。よろしい。
やたら派手な、中世の貴族が着るような
ヒラヒラの沢山ついた服に着替えて、
そして顔を洗い、髪型などを整えていると
「お湯をお代え致します」
と年配の肩に力の入っていないメイドが入ってきて
そして俺を見ると頭を深く下げて
「皇帝陛下が、会見を望まれていますが
準備はよろしいでしょうか?」
と尋ねてくる。
「え……何を会見するんでしょうか?」
「私は存じておりません。よろしければ
さっそく……」
メイドの眼力のある両目で見つめられて
思わず頷いてしまうと
「では、私がご案内いたします」
仕方ないのでついていくしかない。
宮殿の華美な通路や、廊下を通っていくと
左右に待機していたらしき、ズラッと並んだ衛兵たちや
メイドたちが一斉に頭を下げてくる。
まるでお辞儀のウェーヴである。
なんじゃこりゃああああ……と言いたいところだが
恐らくはもう俺が食王であると
宮殿中の職員には伝わってるんだろうな。
あの敏腕な皇帝が、しないわけないよな……。
と妙に納得して、愛想笑いで左右から次々に繰り出される
お辞儀ウェーヴを何とか通り抜けていく。
金色で立体的な竜が彫られた巨大な扉の前まで
俺は連れてこられる。
屈強な衛兵たちが、左右に扉を重々しく開いて
中の様子が現れると、広い縦長の部屋の奥まで
虹色に光り輝くカーペットが
まっすぐと敷かれていて
その左右には、派手な鎧を着た厳つい武人たちや
スーツを着た鋭い知性を感じさせる文官たち
そしてそれぞれに不思議な模様をしたローブを着こんだ
老齢の魔法使いたちが並んでいた。
威圧感に圧倒されて、部屋の前でしばらく突っ立っていると
案内をしてきた年配のメイドが後ろから小声で
「食王様より、強いものはこの世にはおりません。
堂々と、奥の玉座で待つ皇帝陛下と
会見してください」
と軽く手で背中を押されて部屋へと入れられる。
仕方ないので左右に、実力者たちを見ながら
奥の玉座に座るマリアンヌ帝の場所へと歩いて行く。
厳粛な雰囲気にフラフラしながら
何とか玉座に辿り着くと、マリアンヌ帝は立ちあがり
そして何と玉座を降り、俺に
「さあ、私の代わりに玉座へとあがってくれ。
我が帝国、そしてここに居る人材全て
新食王ゴルダブルのものだ」
「えっ……まさか……」
「そうだ。ようやく帝国を完全に任せられる人材が
出現したと私は喜んでいるのだよ。
天界の主バムスェルを守護に持つ
食王ゴルダブル。これ以上の適材は地上には居ない」
ようやく頭が理解してきた、皇帝の座を
禅譲しようとしているらしい。
「い、いや、ちょっと待ってくださいよ。
マクネルファーとか、あとほら、俺がダメだったら
ファイナに譲るとかも聞きましたけど……」
マリアンヌ帝は身体を揺らして、快活に笑うと
「マックは私のものだ。帝国にはやらん。
ファイナ嬢は、まだ体の再生が済んでおらんのだろう?
バムスェル様から聞いたぞ?」
「い、いや慌てなくても、そのうちファイナは
戻ってきますよ」
マリアンヌ帝はニヤリと笑うと、いきなり
自分の頭の王冠を俺に被せて
そして身体を持ち上げ、サッと玉座へと座らせてしまう。
そして、臣下たちに向き直り
「今、ここに帝国は新食王ゴルダブル帝のものとなった!
私は現時刻を持って、帝位を退位する!
異議あるものはあるか!」
両手を広げて、よく通る声で宣言する。
「い、いやちょっと待ってくださいよ……。
マクネルファーとの結婚も皇帝としてやるって
宣言してたじゃないですか……」
俺の声は無視してマリアンヌ帝は臣下を見回すと
全員一致で
「異議なし!」
とピッタリと揃った声がして
俺は玉座で冷や汗をかき始める。
マリアンヌ帝……いや、マリアンヌ先代帝は
スーツを着て銀縁目掛けをかけた優しそうな白髪の紳士と
厳めしい鎧を着た大柄な中年の将軍を指さして
「ラムザス軍事総監と、アトムバーン首相だ。
帝国の運営については二人に訊け。
よし、ではな。皆の者、長い間こき使ってすまなかったな。
元老として、議会には残るので
ゴルダブルに失礼をしたら、院政を始動させるからな。
ビルドゥム、調子に乗るなよ?」
邪悪な笑い顔を浮かべていると
近くに並んでいる禿げて太った男にそう言うと、俺を向き直り
「あとは頼んだ」
と真っ赤なマントを派手に脱ぎ捨てて
身軽に、そのままカーペット歩いて部屋を退出していった。
「……」
カーペット左右に部屋の奥まで延々と並ぶ
威圧感のある高官たちを眺めながら考える。
投げっぱなしだなこれ……。
えーと、どうしようか……無理だろ……。
どうしようもないだろこれ……。皇帝になるとか
望んでもいないぞ。
全身が冷や汗をかき始めると
「あはは。帝位を禅譲されてしまいましたか。
帝国担当の大天使が、報告をしてきまして
急いできてみました」
隣からバムの声がして、そちらをみると
綺麗な青白いドレスに身を纏ったバムが
八枚の翼を羽ばたかせて、そこに居た。
バムはゆっくりと玉座を下りて
辺りを見回す、屈強な高官たちがバムを見て
息をのんでいる。
バムはスゥーと息を吸い込むと
「天界の主、バムスェルが新食王様に代わり意志を伝える!
新食王様は、世界の主であり、一地方の国主には収まることはない!
食王様の手足となる、新たなる皇帝を送り込むまで
諸君らは、そのまま職務に励めとのことだ!
安心するがいい!我と食王は神々のさらに上だ。
どこからでも君たちを見ている。
そして、どこまでも帝国を見捨てない!
以上!追ってまた連絡する!解散!」
不思議な、威厳を持った声で皆に告げた。
高官たちは、一斉に頭を下げてゾロゾロと
玉座の間から退出していく。
誰も居なくなった玉座の間で
王冠を頭から外しながら
「いやーえらい目に遭った……」
「ふふふ。これでしばらくは時間が稼げます。
モルズピックへと行きましょう。
みんなの身体の再生を急がせなければ」
「な、なあ、ファイナに皇帝を継がせるのか?」
「どうでしょうか?ファイナさんの気持ちも
聞かなければ」
バムは俺の手を取って
「さあ、行きましょう。モルズピックまで」
といきなり、宙に穴を作り出し
俺をその中へと引っ張り込んだ。
穴から出ると薄気味悪い森の中だった。
「ここは……?」
「モルズピックの従業員たちの宿舎です」
バムが俺の手を引いて、森の中を進んでいく。
すると森の木々の上へと突き抜けるような
苔と蔦塗れの古びたレンガの高い塔へと辿り着く。
「この下に研究室を設けています」
バムは建物の古びた扉を開いて
中へと俺を案内していく。
一階の下へと伸びる螺旋階段を下りていくと
小部屋へとたどり着いて
そこでさらにバムは古びた扉を開けた。
中では、綺麗な顔をした白衣の七人の男女が機嫌よく
中心の大きな手術台に並んで横たわる三体の裸の男女に
頭に手かざしをしたり、縫合をしたりしていた。
「あら、バムスェル様、新食王様ですね?
ようこそ。この場を任されている、
大天使副長、東のハイネと申します」
ゆるふわの茶髪をした、小柄な綺麗な顔立ちの少女から
声をかけられて
「あ、どうも……ゴルダブルです」
と一応名乗ると、こぼれるような笑みで
「こちらへ」
手術台へと俺は連れていかれる。
よく見ると、そこにはファイナ、ペップ
そしてマクネルファーが並んで寝かされていた。
全員裸である。
「ふふふ。あと一時間で魂を入れられます」
ハイネはそう言うと、小声で俺に
「あの、バムスェル様のどんなところが好きですか?」
と尋ねてきて、答えに困っていると
バムが後ろから出てきて
「ハイネ。困らせてはなりませんよ」
「はーい。ではお二人は、身体の出来具合をチェックしてください。
我々は休憩に入りますので」
と言うと、美しい男女は全員、近くの宙に横穴を開けて
その中へと入って去って行った。
まっさきに気になったので
「ピグナとパシーは?」
「二人は、天使なので天界へと魂を一度帰還させました。
今はこちらへの身体の再構成の認可待ちです」
「役所みたいなところの?」
「はい。再生局のロビーで
二人並んで呼ばれるのを待っていますよ」
「大変そうだな……」
バムがまったく躊躇なく
三人の脇や股を広げて、チェックし始めた。
眼を逸らそうかと思ったが役得である。
とりあえずマクネルファーには脳が自動でモザイクをかけて
そしてペップとファイナの身体を、さすがに触れはしないが
ジッと眺める。
ふむふむ、そうなっていたのか。
へー思ったより大きかったんだなぁ。
などと考えていると、バムがチラッと振り返って
「あの、性欲よりも……チェックをしましょう」
と困った顔をしてくるので
「ごめんごめん。俺は難しそうだ。
ちょっと後ろに行っとく」
と言いながら、バムの後ろから
眼を見開いて
ふむふむ、そうかそうか。ふーむ……なるほどーと
ペップの身体を見ていると、微かにピクッと指が
動いた気がして、二度見すると
また別の指がピクピクと動き出す。
そして、魂の入っていないはずの口が開くと
頭がガッと俺の方を向き
「えっ……ち……なのは……いけない……にゃ……」
と言ってそのまま動かなくなった。
バムが驚いた顔で
「た、魂はまだ入っていないはずなのに……」
「……俺、出てるわ」
「その方がいいかもしれませんね……」
ペップのあのエロに制裁を加える恐ろしい力の源は
最後まで謎だったな……。
と思いながら地下室から出て、やることもないので
塔の螺旋階段を上っていく。
最上階の扉を開けると
部屋の中では、骸骨がボーっと外の景色を眺めていた。
邪魔かなと思い、扉を閉めようとすると
「いや、いいんだ。誰かは知らないけど
俺の話を聞いてくれよ」
部屋に入ると、骸骨は窓際に手招きしてくる。
窓の開かれた外を窓枠に両手で寄りかかって
並んで眺める。
景色は良くない。鬱蒼とした森と
似たような不気味な塔が立ち並んでいて
遠くには沼まで見える。
「こんなとこまで来たからには
色々と知ってるんだろ?俺らが
働いている理由とかも」
「冥界から派遣されてきてるんだろ?」
「そうだな。いい仕事だよ。三交代で
住居提供、給料も安くはない。
倍率もなかなかで、ようやく当選して来れたと喜んで
居たんだけどなぁ」
「新人?」
「そうなんだよ。でもほら
三日前に、前の食王が死んだだろ?それで
冥王様がソワソワしてて
どうやら新食王を冥界で歓迎したいらしいんだ」
「……そ、そうなんだ」
またさっきの玉座の間みたいなことにならないと
ありがたいが……。
というかあの後、三日も寝ていたらしい。今知った。
「冥界の体制も、前の食王への警戒を解いたんで
一気に平和に変わってて、うちの実家の辺りも
農業とかできることになって。
人面牛とかヌエとか、
気の早い一族がもう買っちゃってるらしいんだけど」
「う、うん……」
「人手が足りないから帰って来いって、
さっそく言われてるんだよなぁ」
「大変だな……」
「だろ?こっちで自立を目指すべきか
それとも、向こうで農業をするべきか。
贅沢な悩みなんだけどさぁ……」
骸骨は切なそうに景色を眺める。
変な話だが
なんとなくそこでやっと俺は
この世界や冥界や天界にも
平和が完全に訪れたことを実感した。
どちらを選んでもきっと幸せだから
好きなだけ悩んだらいいと彼には告げて
部屋を出ていく。
塔の外で座って待っていると
バムが中から出てきた。
「少し、私と、世界を見てみませんか?」
と告げてくる。
羽ばたくバムに抱えられて青空を飛んでいく。
眼下にはモルズピックの景色が広がる。
高いが安心感が凄い。
景色を眺めていると
「ゴルダブル様は、この世界をどうされたいですか?」
とバムから不意に訊かれる。
俺は少し考えてから
「味覚は元に戻したいけど、他はそのままでいいよ。
こうしたい、ああしたいって考えると
キリがないと思うから」
「ふふ。分かりました」
バムは微笑むと、高度を一気に上げて
速度を出し始めた。
少しずつ落ち着いていく。
「終わったのか……?」
「はい。終わりました」
「そうかぁ……」
よく分からないが倒したらしい。
「なあ、仲間たちは……」
「もう、モルズピックに用意していた施設に
大天使たちを集めて
身体を造り始めています。
みんなの魂もゴルダブル様から取り出しましたよ」
「よ、よかった……な、なあ、こういうのって
実は食王が生きていたとか、そういう
続きが……」
不安になって尋ねると、バムは肩を叩いて
扉を指さす。するといきなり自動で扉が開いて
真っ黒な姿の食王……ではなくて
全身鎧に身を包んだマリアンヌ帝が、
似たような恰好をした数人の屈強な男女の武人たちと
部屋に入ってきた。
体液を吐きつくして、動けない俺を
マリアンヌ帝は見つけるとしゃがみこんで
「飛行船が落ちたと聞いて
精鋭たちと加勢に駆け付けたのだが……」
「あ、ああ……」
俺は言葉が出ないので、バムが代わりに
「食王は、ゴルダブル様に身体精神共に、完全に乗っ取られて
消滅しました」
とんでもないことを言ってくる。
「……えっ?」
「……あれ?気づいていませんでした?
冥王が身体を提供したときに、体細胞の逆浸食機能を
抜け目なく付けていたようです。
それと、ゴルダブル様の頑強なメンタルの相乗効果で
食王は最終的には、ゴルダブル様に吸収されました」
「そうなの?」
衝撃的な真実である。
「つまり、俺が新しい食王ってこと?」
「そういうことになります」
「……」
マリアンヌ帝は立ちあがり、そして武人たちに
「新食王ゴルダブル様を丁重に医療テントまで搬送しろ!」
と告げると、俺に
「私たちは、この宇宙船の散策を、バムさんとする。
しばらく一人だが堪えてくれ」
俺は頷くと、すぐに武人たちに担ぎ上げられて
食堂の外へ、さらに瞬く間に宇宙船の外へと搬送されていった。
宇宙船から遠巻きに張られたテント内で
ガチムチの軍医たちに
物凄く丁寧かつ丁重に、俺は身体検査を受けさせられ
綺麗な白いローブへと着替えさせられる。
「異常はありません、ただ……」
と俺の腕の裏を軍医に手に取って見せられる。
そこには蚯蚓腫れで
"エッチなのはいけないにゃ"
と字が大きく浮き出していた。
「……ペップか……」
たぶん精神融合していた時に何か
したのだろう。そのうち消えそうだし
気にすることもないなと、医者たちにお礼を言って
近くに張られた指揮官専用のテントへと
案内される。
中には金銀の刺繍の入った絨毯が敷かれて
派手な調度品が置かれ
ベッドも見るからにフカフカである。
しばらく休みたいので一人にしてほしいと
ついてきた兵士に告げて、彼が去ると
ベッドへとそのままダイブする。
寝よう。好きなだけ一人で寝たい。
大変だったけど、何とかなってよかった。
寝入ってしまう。
気付くと
吹雪が吹いている
雪原のど真ん中に俺は立っていた。
"食王に知覚世界で真っ向から挑み、そして
なんと、制したようだな。見事なり、新たなる食王よ"
聞き覚えのある威厳のある声が辺りに響いてくる。
吹雪に隠れながら周囲に巨大なゴーレムたちが
少しずつ集まってくる。
"我ら、新たなる主の命令を待っている"
俺の真正面に立つ、苔むした岩が髭を生やしたような
巨大なゴーレムは、そう言うとその巨体を跪いて
俺を見下ろす。
そういえば、そうか、思い出した。
北の方に鉱石を取りに行ったときに
世界を作り変えられるゴーレムたちから
色々と話を聞いたんだった。
本当のことだったのか……いや、さっきまで
テントで寝ていたのに、いきなりここに
居るのはおかしい。寒さも感じないし、やはり夢なのか……。
などと一通り考えてから
「試しに、俺のすぐ前に、
マクネルファーの雪像を造ってみてくれないか?十秒以内で」
そうゴーレムたちに告げてみると
目の前にいきなり氷でできた褌一丁で仁王立ちしている
マクネルファーの五メートルほどの高さの像が
足元からせり出してきた。
「……」
凄い再現度である。マクネルファーの枯れた肉体と
彼のわけのわからなさを完璧に模倣している。
「よ、よーし……じゃあ次は、
その横にファイナの雪像を。水着姿で!」
すぐに同じくらいの高さのファイナの雪像が
せり出してきて、マクネルファーと並ぶ。
なんか面白くなってきたので
ペップや、ピグナやパシー、それにバムの大きな雪像も
横に並べて作ってみた。
なかなかの壮観だな。と満足して見上げていると
"他にはないのか。我ら、この世界の形を根本から変え得るが"
「ああ、満足したよ。また何かあったら頼む。
あっ、それから、どうやったら俺が
この世界の味覚を元に戻せるか分かるか?」
"天界の主、バムスェルがその答えを持っている。
では行く。我らは常に新食王と共に在る……"
吹雪の中へと様々な形状のゴーレムたちは消えていき
そして俺は雪原のど真ん中
仲間の像たちをしばらく見上げると
早くまた、会いたいなと少し切なくなった。
同時に景色が歪み始めて、意識が途切れる。
目覚めると帝都宮殿内の宿泊室のベッドの上だった。
前も気づいたら、この部屋だったよな。
と思いながら、ベッドから下りて
身体を思いっきり伸ばしてみる。
調子は良さそうだ。眠気も全くない。
食王になったからかな。
それとも魔王のくれた肉体が強いからなのか。
まあ、いいか。窓の外の中庭に射しこむ朝日を見つめる。
見た夢の内容は完璧に覚えている。
いや、あれは恐らく夢ではなく
現実のことだろうなという確信がある。
あの雪原には、雪像が仲間の分だけ立っているはずである。
腹も減ってないな。お、テーブルの上に畳まれた着替えがある。
手鏡とヘアブラシもあるな。
部屋の隅には、温かいお湯が入ったタライまで用意してある。
身なりを整えろと。よろしい。
やたら派手な、中世の貴族が着るような
ヒラヒラの沢山ついた服に着替えて、
そして顔を洗い、髪型などを整えていると
「お湯をお代え致します」
と年配の肩に力の入っていないメイドが入ってきて
そして俺を見ると頭を深く下げて
「皇帝陛下が、会見を望まれていますが
準備はよろしいでしょうか?」
と尋ねてくる。
「え……何を会見するんでしょうか?」
「私は存じておりません。よろしければ
さっそく……」
メイドの眼力のある両目で見つめられて
思わず頷いてしまうと
「では、私がご案内いたします」
仕方ないのでついていくしかない。
宮殿の華美な通路や、廊下を通っていくと
左右に待機していたらしき、ズラッと並んだ衛兵たちや
メイドたちが一斉に頭を下げてくる。
まるでお辞儀のウェーヴである。
なんじゃこりゃああああ……と言いたいところだが
恐らくはもう俺が食王であると
宮殿中の職員には伝わってるんだろうな。
あの敏腕な皇帝が、しないわけないよな……。
と妙に納得して、愛想笑いで左右から次々に繰り出される
お辞儀ウェーヴを何とか通り抜けていく。
金色で立体的な竜が彫られた巨大な扉の前まで
俺は連れてこられる。
屈強な衛兵たちが、左右に扉を重々しく開いて
中の様子が現れると、広い縦長の部屋の奥まで
虹色に光り輝くカーペットが
まっすぐと敷かれていて
その左右には、派手な鎧を着た厳つい武人たちや
スーツを着た鋭い知性を感じさせる文官たち
そしてそれぞれに不思議な模様をしたローブを着こんだ
老齢の魔法使いたちが並んでいた。
威圧感に圧倒されて、部屋の前でしばらく突っ立っていると
案内をしてきた年配のメイドが後ろから小声で
「食王様より、強いものはこの世にはおりません。
堂々と、奥の玉座で待つ皇帝陛下と
会見してください」
と軽く手で背中を押されて部屋へと入れられる。
仕方ないので左右に、実力者たちを見ながら
奥の玉座に座るマリアンヌ帝の場所へと歩いて行く。
厳粛な雰囲気にフラフラしながら
何とか玉座に辿り着くと、マリアンヌ帝は立ちあがり
そして何と玉座を降り、俺に
「さあ、私の代わりに玉座へとあがってくれ。
我が帝国、そしてここに居る人材全て
新食王ゴルダブルのものだ」
「えっ……まさか……」
「そうだ。ようやく帝国を完全に任せられる人材が
出現したと私は喜んでいるのだよ。
天界の主バムスェルを守護に持つ
食王ゴルダブル。これ以上の適材は地上には居ない」
ようやく頭が理解してきた、皇帝の座を
禅譲しようとしているらしい。
「い、いや、ちょっと待ってくださいよ。
マクネルファーとか、あとほら、俺がダメだったら
ファイナに譲るとかも聞きましたけど……」
マリアンヌ帝は身体を揺らして、快活に笑うと
「マックは私のものだ。帝国にはやらん。
ファイナ嬢は、まだ体の再生が済んでおらんのだろう?
バムスェル様から聞いたぞ?」
「い、いや慌てなくても、そのうちファイナは
戻ってきますよ」
マリアンヌ帝はニヤリと笑うと、いきなり
自分の頭の王冠を俺に被せて
そして身体を持ち上げ、サッと玉座へと座らせてしまう。
そして、臣下たちに向き直り
「今、ここに帝国は新食王ゴルダブル帝のものとなった!
私は現時刻を持って、帝位を退位する!
異議あるものはあるか!」
両手を広げて、よく通る声で宣言する。
「い、いやちょっと待ってくださいよ……。
マクネルファーとの結婚も皇帝としてやるって
宣言してたじゃないですか……」
俺の声は無視してマリアンヌ帝は臣下を見回すと
全員一致で
「異議なし!」
とピッタリと揃った声がして
俺は玉座で冷や汗をかき始める。
マリアンヌ帝……いや、マリアンヌ先代帝は
スーツを着て銀縁目掛けをかけた優しそうな白髪の紳士と
厳めしい鎧を着た大柄な中年の将軍を指さして
「ラムザス軍事総監と、アトムバーン首相だ。
帝国の運営については二人に訊け。
よし、ではな。皆の者、長い間こき使ってすまなかったな。
元老として、議会には残るので
ゴルダブルに失礼をしたら、院政を始動させるからな。
ビルドゥム、調子に乗るなよ?」
邪悪な笑い顔を浮かべていると
近くに並んでいる禿げて太った男にそう言うと、俺を向き直り
「あとは頼んだ」
と真っ赤なマントを派手に脱ぎ捨てて
身軽に、そのままカーペット歩いて部屋を退出していった。
「……」
カーペット左右に部屋の奥まで延々と並ぶ
威圧感のある高官たちを眺めながら考える。
投げっぱなしだなこれ……。
えーと、どうしようか……無理だろ……。
どうしようもないだろこれ……。皇帝になるとか
望んでもいないぞ。
全身が冷や汗をかき始めると
「あはは。帝位を禅譲されてしまいましたか。
帝国担当の大天使が、報告をしてきまして
急いできてみました」
隣からバムの声がして、そちらをみると
綺麗な青白いドレスに身を纏ったバムが
八枚の翼を羽ばたかせて、そこに居た。
バムはゆっくりと玉座を下りて
辺りを見回す、屈強な高官たちがバムを見て
息をのんでいる。
バムはスゥーと息を吸い込むと
「天界の主、バムスェルが新食王様に代わり意志を伝える!
新食王様は、世界の主であり、一地方の国主には収まることはない!
食王様の手足となる、新たなる皇帝を送り込むまで
諸君らは、そのまま職務に励めとのことだ!
安心するがいい!我と食王は神々のさらに上だ。
どこからでも君たちを見ている。
そして、どこまでも帝国を見捨てない!
以上!追ってまた連絡する!解散!」
不思議な、威厳を持った声で皆に告げた。
高官たちは、一斉に頭を下げてゾロゾロと
玉座の間から退出していく。
誰も居なくなった玉座の間で
王冠を頭から外しながら
「いやーえらい目に遭った……」
「ふふふ。これでしばらくは時間が稼げます。
モルズピックへと行きましょう。
みんなの身体の再生を急がせなければ」
「な、なあ、ファイナに皇帝を継がせるのか?」
「どうでしょうか?ファイナさんの気持ちも
聞かなければ」
バムは俺の手を取って
「さあ、行きましょう。モルズピックまで」
といきなり、宙に穴を作り出し
俺をその中へと引っ張り込んだ。
穴から出ると薄気味悪い森の中だった。
「ここは……?」
「モルズピックの従業員たちの宿舎です」
バムが俺の手を引いて、森の中を進んでいく。
すると森の木々の上へと突き抜けるような
苔と蔦塗れの古びたレンガの高い塔へと辿り着く。
「この下に研究室を設けています」
バムは建物の古びた扉を開いて
中へと俺を案内していく。
一階の下へと伸びる螺旋階段を下りていくと
小部屋へとたどり着いて
そこでさらにバムは古びた扉を開けた。
中では、綺麗な顔をした白衣の七人の男女が機嫌よく
中心の大きな手術台に並んで横たわる三体の裸の男女に
頭に手かざしをしたり、縫合をしたりしていた。
「あら、バムスェル様、新食王様ですね?
ようこそ。この場を任されている、
大天使副長、東のハイネと申します」
ゆるふわの茶髪をした、小柄な綺麗な顔立ちの少女から
声をかけられて
「あ、どうも……ゴルダブルです」
と一応名乗ると、こぼれるような笑みで
「こちらへ」
手術台へと俺は連れていかれる。
よく見ると、そこにはファイナ、ペップ
そしてマクネルファーが並んで寝かされていた。
全員裸である。
「ふふふ。あと一時間で魂を入れられます」
ハイネはそう言うと、小声で俺に
「あの、バムスェル様のどんなところが好きですか?」
と尋ねてきて、答えに困っていると
バムが後ろから出てきて
「ハイネ。困らせてはなりませんよ」
「はーい。ではお二人は、身体の出来具合をチェックしてください。
我々は休憩に入りますので」
と言うと、美しい男女は全員、近くの宙に横穴を開けて
その中へと入って去って行った。
まっさきに気になったので
「ピグナとパシーは?」
「二人は、天使なので天界へと魂を一度帰還させました。
今はこちらへの身体の再構成の認可待ちです」
「役所みたいなところの?」
「はい。再生局のロビーで
二人並んで呼ばれるのを待っていますよ」
「大変そうだな……」
バムがまったく躊躇なく
三人の脇や股を広げて、チェックし始めた。
眼を逸らそうかと思ったが役得である。
とりあえずマクネルファーには脳が自動でモザイクをかけて
そしてペップとファイナの身体を、さすがに触れはしないが
ジッと眺める。
ふむふむ、そうなっていたのか。
へー思ったより大きかったんだなぁ。
などと考えていると、バムがチラッと振り返って
「あの、性欲よりも……チェックをしましょう」
と困った顔をしてくるので
「ごめんごめん。俺は難しそうだ。
ちょっと後ろに行っとく」
と言いながら、バムの後ろから
眼を見開いて
ふむふむ、そうかそうか。ふーむ……なるほどーと
ペップの身体を見ていると、微かにピクッと指が
動いた気がして、二度見すると
また別の指がピクピクと動き出す。
そして、魂の入っていないはずの口が開くと
頭がガッと俺の方を向き
「えっ……ち……なのは……いけない……にゃ……」
と言ってそのまま動かなくなった。
バムが驚いた顔で
「た、魂はまだ入っていないはずなのに……」
「……俺、出てるわ」
「その方がいいかもしれませんね……」
ペップのあのエロに制裁を加える恐ろしい力の源は
最後まで謎だったな……。
と思いながら地下室から出て、やることもないので
塔の螺旋階段を上っていく。
最上階の扉を開けると
部屋の中では、骸骨がボーっと外の景色を眺めていた。
邪魔かなと思い、扉を閉めようとすると
「いや、いいんだ。誰かは知らないけど
俺の話を聞いてくれよ」
部屋に入ると、骸骨は窓際に手招きしてくる。
窓の開かれた外を窓枠に両手で寄りかかって
並んで眺める。
景色は良くない。鬱蒼とした森と
似たような不気味な塔が立ち並んでいて
遠くには沼まで見える。
「こんなとこまで来たからには
色々と知ってるんだろ?俺らが
働いている理由とかも」
「冥界から派遣されてきてるんだろ?」
「そうだな。いい仕事だよ。三交代で
住居提供、給料も安くはない。
倍率もなかなかで、ようやく当選して来れたと喜んで
居たんだけどなぁ」
「新人?」
「そうなんだよ。でもほら
三日前に、前の食王が死んだだろ?それで
冥王様がソワソワしてて
どうやら新食王を冥界で歓迎したいらしいんだ」
「……そ、そうなんだ」
またさっきの玉座の間みたいなことにならないと
ありがたいが……。
というかあの後、三日も寝ていたらしい。今知った。
「冥界の体制も、前の食王への警戒を解いたんで
一気に平和に変わってて、うちの実家の辺りも
農業とかできることになって。
人面牛とかヌエとか、
気の早い一族がもう買っちゃってるらしいんだけど」
「う、うん……」
「人手が足りないから帰って来いって、
さっそく言われてるんだよなぁ」
「大変だな……」
「だろ?こっちで自立を目指すべきか
それとも、向こうで農業をするべきか。
贅沢な悩みなんだけどさぁ……」
骸骨は切なそうに景色を眺める。
変な話だが
なんとなくそこでやっと俺は
この世界や冥界や天界にも
平和が完全に訪れたことを実感した。
どちらを選んでもきっと幸せだから
好きなだけ悩んだらいいと彼には告げて
部屋を出ていく。
塔の外で座って待っていると
バムが中から出てきた。
「少し、私と、世界を見てみませんか?」
と告げてくる。
羽ばたくバムに抱えられて青空を飛んでいく。
眼下にはモルズピックの景色が広がる。
高いが安心感が凄い。
景色を眺めていると
「ゴルダブル様は、この世界をどうされたいですか?」
とバムから不意に訊かれる。
俺は少し考えてから
「味覚は元に戻したいけど、他はそのままでいいよ。
こうしたい、ああしたいって考えると
キリがないと思うから」
「ふふ。分かりました」
バムは微笑むと、高度を一気に上げて
速度を出し始めた。
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