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転生と皮
水着バーベキュー そしてその夜
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食事を終えて、色々と整えた後に
水着やら、バーベキュー用の用具やら
もって、渓谷の奥の滝へと
ファイナと向かう。
ペップは他の小屋に居る仲間に
声をかけるらしい。
ピグナは起きなかったので放っておいた。
滝へとたどり着いて
五十メートルほど上の崖から
下の湖まで落ちてきている。湖の周りの
スペースでバーベキューができそうである。
そのさらに周辺は森だ。
その堂々たる光景を見上げ、そして見惚れる。
ファイナは隣に寄ってきて
「色々ありましたから、少しでも
みなさんの救いになれば良いのですが……」
と心配そうに言った。
本当にこの子は成長したなと思う。
他人想いの良い子になった。
「で、では、わたくしはそこの茂みで」
ファイナは水着をもって着替えに行った。
若干覗きたい気もするが、それよりも
俺も着替えるかと、反対側の森の茂みへと行って
用意されていたハーフパンツのような水着へと着替える。
着替え終えて、バーベキュー器具を湖の周りに
置いていると
「あの……どうでしょうか?」
水色のビキニを着たファイナが
頬を赤く染めて茂みから出てきた。
良く似合っているなと少し見た後に
「似合うと思うよ」
と言うと嬉しそうに微笑んで
バーベキュー器具の設置を手伝いだした。
そうしているとすぐに
他の仲間たちも集まってきた。
肉や野菜の袋を大量に抱えて
空を飛んできたパシーは
スクール水着のような格好で
麦わら帽子とサングラスに際どい真っ赤な
ビキニを着たマリアンヌ帝に
引き連れられてきたマクネルファーは
俺と同じような水着だ。
そして遠くからものすごい勢いで
食材の束を両肩に背負って
ダッシュしてきたペップの水着を見て
ファイナが思わず
「ずっ、ずるいですわ!」
と指をさして怒り出す。
水着というより殆ど紐である。
大事な部分だけ辛うじて隠れている感じだ。
「んにゃ?ハイキャッターの水着は
みんなこうにゃよ?人間の水着は余分な部分が多いので
切り取ったにゃ」
「で、ででででも、それはさすがに……」
マリアンヌ帝が苦笑しながら
「私の用意した水着が気に入らなかったのなら
申し訳ない。とにかく食べようか。
ファイナ嬢のための味も用意してある」
サッとその場を収めてくれたので
皆は、バーベキューを始められた。
肉や野菜を焼いて食べたり、適当に湖に入って
遊んだりして
和やかな時間が過ぎていく。
ファイナは時折、チラッとペップの様子を伺っている。
どうやら何かをやるタイミングを
待っているようだが、中々実行に移せないらしい。
座って滝をボーっと見ながら手元の皿から肉を
フォークで突いて、口に放り込んでいると
マクネルファーが嫌々マリアンヌ帝と
湖を遊泳しているのが見える。
ペップはずっと肉を食べまくっていて
パシーはペップが食べる肉を焼くのに余念がない。
ファイナが近寄ってきて
「あの……ここに、バムさんが居たら
もっと良かったですね」
と控えめに尋ねてきた。
なんて答えたら正解なのか分からなかったので
「……いや、居なくても楽しいよ」
正直な感想である。もちろん居てくれたら
嬉しいが、居なくても十分に楽しんでいる。
ファイナはホッとした顔で横に座って
「ここの食料や、器具などは
マリアンヌ帝が極秘に用意してくれたのですよ」
「あることを疑問に思わなかった……疲れてるのかも」
「……今は、バムさんのことも決戦の事も忘れて
私だけを……」
そう言ってファイナは俺の頬に口づけをしてきた。
咄嗟にペップを見るが、何と肉の入った皿を手に持ったまま
座り込んで眠っている。
「パシーさんにお願いして肉に塩胡椒と一緒に
大量の睡眠薬を振りかけておきましたわ」
「何かしてるとは思ってたけど……」
「明日をも知れぬのです。手段を選んでいる暇など
ありませんわ」
そう言って、ファイナがもう一度口づけをしようと
してきたとき、空からいきなり
大きな物体が背後に降り立ってきた。
「エッチなのはいけないにゃー」
とペップの声真似をしてくる。、二人で驚き
そちらを見ると
なんと、背中から左右に二枚ずつの真っ白な
羽根を生やした水着姿のピグナが
そこには立っていた。
「ほ、本当に天使になったんですのね……」
ピグナは笑いながら
「ギャグみたいだよねー。あたしが天使だなんて」
そう言ってファイナの逆隣に座ってくる。
「……と、とにかく無事でよかった」
「ふふ。天使になったでしょ?
だからこそ、性愛って悪いことじゃないんだって
分かるんだ。だから、ゴルダブル……今度こそ」
「そ、そうですわ……手段を選んではいられません。
いっそ、三人でも……」
顔を真っ赤にしたファイナとピグナに迫られて
「い、いや全然いいんだけど……ペップ起きないかな……」
「起きないよ。さあ、そこの茂みで……」
ピグナがそう言った次の瞬間に
両目が金色に光ったパシーがゆっくりと近づいてきて
「ピグナさん、天界の主の命令です。
ただちにその不埒な欲望を捨てなさい。
あとファイナさんもやめてください。決戦の前です」
いつもと違う妙に威厳に満ちた声で言ってくる。
ピグナは即座に察した顔で、パシーに向いて跪き
ファイナは驚いて立ち上がり
「も、もしかして喋らせているのはバムさんですの!?」
「はい、そうです。いつも見てますからね」
そう言うと、パシーの両目の金色の光は消えた。
「あら、みなさん、どうして私を見てるんですか?
あっ、ピグナさん、いやピグナ様、大天使になられたんですね。
あの、良かったら、私のことも認めてくださると……」
パシーはすっかりいつもの調子に戻って
空気を読まずに話しかけだした。
ピグナはホッとして立ち上がって
「バムちゃん怖いね……パシーちゃんを付けてたのは
もしかして……」
「そうですわ!わたくしたちを監視するためですわね!
こうなったら強硬手段ですわ!」
ファイナが俺を強引に茂みに連れ込もうとすると
パシーの背後から
「ぐるるるるるる……エッチなのはいげないにゃあ……」
という恐ろしいうめき声が響いてきて
ファイナが俺から手を離すと、それは寝息に変わった。
いつのまにかペップがパシーの背後まで
気配を消して這ってきていたらしい。
「こっちもバムが操ってたのかな……」
「二重の防衛装置だね……」
「ぐぬぬ……バムちゃん有り余る力を不正利用しすぎですわ!
出てきて私と直接勝負しなさい!」
ファイナの叫び声が空に響いた。
その後、
あきらめの悪い
ピグナとファイナが五回ほど
俺を茂みに連れ込もうとして
五回とも、操られたパシーとペップの
妨害に遭って、ようやく諦めた。
「うぬー……むっ、無理ですわね」
ファイナがしゃがみこんで、肩で息をする。
「さ、さすがに大天使の力如きじゃ
バムスェル様……いや!あえて!
バムちゃん!にはかなわないか……」
ピグナなど意地になって
バムの呼び方にまで拘っている。
「あ、あの……もう、やめて肉食べよう……」
「そ、そうですわね」
「そうしようか……」
三人で肉を食べ始める。
ちなみにペップは深く眠り込んでいて
パシーは操られすぎた後遺症からか
閉じた両目から光が漏れていて
そして全身がピクピクと痙攣している。
三人で大人しく湖を見ながら肉を食べていると
近くの茂みから、げっそりとした顔の
マクネルファーと、
対照的にテカテカしたマリアンヌ帝が出てきた。
「ふっ、久しぶりに満足したぞ。また来るからな!」
マリアンヌ帝が、右手を高く挙げると
空から、いきなり、鎧を着た操縦者が一人乗った
プロペラがついたバイクのような機械が降りてきて、
そしてマリアンヌ帝は、そのバイクの後ろへと
サッとまたがると、素早く空へと去って行った。
同時にマクネルファーがその場に崩れ落ちる。
三人で慌てて駆け寄ると
「……なっ、七回じゃぞ……年寄りに
薬をむりやり飲ませおって……虐待じゃろ……」
マクネルファーがまた自逆風自慢をしたので
俺とファイナは即座に放置して、肉を食べることにする。
ピグナが仕方なさそうに
「もうあたし、天使だからね。その活動の第一歩として
この嫌味なじいさんを、小屋で介抱してくるよ」
「いっ、嫌味とはなんてこというんじゃ!
あんなもん、拷問じゃろ!わし、枯れとるというのに……」
ブツブツ言いだしたマクネルファーを抱えて
ピグナは小屋の方へと飛んで行った。
「とりあえず、満足するまで食べようか……」
「そうですわね……せめて……」
二人で黙ってバーベキューをし始める。
近くでは時折
「きしゃああああああ……エッチなのは……」
と呟きながら眠るペップと、体中の色んな所が
ランダムで光っているパシーが寝ていた。
そんな感じで夕方までダラダラして
食べ終わって、ペップたちも起こし
またそれぞれの小屋へと戻る。
皮として干されていた部屋である。
なんとなく部屋の壁に張られた洗濯糸が
気になるが、まあ気にしてもな……。
と思いながら、寝る準備をし始め
ベッドメイキングをしていると
なんと部屋の中に、バムが立っていた。
「ど、どうしたの?」
しかもペップが着ていたような
際どい水着姿である。
バムは恥ずかしそうに近寄ってて
「あ、あの時間ができたので
ちょっとお話をと……」
「その水着は……?」
「似合ってますか?」
「とても似合ってると思うけど、いいの?」
「ペップさんなら、多重に封印を施して
しかも深い眠りを与えています。
他の皆さんは、この小屋に近寄らないように
少し、催眠をかけさせていただきました」
「……完璧だな。分かった」
もうこれはアレである。
天界の主が、ここまで慎重に慎重を期して
来たということは、この世界へと来てから
とうとう初めてのアレだな。
これはもう間違いない。
俺は迷わずにバムを抱きしめる。
「……誰でもいいんですよね?」
「……そんなことはないよ」
確かにちょっと前に、そんな気持ちにもなったが
今は違う。バム一筋である。
「……ダメな人……」
バムはそう言いながら、俺にベッドへと
押し倒された。
柔らかい唇に、俺の唇が触れる。
身体に手を伸ばそうとした瞬間
暖炉の炎に照らされた
ベッドの周囲の空間に六つほどの穴が開いて
中からそれぞれ
「ぴぎゃあああああああ……エッチなのはいけないにゃあ……」
「バムスェル様、あたしたちを差し置いて抜け駆けはいけませんねー」
「バムさんはきっとこう来ると冥王様が教えてくれたのですよ」
「あ、あの……なんで私もこんなところに……バムスェル様、む、虫にしないで……」
「面白そうじゃから、わしも来てみたぞい」
五つの穴からそれぞれ仲間たちが出てきて
少し離れた六つ目の巨大な穴からは、紫色の大きな右手が
出てきて、煌びやかな指輪の嵌った中指で
ファックサインを俺たちに出してきて
そしてすぐに引っ込んだ。
「め、冥王……くっ、この非常事態に私で遊ぶとは……」
バムは顔を真っ赤にして、布団に身体を隠したが
すぐに手を伸ばしてきた目が赤く光っている
ペップから捕まえられて、穴の一つに引きずり込まれて行った。
「あ、あの……バムは大丈夫なんでしょうか……」
皆に俺は尋ねるが、それより先にファイナとピグナに
無言で凄まれて、何も言えなくなる。
やがて全ての穴は消えて
マクネルファーとパシーは小屋から出て行った。
い、いや俺がなにしたって言うんだよ!
なんでこんな大掛かりな仕掛けで
お前ら、俺を取り合ってるんだよ!
おかしいだろ!普通に女子と付き合わせて
いや、突き合わせてくれよ!そろそろいいだろ
女子二人に睨まれ続けながら
心の中で俺は咆哮していた。
水着やら、バーベキュー用の用具やら
もって、渓谷の奥の滝へと
ファイナと向かう。
ペップは他の小屋に居る仲間に
声をかけるらしい。
ピグナは起きなかったので放っておいた。
滝へとたどり着いて
五十メートルほど上の崖から
下の湖まで落ちてきている。湖の周りの
スペースでバーベキューができそうである。
そのさらに周辺は森だ。
その堂々たる光景を見上げ、そして見惚れる。
ファイナは隣に寄ってきて
「色々ありましたから、少しでも
みなさんの救いになれば良いのですが……」
と心配そうに言った。
本当にこの子は成長したなと思う。
他人想いの良い子になった。
「で、では、わたくしはそこの茂みで」
ファイナは水着をもって着替えに行った。
若干覗きたい気もするが、それよりも
俺も着替えるかと、反対側の森の茂みへと行って
用意されていたハーフパンツのような水着へと着替える。
着替え終えて、バーベキュー器具を湖の周りに
置いていると
「あの……どうでしょうか?」
水色のビキニを着たファイナが
頬を赤く染めて茂みから出てきた。
良く似合っているなと少し見た後に
「似合うと思うよ」
と言うと嬉しそうに微笑んで
バーベキュー器具の設置を手伝いだした。
そうしているとすぐに
他の仲間たちも集まってきた。
肉や野菜の袋を大量に抱えて
空を飛んできたパシーは
スクール水着のような格好で
麦わら帽子とサングラスに際どい真っ赤な
ビキニを着たマリアンヌ帝に
引き連れられてきたマクネルファーは
俺と同じような水着だ。
そして遠くからものすごい勢いで
食材の束を両肩に背負って
ダッシュしてきたペップの水着を見て
ファイナが思わず
「ずっ、ずるいですわ!」
と指をさして怒り出す。
水着というより殆ど紐である。
大事な部分だけ辛うじて隠れている感じだ。
「んにゃ?ハイキャッターの水着は
みんなこうにゃよ?人間の水着は余分な部分が多いので
切り取ったにゃ」
「で、ででででも、それはさすがに……」
マリアンヌ帝が苦笑しながら
「私の用意した水着が気に入らなかったのなら
申し訳ない。とにかく食べようか。
ファイナ嬢のための味も用意してある」
サッとその場を収めてくれたので
皆は、バーベキューを始められた。
肉や野菜を焼いて食べたり、適当に湖に入って
遊んだりして
和やかな時間が過ぎていく。
ファイナは時折、チラッとペップの様子を伺っている。
どうやら何かをやるタイミングを
待っているようだが、中々実行に移せないらしい。
座って滝をボーっと見ながら手元の皿から肉を
フォークで突いて、口に放り込んでいると
マクネルファーが嫌々マリアンヌ帝と
湖を遊泳しているのが見える。
ペップはずっと肉を食べまくっていて
パシーはペップが食べる肉を焼くのに余念がない。
ファイナが近寄ってきて
「あの……ここに、バムさんが居たら
もっと良かったですね」
と控えめに尋ねてきた。
なんて答えたら正解なのか分からなかったので
「……いや、居なくても楽しいよ」
正直な感想である。もちろん居てくれたら
嬉しいが、居なくても十分に楽しんでいる。
ファイナはホッとした顔で横に座って
「ここの食料や、器具などは
マリアンヌ帝が極秘に用意してくれたのですよ」
「あることを疑問に思わなかった……疲れてるのかも」
「……今は、バムさんのことも決戦の事も忘れて
私だけを……」
そう言ってファイナは俺の頬に口づけをしてきた。
咄嗟にペップを見るが、何と肉の入った皿を手に持ったまま
座り込んで眠っている。
「パシーさんにお願いして肉に塩胡椒と一緒に
大量の睡眠薬を振りかけておきましたわ」
「何かしてるとは思ってたけど……」
「明日をも知れぬのです。手段を選んでいる暇など
ありませんわ」
そう言って、ファイナがもう一度口づけをしようと
してきたとき、空からいきなり
大きな物体が背後に降り立ってきた。
「エッチなのはいけないにゃー」
とペップの声真似をしてくる。、二人で驚き
そちらを見ると
なんと、背中から左右に二枚ずつの真っ白な
羽根を生やした水着姿のピグナが
そこには立っていた。
「ほ、本当に天使になったんですのね……」
ピグナは笑いながら
「ギャグみたいだよねー。あたしが天使だなんて」
そう言ってファイナの逆隣に座ってくる。
「……と、とにかく無事でよかった」
「ふふ。天使になったでしょ?
だからこそ、性愛って悪いことじゃないんだって
分かるんだ。だから、ゴルダブル……今度こそ」
「そ、そうですわ……手段を選んではいられません。
いっそ、三人でも……」
顔を真っ赤にしたファイナとピグナに迫られて
「い、いや全然いいんだけど……ペップ起きないかな……」
「起きないよ。さあ、そこの茂みで……」
ピグナがそう言った次の瞬間に
両目が金色に光ったパシーがゆっくりと近づいてきて
「ピグナさん、天界の主の命令です。
ただちにその不埒な欲望を捨てなさい。
あとファイナさんもやめてください。決戦の前です」
いつもと違う妙に威厳に満ちた声で言ってくる。
ピグナは即座に察した顔で、パシーに向いて跪き
ファイナは驚いて立ち上がり
「も、もしかして喋らせているのはバムさんですの!?」
「はい、そうです。いつも見てますからね」
そう言うと、パシーの両目の金色の光は消えた。
「あら、みなさん、どうして私を見てるんですか?
あっ、ピグナさん、いやピグナ様、大天使になられたんですね。
あの、良かったら、私のことも認めてくださると……」
パシーはすっかりいつもの調子に戻って
空気を読まずに話しかけだした。
ピグナはホッとして立ち上がって
「バムちゃん怖いね……パシーちゃんを付けてたのは
もしかして……」
「そうですわ!わたくしたちを監視するためですわね!
こうなったら強硬手段ですわ!」
ファイナが俺を強引に茂みに連れ込もうとすると
パシーの背後から
「ぐるるるるるる……エッチなのはいげないにゃあ……」
という恐ろしいうめき声が響いてきて
ファイナが俺から手を離すと、それは寝息に変わった。
いつのまにかペップがパシーの背後まで
気配を消して這ってきていたらしい。
「こっちもバムが操ってたのかな……」
「二重の防衛装置だね……」
「ぐぬぬ……バムちゃん有り余る力を不正利用しすぎですわ!
出てきて私と直接勝負しなさい!」
ファイナの叫び声が空に響いた。
その後、
あきらめの悪い
ピグナとファイナが五回ほど
俺を茂みに連れ込もうとして
五回とも、操られたパシーとペップの
妨害に遭って、ようやく諦めた。
「うぬー……むっ、無理ですわね」
ファイナがしゃがみこんで、肩で息をする。
「さ、さすがに大天使の力如きじゃ
バムスェル様……いや!あえて!
バムちゃん!にはかなわないか……」
ピグナなど意地になって
バムの呼び方にまで拘っている。
「あ、あの……もう、やめて肉食べよう……」
「そ、そうですわね」
「そうしようか……」
三人で肉を食べ始める。
ちなみにペップは深く眠り込んでいて
パシーは操られすぎた後遺症からか
閉じた両目から光が漏れていて
そして全身がピクピクと痙攣している。
三人で大人しく湖を見ながら肉を食べていると
近くの茂みから、げっそりとした顔の
マクネルファーと、
対照的にテカテカしたマリアンヌ帝が出てきた。
「ふっ、久しぶりに満足したぞ。また来るからな!」
マリアンヌ帝が、右手を高く挙げると
空から、いきなり、鎧を着た操縦者が一人乗った
プロペラがついたバイクのような機械が降りてきて、
そしてマリアンヌ帝は、そのバイクの後ろへと
サッとまたがると、素早く空へと去って行った。
同時にマクネルファーがその場に崩れ落ちる。
三人で慌てて駆け寄ると
「……なっ、七回じゃぞ……年寄りに
薬をむりやり飲ませおって……虐待じゃろ……」
マクネルファーがまた自逆風自慢をしたので
俺とファイナは即座に放置して、肉を食べることにする。
ピグナが仕方なさそうに
「もうあたし、天使だからね。その活動の第一歩として
この嫌味なじいさんを、小屋で介抱してくるよ」
「いっ、嫌味とはなんてこというんじゃ!
あんなもん、拷問じゃろ!わし、枯れとるというのに……」
ブツブツ言いだしたマクネルファーを抱えて
ピグナは小屋の方へと飛んで行った。
「とりあえず、満足するまで食べようか……」
「そうですわね……せめて……」
二人で黙ってバーベキューをし始める。
近くでは時折
「きしゃああああああ……エッチなのは……」
と呟きながら眠るペップと、体中の色んな所が
ランダムで光っているパシーが寝ていた。
そんな感じで夕方までダラダラして
食べ終わって、ペップたちも起こし
またそれぞれの小屋へと戻る。
皮として干されていた部屋である。
なんとなく部屋の壁に張られた洗濯糸が
気になるが、まあ気にしてもな……。
と思いながら、寝る準備をし始め
ベッドメイキングをしていると
なんと部屋の中に、バムが立っていた。
「ど、どうしたの?」
しかもペップが着ていたような
際どい水着姿である。
バムは恥ずかしそうに近寄ってて
「あ、あの時間ができたので
ちょっとお話をと……」
「その水着は……?」
「似合ってますか?」
「とても似合ってると思うけど、いいの?」
「ペップさんなら、多重に封印を施して
しかも深い眠りを与えています。
他の皆さんは、この小屋に近寄らないように
少し、催眠をかけさせていただきました」
「……完璧だな。分かった」
もうこれはアレである。
天界の主が、ここまで慎重に慎重を期して
来たということは、この世界へと来てから
とうとう初めてのアレだな。
これはもう間違いない。
俺は迷わずにバムを抱きしめる。
「……誰でもいいんですよね?」
「……そんなことはないよ」
確かにちょっと前に、そんな気持ちにもなったが
今は違う。バム一筋である。
「……ダメな人……」
バムはそう言いながら、俺にベッドへと
押し倒された。
柔らかい唇に、俺の唇が触れる。
身体に手を伸ばそうとした瞬間
暖炉の炎に照らされた
ベッドの周囲の空間に六つほどの穴が開いて
中からそれぞれ
「ぴぎゃあああああああ……エッチなのはいけないにゃあ……」
「バムスェル様、あたしたちを差し置いて抜け駆けはいけませんねー」
「バムさんはきっとこう来ると冥王様が教えてくれたのですよ」
「あ、あの……なんで私もこんなところに……バムスェル様、む、虫にしないで……」
「面白そうじゃから、わしも来てみたぞい」
五つの穴からそれぞれ仲間たちが出てきて
少し離れた六つ目の巨大な穴からは、紫色の大きな右手が
出てきて、煌びやかな指輪の嵌った中指で
ファックサインを俺たちに出してきて
そしてすぐに引っ込んだ。
「め、冥王……くっ、この非常事態に私で遊ぶとは……」
バムは顔を真っ赤にして、布団に身体を隠したが
すぐに手を伸ばしてきた目が赤く光っている
ペップから捕まえられて、穴の一つに引きずり込まれて行った。
「あ、あの……バムは大丈夫なんでしょうか……」
皆に俺は尋ねるが、それより先にファイナとピグナに
無言で凄まれて、何も言えなくなる。
やがて全ての穴は消えて
マクネルファーとパシーは小屋から出て行った。
い、いや俺がなにしたって言うんだよ!
なんでこんな大掛かりな仕掛けで
お前ら、俺を取り合ってるんだよ!
おかしいだろ!普通に女子と付き合わせて
いや、突き合わせてくれよ!そろそろいいだろ
女子二人に睨まれ続けながら
心の中で俺は咆哮していた。
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