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ワールド料理カップへ向けて、帝国へ
乗っ取り
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色々と考えても埒が明かないし
とりあえず寝ることにする。
もちろんベッドは女子陣で、俺は床に寝袋である。
目を閉じて、そして次に開けると
もう朝だった。よぼど疲れていたらしい。
寝たという感覚すらなかった。
起きると部屋の中で既に起きていた
三人が作り置きを食べていて
俺も自分の分を分けて食べ始める。
ピグナが真面目な顔で
「あのねーワールド料理カップの開催が
実はあと一か月に迫ってるんだけど、参加しない?」
俺たちを見てくる。
「でも、参加権はないよにゃ?
どうするんだにゃ?」
「私が考えた作戦を隠してても仕方ないし
全部ばらしちゃうとね……」
皆で食べる手を止めて聞く。
「この街にさ、小国のどう考えても
勝ちあがれそうにない代表団が幾つか
来てるんだよ。そのうちの一つを
乗っ取っちゃうのはどうだろうか?」
「……それ、一線越えてないか?」
俺が聞き返すと
「いや、そうでもないよ。悪魔センサーで夜中に調べたけど
やる気ない国はとことんやる気ないみたい。
地域によっては予選も無く
参加権だけはあるから、国の面子のために
派遣されてるだけみたいな感じだね。
金払えば多分思うがままだろうね」
俺はどうにも判断がつかないので
ファイナとペップの顔を見ると
「わたくしは賛成ですわ」
「私はここまで来たなら何でもするべきだと
思うにゃ」
「うーん……」
何とも決めかねる話だ。ただ三人が
そうすべきだと言っているので
「一応、代表団のひとつと接触してみよう」
相手のやる気次第ということだ。
というわけで宿を出て
代表団の一つが泊っているという
豪華なホテルの前までやってきた。
石造りだが、明らかに俺たちの泊まっている宿とは
値段が違う。
ピグナは俺が背負ってきたリュックを
パンパンと叩いて
「買収資金は十分だよ。さ、行こう」
入っていく。
シャンデリアが吊るされた広いロビーで
みすぼらしい旅装の俺たちが突っ立っていると
若いホテルマンが素早く駆け寄ってきた。
「お泊りでしょうか?」
ピグナが進み出て
「ここの五階に宿泊している
メルレンゲ侯国の一行様に呼ばれたんだけど」
「少しお待ちください。お部屋でご確認してきます」
鉄格子に囲まれた牢屋のような
ゴツいエレベーターに乗って
上階へと上がっていった。
「あれであがるのですよね?」
初めてエレベーターを見たファイナが
ペップとはしゃぎ始めて、ピグナは俺に
「昨夜のうちに、向こうの天使とは話をつけたから。
たぶん、すんなり面会まで行くと思う」
「天使が守護しているのか?」
「うん。あたしと力がほぼ同格だったから早かったよ」
言われた通りに、ホテルマンはあっさりと
五階まで俺たちを連れて行って
豪華なスウィートルームに俺たちは通される。
ど派手なドレスを着た中年女性が
「あーら、あなたたちが
クェルサマンの言っていた福をもたらす者
ですわね。どうぞお座りになって」
中年女性は俺たちを部屋の中心のソファへと座らせると
対面側の席に座り
「で、どちらが悪魔の方なのですか?」
ピグナが片手をあげて
「あたしだよ。単刀直入に言うね。
ワールド料理カップへの出場権を買いたい。
その代金はこれね」
ピグナは俺が床に置いたリュックから
スーミルオン鉱石の大きな虹色の塊を幾つも
出してテーブルに並べる。
女性はしばらく声が出ないほど唖然としてから
「ほ、本物ならば、こ、これが幾らになるか
ご存じなのですか?」
「この国の金で百億ボースというとこだろうね。まだあるよ?
要る?」
「い、いえいえもう結構ですわ。
し、しかしどうやって出場権をお渡しすれば……」
「代表の登録メンバーを私たち全員への変更と、
そのための私たち全員のあなたの国への国籍取得を
半月以内に完璧にやって貰いたい。
そのために金が要るなら、幾らでも出すよ。
どう?」
中年女性は少し恐怖している表情で
「あ、あの……失礼ですけど
金額と釣り合わないと思いますけれど?」
「足りない……?」
ピグナがさらに鉱石をテーブルに置こうとすると
女性は両手で慌てて止めて
「いえ、そんなにワールド料理カップが大切ですか?」
「うん。いくら払ってでも出たいね。
そうだよね?」
ピグナは俺たちを見てきたので、全員で頷く。
女性はしばらく考えて
「分かりました。本国へと竜の特急連絡便で
直ちに問い合わせてみます。あと鑑定したいので
小さな欠片を幾つか頂いても?」
ペップがチョップで塊の端を瞬く間に砕いて
三つほどの欠片を女性に渡す。
「メルレアーデと申します。以降良しなに」
女性は欠片を受け取ると、頭を下げてきた。
どうやら交渉は成功したらしい。
高級ホテルから出て
街を歩きながら
「とにかく、まずは半月で完璧に
準備を完了させて、残りの半月で対策を立てないとね」
「対策?」
「うん。大国の代表に勝つ対策だよ。
相手は腕も凄いけど、守護神も凄まじいからね」
ややこしい事態になりつつあるようだ。
だが、この大会を勝ち抜かないと
ワールドイートタワーに辿り着けないので
とにかく今はピグナの作戦に任せてみよう。
とりあえず寝ることにする。
もちろんベッドは女子陣で、俺は床に寝袋である。
目を閉じて、そして次に開けると
もう朝だった。よぼど疲れていたらしい。
寝たという感覚すらなかった。
起きると部屋の中で既に起きていた
三人が作り置きを食べていて
俺も自分の分を分けて食べ始める。
ピグナが真面目な顔で
「あのねーワールド料理カップの開催が
実はあと一か月に迫ってるんだけど、参加しない?」
俺たちを見てくる。
「でも、参加権はないよにゃ?
どうするんだにゃ?」
「私が考えた作戦を隠してても仕方ないし
全部ばらしちゃうとね……」
皆で食べる手を止めて聞く。
「この街にさ、小国のどう考えても
勝ちあがれそうにない代表団が幾つか
来てるんだよ。そのうちの一つを
乗っ取っちゃうのはどうだろうか?」
「……それ、一線越えてないか?」
俺が聞き返すと
「いや、そうでもないよ。悪魔センサーで夜中に調べたけど
やる気ない国はとことんやる気ないみたい。
地域によっては予選も無く
参加権だけはあるから、国の面子のために
派遣されてるだけみたいな感じだね。
金払えば多分思うがままだろうね」
俺はどうにも判断がつかないので
ファイナとペップの顔を見ると
「わたくしは賛成ですわ」
「私はここまで来たなら何でもするべきだと
思うにゃ」
「うーん……」
何とも決めかねる話だ。ただ三人が
そうすべきだと言っているので
「一応、代表団のひとつと接触してみよう」
相手のやる気次第ということだ。
というわけで宿を出て
代表団の一つが泊っているという
豪華なホテルの前までやってきた。
石造りだが、明らかに俺たちの泊まっている宿とは
値段が違う。
ピグナは俺が背負ってきたリュックを
パンパンと叩いて
「買収資金は十分だよ。さ、行こう」
入っていく。
シャンデリアが吊るされた広いロビーで
みすぼらしい旅装の俺たちが突っ立っていると
若いホテルマンが素早く駆け寄ってきた。
「お泊りでしょうか?」
ピグナが進み出て
「ここの五階に宿泊している
メルレンゲ侯国の一行様に呼ばれたんだけど」
「少しお待ちください。お部屋でご確認してきます」
鉄格子に囲まれた牢屋のような
ゴツいエレベーターに乗って
上階へと上がっていった。
「あれであがるのですよね?」
初めてエレベーターを見たファイナが
ペップとはしゃぎ始めて、ピグナは俺に
「昨夜のうちに、向こうの天使とは話をつけたから。
たぶん、すんなり面会まで行くと思う」
「天使が守護しているのか?」
「うん。あたしと力がほぼ同格だったから早かったよ」
言われた通りに、ホテルマンはあっさりと
五階まで俺たちを連れて行って
豪華なスウィートルームに俺たちは通される。
ど派手なドレスを着た中年女性が
「あーら、あなたたちが
クェルサマンの言っていた福をもたらす者
ですわね。どうぞお座りになって」
中年女性は俺たちを部屋の中心のソファへと座らせると
対面側の席に座り
「で、どちらが悪魔の方なのですか?」
ピグナが片手をあげて
「あたしだよ。単刀直入に言うね。
ワールド料理カップへの出場権を買いたい。
その代金はこれね」
ピグナは俺が床に置いたリュックから
スーミルオン鉱石の大きな虹色の塊を幾つも
出してテーブルに並べる。
女性はしばらく声が出ないほど唖然としてから
「ほ、本物ならば、こ、これが幾らになるか
ご存じなのですか?」
「この国の金で百億ボースというとこだろうね。まだあるよ?
要る?」
「い、いえいえもう結構ですわ。
し、しかしどうやって出場権をお渡しすれば……」
「代表の登録メンバーを私たち全員への変更と、
そのための私たち全員のあなたの国への国籍取得を
半月以内に完璧にやって貰いたい。
そのために金が要るなら、幾らでも出すよ。
どう?」
中年女性は少し恐怖している表情で
「あ、あの……失礼ですけど
金額と釣り合わないと思いますけれど?」
「足りない……?」
ピグナがさらに鉱石をテーブルに置こうとすると
女性は両手で慌てて止めて
「いえ、そんなにワールド料理カップが大切ですか?」
「うん。いくら払ってでも出たいね。
そうだよね?」
ピグナは俺たちを見てきたので、全員で頷く。
女性はしばらく考えて
「分かりました。本国へと竜の特急連絡便で
直ちに問い合わせてみます。あと鑑定したいので
小さな欠片を幾つか頂いても?」
ペップがチョップで塊の端を瞬く間に砕いて
三つほどの欠片を女性に渡す。
「メルレアーデと申します。以降良しなに」
女性は欠片を受け取ると、頭を下げてきた。
どうやら交渉は成功したらしい。
高級ホテルから出て
街を歩きながら
「とにかく、まずは半月で完璧に
準備を完了させて、残りの半月で対策を立てないとね」
「対策?」
「うん。大国の代表に勝つ対策だよ。
相手は腕も凄いけど、守護神も凄まじいからね」
ややこしい事態になりつつあるようだ。
だが、この大会を勝ち抜かないと
ワールドイートタワーに辿り着けないので
とにかく今はピグナの作戦に任せてみよう。
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