料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転移した

弍楊仲 二仙

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ミチャンポ王国と漁師連合国の諍い

純粋な汚染物質

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部屋に戻ると、なんと俺よりも先に帰って待っていた
ピグナが、バスローブ一枚の姿で誘惑してくる。
「他の女子いないし、揉み放題だよー?」
俺は迷わずに寝袋に入って、床で寝ることにする。
もちろんピグナが入ってこられないように
服とかも目いっぱい詰めた。

寝苦しいが何とか眠って、汗だくで起きる。
寝袋から出ると、つまらなそうなバスローブ姿がのピグナが
既に起きて、ベッドに腰かけていて
「はい、蒸しタオル。身体拭いてあげる」
と言ってきたので、素早くその手からタオルだけ奪い取って
顔と上半身の汗を拭きあげる。

「ガード固いなぁ。世の中に不倫してる人どれだけ居ると思ってんの?
 そもそも、肉欲は自由でしょ?」
「いや、何か違う。お前とやるのは違うと思う」
悪魔である。人ではない。ピグナは膨れた顔で
「それ、悪魔差別ですよー?あたしだって誰とでもってわけでもないしー」

それはスルーしてとにかくバムが残していってくれた
作り置きを食べて、不貞腐れているピグナを置いて
部屋を出て、通りかかったメイドに
ヌーングサーと大事な話がしたいと伝えると
すぐに伝えに行ってくれた。

わざわざ俺たちの部屋まで来てくれた
ヌーングサーは
「娘さんの病状を救えます」
と言った俺に両目を丸くして
「知っていたのか……救えるとは?」
ギラリと光った恐ろしい眼光で尋ねてくる。

俺が無言で、まだ不貞腐れているピグナを見ると
「……あーえっと、あたしなら毒を吸い出せるよ。
 あと、何が原因かも教えてあげられる」
ヌーングサーは大喜びして
すぐに俺たちを屋敷内の見晴らしの良い部屋の
ベッドに横たわる娘の所へと連れて行ってくれた。

骨の様に痩せ細った少女は、か細い息をして
寝ている。確かにこのままだと余命僅かだろう。
ピグナは透明なコップをヌーングサーに用意させると
懐から虹色に輝くストローを取り出して
それを少女の口に突っ込んだ。

そして反対側の吸い口を咥えると
「ズズズーッ」とまるでバニラシェイクの残りを吸い出すような
派手な音を立てて、少女の口から何かを吸い出しては
それをペッと、コップの中に吐き捨てる。

真黒な気持ちの悪い液体が、次々にコップの中に吐き出されて
それが一杯になると
「あ、もういいや。二日で全回復するだろう。
 あとは魚料理は金輪際食べさせないこと。
 それで、八十までこの子は生きるよ」
ピグナはニヤッと笑って、ストローを懐にしまって
黒い液体の入ったコップに蓋をして、受け取った。

二人で部屋へと戻ると
ピグナは真黒な液体の詰まったコップを愛おし気に眺める。
「捨てないか?気持ち悪いんだけど」
「いやーこれがいいんじゃんか。人間の瘴気と毒が詰まった
 純粋な汚染物質。何かに使いたくない?」
「頼むから、人には食わせないでくれよ」

「分かってるって。あー娘が治るまであと二日必要だねー。
 ミチャンポの方は、三人が上手くやってるけど
 ちょっと危ういから、あの子の回復を待つ間、手伝いに行く?」
「大丈夫か?怪しまれないかな?」
「うん。ちょっと本国から急用が入った、調査に行くって
 適当にでっちあげて騙せばいいよ。
 ミチャンポでは、あたしの幻術で誰もあたしとゴルダブルの顔覚えてないし
 楽勝でしょ」

バムとファイナ、そしてペップの様子も心配なので
ピグナを信用することにして
さっそく俺たちは、ミチャンポへと一時的に戻ることにした。
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