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バルナングス共和国編
襲撃
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俺たちは来た道をミルバスへと向けて戻っていく
当然だが城門は閉まったままなので
バムがフリークライミングで、城壁を軽くよじ登り
上からロープを垂らしてきて、俺はそれをよじ登り
老人のマクネルファーは、ロープに自分の身体を
結んでもらって、バムと二人で引き上げる。
どうにか衛兵に見つからずに
城壁内の街へと再び入ることができ
宿へとカンテラを点けて、ゆっくりと戻っていく。
「あ、そう言えばお礼、貰ってないな」
「竜たちは長生きで、時間間隔が我々とは違うからの。
そのうち返してくれるじゃろ。気長に待つことじゃ」
バムはマクネルファーに頷いて
辿り着いた宿の入口を開けて入っていく。
ホッとして、宿泊室の扉を開けると
ベッドにファイナは居なかった。代わりに
何か紙切れが……。
「ファイナ嬢をお借りした。
返してほしくば、プラグナ二ウムを
さらに五百キロ採掘して、明後日の夜中
ミルバス北部のため池の畔へと来い」
「ゆっ、誘拐……」
パニクっていると、部屋を見回したバムが
「置いていたプラグナ二ウムが、全部、無くなってますね……」
マクネルファーが広い額に血管を浮き上がらせながら
「……魔法ギルドのやつらじゃな。
わしらを監視していたのか……」
怒りが入り混じった表情で言う。
確かに、喉から手が出るほど
プラグナ二ウムを欲しがっているから
魔法使いに売るとか、さっき彼が言っていた。
バムはまったく迷いのない表情で
「今から、取り返しに行きましょう」
俺たちに告げてくる。
「い、いやとは言っても、どこに連れ去られたかは……」
慌てふためいている俺とは対照的に
マクネルファーは冷静に
「恐らくは、まだこの街の中じゃよ。
受け渡し場所が、街中じゃからな」
バムは迷いのない顔で
「魔法ギルドに乗り込みましょう」
マクネルファーに貰った剣を腰に差しながら言う。
「うむ、じゃが正面から行くのか?魔法でやられるぞ?」
バムは頷いて、俺を指さした。
五分後。
俺は真っ白なローブの下は黒パンツ一丁で
バムとマクネルファーの背中を追っていた。
バムは俺を盾にして、魔法ギルドに正面から
喧嘩を仕掛けるつもりらしく、着替えさせられたのだ。
止めたのだが、マクネルファーも同意したので
二体一で多数決に負け
恐らくこの誘拐を企んだ犯人であろう
魔法ギルドに、襲撃を仕掛けることになってしまった。
違ったらどうすんだこれと……不安に苛まれている暇もなく
走り続ける二人を追い、
気付いたら街の北西にある
三階建ての巨大な建物の前へと俺たちは立っていた。
夜道を照らすように煌々と明かりが点いていて
人の気配もかなりする。
「良いか?やるなら中途半端はダメじゃぞ?
完全に壊滅させねばならぬ」
いきなり恐ろしいセリフを吐いてくる
マクネルファーに
「いや、まだ証拠もないし
隠れて潜入して探るとかさ……また牢屋に入らないといけなくなるぞ?」
「ダメです。先に喧嘩を売ってきたのは彼らです。
思い知らせてやりましょう」
いや、お前らちょっと落ち着けよ。
なんで、そんなに血の気が多いんだよ!?
と言う前に俺はバムに担がれて、正面の扉を
蹴りあけたバムと共に、いつの間にか内部に侵入していた。
「ファイナさんを返しなさい!」
入り口付近を行きかうローブ姿の
魔法使いたちに、バムが担架を切った瞬間
魔法使いたちは、俺たちの方へと
いきなり魔法を照射してくる。
氷、炎、風に水、はたまた光まで
各種魔法が派手にバムの盾になった俺に
照射されて、俺はローブが消滅して
瞬く間に黒パンツ一丁になっていた。
うーわーこーわーいー警告も無しに本気で殺しに来てただろ……。
白目を剥いて気絶しかけていると
バムがいつのまにか、受付嬢も含めて
十人ほどいた魔法使いたちを、流れるような動きで気絶させていく。
「よし、終わったか。たしかボスの部屋はあっちじゃ」
あとから入ってきたマクネルファーが
二階へと続く階段を指さした。
バムに腕を引っ張られながら
階段を登って、マクネルファーの指示通りに奥の部屋へと
すれ違った魔法使いたちを、主にバムが
不意打ちで殴り倒しながら、駆けていき
さらにバムが扉を蹴破ると
真っ赤な髪を逆立てたイケメンが
アンティークのデスクに座って
書類を書いていた所だった。
着ているスーツも真っ赤な彼は
余裕の表情で俺たちを見てくる。
「もう来たのかい。ファイナ嬢を取り返しに
来たんだろうが、この街一の魔法使いである
僕には君たちは勝てないよ?」
三分後。
強力な炎魔法が盾になった俺に一切効かずに、怒り狂ったバムから
暴虐の限りを尽くされて、自慢の赤いスーツは
引きちぎられて、俺と同じくパンツ一丁になった上に
殴られすぎて、顔の形が分からなくなった
彼がそこには居た。
「で、どこ?どこに居るの?」
「……地下室でしゅ……地下室にいましゅ……」
「案内しなさい」
バムは足がガクガクいっている男を無理やり立たせて
案内させていく。
「バムちゃん……怒ったら怖いのう……」
マクネルファーが耳打ちしてきて
俺も必死に頷く。
ファイナは無事だろうか。
当然だが城門は閉まったままなので
バムがフリークライミングで、城壁を軽くよじ登り
上からロープを垂らしてきて、俺はそれをよじ登り
老人のマクネルファーは、ロープに自分の身体を
結んでもらって、バムと二人で引き上げる。
どうにか衛兵に見つからずに
城壁内の街へと再び入ることができ
宿へとカンテラを点けて、ゆっくりと戻っていく。
「あ、そう言えばお礼、貰ってないな」
「竜たちは長生きで、時間間隔が我々とは違うからの。
そのうち返してくれるじゃろ。気長に待つことじゃ」
バムはマクネルファーに頷いて
辿り着いた宿の入口を開けて入っていく。
ホッとして、宿泊室の扉を開けると
ベッドにファイナは居なかった。代わりに
何か紙切れが……。
「ファイナ嬢をお借りした。
返してほしくば、プラグナ二ウムを
さらに五百キロ採掘して、明後日の夜中
ミルバス北部のため池の畔へと来い」
「ゆっ、誘拐……」
パニクっていると、部屋を見回したバムが
「置いていたプラグナ二ウムが、全部、無くなってますね……」
マクネルファーが広い額に血管を浮き上がらせながら
「……魔法ギルドのやつらじゃな。
わしらを監視していたのか……」
怒りが入り混じった表情で言う。
確かに、喉から手が出るほど
プラグナ二ウムを欲しがっているから
魔法使いに売るとか、さっき彼が言っていた。
バムはまったく迷いのない表情で
「今から、取り返しに行きましょう」
俺たちに告げてくる。
「い、いやとは言っても、どこに連れ去られたかは……」
慌てふためいている俺とは対照的に
マクネルファーは冷静に
「恐らくは、まだこの街の中じゃよ。
受け渡し場所が、街中じゃからな」
バムは迷いのない顔で
「魔法ギルドに乗り込みましょう」
マクネルファーに貰った剣を腰に差しながら言う。
「うむ、じゃが正面から行くのか?魔法でやられるぞ?」
バムは頷いて、俺を指さした。
五分後。
俺は真っ白なローブの下は黒パンツ一丁で
バムとマクネルファーの背中を追っていた。
バムは俺を盾にして、魔法ギルドに正面から
喧嘩を仕掛けるつもりらしく、着替えさせられたのだ。
止めたのだが、マクネルファーも同意したので
二体一で多数決に負け
恐らくこの誘拐を企んだ犯人であろう
魔法ギルドに、襲撃を仕掛けることになってしまった。
違ったらどうすんだこれと……不安に苛まれている暇もなく
走り続ける二人を追い、
気付いたら街の北西にある
三階建ての巨大な建物の前へと俺たちは立っていた。
夜道を照らすように煌々と明かりが点いていて
人の気配もかなりする。
「良いか?やるなら中途半端はダメじゃぞ?
完全に壊滅させねばならぬ」
いきなり恐ろしいセリフを吐いてくる
マクネルファーに
「いや、まだ証拠もないし
隠れて潜入して探るとかさ……また牢屋に入らないといけなくなるぞ?」
「ダメです。先に喧嘩を売ってきたのは彼らです。
思い知らせてやりましょう」
いや、お前らちょっと落ち着けよ。
なんで、そんなに血の気が多いんだよ!?
と言う前に俺はバムに担がれて、正面の扉を
蹴りあけたバムと共に、いつの間にか内部に侵入していた。
「ファイナさんを返しなさい!」
入り口付近を行きかうローブ姿の
魔法使いたちに、バムが担架を切った瞬間
魔法使いたちは、俺たちの方へと
いきなり魔法を照射してくる。
氷、炎、風に水、はたまた光まで
各種魔法が派手にバムの盾になった俺に
照射されて、俺はローブが消滅して
瞬く間に黒パンツ一丁になっていた。
うーわーこーわーいー警告も無しに本気で殺しに来てただろ……。
白目を剥いて気絶しかけていると
バムがいつのまにか、受付嬢も含めて
十人ほどいた魔法使いたちを、流れるような動きで気絶させていく。
「よし、終わったか。たしかボスの部屋はあっちじゃ」
あとから入ってきたマクネルファーが
二階へと続く階段を指さした。
バムに腕を引っ張られながら
階段を登って、マクネルファーの指示通りに奥の部屋へと
すれ違った魔法使いたちを、主にバムが
不意打ちで殴り倒しながら、駆けていき
さらにバムが扉を蹴破ると
真っ赤な髪を逆立てたイケメンが
アンティークのデスクに座って
書類を書いていた所だった。
着ているスーツも真っ赤な彼は
余裕の表情で俺たちを見てくる。
「もう来たのかい。ファイナ嬢を取り返しに
来たんだろうが、この街一の魔法使いである
僕には君たちは勝てないよ?」
三分後。
強力な炎魔法が盾になった俺に一切効かずに、怒り狂ったバムから
暴虐の限りを尽くされて、自慢の赤いスーツは
引きちぎられて、俺と同じくパンツ一丁になった上に
殴られすぎて、顔の形が分からなくなった
彼がそこには居た。
「で、どこ?どこに居るの?」
「……地下室でしゅ……地下室にいましゅ……」
「案内しなさい」
バムは足がガクガクいっている男を無理やり立たせて
案内させていく。
「バムちゃん……怒ったら怖いのう……」
マクネルファーが耳打ちしてきて
俺も必死に頷く。
ファイナは無事だろうか。
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