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バルナングス共和国編
食料配達
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竜の大きな背中に乗せて貰って、
ミルバスの街へと戻っていく。
凄い景色である。大空から、夕暮れが沈んでいく
辺りの景色が一望できる。
「うちの子は、偏食で……普通のものは
食べられないんだ」
ブルードラゴンは飛びながら説明してくる。
「それで、痩せ細っていってね。
もうダメかと、半ば諦めていたんだが。
君たちのお陰だよ」
バムは先ほどから鉱石の詰まったバッグを背負ったまま
何かを考え込んでいる。
俺はもう絶景を見ることにしか意識が向かない。
いやー生きててよかったわー。
ドラゴンの背中に乗るとか、考えもしなかった。
背負っているファイナが気絶したまま
ピクリとも動かないのも幸いである。
真っ暗になったミルバス西の森の中に
ドラゴンは着陸して
「では、ここで待っている。
できるだけ早く、持ってきて欲しい。
礼は幾らでも弾むから」
「あの、どんな食べ物が好きなんですか?」
バムが尋ねると、ドラゴンは少し考えて
「麦を固めたようなものや、パン?というのか?
それに肉や野菜が挟まっていたものが好みのようだ」
「……分かりました。任せてください!」
バムがいきなり東へと走り出したので
俺も慌ててついて行く。
暮れていく道をひたすらミルバスに向けて
走って行く。何とか西門に辿り着いても
まだバムは走り続け、
俺たちが泊まっている宿の部屋へと駆けこんだ。
ベッドから体を起こしたマクネルファーは驚いた顔で
「は、早かったのう?どうじゃった?」
と尋ねてきたので、さっそく
調理用具を揃えているバムの代わりに
俺が、ファイナをベッドに寝かせつつ
何が起きたか説明する。
「な、なんと竜がそのような……」
マクネルファーは驚いてバムの方を見ると
バムは揃えた調理器具と素材を纏めて持って
勢いよく部屋から出ていった。
「任せておいてよいのかの?」
「ええ。心配ありませんよ。それよりも
プラグナ二ウム持って帰ってきましたよ」
荷物の中から、黒光りする欠片をマクネルファーに見せると
しばらく声も出ないほど、感動した顔をした後に
「よし!まずはプラグナ二ウムを少し売ろう!
その金があれば、三日で研究所は再建できる!」
「う、売るんですか?」
「うむ。魔術師どもは、この鉱石を喉から手が出るほど
欲しがっとるからな。少量でも莫大な金額になる。
残りは、ワシの研究所の機械に使わせてもらうよ」
変な使い方はしなさそうだし、それでいいかと
一応俺は納得する。
その後、マクネルファーと共に
人けの無い宿の調理場へとお邪魔すると
中ではバムが一人で、必死に料理を作っている最中だった。
マクネルファーは勝手につまみ食いして
「うむ。やはりな。この子は料理が美味い。
この味に竜の子が、助けられたというわけか。
どれ、わしらの食べ物もつくるかの」
呑気に自分たち用の、夕食を空いている窯を使って作り始めた。
俺もそれを手伝う。
マクネルファーが造ってくれた
まともな味の野菜料理を食べてから
俺たちはバムが竜用に大量に作った大きめのおにぎりや
サンドイッチをパンパンにショルダーバッグに詰め込んで
部屋の鍵を閉め、再び外へと出ていく。
なんとマクネルファーもついてきた。
夜道をカンテラを照らしながら進むと、ミルバスの
西の城門は閉じていて、一瞬絶望的な雰囲気になる。
「城壁にあそこの階段から登って、ロープで降りましょう」
即座にバムはそう言って、城壁へと歩き始めた。
「迷いが無いのぅ。さすがじゃわー」
俺は迷いしかないが、とりあえずついて行く。
カンテラを消して、見張りの衛兵に気をつけながら
城壁の上へ階段を登り、バムが上から垂らしたロープで下へと
下りていく。何とか俺とマクネルファーが下りきると
なんとバムがロープ無しで、城壁の岩の隙間に指をひっかけながら
逆ロッククライミングの様な感じで降りてきた。
「すげぇな……」
「ロープを残すと、ばれますから。行きましょう」
月明かりを頼りに、近くの道へとたどり着いてから
カンテラを付けて、三人で先ほどの竜が待っている地点へと急ぐ。
森へとたどり着くと、同じ場所で木々に隠れるように
ブルードラゴンは伏せながら待っていた。
その顔をカンテラで照らしながらバムが
「どうぞ。食べ物が入っています」
食べ物が詰まったリュックを差し出す。
慌てて俺もバッグを渡すと、竜はすばやくその二つを
口でひったくって
「ありがとう!この御恩は忘れぬ!」
そう高らかに言って、夜空へと飛び去って行った。
「……長生きはするもんじゃな。初めて見たわい」
マクネルファーは、そう言って夜空を見上げた。
俺とバムも無言で見上げる。
ミルバスの街へと戻っていく。
凄い景色である。大空から、夕暮れが沈んでいく
辺りの景色が一望できる。
「うちの子は、偏食で……普通のものは
食べられないんだ」
ブルードラゴンは飛びながら説明してくる。
「それで、痩せ細っていってね。
もうダメかと、半ば諦めていたんだが。
君たちのお陰だよ」
バムは先ほどから鉱石の詰まったバッグを背負ったまま
何かを考え込んでいる。
俺はもう絶景を見ることにしか意識が向かない。
いやー生きててよかったわー。
ドラゴンの背中に乗るとか、考えもしなかった。
背負っているファイナが気絶したまま
ピクリとも動かないのも幸いである。
真っ暗になったミルバス西の森の中に
ドラゴンは着陸して
「では、ここで待っている。
できるだけ早く、持ってきて欲しい。
礼は幾らでも弾むから」
「あの、どんな食べ物が好きなんですか?」
バムが尋ねると、ドラゴンは少し考えて
「麦を固めたようなものや、パン?というのか?
それに肉や野菜が挟まっていたものが好みのようだ」
「……分かりました。任せてください!」
バムがいきなり東へと走り出したので
俺も慌ててついて行く。
暮れていく道をひたすらミルバスに向けて
走って行く。何とか西門に辿り着いても
まだバムは走り続け、
俺たちが泊まっている宿の部屋へと駆けこんだ。
ベッドから体を起こしたマクネルファーは驚いた顔で
「は、早かったのう?どうじゃった?」
と尋ねてきたので、さっそく
調理用具を揃えているバムの代わりに
俺が、ファイナをベッドに寝かせつつ
何が起きたか説明する。
「な、なんと竜がそのような……」
マクネルファーは驚いてバムの方を見ると
バムは揃えた調理器具と素材を纏めて持って
勢いよく部屋から出ていった。
「任せておいてよいのかの?」
「ええ。心配ありませんよ。それよりも
プラグナ二ウム持って帰ってきましたよ」
荷物の中から、黒光りする欠片をマクネルファーに見せると
しばらく声も出ないほど、感動した顔をした後に
「よし!まずはプラグナ二ウムを少し売ろう!
その金があれば、三日で研究所は再建できる!」
「う、売るんですか?」
「うむ。魔術師どもは、この鉱石を喉から手が出るほど
欲しがっとるからな。少量でも莫大な金額になる。
残りは、ワシの研究所の機械に使わせてもらうよ」
変な使い方はしなさそうだし、それでいいかと
一応俺は納得する。
その後、マクネルファーと共に
人けの無い宿の調理場へとお邪魔すると
中ではバムが一人で、必死に料理を作っている最中だった。
マクネルファーは勝手につまみ食いして
「うむ。やはりな。この子は料理が美味い。
この味に竜の子が、助けられたというわけか。
どれ、わしらの食べ物もつくるかの」
呑気に自分たち用の、夕食を空いている窯を使って作り始めた。
俺もそれを手伝う。
マクネルファーが造ってくれた
まともな味の野菜料理を食べてから
俺たちはバムが竜用に大量に作った大きめのおにぎりや
サンドイッチをパンパンにショルダーバッグに詰め込んで
部屋の鍵を閉め、再び外へと出ていく。
なんとマクネルファーもついてきた。
夜道をカンテラを照らしながら進むと、ミルバスの
西の城門は閉じていて、一瞬絶望的な雰囲気になる。
「城壁にあそこの階段から登って、ロープで降りましょう」
即座にバムはそう言って、城壁へと歩き始めた。
「迷いが無いのぅ。さすがじゃわー」
俺は迷いしかないが、とりあえずついて行く。
カンテラを消して、見張りの衛兵に気をつけながら
城壁の上へ階段を登り、バムが上から垂らしたロープで下へと
下りていく。何とか俺とマクネルファーが下りきると
なんとバムがロープ無しで、城壁の岩の隙間に指をひっかけながら
逆ロッククライミングの様な感じで降りてきた。
「すげぇな……」
「ロープを残すと、ばれますから。行きましょう」
月明かりを頼りに、近くの道へとたどり着いてから
カンテラを付けて、三人で先ほどの竜が待っている地点へと急ぐ。
森へとたどり着くと、同じ場所で木々に隠れるように
ブルードラゴンは伏せながら待っていた。
その顔をカンテラで照らしながらバムが
「どうぞ。食べ物が入っています」
食べ物が詰まったリュックを差し出す。
慌てて俺もバッグを渡すと、竜はすばやくその二つを
口でひったくって
「ありがとう!この御恩は忘れぬ!」
そう高らかに言って、夜空へと飛び去って行った。
「……長生きはするもんじゃな。初めて見たわい」
マクネルファーは、そう言って夜空を見上げた。
俺とバムも無言で見上げる。
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