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バルナングス共和国編

巨大都市ミルバスへ

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朝起きて、三人でそれぞれ二種類の作り置きを食べる。
バムは先に置きだしていて、出発の準備をしてくれていた。
「お、おいしいですわ……幸せ」
ファイナはわざと不味くつくったサンドイッチを
美味そうに頬張っている。バムが
「あの、これ新作なんですけど」

大きな殿様バッタの様な虫の甘辛煮を
ファイナに差し出す。
「いつ買ったのこの食材……」
「村の茂みで早朝に採りました……」
ファイナは何と躊躇なくモグモグと食べて

「ふーむ。新しい食感ですわ。
 美味しいような、美味しくないような」
「ゴルダブル様もどうぞ……」
バムは俺にも一皿差し出してきた。
しばらくその皿の中身を見下ろして考え込む。

俺も食うのか……いや確かに東北の方でイナゴの佃煮って
普通に売ってて、学生自体に友達と旅行に行ったときに
ネタで食ったな……味は悪くなかった記憶がある。
よ、よしチャレンジしてみよう。
頭から食べて齧ると、何とも言えない味が
口の中に広がった。

何とか飲み込むと、バムが感想を尋ねたそうな顔をしている。
「ファイナと感想は同じだな。不味くも美味くも……」
あれ、俺とバムって味覚が全く違うはず。
バムは嬉しそうな顔で
「大成功です。やはり王道で無い料理で
 攻めるべきかもしれません」

バムなりに昨日の夜から
色々と味覚の妥協点となる料理を
頭の中で考えた結果なのだろう。悪くないと思えたので
「いいね、どんどん作ろう」
ファイナは不思議そうな顔をしていた。

準備をして西への道を歩き出す。
すぐにファイナは「疲れましたわー」
と言い出して、バムに肩車され、上機嫌になる。
ここ数日いつものパターンである。

あと四日は歩かないと、バルナングス共和国の
東側の最大の都市ミルバスには着かないらしい。
そこで、目的の料理大会が開かれているらしい。
何でも、この国は国会があり、貴族は居るが
王は居ない国らしいのだ。
投票で選ばれた議員と、権力者の貴族たちが
国会で入り乱れて政治をしている国らしい。

「揉めることが多いんじゃないのか?」
「いえ、そうでもないそうですよ。
 この国の人たちは穏やかですから、それは本当でしょう」
「ああ、南に行くとビーチがあり、北へ行くと
 避暑地がありますわ」

行きたそうなファイナに、バムが
「ダメです。食王様の道を我らは
 助けるのみですよ」
「そうですわね。私、本分を忘れるところでしたわ。
 ありがとうございます。バムさん」

ファイナは足を引っ張ることが多いが
本人はまったく曲がって居なくて
正直で憎めないので
俺たちも段々慣れてきた。

そんな感じでテントでの野営や、小さな村や街での
宿泊を繰り返していると、予定より一日早い
村を発ってから三日目の夕方に
進んで行っていた山道から、遠くに
二本の南北を横切る河川と、広大な城壁に囲まれた
巨大な城塞都市が見えてくる。

「あれがミルバスです」
バムが感動した顔で言う。
「エルディーナから一週間か……長かったな」
よく無事にたどり着けたものである。
ちなみにファイナはバムの背中で寝ている。

しばらく二人で城塞都市を眺めていると
その夕暮れに照らされた巨大都市の
ちょうど中心部分にある大きな建物で
いきなり、煙が上がって
同時に何かが派手に爆発したのが見えて
俺たちは呆然と立ち尽くす。
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