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転移→エルディーン王国編

食王の防御耐性

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「お母さまに何とかしてもらいましょう!」
ファイナの言葉に、バムは恐る恐る
「お妃様ですか?」
「はい!第三妃のアルディーナお母さまです」
バムと俺は顔を見合わせる。

ともかく、今や縋れる者には
何でも縋りたい俺たちはファイナの案内で
豪華な夕暮れに照らされた宮殿の中を
歩いていく。

時折通り過ぎるメイド達が、いつもの皮パンツと皮ブラ姿で
俺と分けた荷物を背負っているバムにクスクス笑ったり
噴き出したりしているのに気づく。
バムは下を向いて、気づかないふりをしている。
ファイナはそもそも気づいていない。

どうやらバムの格好だけが理由じゃないようだ。
セメカであることを国王は一発で見抜いていた。
知っている者には、そうだと分かる何かがあるのだろう。
何となくそんなことを思いながら
バムの前に盾になるように歩き出す。

「ゴルダブル様……」
「いや、いいんだ。背中に隠れててくれ」
「ありがとうございます……」
バムには世話になっている。このくらいはしてやりたい。

鼻歌を歌いながら宮殿内を進む
ファイナについて行くと
軽鎧を着た衛兵が二人立つ、大きな扉の前で立ち止まった。
「ここがお母様のお部屋ですわ」
ファイナはそう言うと、衛兵たちに
何かを告げる。

すぐに片方が扉を開けて、片方が中へと入って行った。
「じゃ、行きますわよ」
三人で扉の隙間から中へと入ると
光る石に照らされた、アンティーク家具が
センス良く置かれた、何とも幻想的な部屋に通される。

まったく躊躇なくファイナはその部屋中心にある
テーブルの周囲に置かれた長椅子に座り
俺たちにも手招きしてきた。
「早く。お母さまは手間がかかるのを嫌います。
 言葉も無駄なくしゃべりますからね」
バムと二人で頷いて、荷物を横に置いて
隣に二人で座る。

奥の部屋の扉が開いて、長い金髪を揺らめかせた
とても美しく神秘的なエルフの女性が出てくる。
真っ白なローブが似合っているなと見惚れていると
ファイナが
「頼みがあります。明日開催の魔法大会の
 三回戦まで勝たせて欲しいのです」

女性は半目で俺を見て、指さすと、
「盾にしろ」
と言い、そのまま回れ右して
奥の部屋へと戻って行った。
俺とバムは唖然とするが
ファイナは必死にその意味を考えだす。

しばらく固まったままのファイナが
ようやく動き出して
「私のお部屋で考えましょう」
と素早く部屋から出ていく。
俺とバムも荷物を背負って慌てて続く。

母親の部屋そっくりなファイナのリビングで
俺たちは長椅子にまた並んで座る。
腹減ったなと思っていると
バムが荷物の中から、麦ごはんで握った
おにぎりを出して渡してくれた。

それを齧っていると、ファイナが欲しそうな顔をしだしたので
一かけら渡すと、何とペロッと食べてしまった。
「ふむ。これはそんなに不味くないですわ。
 低刺激の修行もなさるのですか?」
バムと驚いていると、ファイナはいきなり立ち上がって

「そうか!分かった!」
大きな声を上げた。そして俺を指さすと
「もし伝説の食王様なら、魔法は効きません!
 楽勝ですわ!」
「……何を言っているの?」
俺が首を傾げていると、バムも何故か頷いて


「確かに……食王様は、あらゆる調理を安全にするための
 能力を授けられているので、火傷、切り傷
 そして凍傷などにかからないという伝説はありましたね……」


「いや、ちょっと待とう?それだとつまり
 この世界の魔法ってやっぱり、炎とか吹雪とかが
 襲い掛かってくる、あれですよね?」
俺が尋ねると、ファイナがドヤ顔で
「もちろんそうですわ!しかも我が国は魔法立国ともいえるほどに
 達人クラスの魔法使いが多いのです!」

うーわー……それ不味いよね。
俺がその伝説の食王じゃないと、確実に一撃目で死ぬよね……。
一人で凹んでいると、ファイナが
「よし、そうと決まったら、お風呂ですわ!
 王族用のお風呂に三人で入って、悪運を洗い清めましょう!」

やばい。いきなりやる気になってきた。
ガクンと顔を上げて、全力でファイナに首を縦に振ると
バムが俺の肩を叩き、首を横に振って
「ファイナさん、ゴルダブル様は神聖なる修行中の身なのです。
 私と二人で入るのではだめですか?」

「え……いや、いっ、一緒にお風呂入りたいなぁ……」
ボソボソと呟くと、バムに睨まれる。
ファイナは仕方なさそうな顔をして
「では、バムさん、行きましょう。ゴルダブル様には
 すぐに、お体を拭くための蒸しタオルを届けさせますわ」
「はい……」

俺は一人取り残されて
仕方なく、メイドから受け取った蒸しタオルで
身体を一人、寂しく拭いて、
バムがテーブルの上において行った冷えたおにぎりを
腹に入れる。旨い……塩味が良く効いていて旨い……。
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