4 / 4
その4
しおりを挟む「素敵な店を見つけたけど、一人では入り難くて」
食事は本当にして、ドサクサに紛れて酒を飲ませた彼女を介抱する態で自分の家へ招き入れれば、後は簡単だ。外気の匂いを纏うジャケットを脱いで煙草に火を付ける。美空は案内されたベッドの上でふらふらと酩酊感に躰を揺らしながら「るいうさぁん」と無意味に自分の名を呼び小首を傾げていた。味わい慣れた煙草の味が、今日は一段と格別に思えて涙雨は唇を釣り上げる。
「みぃちゃんって本当におバカさんねぇ」
吸い込んだ煙草の煙を、愛しい顔へと吹きかけた。
力の入らない手足から服と下着を抜き取った。女の残り香を吸い込み、滑らかな肌を舐めしゃぶり、涙雨はいたいけな獲物をどんどんと追い詰めてゆく。筋肉量の多い男は華奢な女のそれとの差は歴然で、広いベッドの真ん中に押し倒した細い輪郭は簡単に涙雨の躰の下で踊ってみせた。
(嗚呼、最高だ)
涙雨は微笑む唇をきめ細やかな肌に押し付け、音を立てながら降下してゆく。柔く波打つパープルの髪にくしゃりとか細い指が絡みついて引っ張られる感覚がして、それしきの抵抗で止められるものかと余計に愉しさが増してゆく。
「あ、ぅ」
美空は紅潮した頬で涙雨の行動を見ていた。先程外で食事をした際、彼女は酒に弱いのか慣れていないだけなのか、ずいぶん簡単に酔っていたようだった。それにしても現在進行形のこの行為における抵抗は、本当に形だけのように思えた。そう、まるで暗黙の内に合意をして一夜限りの関係にしけこむ男女のように。
『キスをして良いか』という合図を込めて小さな顎に指を添えた。やたら赤く染まった半開きの唇は、舌を差し込まれるのを待ち侘びていた。天真爛漫で純朴そうに見える普段の姿からは想像もつかない、淫靡な匂い。さあ満願成就の夜は来た。彼女に己の存在を刻むこむ為に。
食事は本当にして、ドサクサに紛れて酒を飲ませた彼女を介抱する態で自分の家へ招き入れれば、後は簡単だ。外気の匂いを纏うジャケットを脱いで煙草に火を付ける。美空は案内されたベッドの上でふらふらと酩酊感に躰を揺らしながら「るいうさぁん」と無意味に自分の名を呼び小首を傾げていた。味わい慣れた煙草の味が、今日は一段と格別に思えて涙雨は唇を釣り上げる。
「みぃちゃんって本当におバカさんねぇ」
吸い込んだ煙草の煙を、愛しい顔へと吹きかけた。
力の入らない手足から服と下着を抜き取った。女の残り香を吸い込み、滑らかな肌を舐めしゃぶり、涙雨はいたいけな獲物をどんどんと追い詰めてゆく。筋肉量の多い男は華奢な女のそれとの差は歴然で、広いベッドの真ん中に押し倒した細い輪郭は簡単に涙雨の躰の下で踊ってみせた。
(嗚呼、最高だ)
涙雨は微笑む唇をきめ細やかな肌に押し付け、音を立てながら降下してゆく。柔く波打つパープルの髪にくしゃりとか細い指が絡みついて引っ張られる感覚がして、それしきの抵抗で止められるものかと余計に愉しさが増してゆく。
「あ、ぅ」
美空は紅潮した頬で涙雨の行動を見ていた。先程外で食事をした際、彼女は酒に弱いのか慣れていないだけなのか、ずいぶん簡単に酔っていたようだった。それにしても現在進行形のこの行為における抵抗は、本当に形だけのように思えた。そう、まるで暗黙の内に合意をして一夜限りの関係にしけこむ男女のように。
『キスをして良いか』という合図を込めて小さな顎に指を添えた。やたら赤く染まった半開きの唇は、舌を差し込まれるのを待ち侘びていた。天真爛漫で純朴そうに見える普段の姿からは想像もつかない、淫靡な匂い。さあ満願成就の夜は来た。彼女に己の存在を刻むこむ為に。
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(9件)
あなたにおすすめの小説

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
よしだひろさんはこの作品は全て空想ですか?『空女の恋は三角はんぺん』のことです。
実体験があったのかどうかと言う意味で言うと、実体験はありません。ただこの障害については気になっていたので長い間注目はしてました。
テレビや本で情報収集していました。
百田尚樹さんの参考文献を目を通したら、私が読んだことある本が3〜4冊ありました。
私のやっていることは間違ってないんだなと思いました。
今、解離性同一性障がいの作品を書いています。賞に出すつもりです。
そこで、参考文献って、賞に応募する前には記載しなくてよくて、賞に合格して書籍化されるときに出版社と一緒に相談したらいいんですかね?
(分からなかったらすみません)
よしだひろさんは賞に応募したりはされてないのですか?(言いたくなければ構いません)
自分がやってたことが間違ってないと思えるのは嬉しい事ですね。
僕は童話をメインでやってて、童話のコンテストに何度か応募したことがありますが、全然ダメでした。
賞に応募する時は参考文献とか書かなくて良いと思いますが、書いてあっても全然問題ないと思いますよ。
賞に応募する作品は何度も何度も読み返して客観的に自分で判断すると良いかも知れませんね。
特に句読点など文章の書き方の基本に誤りがないように、誤字脱字がないようによーくチェックすると良いと思いますよ。
受かると良いですね。
いつも回答ありがとうございます。
〈私の作品について〉
同じ事例が不安になってたのが、同じ事例がある方が安心するようになりました。
前は既存作と似てること気にしてたんです。それが同じ事例がある方が安心する。つまり現実に私の考えた事例があるか不安で、同じ事例を探してました。(それで、初めてよしだひろさんの『空女の恋は三角はんぺん』この作品に出会いました)
専門書がいいのか小説を参考にして良いのか迷いました。
商業化されてるから、小説に書いてる事例も参考にしていいと思うけど。もし小説に書いてることが違ってたら色々それこそ、その作家はSNSなどで、叩かれるはずなので。→それこそ『フィクションです』と書けばいいのかもしれないですけどね。
よしださんが『商標』っておっしゃてましたが、『商標権があるか?』を調べてから実在する名前を使う場合はしたら良いのかな?と思いました。(よしださんの作品のアプリは名前を変えてるのかはわかりませんが。ネタバレになってはいけないので控えますね)(うーん、一つ一つのアプリやゲームの商標権を調べれるかはわかりませんが。あまり詳しくない分野です ※『ゲーム名 商標権』でネット検索しました。一応出てきました。でも、ネットのことって鵜呑みにしたらダメなんでしたね。)
アプリの名前は注意が必要ですけどね。
賞に応募して、もし万が一、出来がよくてそこら辺の修正がある場合は入選したあと、修正して世に出す(書籍化など)と思いますが。よく改題されてたりしますもんね。
専門家に取材の機会をもらえる場合もあった気します。
すみません。間違ってたこと言ってたら申し訳ないです。まだまだ未熟なので。
最後に専門家の解説や注意書きが付く場合もありますよね。書籍化する賞ならばの話ですが。
コメント続いてて鬱陶しかったら申し訳ないです。私だけですよね。コメントしてるの。嫌だったらやめますね。
商標などは本来は巻末などにコピーライトやトレードマークとして列挙しておけば本編中で使えるはずです。
僕としては基本的にリアル世界に存在する本当の名前は使いたくないと思ってます。なので架空の名前を考えている、と言うのが事実かも知れません。
ただ、例えばLINEとか書いたほうが可読性が高くなるならそれを使う事もありますよ。
障害や病気のことに関してはデリケートですよね。「しょうがいしゃ」を「障害者」と表記するか「障がい者」と表記するか、そこから問題になるほどです。
なので書く前に事実を知る事はとても大事ですよね。事実に基づいて書く事が大切で間違いや偏見は当事者に迷惑になりますからね。
因みに自治体が発行している障害者手帳は「障害者」と表記してあります。なので僕はそれにならって「障害者」と書きますが、それで気を悪くする方が少なからずいる事も知ってます。
その辺についてはしっかりしたガイドラインがないので深く考えてません。
Pixivの方の作品も読ませてもらってます。
青春って感じが良いですね。
(Pixivではコメントオフになってたのでこの場を借りて)
またよろしくお願いします。