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「まさか...同性を好きになるなんて...」

俺はごく普通の高校生。
毎日、通勤、通学で混雑している電車に乗って学校まで通っている。

特に、打ち込んでいるものはなく、友人と流行の話やゲームの話など、交わす、普通の高校生だ。

友人は、彼女を作ったりして青春を謳歌している。
それを羨ましいとは思っても、どこか自分には、縁遠いものだと思っていた。

時間があれば、バイトを入れて過ごし、いつか出会う人が現れてくるのかな?っていう程度のことだった。
初めて、恋だと気づいたのは、中学生。
思春期独特の年上への憧れも、時と一緒に薄まっていった。

それからも、気になる娘はいたけれど、思いを伝えることもなく、今まで過ごしてきた。
こんな恋愛に奥手な俺が恋をするのは、もっと大人になってからだと、自分のどこかで思っていた。

まさか、通学途中、しかも、電車の中。
それはまだ、いい。
この思いが恋だと気づいた相手。
それは、他校の制服を着た男子高校生だった。

いつものように、ただ、みているだけで良かった。
関わるつもりもなく、また、いつものように過ぎていくのだろうと思っていた。

彼を初めて見たのは、電車通学を始めた時。
元々、自転車で通っていた俺は、部活で怪我をして電車通学を余儀なくされた。
慣れない身体、慣れない電車での通学は、想像以上に大変だった。

「ハンカチを落としたよ」
駅まで来るのにも、すごい汗をかいていた俺は、ハンカチを使って首元の汗を拭いていた。
電車がホームに入って来たので近づこうとしていると、後ろから同年代らしい声で呼び止められた。

彼は、俺の落としたハンカチを拾って渡してくれる。
足の不自由な俺は、それがすごく助かった。
「暑いのに、大変だな」
そのまま、お礼を言うこともできず、電車に乗り込んでいった。
あれから、彼を探すようになった。
向こうの出入り口に、他校の制服を着ている集団が乗っていた。
特に騒ぐ出もなく、ただ、静かに乗っていたのだが、みんな、にじみ出てくるオーラで目立っていた。
噂では、この辺りで一番の進学校。
そして、恵まれた環境で育った子供が、自分の力で生活し見つめ直すことでも有名な学校だった。

恵まれた環境と言うだけあって、立ち振る舞いも完璧だった。
その中で、人より静かで、そして周囲に守られている人間がいた。
身長は俺と同じぐらい。
目鼻立ちの整った、男だった。
艶のある黒い髪、長めに伸ばしてそれを耳にかけている。
いつも、彼は本を読んでいた。
あの時の、彼だった。
文字を追う目元は、長いまつ毛が影を作っている。
ただ、あの時のお礼を言おうとしたけれど、あれから時は過ぎていた。
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