昇華混じりの雪柳 淡い恋の白い肌

香野ジャスミン

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「いや?
 翼のここは、俺を誘ってくるんだが…」
胸の頂を指の腹でこすると、翼の身体には、電流の様に快感が走った。
「あぁぁぁっ!」
身体を震わせて快感に耐えている翼を拓人は愛おしく思う。

もう、これ以上…待てない…

拓人は、最後の関所のように翼に問う。
「シャツを脱がせてもいい?」
翼が見上げながら、答える。
「…はい」

シャツを着ているだけだというのに、とても妖艶に思える。
それが、胸の様子が違うからとかではない。
翼の身体に触れられる。
それだけで、拓人は、興奮の渦に飲み込まれていった。

肩に指を滑り込ませ、
パサリ
とシャツを床に落とす。

一瞬、拓人と目があった。
噛みつくような口づけは、彼の想いの深さを感じているようだった。

翼の白く細い首筋は、何も隠すこともなく、その様子が、やけに独占欲を掻き立てられた。
拓人は鎖骨の辺りを、舐め、そして歯を立てて、跡をつける。
「――っ!」
目を開いてその衝撃を感じる。
「優しくできそうにない…」
翼の瞳が、自分を見つめている。
それだけで、高まる興奮を何とか抑えようとする。

ゆっくりとベッドに翼を横たえる。

自分は優しくできているだろうか…
それを図り知ることも難しい今の自分がいる。
少しずつ、けど手早く服を脱がしていく。

されるがままの翼は、恥じらいの方が勝っている。
微かに開ける瞳からは、熱く、欲する揺らめきがあった。
翼は、自分も、負けないほど、彼を求めていると気づく。

誰も受け入れたことのない場所は、花街の頃の習慣で回数は減った物の、いつでも受け入れるようにしている。
あの頃知らなかった体の熱は、慰め方を知った。
はじめは、その未知の感覚に、恐怖を感じていた。
こんな自分で、彼は満足してくれるだろうか…

この年まで、誰とも経験がないと彼はしらない。

「…夢…みたい…」

唇を何度も何度も、奪われる。
けれど、それでも、彼と離れたくなくて、彼を求めてしまう。
翼は、拓人の服を脱がせていく。
「はぁ、はぁ」
お互いの荒い息も、耳の端から快感へと変わっていく。

人は、快楽の波に飲み込まれると表現をするけれど、今、経験をしてその言葉の意味を知ったように思う。

拓人も、指先で翼の身体を確かめるように滑らせていく。
守ることができなかった身体。
拓人は、胸が切なさで溢れてきた。
「…・っつ…」
翼の細い身体を抱き寄せ肩に顔を埋める。
「…先輩?」
微かに震える拓人に気付き、彼を呼ぶ。

「…」
「俺を愛してくれますか?」
―!!
見下ろしている翼の真剣な瞳を見る。
傷つきやすい子をこれ以上、無防備にさせるわけにはいかない。
翼の瞳は、いつもまっすぐで、その裏では誰かが傷つくことを恐れている。

拓人はクニャリと笑う。
―!!
翼は、それを見て、ドキッとした。

「………っ!!!」
どんなに慣らしても体温まではついてこない。
その彼の体温を感じて、また身体の奥がドクドクとうごめいてくる。
ザワリザワリと追いかけてくる。
「…っぱい…先輩…」
熱で浮いてるのは、自分なのか、それとも、先輩なのか。
翼は、彼の想いと共に、受け入れている自分に幸福を感じる。

溢れてくる涙に、これ以上のない幸せをかみしめる。
嬉しい。
身体を小さくして彼を受け止める。
涙で揺れる景色の奥に、自分を見下ろして喜んでいる彼がいる。
翼は、彼の肩に手を置き、彼の情熱を身体いっぱいに受け止めようとする。
部屋には、水音と身体のぶつかる音でたくさんだ。

「…ごめ、俺…もたない…」
苦しそうに顔を歪める彼に頷く。
吐息の合間に、必死に答える。
「うん、先輩…」
-!!!!!
彼の動きが加速を増し、身体がおさえつけられているのに、浮いてしまいそうになる。
懸命に彼の肩に掴まり耐える。
―!!
大きく身体をしならせて、息が止まる。
-!!

その瞬間、拓人も翼も熱を放した。


「…拓人さん、俺。あなたの傍にいたいです」
-!!
翼からの申し出は彼の心が固まったということだ。
今回のことは、粗治療に等しいが、彼の心を掴めたのだから良しとしよう。

どんなにあがいても、この人以上に心から惹かれる人はいない。

拓人は翼の手を握る。

そして甲にキスを落とす。

「…たぶん、翼が帰ってこないから、鈴宮が色々と手配をしていそうだ」

嬉しそうに笑う彼は、何を思っているのだろう。
翼が不思議な顔をしていると拓人が苦笑する。
「彰さんと一緒に、たぶん、翼の荷物だけ片付けていると思う」
―!!
それは、なぜ?

ハッと気づく。

帰らなかったということは、拓人と一夜を過ごしたということだ。
拓人の顔を見る。
「どんなに回り道をしても、翼と俺は、惹かれる運命だったんだ」
―!!!!

サー
と、何かが消えていくように感じた。
拓人のその言葉は、翼の心を新しい物へと作り変えるほど、効果があった。

惹かれる運命…

翼は、嬉しくなった。
そこで、初めて心のどこにも迷いも恐れもないままで、喜んでいる自分を見つけたのだった。
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