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雪柳は、目を閉じ、腕を額に当てる。
「雪柳様・・・」
その声で、雪柳は起き上がり、男を見る。
「すみません、お名前を教えてもらってもいいですか?
なんとお呼びしたらいいのでしょう?」
男の名を聞き、先輩を探す・・・なんて、バカなことをしているのだろう。
雪柳の質問に、男は、
「鈴宮といいます」
その答えを聞き、また心の中で、呟く。
― 何も似てない ―
「そうですか。
鈴宮様と呼べばいいのでしょうか?」
雪柳は、一人の客として対応をしようとした。
だが、鈴宮は首を振り
「いいえ。
鈴宮と呼んでください」
色子は、基本、客を呼び捨てなどできない。
「では、鈴宮さんっとお呼びします」
雪柳の愛想笑いに、鈴宮は表情を変えずに頷く。
「雪柳様、鮫島が会いたいと言っております。
どうされますか?」
ビクッと身体を反応させてしまった。
身体を手で抱きしめ、嫌悪感に耐えながら、考える。
「断ったら、どうなるのでしょう?」
雪柳の質問に、鈴宮が
「今日は、なんとか許してもらえるでしょう。
ですが、明日からは何とも言えません」
その言葉に、思わずため息が零れる。
「あの・・・
服はこれしか?」
少し鈴宮は、考える仕草をし、
「浴衣の上に丹前をお持ちしましょう。
それとも、半纏がよろしいか?」
「半纏でお願いします」
少しでも、鮫島と会うのなら、着る物を増やして肌に触れられたくなかった。
用意してもらった半纏は、女性用。
それを着て鮫島と会うことにした。
「雪柳。
お前は、私がこれから面倒を見る。
今日はいいが、明日からしっかりと励むといい。
それにしても、浴衣姿もまた、色っぽい・・・
化粧などしなくても、美しい・・・」
雪柳は、舐めまわす視線に耐え、そして鮫島に質問をする。
「鮫島様。
あの・・父の病院代と、母の葬儀代はいくらに・・・」
その問いを聞いた瞬間、鮫島が雰囲気を変えた。
「金か・・・
雪柳は、とても美しい。
どうだろう。
ここでは、花街と違い、人が出入りしやすい。
もちろん、身体で払ってもいいんだが・・・」
そう言って、鮫島は、雪柳に近付く。
ニヤニヤとしたその表情は、欲を含ませていると考えていいだろう。
ただ、雪柳も譲れない物があった。
「鮫島様。
花街での、色子を出す方法を間違われると、大変なことになることをご存知ですか?」
雪柳のいつのも従順な様子ではなく、癇に障るような物言いに、鮫島がカチンときた。
目つきを鋭くして、いつもの機嫌のいい顔を投げ捨てて本性を現す。
これが、本当の鮫島の姿。
自分の欲のために、感情をさらけ出して、周囲を怯えさせる。
「そんなもん、知るもんか!!
お前はな、母親の代わりなんだよっ!!
男なんぞに、生まれてから!
女ならっ!女なら思いっきりかわいがってやったのにっ!!」
暴言を吐かれているのにも関わらず、雪柳の表情は、変わらない。
憂いでもあるのかと、鈴宮が様子を見ているが、表情を変えない。
雪柳は、とても冷静だった。
むしろ、想像通りである。
あれほど、母親に似ている、母のようだと言われれば気づく。
そうか、やはりこの男は、母を想っていたか。
そう思っていた。
ただ、次の言葉に雪柳が、衝撃を受ける。
「お前が、母親に似ているのに、女じゃないのが、悪いんだ。
フフフ・・・ヒヒ・・・
まぁ、いいでは、ないか・・・・
もう、あの女はいない。
もっと、早く私の元に来ていればいいものを、お前の父親なんぞに誑かされてから!!
しかも、役に立たない、男を産みやがって!!
だから、私が親切にも、てをだしたんだっ。
お前の父親だって、それにお前の母親だって!!!
傑作だよなぁ!」
そう言って、鮫島が雪柳の顔に自分の顔を近づける。
キツイ体臭、臭い口臭、そして、それを隠そうと振りまいたようなキツイ香水。
顔を思わずゆがめてしまう。
そして、鮫島が耳の傍で小さい声で囁く。
「雪柳、あのサプリはいいだろう・・・
どうだ?
自分の身体が女になっていく姿は」
!!!!!
雪柳は目を見開いた。
「…えっ!?」
その驚く様子を見て、鮫島は誇らしげに話をする。
「お前、気付いてないのか?
あれは、男が飲むと女のような身体になるのだ。
少し飲むだけでは、効果はない。
もう、お前は何年も飲んでいる。
きつめのものだ。
巷では、手に入らない。
よかったじゃないか。
死ぬまで、お前はその身体だ。
男に生まれたのは、もう許してやる。
代わりに、女になればいい。
女はいい・・・
柔らかい。
上で喘ぐ姿は、男心をくすぐられる。
お前の母親のようになっ!!
ひひひ・・・
なに、心配などいらん。
私が、この私が、しっかりとかわいがってやる」
「雪柳様・・・」
その声で、雪柳は起き上がり、男を見る。
「すみません、お名前を教えてもらってもいいですか?
なんとお呼びしたらいいのでしょう?」
男の名を聞き、先輩を探す・・・なんて、バカなことをしているのだろう。
雪柳の質問に、男は、
「鈴宮といいます」
その答えを聞き、また心の中で、呟く。
― 何も似てない ―
「そうですか。
鈴宮様と呼べばいいのでしょうか?」
雪柳は、一人の客として対応をしようとした。
だが、鈴宮は首を振り
「いいえ。
鈴宮と呼んでください」
色子は、基本、客を呼び捨てなどできない。
「では、鈴宮さんっとお呼びします」
雪柳の愛想笑いに、鈴宮は表情を変えずに頷く。
「雪柳様、鮫島が会いたいと言っております。
どうされますか?」
ビクッと身体を反応させてしまった。
身体を手で抱きしめ、嫌悪感に耐えながら、考える。
「断ったら、どうなるのでしょう?」
雪柳の質問に、鈴宮が
「今日は、なんとか許してもらえるでしょう。
ですが、明日からは何とも言えません」
その言葉に、思わずため息が零れる。
「あの・・・
服はこれしか?」
少し鈴宮は、考える仕草をし、
「浴衣の上に丹前をお持ちしましょう。
それとも、半纏がよろしいか?」
「半纏でお願いします」
少しでも、鮫島と会うのなら、着る物を増やして肌に触れられたくなかった。
用意してもらった半纏は、女性用。
それを着て鮫島と会うことにした。
「雪柳。
お前は、私がこれから面倒を見る。
今日はいいが、明日からしっかりと励むといい。
それにしても、浴衣姿もまた、色っぽい・・・
化粧などしなくても、美しい・・・」
雪柳は、舐めまわす視線に耐え、そして鮫島に質問をする。
「鮫島様。
あの・・父の病院代と、母の葬儀代はいくらに・・・」
その問いを聞いた瞬間、鮫島が雰囲気を変えた。
「金か・・・
雪柳は、とても美しい。
どうだろう。
ここでは、花街と違い、人が出入りしやすい。
もちろん、身体で払ってもいいんだが・・・」
そう言って、鮫島は、雪柳に近付く。
ニヤニヤとしたその表情は、欲を含ませていると考えていいだろう。
ただ、雪柳も譲れない物があった。
「鮫島様。
花街での、色子を出す方法を間違われると、大変なことになることをご存知ですか?」
雪柳のいつのも従順な様子ではなく、癇に障るような物言いに、鮫島がカチンときた。
目つきを鋭くして、いつもの機嫌のいい顔を投げ捨てて本性を現す。
これが、本当の鮫島の姿。
自分の欲のために、感情をさらけ出して、周囲を怯えさせる。
「そんなもん、知るもんか!!
お前はな、母親の代わりなんだよっ!!
男なんぞに、生まれてから!
女ならっ!女なら思いっきりかわいがってやったのにっ!!」
暴言を吐かれているのにも関わらず、雪柳の表情は、変わらない。
憂いでもあるのかと、鈴宮が様子を見ているが、表情を変えない。
雪柳は、とても冷静だった。
むしろ、想像通りである。
あれほど、母親に似ている、母のようだと言われれば気づく。
そうか、やはりこの男は、母を想っていたか。
そう思っていた。
ただ、次の言葉に雪柳が、衝撃を受ける。
「お前が、母親に似ているのに、女じゃないのが、悪いんだ。
フフフ・・・ヒヒ・・・
まぁ、いいでは、ないか・・・・
もう、あの女はいない。
もっと、早く私の元に来ていればいいものを、お前の父親なんぞに誑かされてから!!
しかも、役に立たない、男を産みやがって!!
だから、私が親切にも、てをだしたんだっ。
お前の父親だって、それにお前の母親だって!!!
傑作だよなぁ!」
そう言って、鮫島が雪柳の顔に自分の顔を近づける。
キツイ体臭、臭い口臭、そして、それを隠そうと振りまいたようなキツイ香水。
顔を思わずゆがめてしまう。
そして、鮫島が耳の傍で小さい声で囁く。
「雪柳、あのサプリはいいだろう・・・
どうだ?
自分の身体が女になっていく姿は」
!!!!!
雪柳は目を見開いた。
「…えっ!?」
その驚く様子を見て、鮫島は誇らしげに話をする。
「お前、気付いてないのか?
あれは、男が飲むと女のような身体になるのだ。
少し飲むだけでは、効果はない。
もう、お前は何年も飲んでいる。
きつめのものだ。
巷では、手に入らない。
よかったじゃないか。
死ぬまで、お前はその身体だ。
男に生まれたのは、もう許してやる。
代わりに、女になればいい。
女はいい・・・
柔らかい。
上で喘ぐ姿は、男心をくすぐられる。
お前の母親のようになっ!!
ひひひ・・・
なに、心配などいらん。
私が、この私が、しっかりとかわいがってやる」
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