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雪柳が目を覚ますと、辺りは薬品の匂いや機械の音がしていた。
―・・・病院
花街には、このような場所はない。
目を開けると、まだ、朧気に様子が分かる。
長く伸ばした髪を、客の前では一度も下ろしたことはない。
だが、今は、耳の辺りに束ねられている。
そっと、髪に触れる。
―・・・夢・・
記憶に残る、その夢は、目の前で前田に花街を出れると言われたこと。
長年の想い人が、その願いを叶えてくれると・・・
でも、夢は良いことばかりはうつしてくれない。
鮫島の姿もあった。
とても願望を描いたようなリアルな夢だった。
雪柳は、腕に付いている点滴の針を抜いた。
ポタリポタリと、点滴の薬剤が布に吸われていく。
ふらりと、冷たい床に素足をおろす。
冷たい・・・気持ちがいい
身体のだるさと身体の熱さ、そして、頭を起こすと発生するめまいを我慢しながら、部屋の扉をあけた。
辺りは、人の気配がなく、遠くでざわざわと音がする。
雪柳は、自分が院内着だということも気付かず、廊下を歩く。
正面から、モップなどを持った清掃の人らしき人が向かってくるのが分かる。
どうしよう・・・
ガラガラと近づく音に、雪柳は、先ほどまでいた部屋に戻ろうと踵をかえす。
―ドン!
と、背中を押され、部屋の床に倒れる。
目隠しをされ、布を咥えさせられ、後ろに手を縛られる。
足も動かぬように、縛られ、雪柳は、身体を持ち上げられた。
そして、狭い場所に入れられ、上から覆われた。
「静かに」
雪柳にかけられた言葉に、身体が固まるのを感じた。
時間の感覚がわからない。
自分は、今、どれくらいあの部屋にいたのだろう。
それより、これからどうするのだろう。
雪柳は、縛られた状態で車に乗せられた。
体調が悪い時に、振動のある物に乗せられ、雪柳は、限界だった。
布を咥えられた状態で、とうとう吐いてしまう。
不快な臭いが、車内に充満する。
前の座席で何かを言われたように思う。
車を停められ、中から引きずりおろされる。
地面は、アスファルト。
吐いた場所を洗い流すために、容赦なく水をかけられる。
多分、ペットボトルのような物で、ドバドバと。
「ゴホッ! ハッ!」
遠慮のない浴びせられる水が気管に入り、激しく咽せる。
「きったねぇな。
おいっ!
お前、本当に男か?」
一人の男の声がする。
病院で言葉をかけられた声とは少し違うように思える。
この男、緊張感から解放されたかのように、話をはじめる。
「あんちゃんもよぉ
この足を見てみろ。
女でも、なかなかこんなのは、いねないぜ?」
品のない言葉に、まるで鮫島を雪柳は思い出した。
もう一人、いるようで男は話しかけるが、そちらは、反応がない。
「余計なことは、するな」
―・・病院で声をかけられた男の声だ。
「けっ。
バレなきゃいいんだよっ
おいっ。
へへ・・・
しゃぶれよっ」
―・・・病院
花街には、このような場所はない。
目を開けると、まだ、朧気に様子が分かる。
長く伸ばした髪を、客の前では一度も下ろしたことはない。
だが、今は、耳の辺りに束ねられている。
そっと、髪に触れる。
―・・・夢・・
記憶に残る、その夢は、目の前で前田に花街を出れると言われたこと。
長年の想い人が、その願いを叶えてくれると・・・
でも、夢は良いことばかりはうつしてくれない。
鮫島の姿もあった。
とても願望を描いたようなリアルな夢だった。
雪柳は、腕に付いている点滴の針を抜いた。
ポタリポタリと、点滴の薬剤が布に吸われていく。
ふらりと、冷たい床に素足をおろす。
冷たい・・・気持ちがいい
身体のだるさと身体の熱さ、そして、頭を起こすと発生するめまいを我慢しながら、部屋の扉をあけた。
辺りは、人の気配がなく、遠くでざわざわと音がする。
雪柳は、自分が院内着だということも気付かず、廊下を歩く。
正面から、モップなどを持った清掃の人らしき人が向かってくるのが分かる。
どうしよう・・・
ガラガラと近づく音に、雪柳は、先ほどまでいた部屋に戻ろうと踵をかえす。
―ドン!
と、背中を押され、部屋の床に倒れる。
目隠しをされ、布を咥えさせられ、後ろに手を縛られる。
足も動かぬように、縛られ、雪柳は、身体を持ち上げられた。
そして、狭い場所に入れられ、上から覆われた。
「静かに」
雪柳にかけられた言葉に、身体が固まるのを感じた。
時間の感覚がわからない。
自分は、今、どれくらいあの部屋にいたのだろう。
それより、これからどうするのだろう。
雪柳は、縛られた状態で車に乗せられた。
体調が悪い時に、振動のある物に乗せられ、雪柳は、限界だった。
布を咥えられた状態で、とうとう吐いてしまう。
不快な臭いが、車内に充満する。
前の座席で何かを言われたように思う。
車を停められ、中から引きずりおろされる。
地面は、アスファルト。
吐いた場所を洗い流すために、容赦なく水をかけられる。
多分、ペットボトルのような物で、ドバドバと。
「ゴホッ! ハッ!」
遠慮のない浴びせられる水が気管に入り、激しく咽せる。
「きったねぇな。
おいっ!
お前、本当に男か?」
一人の男の声がする。
病院で言葉をかけられた声とは少し違うように思える。
この男、緊張感から解放されたかのように、話をはじめる。
「あんちゃんもよぉ
この足を見てみろ。
女でも、なかなかこんなのは、いねないぜ?」
品のない言葉に、まるで鮫島を雪柳は思い出した。
もう一人、いるようで男は話しかけるが、そちらは、反応がない。
「余計なことは、するな」
―・・病院で声をかけられた男の声だ。
「けっ。
バレなきゃいいんだよっ
おいっ。
へへ・・・
しゃぶれよっ」
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