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Life、意外と人生は面白い。
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「ねぇ、お兄さん...。そんなに酔っぱらって大丈夫?」
目の前に、極上の男が現れた。
この日は、嫌なことがたくさんあった。
取引先のオッサンから尻を触られ、いつもの場所でしつこく声をかけてくる奴が取引先でばったり遭遇。名刺を渡すところまではいかなかったけれど、いい気分ではなかった。おまけに、同僚から飲みの誘いについて行けば、合コン。正直、おっぱいなんて関心なんて一つもない。なのに、なぜか寄ってくるし同僚の視線は痛いし…。
途中で抜け出して一人で呑んだ方が絶対いいっ!と、店に入ったまではよかった。
結果から言うと、旨かったっ!
料理も酒もタイミングも。
別に講釈をたれるわけじゃないけれど、自分にあった店を見つけた。
お蔭で一日の嫌なことがどっかに行き、気分は最高だ。
で、呑み過ぎた...。
目の前にいる極上の男の出現に、まぁ、現実ではないなと始めから夢だと思った俺は
「あれー。すげぇ。
この世の中に、イケメンでやさしーおにーさんがいるー。
彼氏になってー...。」
はい、やらかしました。
だって、今まで一度もこんな風に声なんてかけられたことなんてない。
しかも、声をかけてくれた人がめっちゃイケメンだった。
これだ。
ファーストインパクト。
これがいつもの俺を崩壊させてしまったのだ、間違いはないだろう。
柔らかい笑顔に聞いていて心地いい低いボイス、マッチョまではいかないけど、いい身体してそう...。あぁ...ほっぺまですべすべしてそうだわ、これ完璧。
イケメンは、クスクス笑って
「ありがとう、嬉しい。ねぇ、お兄さん、すごく酔っぱらってる?
どうしよう...、俺、急いで家に帰らないといけないんだよね...。」
はいはい、いいよ、このまま、置いて帰ってくれて。
あんたを見れただけで、しばらく幸せだわ、俺。
イケメンは時間を気にしているようで、落ち着きがない。
こういう人の慌ててる姿も、眼福物だわ。
はい、もう、天国行き確定、今夜はいい夢みれる。
「残念だけど、また、ゆっくりはなそーね、ばいばーい」
こんないい男を困らせたくないから、聞き分けのいい人間になった。
「...そう?じゃぁ、お兄さん、気を付けて帰ってね...。」
そういって、イケメンは俺の手をギュッと握りしめてくれたあと、頭をそっと撫でてくれた。
はう...。
ー!
すごく嬉しかった。
こんな風に優しくしてもらったことも、ここ最近じゃなかったし。
フワッと笑って「うん、ありがとう」って、答えておいた。
それじゃって言って歩いて行ったイケメン。
やっぱり後ろ姿までイケメンなんだなぁ...って、思いながら一休みしようと、近くの電柱に背中を預けてしゃがみ込んだ。
あーいうイケメンにどうせなら、自分の初めてをもらってもらいたいなぁ...。
優しく、時間をかけて解かしてもらってグズグズで足腰なんて次の日とか、使え物にならなくてもいいから、御座なりとか、そういうものなんて不必要で。このまま、誰とも恋愛とかもできないまま死ぬんだったら、身体だけでも...満たされたい...。
なんて、極上すぎる自分のタイプに出会ってしまった日は、いつも自分を保つことができなかったようだ。
考えているうちに、だんだん眠たくなってきて、あ、やべ、俺って酔っぱらうと眠気が来るんだった...と、思ったらそのまま眠ってた。
「はぁ...、ねぇ...まだ起きない?もっとがいいのかな?」
ー!?
聞こえてきた声と同時に身体の奥に今まで経験したことのない痛みに近い甘い刺激に身体がびくんとなった。
あれ?
目を開けると、真っ白なシーツが見えた。
いつもは仰向けに寝てるから今日はえらく寝相が悪いのか?と、思っていたけど、腰のあたりに自分のじゃない誰かの気配がした。
「あのまんま、寝てたら知らない奴に持って帰られてたかもしれないんだよ?
ほんと、無防備過ぎだろ...。ほら、こっち向いて...っ!?」
ー!!!?
「っ!」
身体を起こされて自分がすでに全裸で尻を突き出した状態だって分かった。おまけに、起こされた瞬間に目があった。
ー!
あ、イケメン…。
「あ、起きてんじゃん。やっほー、俺の事、憶えてる?」
やっぱ、イケメンだ。
あまりにも驚きすぎて言葉なんて出てこない。
とりあえず、壊れた玩具みたいに何度も頷いた。
あれ?でも、家に帰らないとダメだからって歩いていったんじゃ...。
ー!
イケメンは、俺の胸の飾りを指先でクニクニとつまんでくる。
ー!
ビクン、ビクンと身体が勝手に反応するし、「ひやぁ...ふぅぅ...ン」なんて、はしたない声がこぼれ出る。
「やっぱり起きてる方がいいね、かわいい。
あのまま、置いて帰ろうとおもったけど、お兄さん、いい顔して笑うんだもん。
俺、あの顔に堕ちちゃった。
気になって引き返したら電柱とお友達になってんじゃん、しかも、独り言言ってんの。
聞けばなんか嬉しいこといってくれてるし、これは持って帰らないとって、もってかえってきちゃった。だから、ここ、俺の家。」
だからなのか。
ホテルとかじゃなさそうだし、使ってる洗剤の匂いが微かにしてる。
あ、この匂いのヤツ、俺も好き。
話している間もチュッチュと身体にキスしてくる。視界にちらほらと入ってくるアレも2人とも、ガッチガチになってて。
「ほら、起きたんなら、俺、もう、お兄さんの中に挿れたい...」
うつ伏せにさせられ、誰にも見せたことのない場所を割り広げられる。
そこはもう、何かを塗りたくられていて甘い痺れのようにジンジンと疼いている。
ー!?
え、ちょっと、待ってっ!
「まっ、」
「待てない。だって、ずっと寝てる間も、俺、挿れたいのに我慢してたんだよ?
指だけはほぐすのに入れてたけど、そんなの我慢できるわけないじゃん。
ねぇ、いいでしょ?」
身体を撫でる手は優しくて、見せることも身体を預けることも本当は怖いはずなのに、恐怖心は一つもなかった。。
このイケメンになら全てを預けてもいいかもって思った。
「...初めて...だけど、いいよ。
あんたにあげる。...だけど、今だけでも...優しく...してね...」
シーツを握り締めている手が震えているのは、気のせい。
イケメンは、こういうの、慣れてるのかもしれない。
いつかこういう風に誰かと触れてみたい。
だけど、それが叶う未来はない。
そう、自分の人生を描いていた俺には転がり込んできたチャンス。
たぶん、もう、二度とこんなことはないだろう。
夢、みさせてくれるだけでもいい。
「...西島 亨司。亨司って、呼んで。
あと、初めてなんだったら、大切にする。
今日だけじゃないよ、俺、お兄さんのこと、好きになっちゃった。
覚悟してね...。」
背中に温もりを感じるだけで不安がなくなるのだと初めて知った。
今だけでも、いい。
後悔なんてしないだろう。
だから、迷いなど一つもなく、全てを託した。
身体の熱が残る中、夜明けの気配を感じ目が覚めた。
隣に眠っているイケメンは、抱きしめるように寝ている。
西島...さんだっけ。
自分と同じぐらいの歳の人間に、こういう風に出会うことなんて貴重な夜だった。
寝ている顔も整っていて見ていて飽きない。
頬にそっと触れる。
この人が初めての人。
何度も確かめるように気遣ってくれた。
幸せだった。
彼を起こさないようにそっとベッドから降りる。
下半身の違和感はあるけれど、動けないわけではない。
話で聞いていた初めてはどれも悲惨だったけれど、自分は大切にされたのだとわかる。
彼がベッドの上で言った戯言。
この歳まで生きてきたのだ、それなりに弁えている。
仕事用の鞄の中からメモ帳を取り出し、書き残す。
《素敵な時間を ありがとう。》
たったそれだけが、自分の存在のように。
彼のマンションを出て驚く。
自分の住んでいるマンションだった。
築25年のマンションは住民の年齢層が幅広い。
年輩の人もいれば、新婚の人もいる。
一生一人で暮らす覚悟をするために2年前に勢いで買った中古物件。
同じマンションでもリフォームをして内装が別世界のようになっている家もあると聞いたことがある。それがまさに彼の部屋だった。
どうしよう…。もしかして、会うかもしれない。
いや、もしかすると、すでに会ったことがあるのかもしれない。
けれど、彼に変な期待をするのをやめておこうと思った。
もう、夢を見る歳じゃない。
出会ってしまったら無視をしよう。
付きまとわれたとしても、しばらく耐えれば何とかなるだろうし、なるようになれってそれ以上、難しく考えるのを止めた。
今日が休みでよかった。
今日一日、身体を休めて気分を入れ替えよう。
昨日のことは、大切にして、それを糧に生きていこう。
無理矢理そう自分を言い聞かせていたというのに...。
まじか。まじなのか。
休み明けの朝礼で、俺はとんでもない爆弾を落とされることになる。
「初めまして、本日からお世話になります。西島 亨司です」
連れてきた社長本人が困った顔で紹介した人物を見て、呆然とした。
「えっと、一応、私の息子。
一応、ここでは新人だけど、他の会社で修行して今日からここで働くらしいよ。
私も今日知ったんだけどね。
ねぇ、どういうこと、課長。」
秘書課の課長は少々曲者で、仕事のできる人間を社長に相談なく他社から勝手に引き抜いてくる天才。
自分も数年前にいろいろあって引き抜かれた側だ。
社長の子どもって言ってたけど、あれ?
社長、未婚の女社長って売りでしたけど...チガッタンデスネ。
社長をチラリとみると、なんだか諦めた顔をしている。
「はぁ...。
私、未婚って言ってたけど、実は子供いるのよ。
だから、葉鳥君のこと、なんだかほっとけなくってねぇ。
出来が良くて自慢の息子。
だけどね、あの子、いろいろとあるんだって。
私は応援してるんだけど、難しいんだって。
ね、かっこいいでしょー...。
葉鳥くん、あーいうの、大好物でしょ。」
横に来てこうやって小言を溢すのがうちの社長のクセ。
いつものように聞き手にまわっていたら、痛いところを付かれてしまった。
社長には、すでに自分のマイノリティーを打ち明け済みだ。
実の親にはすでに縁を切られて一人で生きてきた自分にとって数少ない理解者だ。
「葉鳥君、あの子と面識あんの?
この部屋に入ってきて一番に、あなたのことをあの子、聞いて来たんだけど。
ほんと、変わってるわ。
あの子が他人に関心を持つことなんて滅多にないのよ?」
ニヤニヤがとまらない社長。
そして、社長の変な気遣いで彼の教育係を自分がし、あっという間に彼の恋人の座に収まってしまった。変な所で器用と言うしかないだろう。
しかも、歳が自分より上だった。
「あー、これで、心配事、なくなったわー。
一人息子は同性愛者だし、いくら待っても良い人を紹介してこないし。
折角、理解してくれる母親がいるっていうのに、なにをボケーっとしてんのよって思ったの。
気になってる人がいるとは聞いてたのよ?同じマンションの人だっていうから、どんな人かなーって、聞いたら、一番に浮かんだのが葉鳥君だったの。
で、葉鳥君も同じじゃない。
浮かれた話も聞かないし、誰も良い人いないのかなーって思ってたの。
もう、この歳になると、ほっとけなくなるのよ。
とりあえず、好きとかそういう面倒な感情は後回しでもいいからさ?
せめて、友達ぐらいになってくれてもいいかなぁって思ってたんだけど。
まーさーかーねぇ。
いつの間にか、くっ付いてんだもんっ!
驚くわよーっ!」
と、目の前でおいしそうにお酒を飲んでいる社長。関係を社長も知っていて温かく見守られてる、そんな俺たちだ。
「葉鳥さん、今日はうちに泊まりますよね。」
いや、マンション同じだしな、わざわざ、泊まらなくてもいいと思うんだけど、「いちゃいちゃしたいんです」って、真剣な顔で言われてもな。
ってか、母親が目の前にいるっていうのに、こんな話...。
ちらりと社長を見ると、
「気にしないでー。むしろ、もっとやれーって感じ。いいよ、キスしてもー」
ー!?
「っ!?しませんしっ!」
楽しそうに自分たちを見ている社長に呆れてしまった。
だけど、自分の中で何かが変わろうとしていた。
未来の自分の隣に誰かがいてくれる。
そう思えるだけで、楽しみだ。
「葉鳥さん、もう、一緒に住みません?」って、同棲をお願いされたり、指輪の話をよくするなと思っていたら2年後にはパートナーとしてプロポーズされたり...。
出会うまでは何も楽しみがなかった自分にこんな日がくるなんて...。
人生は、いろいろとあって楽しい。
目の前に、極上の男が現れた。
この日は、嫌なことがたくさんあった。
取引先のオッサンから尻を触られ、いつもの場所でしつこく声をかけてくる奴が取引先でばったり遭遇。名刺を渡すところまではいかなかったけれど、いい気分ではなかった。おまけに、同僚から飲みの誘いについて行けば、合コン。正直、おっぱいなんて関心なんて一つもない。なのに、なぜか寄ってくるし同僚の視線は痛いし…。
途中で抜け出して一人で呑んだ方が絶対いいっ!と、店に入ったまではよかった。
結果から言うと、旨かったっ!
料理も酒もタイミングも。
別に講釈をたれるわけじゃないけれど、自分にあった店を見つけた。
お蔭で一日の嫌なことがどっかに行き、気分は最高だ。
で、呑み過ぎた...。
目の前にいる極上の男の出現に、まぁ、現実ではないなと始めから夢だと思った俺は
「あれー。すげぇ。
この世の中に、イケメンでやさしーおにーさんがいるー。
彼氏になってー...。」
はい、やらかしました。
だって、今まで一度もこんな風に声なんてかけられたことなんてない。
しかも、声をかけてくれた人がめっちゃイケメンだった。
これだ。
ファーストインパクト。
これがいつもの俺を崩壊させてしまったのだ、間違いはないだろう。
柔らかい笑顔に聞いていて心地いい低いボイス、マッチョまではいかないけど、いい身体してそう...。あぁ...ほっぺまですべすべしてそうだわ、これ完璧。
イケメンは、クスクス笑って
「ありがとう、嬉しい。ねぇ、お兄さん、すごく酔っぱらってる?
どうしよう...、俺、急いで家に帰らないといけないんだよね...。」
はいはい、いいよ、このまま、置いて帰ってくれて。
あんたを見れただけで、しばらく幸せだわ、俺。
イケメンは時間を気にしているようで、落ち着きがない。
こういう人の慌ててる姿も、眼福物だわ。
はい、もう、天国行き確定、今夜はいい夢みれる。
「残念だけど、また、ゆっくりはなそーね、ばいばーい」
こんないい男を困らせたくないから、聞き分けのいい人間になった。
「...そう?じゃぁ、お兄さん、気を付けて帰ってね...。」
そういって、イケメンは俺の手をギュッと握りしめてくれたあと、頭をそっと撫でてくれた。
はう...。
ー!
すごく嬉しかった。
こんな風に優しくしてもらったことも、ここ最近じゃなかったし。
フワッと笑って「うん、ありがとう」って、答えておいた。
それじゃって言って歩いて行ったイケメン。
やっぱり後ろ姿までイケメンなんだなぁ...って、思いながら一休みしようと、近くの電柱に背中を預けてしゃがみ込んだ。
あーいうイケメンにどうせなら、自分の初めてをもらってもらいたいなぁ...。
優しく、時間をかけて解かしてもらってグズグズで足腰なんて次の日とか、使え物にならなくてもいいから、御座なりとか、そういうものなんて不必要で。このまま、誰とも恋愛とかもできないまま死ぬんだったら、身体だけでも...満たされたい...。
なんて、極上すぎる自分のタイプに出会ってしまった日は、いつも自分を保つことができなかったようだ。
考えているうちに、だんだん眠たくなってきて、あ、やべ、俺って酔っぱらうと眠気が来るんだった...と、思ったらそのまま眠ってた。
「はぁ...、ねぇ...まだ起きない?もっとがいいのかな?」
ー!?
聞こえてきた声と同時に身体の奥に今まで経験したことのない痛みに近い甘い刺激に身体がびくんとなった。
あれ?
目を開けると、真っ白なシーツが見えた。
いつもは仰向けに寝てるから今日はえらく寝相が悪いのか?と、思っていたけど、腰のあたりに自分のじゃない誰かの気配がした。
「あのまんま、寝てたら知らない奴に持って帰られてたかもしれないんだよ?
ほんと、無防備過ぎだろ...。ほら、こっち向いて...っ!?」
ー!!!?
「っ!」
身体を起こされて自分がすでに全裸で尻を突き出した状態だって分かった。おまけに、起こされた瞬間に目があった。
ー!
あ、イケメン…。
「あ、起きてんじゃん。やっほー、俺の事、憶えてる?」
やっぱ、イケメンだ。
あまりにも驚きすぎて言葉なんて出てこない。
とりあえず、壊れた玩具みたいに何度も頷いた。
あれ?でも、家に帰らないとダメだからって歩いていったんじゃ...。
ー!
イケメンは、俺の胸の飾りを指先でクニクニとつまんでくる。
ー!
ビクン、ビクンと身体が勝手に反応するし、「ひやぁ...ふぅぅ...ン」なんて、はしたない声がこぼれ出る。
「やっぱり起きてる方がいいね、かわいい。
あのまま、置いて帰ろうとおもったけど、お兄さん、いい顔して笑うんだもん。
俺、あの顔に堕ちちゃった。
気になって引き返したら電柱とお友達になってんじゃん、しかも、独り言言ってんの。
聞けばなんか嬉しいこといってくれてるし、これは持って帰らないとって、もってかえってきちゃった。だから、ここ、俺の家。」
だからなのか。
ホテルとかじゃなさそうだし、使ってる洗剤の匂いが微かにしてる。
あ、この匂いのヤツ、俺も好き。
話している間もチュッチュと身体にキスしてくる。視界にちらほらと入ってくるアレも2人とも、ガッチガチになってて。
「ほら、起きたんなら、俺、もう、お兄さんの中に挿れたい...」
うつ伏せにさせられ、誰にも見せたことのない場所を割り広げられる。
そこはもう、何かを塗りたくられていて甘い痺れのようにジンジンと疼いている。
ー!?
え、ちょっと、待ってっ!
「まっ、」
「待てない。だって、ずっと寝てる間も、俺、挿れたいのに我慢してたんだよ?
指だけはほぐすのに入れてたけど、そんなの我慢できるわけないじゃん。
ねぇ、いいでしょ?」
身体を撫でる手は優しくて、見せることも身体を預けることも本当は怖いはずなのに、恐怖心は一つもなかった。。
このイケメンになら全てを預けてもいいかもって思った。
「...初めて...だけど、いいよ。
あんたにあげる。...だけど、今だけでも...優しく...してね...」
シーツを握り締めている手が震えているのは、気のせい。
イケメンは、こういうの、慣れてるのかもしれない。
いつかこういう風に誰かと触れてみたい。
だけど、それが叶う未来はない。
そう、自分の人生を描いていた俺には転がり込んできたチャンス。
たぶん、もう、二度とこんなことはないだろう。
夢、みさせてくれるだけでもいい。
「...西島 亨司。亨司って、呼んで。
あと、初めてなんだったら、大切にする。
今日だけじゃないよ、俺、お兄さんのこと、好きになっちゃった。
覚悟してね...。」
背中に温もりを感じるだけで不安がなくなるのだと初めて知った。
今だけでも、いい。
後悔なんてしないだろう。
だから、迷いなど一つもなく、全てを託した。
身体の熱が残る中、夜明けの気配を感じ目が覚めた。
隣に眠っているイケメンは、抱きしめるように寝ている。
西島...さんだっけ。
自分と同じぐらいの歳の人間に、こういう風に出会うことなんて貴重な夜だった。
寝ている顔も整っていて見ていて飽きない。
頬にそっと触れる。
この人が初めての人。
何度も確かめるように気遣ってくれた。
幸せだった。
彼を起こさないようにそっとベッドから降りる。
下半身の違和感はあるけれど、動けないわけではない。
話で聞いていた初めてはどれも悲惨だったけれど、自分は大切にされたのだとわかる。
彼がベッドの上で言った戯言。
この歳まで生きてきたのだ、それなりに弁えている。
仕事用の鞄の中からメモ帳を取り出し、書き残す。
《素敵な時間を ありがとう。》
たったそれだけが、自分の存在のように。
彼のマンションを出て驚く。
自分の住んでいるマンションだった。
築25年のマンションは住民の年齢層が幅広い。
年輩の人もいれば、新婚の人もいる。
一生一人で暮らす覚悟をするために2年前に勢いで買った中古物件。
同じマンションでもリフォームをして内装が別世界のようになっている家もあると聞いたことがある。それがまさに彼の部屋だった。
どうしよう…。もしかして、会うかもしれない。
いや、もしかすると、すでに会ったことがあるのかもしれない。
けれど、彼に変な期待をするのをやめておこうと思った。
もう、夢を見る歳じゃない。
出会ってしまったら無視をしよう。
付きまとわれたとしても、しばらく耐えれば何とかなるだろうし、なるようになれってそれ以上、難しく考えるのを止めた。
今日が休みでよかった。
今日一日、身体を休めて気分を入れ替えよう。
昨日のことは、大切にして、それを糧に生きていこう。
無理矢理そう自分を言い聞かせていたというのに...。
まじか。まじなのか。
休み明けの朝礼で、俺はとんでもない爆弾を落とされることになる。
「初めまして、本日からお世話になります。西島 亨司です」
連れてきた社長本人が困った顔で紹介した人物を見て、呆然とした。
「えっと、一応、私の息子。
一応、ここでは新人だけど、他の会社で修行して今日からここで働くらしいよ。
私も今日知ったんだけどね。
ねぇ、どういうこと、課長。」
秘書課の課長は少々曲者で、仕事のできる人間を社長に相談なく他社から勝手に引き抜いてくる天才。
自分も数年前にいろいろあって引き抜かれた側だ。
社長の子どもって言ってたけど、あれ?
社長、未婚の女社長って売りでしたけど...チガッタンデスネ。
社長をチラリとみると、なんだか諦めた顔をしている。
「はぁ...。
私、未婚って言ってたけど、実は子供いるのよ。
だから、葉鳥君のこと、なんだかほっとけなくってねぇ。
出来が良くて自慢の息子。
だけどね、あの子、いろいろとあるんだって。
私は応援してるんだけど、難しいんだって。
ね、かっこいいでしょー...。
葉鳥くん、あーいうの、大好物でしょ。」
横に来てこうやって小言を溢すのがうちの社長のクセ。
いつものように聞き手にまわっていたら、痛いところを付かれてしまった。
社長には、すでに自分のマイノリティーを打ち明け済みだ。
実の親にはすでに縁を切られて一人で生きてきた自分にとって数少ない理解者だ。
「葉鳥君、あの子と面識あんの?
この部屋に入ってきて一番に、あなたのことをあの子、聞いて来たんだけど。
ほんと、変わってるわ。
あの子が他人に関心を持つことなんて滅多にないのよ?」
ニヤニヤがとまらない社長。
そして、社長の変な気遣いで彼の教育係を自分がし、あっという間に彼の恋人の座に収まってしまった。変な所で器用と言うしかないだろう。
しかも、歳が自分より上だった。
「あー、これで、心配事、なくなったわー。
一人息子は同性愛者だし、いくら待っても良い人を紹介してこないし。
折角、理解してくれる母親がいるっていうのに、なにをボケーっとしてんのよって思ったの。
気になってる人がいるとは聞いてたのよ?同じマンションの人だっていうから、どんな人かなーって、聞いたら、一番に浮かんだのが葉鳥君だったの。
で、葉鳥君も同じじゃない。
浮かれた話も聞かないし、誰も良い人いないのかなーって思ってたの。
もう、この歳になると、ほっとけなくなるのよ。
とりあえず、好きとかそういう面倒な感情は後回しでもいいからさ?
せめて、友達ぐらいになってくれてもいいかなぁって思ってたんだけど。
まーさーかーねぇ。
いつの間にか、くっ付いてんだもんっ!
驚くわよーっ!」
と、目の前でおいしそうにお酒を飲んでいる社長。関係を社長も知っていて温かく見守られてる、そんな俺たちだ。
「葉鳥さん、今日はうちに泊まりますよね。」
いや、マンション同じだしな、わざわざ、泊まらなくてもいいと思うんだけど、「いちゃいちゃしたいんです」って、真剣な顔で言われてもな。
ってか、母親が目の前にいるっていうのに、こんな話...。
ちらりと社長を見ると、
「気にしないでー。むしろ、もっとやれーって感じ。いいよ、キスしてもー」
ー!?
「っ!?しませんしっ!」
楽しそうに自分たちを見ている社長に呆れてしまった。
だけど、自分の中で何かが変わろうとしていた。
未来の自分の隣に誰かがいてくれる。
そう思えるだけで、楽しみだ。
「葉鳥さん、もう、一緒に住みません?」って、同棲をお願いされたり、指輪の話をよくするなと思っていたら2年後にはパートナーとしてプロポーズされたり...。
出会うまでは何も楽しみがなかった自分にこんな日がくるなんて...。
人生は、いろいろとあって楽しい。
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